ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
国会議事堂に『かすが』を吊るそうとした所、『メンチ』にそれは他所様に迷惑をかけすぎるとガチ目にストップをかけられて断念。うん、ちょっと俺も冷静さを欠いてたみたいだ。常識的に考えて警備をしてる警察さんとかいろんな人に迷惑をかけるよな。仮に吊るすんなら他者に迷惑をかけない自社ビルの最上階からとかじゃないと。
まぁ『かすが』は間違いなく悪意があったとはいえ実質的には『さやか』とカバディやってただけだしあんまり目くじら立てすぎても良くないか。とはいえ流石に何もなしは良くないからお仕置きポイントはちゃんと加算して、また次になにかやった時に纏めて消費する事にしよう。
「ライブ会場は完成しました! リハの準備に機材を入れてます!」
「ご苦労様です」
さて、当初の予定よりも大分早くライブ会場が設営できたため、リハーサルは当初の予定よりも少し早めに行う事にする。元の予定だとちょっとキツ目だったから余裕を持たせるためにリハーサルを前倒しに行う事にしたのだ。
今回のライブは展示会2日目と同時開催になるため、全体のプログラムとしては午前はVSとVVVアメリカが、午後はVVV日本とゲストによるライブとなっている。つまり展示会の方は午前はVVV日本のメンバーが、午後はVS及びVVVアメリカのメンバーがスタッフとして展示会場を回すって事だ。
『でも、大丈夫かしら。私のようなおばあちゃんがこんな大きな場所のスタッフなんて……』
「レイチェルさんは全体のアナウンス係をしていただく予定ですので、動き回る事はないと思いますよ」
「はい! ししょぉ! ししょぉ! 私、ケイトちゃんとセッションしたいです!」
「ケイトは前半の山で
1日目は展示会だけのためシフトなんかも組みやすかったが、2日目は同時にライブもやるためこういった要望をくみ取ってのシフト割が結構難しい。体力的な問題でレイチェルさんには無理をさせられないとか今わがままを言い始めた愚かな弟子のような要望とかも聞いていくと、当然どこかでしわ寄せが出てきてしまう。
という訳でろっこちゃんのような私欲全開の要望は通常なら全部はねつけるところなんだが、実は今年のVVVエキスポにはこういった人員的な制限を解消する魔法の一手が存在する。昨年、我がVVVが誇る頭脳『九十九あきら』が完成させた次々世代超高性能AIヴァーイと『あきら』が完成させたロボットたちだ。
『hmm......思ったよりもバランスは良いです。足回りへのリソースは少なくなりそうです』
『私が設計したんだからそこは当然! でも骨組みとかは既存の金属とかだからあんまり無茶はしないでね?』
第三回VVVエキスポの目玉は作業用可変重機と名付けられたロボットカーたちであり、今回は油圧ショベル・ダンプ・クレーン・コンクリートポンプ車の4機種が大・中・小のサイズで作成されている。これはまぁ作業現場によって用途が変わったり環境が変わったりするために幾つかサイズを作ったんだが、その中の小サイズ4機は一人乗りでサイズも2mちょっととそこまで大きくない。変形したら当然人は乗れないんだが、そのくらいのサイズであるからこそできる事がある。
超高性能AIであるヴァーイにこの4機を操作してもらい、足りないスタッフの代わりを務めてもらうのだ。
『本当はヴァーイちゃん専用の身体も作りたかったんだけどね! イロリーからもお願いされてるし! でも、造形をお願いする人形師が今、自分の研究でちょーっと忙しくてねぇ』
『残念ですが仕方ありません。マスターザンムの手が空くまで待機いたします』
『あきら』の言う様に本当はヴァーイ用の身体も準備する予定だったのだが、なんなら去年のお披露目の辺りから計画されていたのだがこれに関しては色々と問題が起きているため一旦計画が停止している。というのもヴァーイの一応法的な所有者であるイロリー・マックス氏が『僕の嫁には最高の身体を用意しないといけないよね!!!!!!』と非常に力強く宣言して用意された試作予定のデザインをすべて却下し、有り余る金に物を言わせて複数のデザイナーを招集して最高のデザインを完成させると息巻いたからだ。
このデザイン自体は数多のデザイナーたちの尽力により少し前に完成しているんだが、問題はこのデザインを元に作成するガワと中身である。マックス氏は当然のように現在最高の人型ロボットの開発者でありヴァーイの開発者でもある『あきら』にヴァーイの機体を依頼し、『あきら』も当然これを受諾したのだが折り悪くこの時期は松戸真楠自動車との共同開発の大詰めの時であり、『あきら』もすぐには動けなかった。
