最安10円レンタルチート ブラック労働で過労死数歩前だった俺の心の癒しだった動画アプリがマジモンの神アプリだった   作:ぱちぱち

59 / 59
第59話 “生配信”

 『雨宮かすが』が株式会社カダー社で配信を行うという情報はあっという間に広がった。これはネット界隈においての『雨宮かすが』という名前の注目度の高さを示している。『Amamiya NEWS』の管理人というのもあるが、前回起こした公開処刑動画は数か月たった今も再生されている一大コンテンツであり、その動画を撮影した『雨宮かすが』はある種のダークヒーロー的な立ち位置で認知されているからだ。

 

 

『別に犯罪を起こした訳ではないんだがな。ただ、私は自分が上手い事やっていると陰で企む奴ばらを太陽の下に引きずり出して指差して笑うのが趣味なだけで』

 

――ダークヒーローどころかたいがい物騒な愉快犯じゃないか

 

『犯はいらないだろう? 御法の中で健全に趣味を謳歌しているんだ』

 

 

 そんな『雨宮かすが』が公開処刑以降初めて自身のアカウントで動画配信を行い、その画面には株式会社カダーの看板が写し出されている。この事実にホログライブを応援しているファンは悲鳴を、アンチは喝采を上げた。酷い事が起こると予期したからだ。

 

 酷い事が起きるというその点については確かにその通りではあるが、恐らくは現在視聴している結果にはならないだろうな。一連のやり取りがどのような結末に至るかを知っている身としては全てを見終わった後の視聴者の反応はどうなるか。まぁお楽しみは後にとっておこう。

 

 

 

 

 

『本日はお招きいただきありがとうございます。『Amamiya NEWS』の管理をしております雨宮かすがと申します』

 

「雨宮社長、本日はお越しいただきありがとうございます。カダーの代表を務めております、黒井と申します」

 

「今日も元気にV・V・V! VVV代表のオーイシアキコです。今日は内容が内容ですので進行役を務めさせていただきます。黒井社長、かすがちゃん。よろしくお願いします」

 

 

 カダー社の事務所内に入った後、受付さんの案内を受けて応接室に行くと、その場にはカダー社の社長である黒井さんとアキコさんが待機していた。アキコさんがここに居る理由は本人が言った通り、この話し合い、というよりはカダー社側の主張を発信するこの場で『かすが』がつい持ち前の趣味を持ち出して時間がかかる可能性を抑止するためである。

 

 あとは詐欺被害者が現状どうなっているかの話しも当然されるため、その際にVVVで元気にやってますと一言伝える係でもある。実はこの場に至るまでVVV研修生の5人が詐欺の被害にあった当事者であるという情報は表に出ていなかったからだ。

 

 アキコさんとしては余り変な注目を集めるというのは良くないと思っていたみたいだが、このタイミングで発表する方が研修生たちの追い風にもなるはず、と説得。じゃあ被害者だったけれども今は元気にやっているという報告だけ行う、という事で了承してもらった。

 

 

『さて、黒井さんの話を伺う前にまずは視聴者の皆さんに前提を伝えておきましょう。この場に立つ前に、Amamiya NEWS側ではカダー社側と守秘義務契約を結んだうえで『九十九あきら』博士に力を借り、カダー社側の共用ファイルおよび社内用ローカルネットワークの調査を行っています。誰がいつどのPCでどのタイミングで情報を閲覧したかまで把握しておりますので、予めその点はご了承ください。黒井社長、他社の人間に機密情報を見せるというのは難しいご決断でしょう。ご英断、感謝いたします』

 

「いえ、はい。確かに、思い切った判断だと思いますが、弊社の状況はそんな思い切った決断でもなんでもしなければ切り抜けられない。そこまで至っているというのがカダー社一同の想いでございます。そして、この場を借りて現状を報告する前に、皆様にお伝えしたい事がございます」

 

 

 黒井社長はそこまで口にした後、一度言葉を切り。

 

 

「今回、カダー社は個人情報の取り扱いについて、大きな過ちを犯しました。わが社の管理体制の不備により、詐欺にあった被害者が出てしまった。これは紛れもない事実であり、被害者の方々への補償と償いは全力で行わせていただく所存です。また、何故このような事が起きてしまったのか。その原因について九十九あきら博士の力を借りて判明した事実を、この場にて報告させていただきます」

