ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→   作:ぱちぱち

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第82話 お前は今、女に飢えた野獣ってわけだ!

 マックス氏が語る“九十九あきらはアメリカの宝”計画は未然に防がれる事となる。まぁ、実際にそれを目論んでたのはマックス氏だけで講演会なんかはちゃんとスタッフの方たちが準備していたため、1月のうちには開く事ができるらしい。

 

 ただ、呼ばれてるゲストが結構凄い方ばかりらしいから驚かないでくださいね、と念を押された事だけはちょっと気がかりだ。ちょっとじゃないな、だいぶ気がかりだ。世界有数のマックス氏が主宰する講演会のゲストだからな。どんなスターが来てもおかしくはないだろう。

 

 まぁ、実際に講演するのは『あきら』だしアイツは相手が誰だろうがいつもと変わらないスタイルで話すだろうから、その点はあんまり心配してないんだけどね。いや、嘘だ。失礼な事をしでかしたらどうしよう。

 

 

『心配性だなぁ一也くんはぁ! 文明崩壊前はちゃんと学会で可愛がられてたんだよ?』

 

「気まぐれな猫みたいに扱われてたの間違いじゃないよな?」

 

『たぶんそんなことないにゃー!』

 

「それ、お前の原作で聞いた全然そんなことない場面の台詞だろ」

 

『猫耳が可愛いアネットちゃんだね! 一也くん、よく覚えてるぅ!』

 

 

 割と本気で尋ねた俺に、『あきら』ははぐらかすようにそう言った。なんかどっかで聞いた覚えがある台詞だと思ったら『九十九あきらは終末世界を諦めない』で『あきら』が初めてであった猫耳の獣人が『あきら』の質問をはぐらかそうとした時に言った言葉だ。

 

 つまりこいつは今、俺をはぐらかそうとしているわけである。

 

 

「ハリセンが手元にあればなぁ。デコピンで良いか」

 

『冗談! 冗談だよ一也くん!』

 

 

 くだらないやり取りを交わしながら、俺たちは自動翻訳機をそれぞれの企業向けにデチューンしていく。要望は受け取ったあとそれを『あきら』がプログラムなどの形にしていき、実際に導入してみて問題がないか、問題があるならどのような理由かを現場に上げてもらい、俺はそれを調整、もしくは『あきら』に渡して修正してもらう。

 

 通常ならかなり時間がかかる作業であるが、『あきら』が組み上げたプログラムに乗っ取った自動翻訳機は各企業の要望に可能な限り応えており、修正が必要な部分というより当初は必要だと思われなかった所などの改正案ばかりが上がってきたため、予定よりも作業の時間はかからなかった。それでも2週間近くはかかったんだけどね。

 

 

 

 

 

 

『俺はその分野に詳しくないんだが、もっと時間がかかるものじゃないのか? 規模を考えたら』

 

「普通じゃないからマックス氏も『あきら』に首ったけなんだよ」

 

 

 グイっと強めのアルコールを飲み干したクラウザーさんに付き合う形でコーラを混ぜたテキーラを飲み干す。メキシコークだっけ? カクテルはそれほど詳しくないけど美味いね。

 

 

『そんな甘い酒飲んでどうする。男ならバーボンで喉を焼け! 喉を』

 

「一応声の仕事してるんで」

 

『ああ、そういえばそうだったな』

 

 

 何をしているのかというと、まぁいわゆる飲みにケーションだ。折角わだかまりが溶けたんだからここはもう少し親密になっておこうという腹積もりで美味い飯屋を紹介して貰ったのだが、向こうも結構乗り気でそのまま二人で飲み食いしにきたのだ。

 

 お、この牛肉うめぇ。ちょっとお高いけど、その分以上のお味だ。アメリカに来てからは基本的にマックス氏の会社に入り浸っていたせいで、デリバリーばっかり食べてたからこういう本格的な料理は久しぶりだ。

 

 それに対面に座るのは筋骨隆々のおっさんだが、給仕に来てくれる女の子は金髪でおっぱいが大きくて最高にベネ! アメリカだと合法の性風俗もあるんだよな……でも遠いな……ネバダか……ひばりのテレポートを使えば行けるか?

