最安10円レンタルチート ブラック労働で過労死数歩前だった俺の心の癒しだった動画アプリがマジモンの神アプリだった   作:ぱちぱち

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第42話 常時釘刺しとかないと

「んー」

「ここはこー言う意味でー」

 

 

 VVVの事務所リビングには大きなソファとテーブルが置かれている。スタッフは仕事の休憩などでここに座ったり寝転がったりご飯を食べたりと毎日誰かしらが利用しているのだが、今日は珍しい組み合わせがソファを占有している。

 

 我がVVVが誇る清純派?Vタレの『雛まつり』ことひなちゃんと最近VVVのスタッフとして働き始めた『マジカル☆ミキティー』ことみきちゃんだ。

 

 この二人、そしてここには居ないが『さやか』を含めて、実は同い年である。

 

 

「あああああもう! 英語意味わっかんない!」

 

「あははは。慣れないと難しいよねー」

 

 

 どうやら現役女子高生であるひなちゃんがみきちゃんに勉強を教えてもらっているらしい。高校を中退しているみきちゃんが現役高校生に勉強を教えている、というのは結構おかしくみえるが、みきちゃんが高校を辞めた理由は学校の人間関係が合わなかった為で勉強に関してはかなり出来る方だったらしい。

 

 実際に自力で高卒認定試験に受かっているからその自己申告は正しいのだろう。それに大学受験はする予定で勉学は続けているそうだから同学年のひなちゃんを教えているのも実はおかしくはないのだ。

 

 

「でも毎日学校行ってるのに学校行ってないみきちゃんに教わるのはー! プライドとか色々な問題がー!」

 

「学校で嫌々やるより自分のペースで勉強するほうが楽しいからねー。あたし、学校辞める前よりも今の方が勉強してるさー」

 

 

 英語の教科書を放り出し、頭を掻きむしって天を仰ぐひなちゃんに、みきちゃんがそう慰めの言葉をかける。モチベーションってやっぱり大きいからなぁ。人間、どうしたって楽な方の道を選んじゃうもんだから、人生の選択肢がある年齢でモチベーションを維持しながら努力するってのは並大抵の事じゃない。

 

 しかもみきちゃんは本業である霊能者としての修行をしながら勉強して、更にVVVのスタッフとして働いても居るんだから、その辺をオブラートに包んだ説明を受けてるひなちゃんとしては、結構みきちゃんを意識してるみたいだ。嫌ってるとかじゃなくてライバル視というかね。

 

 まぁ、それはともかくとして同じ年代の子として友人関係になってくれればうれしい。Vタレはどうしても身バレを警戒して友人関係にも制限が出てきちゃうから、事情を知っている同年代の子が友人に居るというのは大きいのだ。

 

 アキコさんもその辺を期待してるのかみきちゃんのシフトはひなちゃんの配信と被っていることが多くなっていて、当然それは事務所内配信で視聴者側にも伝わるわけだからひなちゃんとみきちゃんは仲が良い、と勝手に外野も解釈してくれたりする。『さやか』? あいつはほら。怪獣王って扱いだから(目そらし)

 

 まぁ、ソファのある共有スペースはスタッフやVタレのプライベート部分なのでマイクがないから、ただ無音の映像を見るだけになっちゃうんだけどな。ただノート開いて英語の教科書(映像フィルタリング済)を眺めながら話し合う二人なんて一緒に勉強している以外の何物でもないだろうから、どう見ても仲のいい友達同士で勉強会にしか見えない。

 

 『VVV事務所丸ごとVタレ計画』はこういった配信外の姿を見せてくれるという事で視聴者からもかなり好評で、VVVは他の事務所との差別化やVタレを大事にするというブランドイメージを持つことに成功したと言っても良いかもしれない。この結果にアキコさんも鼻高々で『メンチ』にご褒美をねだり、その事を配信で口にしてまた視聴者の脳を破壊したりもしたがまぁ結果が良かったしコラテラルダメージって奴だな(鬼畜クマ成分)

 

 

 

 

 さて、VVVという一応の本業は非常に順調だ。アキコさん+九十九あきらのVVV公式チャンネルはついに登録者50万人を突破したし、ひなちゃんや蝶子ちゃんといった1期生組も10万人という大台を無事に飛び越えた。2期生は少し特殊なため一概に数字は言いづらいが、VVVの事務所内配信は常に1万人くらいの接続者がいる驚異の常設配信となっている。