 

『調査結果は私も確認しております。もしも発言に過ちがあれば私が訂正をしますし、その過ちがどういう意図であったのかも含めて尋ねるかもしれません。御社にとって不都合な事実でも出来る限り感情を排して、事実ベースでの報告をお願いします』

 

「かすがちゃん、行き過ぎたら止めるからね?」

 

 

 悪魔のしっぽがちらちらと見える『かすが』の発言に黒井社長が額の汗をハンカチで拭い、やんわりとアキコさんが釘を刺した。まぁ、前歴のある『かすが』にここまで言われたら都合の悪い事実は口にしない、なんて事は出来ないだろう。

 

 さて、ここからは単に起きた事を口にするだけとなる。まず結論から言うと、『あきら』がカダー社のネットワークを調査した際に犯人は特定できている。つまり、この場はある種の茶番、というよりはカダー社のための釈明会見のような場になる。

 

 カダー社社長の黒井さんの口から報告された情報は、まず情報漏洩の事実とそれがどのような手口で行われたかについてだ。カダー社は昨年、PCの新調や機材の入れ替えを行っていたのだがその際にどうも新調したPCにバックドア。外部からの侵入口となるプログラムが予め作られていたという。

 

 当然カダー社のような大手企業が機材購入を打診するんだから相手も大手企業となるわけで、この事実を突きつけられた相手側も寝耳に水だったらしく大慌てで事実確認を調査し、当時その搬入を手配した社員に事情を尋ねたところある事実が発覚する。

 

 それは、その当時搬入を手配していた社員とやり取りをしていたカダー社の社員から搬入の1月前に、別の機材搬入との兼ね合いで搬入作業がずれ込みそうだから、機材は搬入日の前の日に一旦カダー社の倉庫に機材を仮置きしておいてほしいと頼まれたという事だった。

 

 これがカダー社側が把握している情報と大きく食い違っていた。機材が搬入される前に仮置きしていたという話を上層部はこの時初めて聞いたのだ。そして、当該の社員にその件を尋ねようとしたところその社員は昨年にカダー社を退職しており、またこの社員の顔写真を見ても詐欺被害者たちは誰も身に覚えがなかったことと詐欺事件当時にはすでに退職していたため捜査の手が及んでいなかった人物でもある。

 

 

『つまり、詐欺事件前には退職していたとはいえ。状況証拠的に言えば内部犯である可能性が高い、という事ですね?』

 

「その通りです。詐欺事件が起きた時点でかの職員が退職していたのは紛れもない事実ですが、わが社の社員だった人物がこの事件を引き起こした可能性は非常に高いものと見ています」

 

『その元従業員の方と交わしていた情報取り扱いについての取り決めなどはございましたか?』

 

「もちろんです。社内で手に入れた情報は決して社外に出さない。退職後は在職中に得た情報を消去し、取り扱わないと契約時に取り決めておりますし、個人情報取扱に関する契約も彼とは交わしておりました」

 

「VVVも似たような事をしてるから、恐らくこれがVタレ事務所の平均的な対応だと思うわ」

 

『なるほど、なるほど』

 

 

 元従業員でも内部に足がかりをつくって情報漏えいを行っていたなら内部犯という扱いになる。この場合、カダー社さんとして大事な点は元従業員とどのような契約を交わしていたか、情報漏えいに対してどのような対策を行い、失敗したかという点だ。情報漏えいは起きたという結果は変わらない。では、それがなぜ起きたのか。どういう責任が発生するかという点を誤魔化してはいけない。

 

 まぁ、今回に関して言えば明らかにこの元従業員は狙ってヤってる奴だ。『あきら』曰くかなり巧妙に仕組まれたバックドアだったらしいから、下手したら警察の手が入っても発覚しなかった可能性があったらしい。この事実を踏まえた上でカダー社側の言い分を聞くに、割とこれカダー社さんからしたらどうしようもなかった案件じゃないかという気になってしまう。採用の段階で元従業員を弾いてなかったらいつか絶対に起きてた問題だよな、これ。

 

