最安10円レンタルチート ブラック労働で過労死数歩前だった俺の心の癒しだった動画アプリがマジモンの神アプリだった 作:ぱちぱち
買い物に出た先で半グレ?の抗争に巻き込まれるとかいうウルトラCを起こした俺は、もちろん善良なる一市民として警察に通報した。事件が起きたら通報。証拠も添えて通報。これ当たり前だよね。
「はぁ。なるほど。映像を見ましたが。はぁ。ええと、山里さんはなにか格闘技などは?」
「鍛えていますが特に学んでいません。あ、強いて言えば勤務先が契約してる警備会社の人と一緒にトレーニングをしたことがあるくらいですね」
「はぁ……マジか……」
はぁはぁいうのが口癖らしい若い警官に現場検証というか、どういった事が起きたかを説明すると若干怪訝そうな表情を浮かべて、若い警官はうんうん唸って調書とかいうものに何事かを書き始めた。俺の証言で何か迷う事があったんだろうか。単に向かってきた奴らをかるーくノシて転がしただけなんだが。
「いや。格闘技未経験で武器持った複数人の半グレをぶちのめすってヤンキー漫画の主人公とかそういうのくらいですからね。ちょっとカジっただけじゃなくてちゃんと経験した人間と未経験者って本当にすっごい差があるんで。証言だけ聞いたらフカシこいてんじゃねーのって話なんです」
「なるほど」
「でも映像見たけど嘘つかれてないですし、話を盛ってる感じもないし。だから、これ、どう反応すれば良いのかなって」
どう反応もなにも、結局勇気を出して飛びかかってきた半グレ集団を全員殴り倒しちゃったわけだからその映像という確かな証拠を使ってそれで報告して欲しいんだが。前回のクマパンチでどこまでがやりすぎかについても詳しく調べたから絶対に過剰防衛は取られない加減でぶちのめしたしね。
とはいえ流石にそのまま帰るという事は出来ず、一先ず署に来てくれということで連行され、折角だから取調室でかつ丼を食べることになった。これ、出前の料金は自分で払わないといけないんだな。一つ勉強になった。
「一也くん、何してるのよ……」
「いやぁ。あれ、俺が悪いんですかね?」
それでも半日近く拘束されちゃったので当然職場には連絡を入れたしアキコさんからは呆れたような声でそう言われちゃったんだけどね。流石にあの内容で巻き込まれたのは避けようがないというかね?
まぁ、レンタカーの方はちゃんとこちらの負担なしで保険がおりそうだし、警察の立ち合いの元で車体に傷つけた半グレ側に請求するらしいからこちら側からはもう気になる事も残ってない……あ、そういえばあのボコボコにされた子無事かな。警察官も話題にしなかったし。まぁ死亡するような大事なら半日で帰れたとは思えないから大丈夫なんだろう。多分。
なんて思っていた3日後。
「うちの後輩を助けていただき、ありがとうございました」
「ありがとうございました!」
『かすが』からちょっとこちらに来て欲しいと言われたため雨宮セキュリティーが所有しているビルの一つに赴くと、何度か見たことがある雨宮セキュリティーの社員と包帯でぐるぐる巻きになった少年が頭を下げて礼を言ってきた。
少年の方にも見覚えがある。彼は確か、この間ボコボコにされていた少年だ。かなり手ひどくやられていたらしく痛々しい姿ではあるが、入院するほどではなかったらしい。安否が気になっていたから、少し安心する。
話を聞くと、この後輩君は雨宮セキュリティーの社員、的場くんという子らしいんだが、彼の高校時代の後輩で的場くんが高校時代に所属していたチームの不良チームの一員であるらしい。不良チームと言っても最近よく耳にする闇バイトを差配してるような犯罪集団とも違い、地元で仲間とつるんで他所の不良と喧嘩したりとか、せいぜいその程度の事をやっているチームらしい。
それにしてはこの間の喧嘩は、ただの喧嘩を超えるような凶悪さだった気がするけどねぇ。
「その件で、実は雨宮社長にご相談したんですが……」
『私だけでは手が足りなくなるかもしれなくてね。“顔の広い”一也に来てもらったというわけだ。この前、私のお楽しみを潰した件のお礼でもあるぞ?』