 

 そして何の間違いか、急速に成長しているのが『赤神さやか』のチャンネルだ。1期生二人にそろそろ追いつくかという位に伸びているから、本当にアイツ配信業向いてたんだろうな。逆にそれ以外の仕事が……あ、魔女は仕事に含まれるのか。一応。アニメ作中だと国の決戦兵器みたいな位置づけだったけども。一回も勝てない決戦兵器にはあの世界の日本も随分やきもきしただろうな。

 

 ともかく。本業は順調に推移している。そろそろ建設中のマンションの施工も終了するし、VVVの経営は軌道に乗ったと見ていいだろう。

 

 

『仕事が順調というのは大変結構な事だ。そうだろう?』

 

「はい。リリー様の仰る通りで」

 

『そうか。君もそう思ってくれるか。だが、どうやら君の仕事には少し先の未来で影が落ちるようだなぁ。ああ、何がとは言わんがアドバイスはしてあげよう。私と君の仲じゃないか』

 

「おぉ……それでは、“占い”をしていただけると!」

 

『もちろんだとも。君の貢献はかすがを通して私にも伝わっている。私はね、働きには報いるつもりで生きているんだ』

 

 

 まぁ、そんな事とは全く無関係にやる事は増えているんだけどな。例えば『雨宮かすが』と『リリーベル』が結託して運営してるこの占いサロンとか。

 

 都内の高級クラブを買収して改装したこの占いの館は、完全紹介制で運営している。顧客は全て政財界の大物であり、今、目の前で跪いて『リリーベル』を見上げるおっさんもどこぞの大企業の重役だという。

 

 そんな彼に跪かれながら、『リリーベル』はそれがさも当然とばかりの態度で傍らに立っている護衛兼執事役の『セシル』に指示を出す。時給2万円の餌に食いついた『セシル』は恭しく水晶玉を彼女の前に持ってくる。

 

 

『さぁ、この水晶玉を持ちなさい』

 

「はい。リリー様の、おっしゃる通りに」

 

 

 『セシル』から手渡された水晶玉を、『リリーベル』の胸元まで震える手で持ち上げる。もちろん『リリーベル』の占いが終わるまでその体勢を維持し続けなければいけない。ここで体勢を崩せば二度と占いを受けることはできない。何故ならばこれは忠誠の証でもあるからだ。

 

 おおよそ数分ほどの占いの後、『リリーベル』は傍らのテーブルに置かれている紙に万年筆でつらつらと文章を書き始める。もちろん、この間も水晶玉を保持し続けなければいけない。水晶玉はそれほど重くないとはいえ、物を掲げる体勢というのは存外辛いものだ。それを年齢がいった人物にやらせる、その行為自体にこそ意味がある。

 

 

『もう良いぞ。読みなさい』

 

「ハァー! ハァー! あ、ありがとうぅ! ございます!」

 

 

 『リリーベル』の声掛けに汗だくになった男がそう返答し、『セシル』が水晶玉を彼から受け取って空いた両手に彼女の直筆のメモが乗せられた。忠誠を示したならば、次は対価を。それが“組織運営”には欠かせないものなのだ。

 

 

「……! こ、これは」

 

『気を付けなさい。身内のユダほど見つけにくい存在は居ないのだから』

 

「は、はいぃ! リリー様! ありがとうございますぅ!」

 

『今後も励みなさい。仕事をする人間を私は嫌わない』

 

 

 男はそう言って『リリーベル』の靴にキスをして、改めて忠誠を誓い、頭を下げたまま後ずさり彼女の居室から出ていく。

 

 その姿を見送った後。優秀な執事という仮面を被って全てを眺めていた『セシル』が、仮面を脱いで素の表情で口を開いた。

 

 

『なんでそう、悪のカリスマっぽいムーブやってるんだ? 厨二病になる年齢じゃないだろお前』

 

『こういうのは雰囲気にどんだけ酔えるかなんだよ! あんまり軽い感じだと軽く取られてしまうんだ』

 

――悪の秘密結社は作る気無いからな?

 

『私だってないわい!』

 

 

 俺と『セシル』からの至極真っ当な物言いに、『リリーベル』は心外だとばかりにそう叫んで返した。いやぁ、お前と『かすが』は調子に乗ると『さやか』とは別ベクトルでなんかやらかすからな。常時釘刺しとかないと。

 

 




山里一也(男)25歳


視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生』(料金:組織)

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