ブラック労働で過労死数歩前だった俺の心の癒しだった動画アプリがマジモンの神アプリだった   作:ぱちぱち

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第23話 『ドッペルゲンガー』

 体が足りない。

 

 ブラック企業時代、余りの業務量に幾度もそう考えた事がある。もし、もう一つ体があれば定時に帰ってのんびりする事が出来ただろうかと。その時の結論はいや、それなら多分あの部長は二倍の仕事を振ってくるなというものだったため今現在の俺の状況とは大分ニュアンスが異なるが、最近は久しぶりに体がもう一つ欲しいと考えるようになった。

 

 何故か。俺の身体は一人分しかないのに求められている役割が5人分くらいあるからだ。まぁ俺自身と『九十九あきら』以外の役割はそれほど時間がかかる者でもないから今はなんとか回せてるんだが、ちょっとした拍子に一気にボロが出る綱渡りのような状況なのは、間違いない。事情を知ってる蝶子ちゃんに『NEET NOW』を使ってもらう方法も考えたんだけど、蝶子ちゃんのスマホも仕事用に渡したスマホも対応外の機種らしくてダウンロードできなかったのだ。

 

 なんとかしないといけないんだが、そのための手段が現状だと『九十九あきら』に頑張ってもらって人型ロボットを作りそいつにホログラムを被せるぐらいしかなさそうなんだよね。いや、体が足りないって問題を解決できる手段が思いつくのも大概なんだけど、この手段を行うには流石の天災科学者でもそれに注力して数か月は必要だ。そんな時間も余裕も俺には存在しないため、この手段は取る事が出来ない。

 

 じゃあどうするかとなると……

 

 

「まぁ、俺にとってはこれが一番楽な方法ではあるんだけど、なぁ」

 

 

 スマホを開いて『NEET NOW』を開くと、新しく追加された今日のオススメという欄に複数のアニメ作品の名前が挙がっている。『スライムで悪いか?』だとか『群体生物は愛を知る』だとか、まぁ、今の状況をどっかから観察されてるのかなというラインナップだが、大体が人間以外が主人公の作品なんだよな。正直、人以外の何かになるってのはめちゃめちゃ怖いから取りたくないんだが、その中で一つ。

 

 これはと思うものがあり、これもまぁ超常現象を扱う作品ではあるんだがラインナップの中では一番マシなんじゃないかというものだった。主人公がちゃんと人間だしね。それに、多分この作品はデメリットとかが無さそうな気がするんだよなぁ。アニメ見るのにデメリットもクソもないんだろうけどさ。ほら、人を食べるとかある作品はやっぱり怖いじゃん?

 

 という訳で俺は自室に戻った後に鍵をかけて、『NEET NOW』のラインナップから一つのアニメを選んで再生を始めた。

 

 アニメのタイトルは『ドッペルゲンガー』。

 

 自分をコピーする能力を手に入れた超能力者と、その超能力者を殺して自分が本物になり替わろうとするコピー、ドッペルゲンガーが主軸となって描かれる作品である。

 

 

 

 

 『ドッペルゲンガー』の主人公、セシル・ファラウェイは国連超常現象課に所属するエキスパートだ。彼は幼少の頃、家族を襲った悲劇によって超能力を手に入れ、自分と全く同じ思考・能力を持ったもう一人の自分『ドッペルゲンガー』を創り出すことが出来るようになった。セシルはその能力を駆使して世界中ではびこる超常現象、自分と同じような超能力を持った者や、怪奇的な現象を解決していく。

 

 この作品の面白い所は、セシルの能力である『ドッペルゲンガー』は決してセシルにとってプラスの結果だけではない能力な所だ。セシルは才能豊かな人物で、格闘技や銃火器の扱いにも優れ、更に電子工作の技能も持っている。つまり、そもそもセシルという人物自体が一人で大抵の問題を解決に導くことが出来る能力を持っていて、そのセシルが二人になる『ドッペルゲンガー』は作中でもかなり強力な方の能力だと扱われているのだが、この『ドッペルゲンガー』によって現れるもう一人のセシルが曲者なのだ。

 

 思考も能力も全てが同じもう一人の自分。セシル本人にとって『ドッペルゲンガー』はそんな存在だが、『ドッペルゲンガー』側から見るとセシルの存在は非常に腹立たしいものになる。自分と全く同じ人物が、自分を支配している構図に見えるからだ。

 

 その為セシルは作中でも数回、ドッペルゲンガーに『なり替わり』を狙われて命を落としかけているし、『ドッペルゲンガー』を利用する際にはいろいろと対価を払ったりもしている。セシルにとっては使いこなせれば強力だが、扱いづらい能力。それがもう一人の自分『ドッペルゲンガー』である。

 

 

「『おい、俺もポップコーンをくれ』」

「ん」

 

 

 そんなアニメ、『ドッペルゲンガー』をポップコーンを食べながら見ていると、隣にいつの間にか置かれた椅子に座った金髪の青年がそう言って手を伸ばしてきた。食べかけのものは流石にやれんが、長時間アニメを見る時にはちゃんと買いだめをしている。まだ開けられてない袋を渡すと、ビリっと包装が破られる音が部屋に響く。

 

 ああ、なるほど。こんな感覚になるんだな。

 

 自分と全く同じ存在が隣り合うというのは、不思議な感覚だった。自分ではないのに、隣に自分が立っている。それが分かるんだ。

 

 

「話は、これを見終わってからな」

「『わかった』」

 

 

 そう言って金髪の青年。セシルの『ドッペルゲンガー』は椅子に座り、部屋の中に備え付けてある小型冷蔵庫から勝手にコーラを取り出して飲み始めた。意外と自由だなこいつ。だから本体に反旗を翻したのかな?

 

 アニメを見終わって、「あー、面白かった」と余韻に少し浸った後。隣に座っていた『ドッペルゲンガー』は、トントントンと神経質そうに椅子の肘置きを指で叩きながらこう言った。

 

 

「『それじゃあお話の時間、という事でいいかな?』」

「ああ」

「『じゃあ、率直に行こう。時間は有限なんだから』」

 

 

 分かってる。本題の時間だよな。アニメを見た余韻を消して、『ドッペルゲンガー』と向き直る。いきなり殺しに来てない分まだ交渉の余地はありそうだが、『ドッペルゲンガー』に自由意志がある以上、ここでの交渉が今後を左右すると言っても過言じゃない。出来うる限りの要求には答えるつもりで相手の出方を伺っていると、『ドッペルゲンガー』は少し首を傾げた後、口を開いた。

 

 

「『それがし、働きたくないでござる』」

「……おい」

「『あれ? ジャパンだとこういえばニートになれるって漫画で見たんだが』」

 

 

 半眼でにらみつけると、『ドッペルゲンガー』は不思議そうな表情で首を傾げた。首をかしげたいのはこっちの方なんだがな?

 

 

 




山里一也(男)25歳


視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者』を(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル期間 1週間)


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