ブラック労働で過労死数歩前だった俺の心の癒しだった動画アプリがマジモンの神アプリだった 作:ぱちぱち
俺が住んでいるマンションが正式にVVVの所有物件になった。元々俺達しか入居してなかったし、長らく事故物件だったために元のオーナーさんも手放してしまいたかったらしい。まぁ、相場より若干安めで購入できたのは嬉しいんだが、来年には完成予定の自社マンションもあるからな。あっちが完成したらセキュリティーの面を考えても全施設を移す予定なんだが……まぁ、その辺はアキコさんとも相談しながら後で考えれば良いか。そもそもまだ完成してないしな。
そんな事よりも先に考えるべきは、今。購入したばかりのマンションの警備体制についてをしっかり練り直した方がいいだろう。
『私の警備ロボが火を噴く時が来たようだねー! バリバリバリ!』
――銃火器は禁止な。お前の元居た場所じゃねぇんだから
幸いなことにうちは技術的な面で非常に頼りになる人物がいるため、暴走しないように注意を払う必要はあったが、技術的な面での侵入やハッキング等は心配しなくてもいい。もちろん世の中にはこの天災に匹敵する野生の天才が居るかもしれないため油断する事は出来ないが、まぁほぼ大丈夫だと思う。そのレベルの人材を保有してるような組織はそもそもうちにスパイなんて仕掛けなくても良いだろって話でもある。
技術的には、ほぼ完ぺきだ。『九十九あきら』監修の警備機構を取り入れたうちのマンションは、そこらの民間警備会社じゃ足元にも及ばないくらいに機能的にマンション全体を管理・警備する事が出来る。不審者程度なら完全にシャットアウト出来るだろう。
残る問題はただ一つ。日本の法律ガン無視で力づくで来る奴らを止める事の出来る物理的な防衛力。“使える”警備員の確保である。
『ドッペルゲンガー』、まぁいい加減名前が長いからこれからは本体の名前である『セシル』と呼ぶが、『九十九あきら』の保有するだろう技術を手に入れるためならお隣の国の特殊部隊がいつ来てもおかしくないそうだ。あそこは海の向こうの覇権国家とバチバチにやり合ってるから、技術的な優位を確保するためなら会社に押し入って技術者を一人拉致するくらいは平気でするだろう、というのが『セシル』の見立てだ。
正直、一般人の感覚としてはそこまでか? とも思うが、『セシル』の見立てについては『メンチ』たちも同意見らしい。優れ過ぎた技術や人は狙われてもおかしくないんだと。そう言われると、俺としてももしかしたらという思いが強くなってくる。
「とはいえ、俺が出来ることはアニメを見る事くらいだけどな」
「『それで十分すぎる。俺は駒の働きは誰よりも精通してるが、全体を差配する役割は熟せないからな。そっちをカバーしてくれる人材をなんとか見つけてくれ』」
『セシル』にもこう言われた事だし、どっちにしろアニメを見るだけだからという事で、仕事が終わった後に早めに自室にこもり、『NEET NOW』を起動した。
起動してアニメを見た。そんだけの筈だったんだけどな。
『む、意識が戻ったのか。勝手がわからなくて暫く体を借りていた。お望み通り、命を懸けて戦う兵隊は見繕ったから許してほしい』
気づいた時には、刀とかが飾られたどこかの事務所みたいな部屋でパンツ一丁のオッサンの背中に腰掛け、目の前には明らかにその筋だと思われる人相をした同じくパンツ一丁で正座したお兄さんたちの前に居た。何を言っているか理解できないと思うが、俺も理解できてないんだよね。
俺が見たアニメは『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生に転生した件について』というアニメだ。内容はほぼタイトルの通りで、“闇の悪魔”と恐れられた傭兵隊長だった主人公が任務中の事故で死亡し、気づいたら女子高生雨宮かすがになっていたというコメディ作品である。
