ブラック労働で過労死数歩前だった俺の心の癒しだった動画アプリがマジモンの神アプリだった   作:ぱちぱち

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第37話 まさか、自分が押しかけられる立場になるとはなぁ

 霊障が起きていたガマの除霊は無事に終わった。まぁ最も強力な怨霊である亡くなったユタ達の集合体と旧日本軍の怨霊を除けばここに居る霊たちはそれほど強くはない上に、四方を固めた田井中さんも合流したのだから当たり前と言えば当たり前である。

 

 

「え、ほんとに今日で終わったんですか!!? 割と私ひとりじゃ途方に暮れるレベルだったんですがね!! やった! 待っててねいこちゃん!!!」

 

 

 とは合流した瞬間の田井中さんの言葉である。割と悲惨な現場の仕事なのにこの人めっちゃエンジョイしてる。

 

 

『いや、これは田井中さんのメンタルのが正しい。こういう現場は、どこも大なり小なりひっでーもんだからよ。メリハリつけないと一気に病んじまうのよ』

 

――なるほど。そういうもんなのか

 

 

 頭の中で『メンチ』と会話をしている間に、ルンルンと上機嫌な田井中さんはいつものニチャアっとした笑顔を浮かべながらガマの入り口前で祝詞を唱えて、懐から取り出した水筒の蓋を開けて中身を周囲に振りまき、また祝詞を唱えた。

 

 

「さ。上原さんに報告しましょうか。念のためにガマの入り口に邪気封じも張っておきましたから、工事期間中も問題ないでしょ」

 

 

 そう言って田井中さんはパンっと自分の頬を手で叩き、キリっとした表情を浮かべ直した。自分の表情が浮ついて崩れてるのには気付いていたらしい。

 

 合流した上原さんは予想外に早く終わったことに驚き、一緒にガマの様子を見に行くことになったが綺麗に整えられた結界と邪気封じに感嘆の声を漏らしながら田井中さんの手を取り、ぶんぶんと上下に振り回した。

 

 

「いやー! 素晴らしいお仕事ですね! ガマの前に立っても少しも気分が悪くならない! これなら工事に入れます!」

 

「いやははは。それほどでもないですよいやははは」

 

「五穀神社の方にご相談して良かった! また問題がありましたら是非共ご依頼したいです!」

 

「そこは、その。我々はあくまで間に合わせのヘルプで、地元の霊能者との関係改善を進めていただかないと……」

 

 

 上原さんの言葉に田井中さんが気まずそうにそう告げると、上原さんも少し気まずそうな雰囲気で目を逸らした。沖縄の霊能関係、暫くはこんな状態なのかもしれんな。

 

 

 

 

 

 ガマの除霊が終わった次の日。

 

 昨夜は仕事が終わった記念としてアキコさんと二人でドライブしたり、絶滅危惧種みたいな超低速で走る暴走族に煽られたので『メンチ』が話し合いをしたり、そのまま顔をパンパンに腫らした暴走族の先導で夜景の綺麗な公園(心霊スポット)に行ったりと二人で沖縄の夜を満喫し、さて明日は完全オフだしそのまま本当北部まで足を延ばすか、と考えていたのだが。

 

 なぜか今、俺と『メンチ』は地獄のような過食を強いられている。

 

 

「えー、ニーさん若いんだからさー。どんどん食べていいんだよー」

 

「そうそう。かめーかめー(食え食え)」

 

『いやーははは。うっぷ』

 

 

 テーブルの上には大皿に入ったチャンプルーなどの沖縄料理だけではなく、何故か山盛りにあげられたエビフライなどもどんどんどんどん俺の更に盛り付けられていく。断っても断らなくても勝手に皿が大きくなっていく悪夢のような現象に、俺をここに連れてきた田井中さんを睨みつけるも田井中さんは田井中さんで大量に積まれたエビフライの山に顔を青くしているため、文句を言うに言えなくなってしまう。

 

 

『いや、ほんともうお腹いっぱいで』

 

「そうねぇ? ないちゃーはあんまり食べないんだねぇ」

 

 

 そう言って困ったなぁという顔を浮かべるのは、この集まりの主催者である初老の女性、真境名(まじきな)さんだ。彼女は南部に居るユタの皆さんのまとめ役的な存在で、本来はあのガマの問題も彼女が対応する予定だったそうだ。

 

 まぁ、その要請はあの知事と彼女が激烈に嫌い合ってるため受けなかったんだが。あの知事は問題が起きてすぐの話し合いで県庁に赴いた彼女に開口一番「この詐欺師に報酬を支払う? 出来る訳ないでしょ!」と罵詈雑言を浴びせ、更に予算の無駄だからと無償で解決するよう要請してきたそうだ。

 

 うん、それは受けない方がいい。受けたら間違いなく図に乗ってどんどん要求してくるぞ、そう言う手合いは。俺の元上司がそんな感じだったから詳しいんだ。

 

 まぁ、そう言う訳で彼女たちの側には受けない理由があったんだが、それはそれとして代わりにわざわざ東京から呼びつけられた俺と田井中さんにお礼を言いたかったという。

 

 

「あそこには私の叔母さんも居てねぇ。本当は私が鎮めたかったけど、それをすると他の子に迷惑かけるかもしれないからねぇ。田井中さんと坂東さんには本当に。本当に、ありがとうって、お礼を言いたかったんだよ」

 

 

 そう言って俺と田井中さんに向かって真境名さんは頭をさげる。そのお礼に対し、田井中さんと『メンチ』は何も言わず、ただ真っすぐに背を伸ばしてそのお礼を受け止めた。

 

 恩を受けた側が精一杯のもてなしと礼を尽くし、恩を与えた側はそれをまっすぐ受け止める。『メンチ』が大体圧倒しちゃうからあんまり実感はないが、前の一軒家も含めて霊能関係は危険を伴う仕事だからな。恐らくこれが霊能者同士での作法みたいなものなんだろう。

 

 真境名さんが礼を尽くしそれを『メンチ』と田井中さんが受けたことで、今回の要件は終わった。これで依頼も無事終了、現地霊能者との軋轢もなし、という完ぺきな状態で沖縄での仕事を終える事が出来たし、ここからはオフタイム。あとはめくるめく南国の休日を過ごすだけ――になるはずだった。

 

 なるはずだったんだけどね。

 

 

 

 

「師匠、お荷物お持ちします! あ、奥様の分もあたしが持ちますんで!」

 

「あら。あらあらあら奥様だなんて。おほほ。メンチくん、奥様ですって」

 

『うん……うん、そうだね。あんまり無理しちゃ駄目だよ?』

 

「いやははは。大変ですねぇ、メンチくん」

 

 

 沖縄から帰る飛行機への道すがら、人一倍元気が有り余っている声音で、小柄な女の子が俺とアキコさんの荷物を一緒に持とうとして、潰れかけてるのを助ける。

 

 押しかけ弟子なんてアニメや映画の中だけだと思ってたけども。まさか、自分が押しかけられる立場になるとはなぁ。

 

 

 




山里一也(男)25歳


視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生』(料金:組織)

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