ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→   作:ぱちぱち

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誤字修正、綺羅星瑠奈様ありがとうございます!


第86話 冬のボーナス凄かったでしょ?

 年度末。

 

 全ての日本人が昨年の総決算を強いられ、国税庁に歯ぎしりしながら金を毟り取られる悪夢の期間である。会社員は会社がやってくれるって? それはそう。

 

 

「色々施設に投資したけど、やっぱり結構取られるなぁ」

 

「税理士さんとも話して色々対策はしたんですがね」

 

 

 この年度末のクソ忙しい時期に、何故か人にパンチをする仕事が無理くり突っ込まれたりもしたが、なんとか無事にVVVの年度末決算は乗り切る事が出来た。まぁうちの会社は株は100%身内が持っているため株価も決算もそんなに気にすることはないんだが、手間は手間だ。

 

 が、何事にも終わりはやってくる。簿記を持ってるという猪上くんと一緒にせこせこと決算書や決算申告書を作り、お役所様に提出したりアキコさんに渡したり数億規模の税金を払ったりと忙しい日々を過ごしたが、それもようやく終わる。税理士さんとも話し合ったし不備で突っ返される事もないだろう。

 

 半月くらいは働き詰めだったし、大人のお風呂にでも行って羽を伸ばすかなぁ。あ、一緒に苦労した猪上くんも連れて行ってあげよう――なんて思っていたのが悪かったのだろうか。

 

 

「はい! それでVVV初年度総決算! はっじまっるよ~!」

 

『わーい! どんどんぱふぱふー!』

 

『あ、このプリン美味し』

 

 

 出かけようとした矢先に『さやか』に首根っこを掴まれて引きずり込まれた先にはアキコさんと『あきら』がすでにスタンバっており、明らかにこれから配信をするという空気が漂っている。あれ、巻き込まれた? と思いながらテーブルの上に視線を向けると、そこにはつい数日前に必死こいて作り上げたVVVの決算書が……

 

 

「はい、ストップ。ストップでーすそれそのまま使っちゃ駄目でーす」

 

「えー」

 

『ケチー! 横暴! クマ公!』

 

『このカラメルソースも合うわねぇ』

 

 

 すでに配信が始まっているんだろうが流石に止める時は止めないといけない。この決算書にはいろいろ社外に出したら駄目な情報とかも乗っているんだから。ブーブー言うアキコさんを引きずってマイクの傍を離れ、小声で見せたい情報と見せられる情報のすり合わせを行う。なるほど、了解しました。ではちょっと画像ファイルにでっちあげるんで少々お待ちを。

 

 その間、配信画面の方は『あきら』と『さやか』の二人に任せる事になるがあの二人ならまぁ大丈夫だろう。面白い事しなくても面白い事になる連中だし。あ、その前に猪上くんに風俗はちょっと待ってねって伝えとこう。

 

 

 

 

 

 見せちゃダメな情報を黒塗りした決算書の準備が終わり、さてと配信中の二人の所に戻ったら何故かうちのスタッフが勢揃いしていた。受験が終わり晴れて自由の身になったひなちゃんや蝶子ちゃんも含めて全員である。こういう場には滅多に来ない『リリーベル』まで居るのは……蝶子ちゃんに呼ばれたのか。ご褒美強請られて困った顔をしてる。

 

 

「え。皆どうしたの急に?」

 

「こんな面白い事やろうとしてたらそりゃ来ますって」

 

「部屋で配信眺めてるだけなんてもったいないですよ!」

 

 

 希望の大学に合格し、この春から大学生となるひなちゃんがアキコさんと会話をしている横で作成した配信用の決算書を取り出し、配信画面に乗せる。あ、これだと決算書のせいで画面に映らない奴が増えるな。概要欄にダウンロード用のデータを作って配信画面の書類を小さく調整。細かく見たい人はダウンロードして見てもらおう。

 

 準備で来たぞーと声をかけるとマネージャーの愛弟子、3期生がノリ良く「わー♪」「乗り込めー♪」と声を上げ、それまでざわついていた事務所の面々が配信の方に意識を向ける。ここからはアキコさんの出番だ。

 

 

「さて、皆様改めまして! 昨年はお疲れさまでした! お陰様を持ちましてVVVは業績も好調! オーイシアキコWithあきらちゃんねるも登録者数を100万人の大台に乗せ、2期生3期生もそれに続く様に登録者数を伸ばしております。VVVエキスポというリアルイベントも成功し、昨年は飛躍の年になったと言っても過言ではないでしょう!」

 

「オォー!」

 

「さすが社長!」

 

「さすアキ!!!!!」

 

『クマ公のガヤが一番煩いんだけど』

 

「やかましい」

 

 

 

コメ:どうした、急に(焦)

コメ:(英語)なにか唐突に始まったと思ったらいきなりVVV全員が出てきた

コメ:(ロシア)人が来ると急に黙るサヤカはやっぱり可愛い

コメ:さやかとクマ公の距離近い……近くない?

