ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→   作:ぱちぱち

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第58話 『雨宮かすが』を紹介して欲しい、ですか?

 研修生こと3期生も順調なスタートをし、順風満帆とも言えるVVV。業務提携した瞬間に何故か大炎上したホログライブさんの余波を浴びるかと思っていたんだが、とある存在が防壁となってホログライブさんの炎上はそれほどVVVには飛び火しなかった。それはまぁ、良いことなんだけども。

 

 

「『雨宮かすが』を紹介して欲しい、ですか?」

 

「はい……関係を持ってすぐに炎上してしまい、ご迷惑をおかけしているのは重々承知しているのですが。このままではにっちもさっちもいかない状況で」

 

 

 以前、機材のセッティングで知り合ったホログライブのスタッフさんから連絡があり、VVVの事務所で待つ事1時間。高価なお菓子を持ってやってきたホログライブを運営している株式会社カダーの専務さんはそう言って、額の汗をハンカチで拭う。冷房は効いているはずなんだけどなぁ。

 

 

『そりゃあ自分ところの不始末を他人に拭わせようとしてんだろ? まともな神経してりゃあ気まず過ぎて額に汗くらいかくさね』

 

――人形の身体なお前が言うとすげぇ皮肉にきこえる。まぁ、そうなんだろうが

 

 

 自分の作品内で人間としての身体を失っている『残夢』の言葉に頭の中で返答して、目の前で顔中に恐縮! と大きく書かれてそうな専務さんを見る。

 

 

「このタイミングで『雨宮氏』にとなると、『Amamiya NEWS』ですか?」

 

「お分かりになりますか。今のネット上ではもう、ある事ない事情報があふれかえっています。この状況を打破するには正しい一次情報を扱う、信頼できるプラットフォームで発信するしか……」

 

「なるほど」

 

 

 専務さんの返答に頷きで返す。確かに、この状況を打破するとしたらそういった手法しかないだろう。これが一昔前なら地上波テレビとかで記者会見を放送するとかいう手もあったんだが、今の情報化社会ではテレビですら疑いを持って見られている。ネットリテラシーを少しでも持っている人間ならそれは本当なのか、ソースはどこからなのかと考えるのはむしろ当然と言える。

 

 そして、現状のホログライブ、というよりは運営のカダーさんがどういう内容の発信をしてもそれは疑いの目で見られることは間違いない。何故ならば、現状のホログライブの炎上内容が酷すぎるからだ。

 

 発端はまぁ、当然というかうちの研修生たちがVVVに来ることになった詐欺事件だ。この詐欺事件だが警察の介入も入り、事件の全貌に関しては凡そ明らかにはなっている。この内容が酷かった。

 

 まず、懸念されていた内部犯の可能性はかなり薄い。というのもカダー社で流出していただろうというされている前回のオーディション参加者の情報はカダー社内のサーバに保存されているため、社内のPCにアクセスできる人間なら誰でも見る事が出来るものだった。だが、このファイルを閲覧したりすると履歴が残るようになっていて、その履歴に残っている閲覧者たちは警察の捜査により全員潔白だと証明されているのだ。

 

 被害者である研修生たちも当然捜査には協力しており、詐欺を働いた人物の似顔絵やカダー社の社員たちにその人物が居るか確認したのだが5人ともカダー社の社員に件の詐欺師が居ないと証言しているため、少なくとも実行犯はカダー社には居ない事は分かっている。これらの事実をカダー社は警察の捜査もあるため限定的になっているが、かなり正確に発信している。

 

 だが、現状のホログライブさんの周辺、とりわけネットの声はそれらを信じていなかった。タイミングの悪い事にカダー社は最近、自社の経営方針を批判するVタレを喧嘩別れのような形で引退させており、その件でVタレのファンから批判を受けていた矢先にこの大チョンボとも言える失態が明るみに出てしまったのだ。運営に対して失望したファンは強烈なアンチとなり、運営とホログライブ全体を攻撃している。

 

 だからこそこのタイミングでカダー社は『Amamiya NEWS』を頼ろうとしている。

 

 『Amamiya NEWS』は以前、ひなちゃんのストーカー事件の際、『かすが』が絶対に必要になるからとネット上に作成した情報発信のためのプラットフォームだ。ニュース記事の作成は『あきら』が作ったAIがインターネット上から集めてきた情報を纏めあげ、情報ソースの有無や多寡によって信頼度をA~F評価で判別し発信するだけのサイトだが、記者の視点を通さず物事の事実だけを扱うというスタイルが受けたのかSNSなどの情報ソースとしてよく活用されるようになっている。

 

 カダー社さんとしてはこの『Amamiya NEWS』で自社の発信を確度の高い情報だと取り扱ってほしいのだろう。A評価は判定基準が少し特殊なため省くとして、B評価は複数のメディアや情報媒体が同じことを発している場合に定義されるまず間違いないという評価のため、今回で言えばB評価。もしくはせめてC評価くらいに評価されれば、少なくともカダー社さんが発信している情報は確実性があると見られるだろう。

 

 まぁ、そんなの関係ないって連中がアンチという人種には多いんだが、信ぴょう性が低い煩いだけのアンチなんて大した影響力はない。炎上の拡大を阻止するという意味では、ここで『Amamiya NEWS』に頼るのは悪くないとも言える。

 

 ただ。

 

 

「紹介するだけであるなら構いませんが、『雨宮氏』が御社の主張をどう判断するかまでは確約できませんよ? 以前、あの方が配信で何をやったかはご存じでしょう」

 

「ええ、それは。もちろんです。私もあの公開処刑を拝見した事がありますので」

 

 

 公開処刑は言い得て妙だな。あの院長先生が神奈川で不審死()したのはあれが原因であることは間違いないわけだし。というかアレを見たことがあってその上で『かすが』を紹介してくれってのは大分根性あるな、カダー社さん。それとも切羽詰まってるのか。

 

 

『繋いでくれて良いぞ、一也。少し興味がわいてきた』

 

――うちの提携会社なんで穏便にね? 穏便に

 

『それは先方次第だなぁ。あきら、少々手伝ってほしい』

 

『かしこまり!』

 

 

 カダー社の専務さんとのやり取りを見ていた『かすが』が、非常に楽しそうな声音でそう話しかけてくる。どういう方面の興味かでその後の展開が大きく変わってしまうから一応、その。手心を……と伝えると『かすが』は平たんな声でそう返した。

 

 『あきら』も巻き添えにするならそこまで直接的な事。それこそカダー社さんに乗り込んで社長を実況配信で糾弾とかはしないはずだ。ただ、場合によっては大荒れどころか台風みたいに全部吹き飛ばす可能性もある。VVVを巻き込まないようにだけ、しっかり注意してくれよ?

 

 

 




山里一也(男)25歳


視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生』(料金:組織)
『魂羽織』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『至高の人形師』(料金:人形作成・開発費)

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