最安10円レンタルチート ブラック労働で過労死数歩前だった俺の心の癒しだった動画アプリがマジモンの神アプリだった   作:ぱちぱち

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第35話 霊力って石ころをグレネードに出来るんだ……

 柔らかい感触を感じながら目が覚める。どうやらアキコさんに頭を抱きしめられていたらしい。アキコさんは普段は寝相が良い方なんだけど、お酒が入るとすぐに抱き着いて眠る癖があるんだ。昨日は平和通りって所で沖縄のおじさんやおばさん達と楽しく飲んできたらしい。沖縄旅行を満喫しているようで何よりだ。

 

 沖縄の朝は東京よりも一時間くらい日の出が早い気がする。朝の6時なのにカンカン照りのお日様に眠気を吹き飛ばされ、アキコさんのゆるチョークスリーパーから抜け出して起き上がる。お高いホテルだからもちろんレストランでモーニングバイキングを食べる事が出来る。着替えてモーニングを食べに行くと、早朝だというのに結構人が居る。

 

 モーニングバイキングは、まぁ一般的な卵焼きとかパンとかスープとかがおかわり自由って感じで、沖縄ならではのポーク卵おにぎりとかもある。ごく一般的な朝食メニューだけど、そこは流石高級ホテルって感じのお味で普段家で食べているものとは段違いに美味しい。

 

 パッパと栄養補給を行い、席を立つと入れ替わる様に田井中さんがやってきた。昨日は夕方から自由行動だから、遊びに行ってたと思ったんだけど田井中さん曰く「昨夜は貯める日」だったらしい。何を貯めてるんだろうね。

 

 そのまま部屋に戻ってのんびりとテレビを見たりして時間を潰していると、7時過ぎくらいに田井中さんが部屋にやってきた。そろそろ仕事に向かう時間らしい。昨夜の内に買っておいたワンカップの日本酒を袋に詰めて田井中さんと一緒に部屋を出る。

 

 修験装束を纏った田井中さんはいかにも山伏という格好だ。もちろんこのまま歩けば目立つため、上から外套を羽織っている。沖縄だとかなり暑いはずなのに田井中さんは額に汗すら浮かべていない。修行の賜物って事だろうか。

 

 大きなボックスカーで迎えに来た上原さんと合流し、俺と田井中さんは後部座席へ。ボックスカーの窓は外部から見えないように窓にフィルムを張っているため、遠慮なく準備をすることが出来る。

 

 外套を脱いだ田井中さんが持ち込んだ御札などを点検しはじめたので、座席にワンカップを入れた袋を置いてポチポチとスマホでアキコさんに「仕事行ってきます。夕方までには帰れると思う」とメッセージを送る。既読はつかないからまだ寝てるみたいだ。

 

 

「緊張感ありませんねぇ。余裕の表れととらえて良いです?」

 

『昨日見た限りなら。一晩経って地獄と繋がってるとかだとちょっと不味いっすね』

 

「そんな事態が起きてたら沖縄中のユタを呼び出して総動員ですよ」

 

 

 田井中さんとあんまり笑えない軽口を交わしながら、おおよそ1時間。昨日と同じように行ける場所まで車で入ると、工事関係者のものだろう数台の車両が止められていた。

 

 

「田井中さん。こちら今回の工事を受け持ってくれた丸々組の方々で。念のために、彼らにもお祓いをしておいてもらえませんかね」

 

「ああ、承りました」

 

 

 上原さんに声をかけられた田井中さんが印を切り、この周辺に結界をかける。何度か見ていたが田井中さんの結界の腕はかなりのものだ。こっちの仕事が終わるまでこの場で待機するなら、これで問題はないだろう。

 

 あとはこのまま怨霊を除霊するのでも良いんだが、その前にやっておかないといけない事がある。除霊する際の余波が怖いのと、散らした怨霊が周辺に悪さをしないようにこの周辺を大きく覆っておかないといけないのだ。

 

 