 

 

『あのぉ……風俗の送り迎えはトラウマがあるんでぇ……勘弁してつかぁさぁい』

 

――ああ。タクシー替わりに風俗嬢に扱われてる話があったな

 

 

 『ひばり』は作中、なんとかしてテレポート能力を金に換えようとあくせくしてた時期がありその頃に能力がバレてヤクザの下請けで風俗嬢のデリバリー配送をしていた事があるのだ。このデリバリー配送はヤクザが半グレとの抗争で皆殺しになるまで続けていたのだが、その際に『ひばり』は初めて銃で撃たれる経験をしている。

 

 ある意味、能力者としての覚悟とかそういうのが固まる大きな事件だったから、俺も内容を覚えていたのだが。そうか、あれやっぱりトラウマなんだな。銃で撃たれるって経験、普通は怖いんだよ。普通は。

 

 たった半年でそこらの軍人よりも銃で撃たれる経験をしたせいで、なにか大事な感覚がマヒしている気がする。ま、まぁ良いか。これからゆっくりリハビリしていけば元の感覚に戻るはずだ……多分。

 

 

『ん? さっきから女に視線が行ってるが、アキラとはご無沙汰なのか?』

 

「俺は別に『あきら』の恋人でもなんでもありませんよ。地元が一緒で兄貴分みたいな関係です」

 

『ほぉ。そういえば初対面の時もアキラが「うちの兄」と言っていたか。ならお前は今、女に飢えた野獣ってわけだ!』

 

 

 そう口にしたクラウザーさんはにやにやと笑顔を浮かべる。相手が居ない=女に飢えた野獣はちょっと物申したいが、金髪巨乳の給仕を見てムラついていたのは間違いないから反論はしないでおこう。

 

 

『よぉし、そうと決まればクラブに行くぞカズヤ! 俺たちのような危険な男を求める女がわんさかと居る場所だ!』

 

「俺が危険な男かは兎も角、女遊びは大賛成ですねぇ!」

 

 

 『ひばり』が嫌がるからしばらくお預けかな、と思っていた矢先に地元民から遊びのお誘い。こんなの受けるに決まってるよね! ナンパとかした事ないけど、クラウザーさんは自信満々みたいだしまぁなんとかなるだろ。

 

 

『おっとその前に。お前、アメリカンイングリッシュ(アメリカ英語)は達者だがレッサーアメリカンイングリッシュ(下等アメリカ英語)は大丈夫か? あそこの会話はほとんどがレッサーアメリカンイングリッシュ(下等アメリカ英語)だぞ』

 

「……んん? 申し訳ない。はっきり初めて耳にした聞き覚えのない言語ですが」

 

『なんだ。知らないのか。じゃあ、軽く教えてやるから見てろ』

 

 

 そう言ってクラウザーさんは「んんっ」と喉を鳴らし、近くに居た金髪ボインの給仕さんに声をかけた。

 

 

『|よぉ、姉ちゃん。この後ヒマなら一緒にクラブに行かねぇか?《F〇ck?》』

 

『|あら、ごめんなさい。私彼氏がいるからクラブにはいかないの《F〇ck》』

 

そいつは野暮を言ったな。ありがとよ(Oh~F〇ck)

 

「嘘だろ」

 

 

 思わず日本語でツッコミを入れてしまったが、一番嘘だと思いたいポイントは二人が何を言っているかが俺にも分かった事だろうか。突然日本語を口にした俺にクラウザーさんがきょとんとした顔をしているが、そんな顔をしたいのはこっちの方だ。

 

 いや、まぁ。うん出来る。多分それ、俺にも出来るけどね? 金髪ボインのためならもちろん秒で覚えるけどね? あ、金髪じゃなくて銀髪でも黒髪でも赤髪……は『さやか』が頭をよぎるから置いといて、まぁ、一番大事なポイントは胸が大きいか。メロンかスイカかという点だって事は覚えておいてくれ。狙った獲物のバッティングは互いに不幸になるだけだからな。




山里一也(男)26歳


視聴履歴
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『煉獄列島』(レンタル終了)
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『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
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