ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
第三回VVVエキスポ 初日
「はい、こちらが大型クレーン車をモデルにした10m級作業用可変重機ツリスト君です。車両から人型への変形は10分後になります。あ、線の中に入らないでください! 線の中に入らないでください!」
「立体投射機体験場はあちらでーす! 今年の品目はCAPCAM社協力のもと生物兵器災害シリーズの1シーンを再現するホラースペースに路上格闘戦士シリーズのリアル体験コーナー等盛りだくさんになってまーす!」
「え、どうやって許可取ったの?」
「わかんない。雨宮社長が急に許可取ったって持ち込んだらしいよ?」
『hmm......私は今回、警備員も兼ねている。だから周りを囲むのは止めて欲しい』
例年通りVVVの開発した技術は非常に人気があるようで、今年の目玉である巨大可変重機の周囲は元より警備員として場内の整理を行っているヴァーイIN小型重機にも常に人だかりができている状況だ。やはりロボットが好きな奴は世界中に居るんだなぁ。
そしてVVVを象徴する技術である立体投射機のコーナーも今年は新たな試みがされており、“鈴の音”とかいう闇のカルト組織経由で『かすが』がゲーム会社に話を付け、立体投射機で人気ゲームを再現するというのをやってみた所これがかなり面白い。いや、まぁ人気のあるゲームをリアル空間に投射してるんだからそりゃ面白いのは分かり切った事なんだが、予想以上にハマるというかだね。
実際に俺もテストプレイでやってみたんだが、ゲームとかにはそれほど詳しくない俺でも十分に楽しめたし原作のファンなら倍率ドン! って感じなんだろう。実際にプレイしたことがあるという不動くさりなんかは「これ7はやっちゃダメ絶対ですわ」と余りの出来栄えに放心してたしね。VRとかと違ってヘッドギアも無いため臨場感が凄いらしく、ホラーはリアルすぎて本気で体調を壊す人が出るかもしれない、との事。一昨年のホラーコーナーも怖さを調節したし、やり過ぎるのは良くないって事だな。
そのため今回、ホラーコーナーは不動くさりがオススメしたあんまり怖くないけど名シーンだというシーンを幾つかチョイスしてそれを投影する形でお茶を濁し、今回はそれ以外のゲームを。例えば格闘ゲームの立体化をして格闘シーンを体験したりとかね。
この格闘ゲーム体験コーナーはテストプレイをしたVVVのVタレにも好評で、フィットネスゲームに近い感覚で遊べるとの事。こちらの動きは立体投射機が読み取って攻撃やガード判定を行ってくれるため実際にやってる感じがかなりあるそうだ。
この格闘ゲーム体験は初心者向けから心得がある人向けと難易度も幅広く設定されているため子供が入っても問題なく楽しめる仕様になっており、中に入った瞬間プレイヤーの外観は3Dにデフォルメされた自分になり、その状態で人気格闘ゲームのキャラクターと殴り合う事が出来る。そういう格闘ゲームだとよくある飛び道具はオミットしてあるためまぁ純粋な殴り合いになるため男の子ばっかりがやるかなぁと思っていたら、これが老若男女問わず中々の人気を博しているようだ。
「老の方はちょっとハッスルしすぎて大変なことになりそうなんですがねぇ」
「このために外部からお医者さん(『めぐみ』)を呼んでるから大丈夫大丈夫」
見回りの際に立体投射機コーナーの担当スタッフである不動くさりからそういった苦言とも言いづらい報告が入ってくるが、どうやら初代や2世代の初老くらいの方々が結構な割合でこの格ゲー体験コーナーに入り浸り、腰とか膝とかに深刻なダメージを負っているらしい。まぁ、そうなるだろうなと予測していたので医療系の切り札である『めぐみ』に頼みこんで彼女を隣接した救護所に配置してるし、ゲームコーナーのプログラム管理を行っているAIアキコにはプレイヤーの調子がおかしければ立体投射機を止めて救助を入れるよう命令もしてある。
「事故が起きないのはいいんスけどねぇ。私、今回はのんびりとゲームファンと語らう役目だと思ったのにぃ」
「ちゃんと働けって事だろうな」
お陰で担当スタッフである不動くさりは午前中ですでに3回、腰をいわしたおじさんを警備員と一緒に救護所へ運ぶことになったらしく、今回のエキスポは楽が出来ると皮算用を叩いていたらしいくさりは随分とブーたれていた。まぁ、こんな事を言ってるけどくさりはVVVガールズバンドの5人の中でも特に立体投射機などの技術を理解しており、それらの調整を含めて一番忙しく働いてくれるんだけどね。
まぁ働いた分はボーナスで返してるから彼女もやる気を失わずに頑張ってくれているし。将来的にVタレを辞めたいとかいうタイミングが来たら技術者として雇おうか考えるくらいには彼女はデキる女である。
さて、例年通り盛況なVVVエキスポだが問題が全くないという事は決してない。人数を二日に分けているとはいえやはり何万人も会場に詰めかける訳だからどうしたってトラブルは起きるし、警備を務めている雨宮セキュリティー警備でも判断できないような事態というのは往々にして存在する。