言葉を濁した的場くんの代わりに、応接室に入ってきた『かすが』が彼の言葉を引き継いだ。その顔を見た瞬間、背筋に冷や汗が走る。『かすが』の表情がにやけている。つまり、すでに獲物を見定めた後のニヤニヤモードに突入しているのだ。
「ですが、社長。古巣の問題を、部外者の山里さんに任せるのは」
『だからお前が辞めるのを認めろと? 認めんよ。私はお前に期待しているし、有能な部下だと思っている。だが、お前の言う状況が確かなら有能止まりのお前ではもうどうにもならん状況だ。分かるな?』
有無を言わさぬ『かすが』の物言いに、的場くんが何か言いたそうにしながらも押し黙る。『かすが』の言葉は高圧的ではあるが、同時に的場くんを思いやる気持ちも感じられる言葉だった。それが彼にも分かったのだろう。
だが、その思いやりを持てるならいきなり明らかな厄介ごとに俺を巻き込むな、と言いたいんだが。聞かないだろうな、こいつ。そう考えていると、『かすが』が分かってるじゃないか、と言わんばかりの笑顔を浮かべてこちらを見てくる。張り飛ばしたい、その笑顔。
『一也にも伝わるよう端的に状況を伝えよう。うちの社員の的場の古巣が、他所の不良チームにちょっかいをかけられている。それだけなら子供同士のじゃれ合いで済ませるんだが、どうも相手方は不良の枠組みを超えたギャングに近い連中らしくてな。この近隣でクスリや売春、果てには押し込み強盗までやらかしているそうだ』
「警察なにやってんだよ」
『相手の大半が外国人だというのが問題だな。日本は外国人相手だと不起訴率が高くなる。捕まっても23日間ニホンゴワカラナイと言いはれば無罪になるんだから警察からしても相手したくないんだろ』
それで良いのか日本。いや、良くはないんだろうが、一般市民からすればどうしようもない話である。なんだよニホンゴワカラナイって。分かってるじゃん。それが通るならもうなんでもありじゃないか。ブラック企業からは逃げられるが流石に社会全体がおかしくなったら逃げ道なんて存在しない。逃げられない災害みたいなもんじゃないか。
「……それで。その話が。俺がここに居る理由とどうつながるんだ?」
「実はな。ほら、私が雨宮セキュリティーを立ち上げた時に幾つかこの辺りのヤクザを潰したろう。ギャング共がこの辺でのさばっているのはその辺のヤクザが消えた空白地帯だからというのもあって、私としては非常に負い目があるわけだ。お前に貸した借りを一つ使ってもいいくらいに。なぁ、的場」
俺の言葉に『かすが』がそう応えると、話を向けられた的場くんが震度7くらいの強さでガタガタと震え始めた。あ。そうかこの子、あの時に泣いたり笑ったりできなくなったうちの一人か。合唱。
そんな的場くんの様子に後輩くんが目をしろくろさせているのを尻目に、『かすが』がにやにや笑いを辞めて真面目な顔で話しかけてくる。
『裏社会というものは潰せばさっぱり綺麗になる、なんてものじゃない。どんな時代、どんな国だってそれは変わらない。だから、そういった連中が出てくるのは分かっていた。分かっていたが、今回の連中は流石に目に余るんでな。パトロンを動かして状況を動かそうとしているが、それには少し時間がかかる。だから、力を。人を貸してほしい』
そこで一言言葉を切って、『かすが』はいつもの笑顔を浮かべる。
『お前のバカみたいに広い“コネ”を使って、人を都合して欲しい。この近隣の、ギャング共に圧し潰されそうになっている悪どもを束ねるカリスマを持ち、頭が回り、そしてなによりも“暴”の扱いに長けている人物をだ』
――お前にとってもいい勉強になるはずだ。お前、思い切りは良いくせにどっか甘っちょろいからな。暴力の使い方くらい学んどけ。
そう最後に、俺にだけ聞こえるように言って、『かすが』は小さく頭を下げた。力を貸すのはやぶさかじゃないんだが、最後が余計なお世話過ぎる。暴力の使い方なんて一般日本人には必要ないんだけどな???
さやか「ガタッ」
他一同「座っとけ」
山里一也(男)26歳
視聴履歴
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