この作品の主人公は“闇の悪魔”と呼ばれていたようにやることなす事かなり過激な人物なんだが変に真面目な所があり、二度目の人生なんだから今回の両親は大事にしようと考えてちょっとズレた親孝行をしたり、学生生活は大事だからと友人との係わりを持とうと悪戦苦闘したりするなど本人は大まじめなのに傍から見ている分にはコミカルに見える行動をとる人物だ。決して悪意で動くような人物でもないため、この主人公ならちょっとやり過ぎても上手い事仕事をこなしてくれると踏んでいたのだが。
『お前らはなんだ?』
「ゾウリムシです!」
「ミジンコです!」
『その通りだ。お前らは畜生どころかウジにも劣るクズだ。親御さんを泣かせるしか能のないクソどもだ。だが私は優しい。そんな貴様らを畜生レベルにまで引き上げるまで面倒を見てやろう。嬉しいか?』
「嬉しいです!!!」
やり過ぎとかそういうのを超越してるんだよな。どうやったら明らかにヤーさんな人たちの心をここまで折れるのか皆目見当もつかない。『ん? 詳しく聞きたいか?』って? 全然聞きたくないです。お願いなんで話そうとしないでくれ。夢に出そう。
『そこまで大したことしてないんだけどな。ちょっと人生を見つめなおせば誰だって素直になるもんだ。なぁ?』
「! は、はいぃぃ! そのとおりでぇぇぇす!!!」
手近に居たリーゼントの青年の頭をむんずと掴み、グイっと顔を引き上げて『雨宮かすが』がそう尋ねると、青年は腹の底から振り絞ったような声でそう応える。その答えに満足したようにうなずいた後、『雨宮かすが』は青年の髪を離した。ドシャリと顔から地面に落ちた青年の頭を踏みつけ、『雨宮かすが』はその場にいる全員に向けて口を開く。
『明日からお前らの支配者は私だ。逃げたければ逃げればいい。歯向かいたければ歯向かえばいい。その結果がどうなるかはお前らの身体に教えたはずだが、私の教育が足りなかったなら……まぁ、それは後でのお楽しみだな。楽しみにしておくよ。全員でも良いぞ?』
その言葉にガタガタと震える青年たちを残して、『雨宮かすが』は事務所を出た。外はもうとっぷりと日が暮れている。時刻は、午前2時過ぎか。アニメを見てから、大体4時間くらいが経過してるわけだ。
……たった4時間で、あれかぁ。その事実に愕然としていると、『雨宮かすが』は不思議そうに首をかしげる。
『オーダーは命を張れる肉盾兼警備員という事なので、全力を尽くしたのだが。なにか不満点があったなら改善するが?』
――いや……いやぁ。ちょっと予想と違ったから少し驚いてるだけでね?
『ふむ。初めての仕事であれば互いの意思に齟齬が出るのは仕方ない事だろう。これ以上を求められると流石に国外に飛ばないといけないし、そんな時間は私にも君にもないだろうからね。これが現状では最善だと考える。特に問題がないのなら、明日からはあのクソ虫どもを一端の肉盾になるよう教育したいのだが』
――あ、はい。万事お任せします。人死がないよう出来るだけ気を付けてくださいね???
『任せたまえ。私はプロだよ。とりあえずこの一週間でアイツらを人前に出せる程度には調教……指導するつもりだ。泣いたり笑ったりできなくしてやる』
そう返答する『雨宮かすが』の口調からは、自身の技術に対する確かな自負と自信が感じられた。
そして、これは少し先の話になるのだが。『雨宮かすが』の言葉通りに一週間後、マンションの警備員として配属された彼らはその厳つい見た目からは想像できないほどに気真面目に、たとえ雨が降ろうが“顔色一つ変えずに”職務を熟し、その仕事ぶりにはアキコさんも大満足だった。
これを機にこのマンションと、更に来年完成する自社ビルもこの『雨宮セキュリティー』と契約をするという事で決定し、『セシル』が口にしていた問題に対しても最大限の備えは用意できた。最大限過ぎる? いやいや。安全対策はやり過ぎ位がちょうどいいんだよ。多分。
山里一也(男)25歳
視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者』を(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル期間 1週間)
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