ブラック労働で過労死数歩前だった俺の心の癒しだった動画アプリがマジモンの神アプリだった   作:ぱちぱち

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誤字修正、夜市よい様ありがとうございます!


第19話 一番困る答えが返ってきちゃったなー

 浮浪者のような見た目をした男が二人、地雷系ファッションの女の子に絡んでいる。女の子の方は『九十九あきら』に鹿谷くんたちと一緒に勝手についてきて、今では何故か毎日のように遊びに来る子だ。確か名前は

 

 

「蝶子ちゃん」

「…………?」

「あん?」

 

 

 声をかけて、公園のフェンスをさっと飛び越える。スカート? 大丈夫。魔女っ娘のスカートは風が吹いてもパンツが見えない仕様になっている。絶対領域は絶対に安全なのだ。

 

 スタッと着地して蝶子ちゃんとオッサンたちの間に入ると、オッサンたちが一歩後ずさった。

 

 

「もー。帰る時は明るいうちに帰りなさいって言われてるでしょ? 鹿谷さん達に怒られちゃうよ」

「……ん。ごめん、なさい」

「さ、家まで送るから一緒に行こうか。親御さんには連絡入れてる?」

「ん」

 

 

 怯んだオッサンたちを無視しして蝶子ちゃんの手を取る。蝶子ちゃん相手の時は子供相手だと思ってたんだろう。『赤神さやか』も未成年だが、蝶子ちゃんよりもデカいし発育も良いから抵抗されると不味い、とか警察沙汰、とか。その程度の不味い事が起きるかもって知能はあるらしいね。

 

 まぁ、『なんかしてきたら半殺しにするけど』。ちらっとそう考えながら二人の男を見ると、男たちはビクッと体を振るわせた後、這う這うの体で逃げ出していった。『失礼な連中ね、山姥を見た! みたいな顔して』

 

 ――多分山姥よりも怖いものが見えたんじゃないか?

 

 一瞬だけ体の制御権を奪い取られた感触があったから、多分その時に脅したか何かをしたんだろう。『メンチ』もそうだが、戦闘系アニメの主人公はこう、気合を入れたら相手が怯む系の技とか結構持ってるイメージだし。俺の身体なのに明らかに『さやか』の方が体を使いこなしてる気がするのは、まぁ彼女の身体をレンタルしてるんだから当然か。

 

 っと、思考がそれたな。今はそんな事よりも大事なことがある。

 

 

「ごめんね、急に手を取っちゃって。私は『赤神さやか』。九十九あきらの……んー。友達って思って。うん、友達」

「……ん」

 

 

 蝶子ちゃんへの釈明だ。いくら同性とはいえ見知らぬちゅーがくせーの手を取って引っ張っていくのはね。ヤバいんだよ。ポリス的な意味合いで。山里一也の名前を出そうとも思ったんだけど、この子はVVVに遊びに来てるというよりも『九十九あきら』についてきて居付いたって感じだからね。そっちの名前を出した方がまだ信じて貰える、はず。まぁその『九十九あきら』は週2くらいしか事務所に居ないんだけど毎日来るんだよな、この子。

 

 さて、この子の家は近くのバス停からバスに乗って30分ほどの場所にある。とはいえレンタル時間もあるから今日はタクシーに乗せて送ってしまおう。最近のタクシーアプリは高性能で、事前に支払いを済ませておくことも可能だし。

 

 

「少し待っててね。今からタクシー呼ぶから、それに乗って今日は帰ってね」

「ん。わかった、あきらお姉さん」

「うん、じゃあ――」

 

 

 ピピピッとスマホを操作する指が止まる。

 

 落ち着こう。もしかしたら聞き間違いかもしれない。あ、むしろ言い間違えか。まだちゅーがくせーだからな。仲のいい先生を「お母さん」って言っちゃう年代なんだから仲のいいお姉さんの名前を初対面のお姉さんに言っちゃうこともあり得るよね。あるある。

 

 ゆっくりと蝶子ちゃんの方に顔を向けて、しごくゆっくりとした声で確認のために尋ねてみる。

 

 

「あ。あははー、蝶子ちゃん間違えてるよー。あきらじゃなくてさやか。さやかおねーさんね。リピートアフターミー?」

「? あきらお姉さん、だよね? 一也お兄さんといっしょの――」

「よっし。蝶子ちゃん何が食べたい? おねーさんお勧めの甘いもの食べに行こっか!!?」

「ん。いく」

 

 

 食い気味に蝶子ちゃんの言葉を遮り、食い物の話題で釣って蝶子ちゃんを確保する。頭の中は大混乱だが、一つだけ分かっていることがある。このまま彼女を家に帰すわけには、行かなくなったという事だ。

 

 

 

 

『ジャンボパフェジャンボを一つ! あとこっちのデラックスマンゴーまんまアイスも一つ!』

「……おぉー。すごい、食べるね」

『女の子は甘いもので出来てるのよ! 蝶子ちゃんも遠慮しないで食べていいわよ』

「ん。……その前に、おかーさんに電話する。そとでたべるって、言わないと」

 

 

 そう言って蝶子ちゃんはスマホを取り出し、自宅に電話を入れる。うん、ご家族への連絡は大事だね。変な人と一緒に居るなんて言っちゃだめだからね???

