ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
『いやはや』
「いやはや」
俺とクラウザーさんは二人そろってそう呟き、互いに視線を向けた後に苦笑いを浮かべ合う。足元には体中にタトゥーを入れた黒人や白人が『F〇ck……』と口にしながらうめき声をあげている。
つい数分前まで楽しく酒を飲んで踊っていたクラブの中は、つまり、惨憺たる有り様という訳だな。なぜこうなったのかは難しい。非常に言葉にすると難しいのだが、端的に言うと美人のボインちゃんに声をかけていたアジア人の俺に対するアジア人差別である。いきなり背後からビールぶっかけられた時は思わず「おっ」って言っちゃったよね。
で、まぁこういう場だしそう言う事もあるかなと思ってたらまずクラウザーさんが一人ぶっ飛ばした。もう見事なまでにテンプルに一撃入れていた。そしてそれを見たクラブの荒くれ共が色めき立ち、クラウザーさんではなく俺に向かってビール瓶やナイフを片手に襲い掛かってきたのだ。クラウザーさんにではなく、俺に。大事な事だから二度言ったし、何度だって言っても良い。俺に、だ。
理由は分かる。明らかにクラウザーさんは見た瞬間に手を出したら殺されると思わされるくらいに強そうな容貌をしている。筋肉モリモリマッチョマンの変態とどっちが強そうかってレベルのガタイだし、実際に強いのも分かる。だから見た目は普通のアジア人サラリーマンっぽい俺に来るのは良く分かる。だからって全員で来るのは、良く分からないけどな! 殴った相手フル無視してくるのは喧嘩としてどうなんだ、情けなさすぎるんじゃないか荒くれ共?
まぁ、見た目が弱そうに見えるからって実際に弱弱しく振る舞う理由はミリもないので、最初に襲い掛かってきたビール瓶を持った白人は振り被ったビール瓶の持ち手を掴んだ上でグイっと力任せに相手の頭の上に振り下ろし、白目をむいた白人を盾にしてナイフを持った黒人の衝突を躱した後にグーで顎先をコツンとぶっ叩く。あ、やべぇ白人にナイフ刺さってるじゃん。しーらね。
そのまま周囲に居たこいつらの仲間も俺とようやくクラウザーさんに襲い掛かってきたが、正直デカいだけで弱っちい。たまにボクシングっぽい動きを見せる奴も居るけど大体が猿真似レベル。そんな技量で俺やクラウザーさんに挑んできた結果、全員仲良く地面を舐める事になったのだ。
『やっぱり危険人物じゃねぇか』
「いやー、正当防衛でしかやりませんよ? こんなの」
あの時はしこたま怒られたんだよ、と愚痴るようなクラウザーさんにそう軽口を返す。やれやれ、おっぱいの大きい女の子と遊びたいだけだったのにとんだ運動をする羽目になっちまったなぁ。
しょうがない、今日はこのまま帰るか。まぁひと暴れしてストレスは解消できたけども。なんて考えていると、周囲で様子見をしていた女の子が近づいてくる。おっと、仇討ちか? と身構えていると、その内の一人が『
え、なに? 柔らかいし嬉しいけど逆に怖い。
『HAHAHA! これがクラブの醍醐味だな! 言ったろ、カズヤ! 俺達みたいな強い男が女を引っかけるならクラブなんだよ!』
「えぇ……」
『力がある奴がカッコよくて偉い。それがアメリカだ。うちのボスはデブだが誰だって彼を尊敬する。それは金を稼ぐ力を世界一持っているからだ。そしてクラブじゃ腕力が一番モテる力なんだよ!』
そう言ってクラウザーさんは3,4人女の子を侍らせたまま『じゃ、また明日な! 病気には気を付けろよ!』と言って男子トイレに入っていった。3,4人侍らせたまま。大事な事なので繰り返したがつまり、そういう事だろう。
そして俺の周りには同じく両手に前後を囲むおっぱい大きかったりお尻が良い形だったりする女の子が4人いる。とても柔らかい。ならまぁ、しょうがないよな。男の子だしね?
愚かだ。人は、なぜこうも争い傷つけ合うのか。誰しもが隣人に対する愛を持てば、世界はきっと平和になるのに。ラブアンドピース。
『なんだ気色悪い』
「ちょっと賢者タイム」
『本当に気色悪いな』
『あきら』の護衛をしたりちょっと野暮用だと週1くらいでどっかに行ったりしている「セシル」が苦言を呈してくるが、今は何を言われても全くの無問題である。モーマンタイって読む。からね、恥。女の子から連絡先も貰っちゃったし、これはあれだろうか。憧れのセ〇レとやらをゲットしてしまったという事だろうか。
やはり暴力。暴力は全てを解決する万能キーみたいな存在だ。まぁ、暴力に惹かれて寄ってきた女の子なんておっぱい大きくても流石に遊び友達以上にはしたくないけどね。
「それで、『セシル』の方はやりたい事は終わった?」
『ん、おう。まぁ、見たいものは見れたよ。ちょっと、この世界の故郷がどうなってるのか見たかっただけだから』
「そうか」
尋ねると、『セシル』は仏頂面でそう口にする。良かったことも無かったし、悪かったことも無かった。そんな表情だ。
『セシル』は自身の原作、『ドッペルゲンガー』で自分のせいで故郷、というよりは育った孤児院を失っている。その事を作中でずっと後悔している描写があるため、この世界で故郷の孤児院があるのか、もしあるのならどうなっているのかは気になる所だったのだろう。
多分、あったんだろうな孤児院。ただ、中身は『セシル』が知ってる場所じゃなかった。そんな所か。当たり前ではある。『ドッペルゲンガー』はアニメ作品なんだから。
ただ、見てしまうまでは、もしかした……そう思えたのかもしれないな、と考えた所で頭を振る。勝手に他人の内心を推測するなんて良くないことだ。互いにとって。
「それで、会場の設営は順調に進んでるんだって?」
『ああ。予定通り今日で設営は完了するらしい。あとは明日一日で周辺に危険物がないかをチェックして、明後日に本番だ』
「結構厳重にやるんだな。まぁ、招かれる人も招く人も超大物だから当たり前か」
予定されている来賓はどいつもこいつも聞いた事がある名前の会社のオーナーだったり社長だったりする人ばっかりだ。こんだけ注目されてるならテレビ中継でもされるんじゃないかと考えていたら本当にやるらしい。凄いなマックス氏、ただの科学者の講演会にテレビ局まで引っ張ってくるのか。
護衛担当の『セシル』は気が気じゃないだろうが、明日の本番は俺はやることがまるでないから気楽に舞台袖で過ごさせてもらおう。その分、先週までは頑張って働いてたしな。役割分担って奴だ。
山里一也(男)26歳
視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)
『魂羽織』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)
『拳創成期』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)
『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)
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