たとえば、そう。何故か明日が出番の、ライブに出演する予定のVタレさんが関係者パスを使って「おはよーございまーす。今日はよろしくお願いしまーす」とかいって関係者以外立ち入り禁止なスタッフルームに入ってきたりとかね。それも一人じゃなくて複数人がまとまって。
「どういうことです???」
「え、あ、いや。ええと、お世話になります、じゃなかった。ええ?」
「ええと、ええとぉ……」
警備員さんから館内放送で呼び出されて控室に行ってみれば、立体投射機の範囲内の為見知った顔が5人ほど居たため、困惑を隠しきれずにそう尋ねると向こうも何故かおろおろと周囲を見渡した。
一応補足しておくとホログライブに所属するもち子さんを筆頭にしたVタレさん達には一応フリーパスのチケットを渡しているためこの会場に居る事は全く問題ない。が、彼女たちが警備員に呼び止められて控室に連れてこられた理由はスタッフルームに普通に入ろうとしていたからである。
「ごめんなさい、一也くん。私の連絡ミスだわ」
「あ、いえ。大丈夫です。特に大きな問題もないですし」
警備員さんからの連絡でかけつけたアキコさんが頭を下げようとするが、アキコさんが頭を下げる姿なんて絶対に見たくない光景第3位くらいに入る姿だ。全力で宥めすかして事情を聴いてみると、どうも簡単な意識の食い違いが幾つか連続した結果いまの状況になっているのが見えてきた。
簡単に状況を整理するともち子さん達はフリーパスがあるため今日は遊びに来ていたのだが、「明日はお世話になるしちょっとした手伝いとかやろうぜ!」と誰かが言い出し、それをアキコさんに連絡。アキコさんはまぁフリーパスで会場入りするんだしちょっとした手伝い程度ならまぁ構わないと判断したらしい。その場でOKを出し、合流しようとした所でちょっとしたトラブルが。アキコさん側で来場者同士のトラブルが起きたため、その仲裁の為にアキコさんが一旦対応できなくなったのだ。
合流場所の指定前だったため彼女たちはその場に留まるのがベストだったんだが、この会場は立体投射機の範囲であり3Dモデルを持っているものはAIによって自動的に3Dのガワが適用される。ホログライブの大人気Vタレが一か所に留まり続けると、ちょっと周囲の視線が危なくなるというか人が集まり始める事になり、これは不味いという事で彼女たちは一旦落ち着ける場所を求めて昨日のリハーサルで場所を知っていたスタッフルーム入ろうとした、と。
「タイミングが悪すぎてちょっと笑えますね」
「ですよねぇ。私もどう説明すれば良いか悩んじゃって」
ホログライブ側の代表者であるもち子さんは、仕事の時以外だと俺との会話が非常に困難らしい。めちゃめちゃ怖がってしまうため、ちょっと今は会話できずにというかアキコさんの胸に顔を埋めて慰められているため、めっちゃ羨ましい。じゃなくて、会話が出来ない状態だ。
というわけで代わりに大地むつらさんというVタレさんと会話して状況を確認したんだが、まぁなんだ。流石にここまで玉突き事故みたいな状況だとは思ってなくて思わず笑ってしまったのも仕方ないだろう。
話を聞いてもやっぱりアキコさんが悪いわけじゃないし、ホログライブさん側も最初にアキコさんに許可を貰ってるわけだし。まあ、スタッフルームへの出入りはちょっと軽率に感じるけど状況的に逃げ場が少なかったと考えれば仕方ないの範囲か。まあ、目くじら立てるような内容でもないしね。
「分かりました。じゃあ、皆さんには臨時スタッフとして会場内の案内とかをお願いします。お給料を出すといろいろ面倒が起きるんで、報酬はアキコさんが今夜の夕食を奢るって事でどうか」
「一也くん??? いえ、まあそれくらいなら良いけど」
「やった! ただめしだ!」
「ただめしただめし! ……あの、本当にそれでいいんです? 私ら、たんにちょっと手伝うだけのつもりで……」
「構いませんよ。アキコ社長、会社からってなると向こうのファンにどうしても私の関与が疑われるんで、アキコ社長名義で彼女たちにご飯を奢ってください。経費にするんで領収書はとっておいてくださいね?」
「分かったわ。じゃあ、今夜は前祝にパァーっといっちゃいましょう!」
こういった細かい、けれども俺やアキコさんじゃないと対処できないようなトラブルに対処しながら全体の進捗を見ている鹿谷くんをフォローしたり、人員が足りない場所に応援に行ったり、追加で参加した賑やかしげふんげふん。ホログライブのVタレさんたちがスタッフと書かれたワッペンを付けた3Dモデルでどや顔で会場内の案内をしたり、それを見た同じく明日ライブに出演予定で、今日は遊びに来ていたはちじくじのVタレさんがやいのやいのと騒いだりと……やっぱり他所様の人員使うとトラブル多いな? いや、まぁアキコさんが楽しそうだから良いんだけどね、後でホログライブのマネージャーさんをつついてストレス解消くらいはやらないとな(鬼畜クマ成分)
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