 

 あ、そうだ。

 

 変身しても大丈夫なように鞄に入れてあるマスクを取り出し、口元に持ってくる。あー、あー。うん、問題なし。“元の俺の声だ”。

 

 

「蝶子ちゃん、電話貸して」

「……おー、すご。はい」

「あ、もしもし。はい、山里です。その節はお世話に……はい。いえ、今日はあきらと出かける予定だったので蝶子ちゃんも。はい。今、あきらと一緒に居てですね」

 

 

 そう言って少し電話から耳を離し、マスクの側面にあるつまみを操作して声を切り替える。

 

 

『もしもーし! おゆはん食べてきますんで蝶子ちゃんお借りします! あ、こら一也くん!』

「すみません、この無礼者が。はい。ええ、そうです。帰りはタクシーでお送りしますので。はい、いえいえ。うちの社長も蝶子ちゃんを可愛がってますのでお気になさらず。はい。はい。それでは。蝶子ちゃんにお返ししますね」

 

 

 そう言ってスマホを蝶子ちゃんに返却すると、蝶子ちゃんはぱちぱちと拍手をしてきた。うん、良いから早く電話を取ってね。お母さん待ってるから。

 

 蝶子ちゃんがお母さんと少し話をして電話を切ったタイミングでジャンボパフェジャンボとかいう意味の分からないジャンボパフェの塊とマンゴーがそのまま凍ったアイスが届き、話はいったん中断となった。なんだこの、なんだ。俺が知ってるパフェは土鍋みたいな器に山盛り乗ってくるものじゃないんだが、これは本当にパフェを名乗っていい代物なんだろうか。もっとこう、似合う名前があると思うんだ。カロリー爆弾とか。砂糖の暴力とか。

 

 ただ、こんな暴力的な食べ物でもペロリといけてしまうのが『赤神さやか』だったりする。身体能力が上がるから食欲も上がるんだろうか。途中から胸やけしそうになって体の制御権を交代したんだが、『さやか』は本当に軽々とこのパフェの塊と呼ぶべき代物を食べきった。そして賞金をゲットした。このジャンボパフェジャンボは食べきったら無料+5000円貰えるらしい。大食いメニューがあるこじゃれたカフェってなんだよ。

 

 

「それで、もぐもぐ」

「食べきらずにしゃべるの、ぎょうぎわるい」

「ごめんもぐもぐ。ごっくん」

 

 

 中学生に行儀指導をされる25歳が居るらしい。ちょっと焦り過ぎたか。けっこう恥ずい。というか蝶子ちゃん、ファッションは地雷系だし喋り方も不思議系入ってるのに受け答えはかなりしっかりしてるし明らかに育ちの良さが出てるんだよね。見た目と中身のギャップが面白い……っと。不味い不味い。鬼畜クマモードに入りそうになっちまった。一旦気を取り直して、仕切りなおそう。

 

 大事な話だしな。

 

 

「それで、蝶子ちゃん。なんで『私とあきら。それに、一也が一緒だって思ったの? 私とあきらはまだ分かるけど、一也なんて性別まで違うのに』」

 

 

 途中から『さやか』の意識と混ざり合い、そう質問する。俺にとってもそうだが、『さやか』にとってもこの少女にバレた事実は興味を引かれるものなのだろう。なにせ見た目では全く分かるわけがない。顔も大きさも性別すら全く別の人間を見て、それが同一人物だと思うなんて普通じゃないからだ。

 

 この子が山里一也=赤神さやか=九十九あきらだと感じたナニか。それが何なのかは知らないが、放置しておくのは不味い気がする。

 

 俺と『さやか』の問いに、蝶子ちゃんは首を少し傾げた後。

 

 

「なんとなく」

 

 

 曇りのない真っすぐな瞳で蝶子ちゃんはそう言い切った。嘘だとか誤魔化しだとかそんなものが介在する余地もないほどに、蝶子ちゃんはそれが真実だと信じ切った瞳で言い切ったのだ。

 

 そっかー、なんとなくかー。

 

 一番困る答えが返ってきちゃったなー。ははっ。

 

 

 




山里一也(男)25歳


視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者』を獲得しました。(料金:ひなちゃん家のご飯)


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