また、中身は作れたとしても『あきら』は造形にはそれほど頓着しない為マックス氏の要望に応えるレベルの外装を作れるとは思えない。という事で『あきら』は自身の魂羽織の作成者である『人形残夢』にヴァーイの外装を依頼したのだが、『残夢』の方でも魂羽織の改良が丁度いい感じに進んでいて手が離せない。これらの理由でヴァーイは今年も身体なしでVVVエキスポに参加する事になり、今年こそヴァーイとVVVエキスポでデートをすると息巻いていたマックス氏を落胆させる結果になってしまった。
まぁ、最初にデザインの件であーだこーだ文句を言わずに『あきら』の手が空いてる頃に依頼をしてくれてたら多分間に合ってたんだけどね。
『それは言わないでくれよクマコーくん。君だって自分の推しには最高の姿で居て欲しいだろう?』
「分からないでもないですが、Vタレには衣装替えとか新モデルって概念がありますんで。最初に基礎となるものを作ってどんどん開発していけばいいんじゃないかなって」
『……嫁の…………バージョンアップ、だと……!? そんな考えもあるか……! 日本、恐るべし!!』
ヴァーイの主意識がこっちにあるという事は最近は常にヴァーイの意識が入ったタブレットと一緒にいるこの人も当然いるわけで、マックス氏は当然のようにリハーサルから参加して俺の隣でコーラを片手にポップコーンを食べ始めた。すげぇ良い空気吸ってるな、この一般アメリカ超富豪さん。
『そうでもないよ。今、アメリカはアジアからの渡航客が持ち込んだ感染病対策でどこも大忙しだからね。日本みたいに水際防衛に成功してると実感がないかもだけど、僕らもかなり慌ただしくしてるんだよ』
「つまりここでしっかり休暇を取るって事ですね」
『そうだね。たまには骨休みをしないと倒れてしまう』
以前、『かすが』が中国で不味いことになってると言っていた感染病はどうやら拡大の一途を辿っているらしい。まぁあの国は人口が多いし周囲の国とのやり取りも多いみたいだからなぁ。封じ込めるにしてもかなり難しいんだろう。
日本の場合は昨年から一気にテコ入れされた入管が空も海もがっちり固めていて、今の所なんとか国内への波及はせき止められているようだけれどもこれが出来るのは島国という特性のお陰だろう。
ただ、防げていると言ってもそれは水際であり、船や航空機で渡航してきた人物が体調を崩しているのは何度も確認されている。そういった人物を寝泊まりさせる隔離施設はまだ余裕があるが、その隔離施設を動かしている人員や医療関係者から感染が拡大する可能性は十分にある状況だ。
恐らく、遠からず政府が何かしらの対応をするとは思うが。今回のVVVエキスポは本当の意味でギリギリのタイミングだったかもしれない。
『実を言うと、ヴァーイの体、ひいては人型の精密動作が出来るロボットについては僕だけじゃなくて米国の上層部も期待してるんだ。医療従事者が直接感染対象と接触しないで済むかもしれないってのは大きいからね!』
「それならデザインであそこまで騒がないでくださいよ」
『うーん! 手厳しい』
そんな一般アメリカ超富豪さんとバカ話をしながらリハーサルを眺めていると、ゲストとして呼ばれていたホログライブの星野りゅうせいさんとろっこちゃんが予定にないデュエットを行いはじめる。余りにも自然に始めたためこんな進行だったっけとスケジュール表を見ることもないくらいに始まり、慌てたように進行係の鹿谷くんがステージに駆け上がって「あ、これなんか違う」という事が発覚したほどだ。
そしてそんなアーティスト同士のやらかしとは全く別ベクトルの問題。予定の時間になっても『さやか』と『あきら』がステージに現れずにリハーサルが一時中断。探してみると二人とも外の喫茶店でジャンボパフェを食べていて、珍しく温厚なアキコさんが二人をしかりつけるという大事な事なのでもう一度言うが本当に珍しい事が起きたりする。おばか二人の言い分を聞くと、余りにも暇すぎてちょっと抜け出したら時間を忘れてしまったそうな。いや百歩譲ってパフェ食ってるのは良いけど、それ絶対に当日はやるなよ? 大混乱起きるからな???
『リハーサル、早くやってよかったね?』
「そうですねぇ……」
同情するような視線を向けてくるマックス氏にそう生返事を返して、今回のリハーサルで出た問題点を書き出していく。『さやか』と『あきら』には当日にお目付け役で誰か張り付けとかなきゃいかんかなぁ、これは。とりあえずライブの時は進行係が死ぬほど忙しくなりそうなのは確定してるから、鹿谷くんをサポートする準備をしとかなきゃ。
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