 

 

 

 アキコさんの言葉に合わせてスタッフがヨイショする中、何故か隣に来た『さやか』がボソリとそう言ってきたので素でそう返すと周囲がゲラゲラと笑い始めた。これが同期の絆ってそんな良いもんじゃないと思うぞ今のやり取り。

 

 

「業績が伸びれば当然収益も伸びる。視聴者の皆さん、思った事はありませんか? Vタレ事務所は。そもそもVタレは儲かる仕事なのかどうかというのを!」

 

「おおおぉぉぉ!?」

 

「まさかまさか!」

 

「もしかして全部見せてくれちゃうの!!!!? さすアキ!!!!!! そこに痺れる! 憧れるぅ!!!!!」

 

『だからアンタが一番煩いっての!』

 

「やかましい。ノリだノリ」

 

 

 またも茶々を入れてくる『さやか』に素に戻ってそう返すと、何故か3期生組が3Dモデルでも分かるくらい愕然とした顔でこっちを見てくる。あれ、それどういった感情で出てくる表情? ししょーがそこまではしゃいでるのを初めて見たって……ああ。ついアキコさんが可愛くてテンションハネ上げてしまってたか。失態だ。

 

 

「という訳でドーン! とお見せします! 我がVVV今年度の決算書はなんと! 大幅な黒字! やったー!」

 

 

 おっとそんな事をしている場合じゃないな。アキコさんの言葉に合わせてドーン! と黒塗り付きの決算書を配信画面にデカデカと乗せる。俺と猪上くん、それにアキコさん以外はうちのスタッフも初めて見る内容だろうな。

 

 全員の視線が手元のスマホやパソコン画面に映り、誰もしゃべらなくなる。おっと、ここで間が空いたら良くないな。じゃ、俺が大まかに解説でもしようか。画面を見てないって視聴者も居るみたいだし。

 

 

「えー。昨年度のVVV総売高は334億2640万円。対して支出や税金等を差っ引いて大体114億514万円が純利益となります」

 

「えぇ……」

 

「うちん会社、そげん儲かっとーとね!?」

 

「冬のボーナス凄かったでしょ?」

 

「はい……車一括で買うてしまった……」

 

「失礼します。クマ公さん、この支出の欄なんですが」

 

 

コメ:儲かり過ぎてて草

コメ:(イタリア)円だから数字ほど価値はないとしても凄い金額だ

コメ:(韓国)アメリカの講演会の時うちからパクった技術であんなに稼ぐなんて許せない! ってうちの政府が言ってたけど、言いたくなるのも分かるわ

コメ:(フランス)爆笑。互いに政府はクソだな

 

 

 3期生の満腹たべるちゃんがそう口にする。お、おお。結構思い切った買い物するなぁ。駐車場代も高いだろうに。

 

 そのまま支出や収入についての話をしていると、恐らくダウンロードしたのだろう決算書を見ながら鹿谷くんがバンバン質問を投げてきてくれる。ありがたい、書類を読み上げるだけだとまるで面白くないからね。

 

 支出の面で一番大きいのはやっぱり税金だ。ただ、その税金を圧縮するために現在建設中のデカい自社ビルの建設費用やこのマンションの購入費、それに福利厚生費や給与が割合としては大きいかな。うちの場合内装以外の設備や機材はほとんど自作でなんとかなるからその点は余り経費計上出来なかった。『あきら』の奴、街のパソコン屋で手に入る機材で未来の技術を再現したりしやがるからな。文明崩壊後の世界で文明開化を目論む奴はやっぱり違うわ。

 

 ある程度決算書を読み終えた辺りでそおっと3期生の不動くさりが手を上げる。何か質問があるのかと促すと、どうやら他所のVタレから質問が届いたらしい。膨れ上がった人件費の内、どのくらいがVタレに支払われるものなのか、と。

 

 結構難しい質問だな。これ誰かを例にするとその人のプライバシー侵害になるぞ。一応視線でアキコさんに了承を求めると、アキコさんはグッと親指を立ててゴーサインを出した。楽しければそれでいいの精神はこんな時も変わらないらしい。

 

 

「さすがに誰か個人の数字は見せられないんだけど例題でいい?」

 

「出来ればクマ公さんの数字が聞きたいなぁって」

 

「じゃあ一番新入社員の3期生全体を例にするよ」

 

「おおっとまさかの藪へぐえぇ! ま、まってみつきちゃんグー! それグーで殴ってる!」

 

 

 3期生同士のどつき漫才を眺めながら、例題として簡単な数字を出していく。まずは基本給の25万円。3期生は全員がVVV正社員なのでまず基本給が存在するのだ。次に技能給として担当する仕事の習熟度や貢献度によってお給金が増されていく。専属の料理人である満腹たべるちゃんはここがかなり大きい。多分基本給並みに貰ってるんじゃないかな? 次にVタレであるところの配信による収益。これは歩合制で投稿した配信の収益の6割ほどが入ってくる。

 

 これで採算がとれるのかというと、配信だけだとギリギリ黒って所だろうか。3期生のコンビチャンネルも全て登録者数が10万人を越えてるから、収益はちゃんと入ってるし。VVVのメイン収入は配信じゃなくてライセンス料とか機材の設置販売だからこれでもちゃんと経営が成り立つわけだ。成り立つというか、むしろ他で儲けすぎてるから還元してるって所もある。

 

 だからこの数字もブースト掛かってるし、来年はもう少し抑えめになるかもしれない。

 

 そこまで言ったところで、真顔の不動くさりがもう一度そっと手を上げる。

 

 

「あの。友人のVタレからうちに所属したいって声がひっきりなしに」

 

「弊社は今の所新規社員を募集してないんだよねぇ。アキコさん?」

 

「3期生から間が空いたし、そろそろ考えてもいいかもしれないわね」

 

 

 あ、でも米国の事務所を作るならそっちで募集するってのも良いかもしれないな。あっちのVタレってどういう状況なんだろ。

 




山里一也(男)26歳


視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)
『魂羽織』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)
『拳創成期』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)
『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)


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