 多分、いまこの話を聞いてる視聴者も同じような反応返してるんじゃないかな。採用の段階でこんな反社みたいな奴弾いとけよって声は一定数居るだろうが、この元従業員の社内の評価ってかなり良くて真面目な人物だったって評価なんだよね。つまり、外面はかなり良いタイプって事だ。彼が犯人らしいと発覚した当時、カダー社内の人は信じられないって感じの反応だったし。

 

 まぁ、彼がどのような考えを持って行動していたのかは、直接本人に聞いた方が速いだろう。

 

 

『カダー社側の主張と証拠はこれで全て出そろいましたね。黒井社長、ご協力ありがとうございます』

 

「こちらこそ釈明の場を作っていただき、ありがとうございました」

 

『いえいえ。とはいえ、これではまだ片手落ち。こういった物はやはり当人の意見を聞かないといけませんね。これを見ているだろう視聴者の皆さんもそう思っているでしょう』

 

 

 そう『かすが』が口にした段階で“収録した”動画は終わり、画面が切り替わる。ごく普通のアパートのドア前のような場所に、屋外用の立体投射機で3Dのガワを羽織った『雨宮かすが』とデフォルメしたクマが画面の中に現れた。

 

 

『それではご本人にお伺いしてみましょうか』

 

 

 そう言って満面の笑みを浮かべた『かすが』の言葉に、ドアの向こうから明らかに何かを倒したような大きな音が響く。

 

 ここからは、動画ではない。

 

“生配信”だ。

 

 

 




山里一也(男)25歳


視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生』(料金:組織)
『魂羽織』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『至高の人形師』(料金:人形作成・開発費)

更新の励みになるのでお気に入り・評価よろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生してイージーモード!(作者:ハニラビ)(オリジナル現代/日常)

普通に生きて普通に死んだ男がチートを得て現代日本にTS転生したお話。作者はバカだからよぉ、難しい話は無しにしねーか?(ただのバカ)


総合評価:3360/評価:8.62/連載:15話/更新日時:2026年05月24日(日) 18:02 小説情報

うわぁぁ!!! エルフだ!!??!(作者:葛城)(オリジナルファンタジー/日常)

例によって例のごとく、神様のミスで異世界TS転生しただけでなくエルフになった人の話▼なお、異世界ではエルフはお伽噺の住人扱いされるぐらいで、本当にエルフっていたんだって超驚かれる存在である▼※セルフレイティングは、いちおう念のため


総合評価:2265/評価:8.45/連載:8話/更新日時:2026年06月19日(金) 19:03 小説情報

ディストピアのネット友達が優秀すぎる(作者:名無しのペロリスト)(オリジナルSF/文芸)

ディストピア世界に転生した、元オタクOLは絶望した。▼飯がクソ不味いだけでなく、前世にあったサブカルチャーが絶滅していたのだ。▼それに都市に貢献しない者を生かしておくほど、アバシリシティは甘くない。▼だからと言って過酷な労働はしたくはないので、せめて身の回りの環境を改善するために仮想空間で色々していると、何故か上級市民のお嬢様がログインしてきて──。


総合評価:3627/評価:8.57/完結:28話/更新日時:2026年06月07日(日) 00:00 小説情報

夭折した天才漫画家だけど、転生したらTS美少女だったから勝手に続き描く(作者:匿名TS美少女)(オリジナル現代/日常)

夭折した天才漫画家が転生して続きを書く話。


総合評価:2974/評価:7.51/未完:17話/更新日時:2026年03月03日(火) 12:04 小説情報

ロマン職は異世界から帰りたい(作者:庶民ザウルス三世)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

これが絶対浪漫の力だ!▼人は夢を見る。▼そして、効率よりも自分の“好き”を信じて、浪漫を追いかける者たちがいる。▼ソロ専、人見知り。▼だけど、クリティカルが決まった時の一撃だけは誰よりも重い。▼そんな趣味全開のロマン職キャラを愛した男は、課金帰りの事故をきっかけに、ゲームで使っていた女性キャラ――ラシア・ラ・シーラとして異世界で目を覚ます。▼しかも、レベルも…


総合評価:5726/評価:8.58/連載:120話/更新日時:2026年06月24日(水) 07:12 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>