「じゃ、とりあえず、ガマの周辺4か所に楔を打ち込んじゃいますね」

 

『手伝います?』

 

「いいえぇ。代わりに正面はお任せしますんでぇ。向こうさんももう気付いてるでしょうしねぇ」

 

 

 そう言って田井中さんは印を組みながら、大きく足を地面に打ち下ろす。この一踏みによって田井中さんの霊力による楔が打ち込まれ、こちらの方角に怨霊が逃げることは出来なくなった。

 

 そして直近の土地にそんな事をすれば、当然相手にもそれは伝わる。ガマの入り口から湧き上がる黒い霊力とでも呼ぶべきものを目にして、『メンチ』に体の主導権を渡す。

 

 数秒もせず、洞窟の入り口からパァンと乾いた音が響き渡る。その音が耳に入る前に『メンチ』は前のめりに地面に伏せる。手に持ったビニールからガシャンと音がする。ワンカップの酒が幾らか割れたかもしれん。だが、そのまま突っ立ってるわけにもいかなかったのだ。さっきの音は、多分、恐らくだが、銃声だろう。田舎の山で猟師が鹿狩りをしている時、あんな音を聞いた覚えがある。

 

 続けざまにパァンと音が響き、『メンチ』は横に転がるように移動して付近の木の陰に身を隠した。

 

 

――霊能バトルじゃないんかい

 

『霊能バトルだよ。あれ、よく見ろ』

 

 

 思わずそうツッコミを入れた俺に『メンチ』がそう言ってガマの入り口に視線を向けると、そこにはボロボロになった軍服を身に着けた骸骨が、ボロボロになった銃らしきものをこちらに向けているのが見えた。

 

 

――旧日本軍?

 

『米軍の可能性もある。祟り殺された奴らが怨霊に取り込まれるってのケッコーあるもんだぜ?』

 

――いや。米軍ならこんな単発単発じゃなくて銃弾ばら撒くだろ

 

『それもそうか』

 

 

 パァン、パァンとこちらに向けて散発的に銃を撃ってくる骸骨を眺めながら、『メンチ』とそんな事を言い合いながら近くに落ちていた石を拾いあげる。特に何の変哲もない、手に納まる程度の大きさの石だ。

 

 

――それをどうするんだ?

 

『こうする』

 

 

 俺の問いかけに『メンチ』は手に持ったビニールの中に石ころを突っ込み、そして酒で濡れた石ころをグッと握り締めた後にポイっとガマに向かって放り投げ、数瞬後。

 

 

 カツッ、ドッゴオオオオオン!

 

 

 石ころがガマの入り口にぶつかる音がすると共に、耳をつんざくような爆音が響き渡る。は? と俺が思考を止めていると、『メンチ』はまた近くの石ころを拾っては酒びたしのビニールにツッコミ、そしてぐっと握り締めた後にガマに向かってそれを放り投げると爆音が響き渡る。

 

 これを続けて3,4回繰り返し、念のために数秒ほど時間を置いた後に『メンチ』はそっと身を隠していた樹から顔を出してガマの方を覗き見る。そこには銃をこちらに向ける骸骨……なんてものはどこにも見えず、目に入るのはこれから修理する予定の慰霊碑とその補修材、そして地面に散らばった骨らしきものだけだった。

 

 

――マジでなにしたん?

 

『霊力を石ころにまぶして破裂させたんだよ』

 

――霊力って石ころをグレネードに出来るんだ……

 

 

 俺の問いかけにさも当たり前のようにそう応えて、『メンチ』は酒で濡れたビニールから無事なワンカップ瓶を取り出した。前回の時もちょっと思ってたけど、霊力って便利なのか無法なのかちょっと判断に困るパワーだな。いや、まぁ、使えるに越したことはないんだけど。田井中さんが呪文唱えたり印を組んだりしてるのを見てると、酒まぶして霊力パワーごり押しスタイルはそれで良いのかって思っちゃうんだよね。

 

 

 




山里一也(男)25歳


視聴履歴
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