ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→   作:ぱちぱち

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第85話 今なら大統領の次に殴られた女になれるんです! 何でもしますから!

「一也くん、Vタレとしての専門チャンネル作りましょ?」

 

「いやです」

 

 

 日本に帰国した初日。事務所に顔を出した瞬間にアキコさんからそう告げられたので、迷うことなくそう返す。多分そう言われるかなって思ってたから事前に身構えていてよかった。アキコさんから上目遣いにおねだりされたら覚悟が決まってなかったらつい「うん」って返してたかもしれない。

 

 案の定、俺から色よい返事を貰えなかったアキコさんは可愛らしくぶすくれている。可愛い。今からうんって言いなおそうか一瞬迷ったけど、その先に待っている地獄を思い浮かべて雑念を振り払う。

 

 

「えぇ……大人気じゃない。知名度だけなら私を抜いてあきらちゃんとツートップでしょ?」

 

「アレで得た知名度なんてろくなもんじゃないです」

 

 

 今回の渡米では色々と成果を勝ち取る事が出来た。マックス氏の会社との契約して実装された諸々のアプリケーションはすでに結果が出始めており、マックス氏が所有するSNS、ツブヤイターでは自動翻訳機能によって「言語の壁が取り払われた」と大評判だ。それに各国にある支社間でのやりとりも自動翻訳によって非常にスムーズに行われており、言語による業務上のロスがなくなったと報告もあがっている。

 

 それだけなら大成功と言っても良い渡米だったんだが、最後の最後で大統領を殴るハメになるとは思わなかった。お陰で最終的に話題を全て大統領にかっさらわれる事になったんだから、この点はもう反省しきりである。

 

 

『器の差だな。国の統領を務める人間なら大なり小なりあれくらいはやるだろう。いい勉強になったじゃないか』

 

――おかげでクマパンチミームが再燃してるんだけどね?

 

『有名になれて良かったな?』

 

 

 例のクマパンチの瞬間を魂羽織に入ったままパソコンで見ていたという『かすが』は皮肉なのか褒めているのか分かりづらい声音でそう言った。アレで有名になったってそんなに嬉しくないんだけどな。また知らない人から「パンチしてください!」って言われるのは流石に嫌だ。

 

 そして、そんな事を考えていたのが悪かったのか。以前名刺を貰っていたハチジクジのVタレさんからVVV、というよりは事務所を経由してクマ公宛てに依頼が入ってくる。

 

 曰く、次の企画で使いたいのでパンチされてる動画を撮りたいとの事だ。もちろん絶対にノウ! と返答を返すと、今度は直接連絡がきた。

 

 

「クマ公さん、お願いします! 今なら大統領の次に殴られた女になれるんです! 何でもしますから!」

 

「ん? 今なんでもするって……ネタで上手く釣ろうとするの止めてくれます?」

 

「しまった、バレたか」

 

 

 電話の相手はハチジクジでも最初期から活動している女性で番長のあだ名で親しまれている方なんだが、ネタなのか本気なのかちょっと分からないラインで会話をしてくるから少し困る。ただ、この会話で俺の右拳がどうも界隈では価値を持っていることに気付けたのでその点はありがたい。

 

 うむ、であるならばそれは利用しない手はないな。なおも言い募ってくる電話を無理やり切って事務所に戻り、いつも通りに椅子に座ってパソコンでエゴサをしているアキコさんの元へと歩み寄る。

 

 

「アキコさん、大統領の次に殴るのはアキコさんが良いと思うんですがどうでしょう?」

 

「え。ついに下剋上宣言???」

 

 

 ん? という表情を浮かべて俺を見上げるアキコさんにそう伝えると、アキコさんはポカーンとした表情でそう尋ねてきた。下剋上する理由がないのでする気はないんですがね。

 

 

 

 

 

 VVV公式として所属Vタレ全員を殴り飛ばす動画を作って投稿したら「ついに気が狂った」「奴らならやると思っていた」とファンからの評判も上々。ついでに俺の評判の中に「上司を殴って下剋上」という非常に不名誉なものが追加されてしまったが、まぁ「大統領を殴ったクマ」よりは大分マシだろう。撫でる程度だったんだけどなぁ……

 

 まぁそんなどうでもいいことは放っておいて仕事の話だ。

 

 今回、マックス氏の経営する企業グループと提携した事で海外の拠点が必要になった為、急遽VVVは米国支社を立ち上げることになった。そこの支社に所属させる人間の事をアキコさんと詰めなければいけないのだ。

 

 クマパンチ動画撮る前にやれって? それはそう。

 

 

「という訳でこいつ。地元の妹分なんですが英語も出来るんで雇ってもらえませんか?」

 

『ど、どうもぉ~。三沢ひばりです。何でもするんで雇ってくださいぃ。あ、お靴が汚れてますね。ふきふき』

 

「………………………これまた面白そうな子連れてきたわね!」

 

 

 初対面の相手に初手で靴磨きに行く点を気に入ったのか、長い沈黙の後アキコさんはからからと笑って『ひばり』を雇う事を了承してくれた。え、紹介しといてなんだけど良いのか、こいつを雇って。もうちょっと説明とか色々やる心の準備は出来てたんだけど。

 

 

「一也くんが必要って思って連れてきたんでしょ? それなら信じるわよ。そもそもうちの会社、一也くんが居なかったらこうなってないんだもの! だったら信じるわ。社長だし」

 

「アキコさん……!」

 

「あと拒否して一也くんのやる気がなくなったらちょっとヤバいもの。年度末なんて私ひとりじゃ乗り越えられないし!!」

 

「アキコさん!!?」

 

 

 一瞬だけ良い話っぽくなりそうだったのに即座に否定してくるのは流石にどうかと思うが、一先ず無事に『三沢ひばり』をVVVの社員にする事が出来た。じゃあ次はVタレとしてのガワを作らないとね。え、聞いてない? うちの会社は全員Vタレのガワが必要なんだよ。アメリカ支社の事務所もちゃんと公式チャンネルで常に配信するから必要でしょ? 聞いてない? そりゃ言ってないから当たり前だろ?(鬼畜クマ成分)

 




山里一也(男)26歳


視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)
『魂羽織』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)
『拳創成期』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)
『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)


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