ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
マックス氏が新会社を立ち上げた。その名も“V.A.I”である。仮称だったのに本格的にヴァーイが名前になってしまった。まぁ、マックス氏がこの名前を気に入ってるんだからしょうがないんだけどね。開発者である『あきら』も名前に関しては無頓着だったし。
その『あきら』はヴァーイの発表後、『セシル』をお供に忙しくしている。ヴァーイについて話が聞きたいと各地の研究者がバタバタとテキサスにやってきているからだ。
『うわーん! ずぅっと同じことばっかり言ってるんだけど! 疲れたよぉ一也くん! 変わって?』
「無理」
ぶりっこのように上目遣いをしてくる20歳児の戯言を切って捨てる。お前を目当てに来てる人たちに代役なんてお出ししたらとんでもない顰蹙を買うに決まってるだろうが。
だが、まぁ。こいつが言う事も理解できるのだ。やってくる研究者の皆さんはどなたもその道では著名な方々で粗略に扱う訳にはいかない人ばっかりなんだが、同じことを別の人に100回説明するというのは流石に効率が悪すぎるし、その間『あきら』が動けなくなるのだから非常に勿体ないと言えるだろう。
であるならばやる事は一つ。
『という事でヴァーイちゃんについて配信でご説明! あ、こっちが相方のヴァーイちゃんね。まだ色々勉強中だから今回は助手をやってもらうよ! デビュー配信だね! ぱちぱちぱち!』
『人類の皆様、初めまして。私はV.A.I。ヴァーイとイロリーに呼ばれている人工知能です』
『うーん、固い固い! いい、ヴァーイちゃん。今のところはね、「人類おっはろ~♪ 世界最高! さいきょーの人工知能ヴァーイちゃんだよ!」って具合にフランクに行かないと! ね、イロちゃん!』
「それに関してはノーと答えるよアキラ。君の持つキャラクター性は僕のイメージより少しバカっぽすぎる。僕のイメージのヴァーイはもっとおしとやかで、でも元気があってだね」
『hmmmm……人間との会話は興味深いです』
コメ:(英語)おい、バカ、やめろ
コメ:(ロシア語)人工知能? おしゃべりが下手なVタレにしか見えないんだが
コメ:(英語)いつだイロリー! いつ実装されるんだ!
コメ:金髪ツインテとはわかってんじゃんイロリー
コメ:(フランス語)人間とこのレベルで会話が出来るのか? 電子音で言葉を発してるのは分かるが調整も完ぺきじゃないか
新会社立ち上げとほぼ同時に行われたこの配信は、恐らくYOUCUBE史上最も同時接続数を稼ぎ出した配信となっただろう。なにせこの時、実際に動いて会話するAIを見るためだけに1000万人もの人がPCやスマホごしにこの配信を眺めていたのだ。
ヴァーイという、明らかに人類史に残るだろう存在の産声を見るために。
これを機に、これまでは知る人ぞ知るというレベルだった『九十九あきら』という存在は全世界で最も著名な科学者の一人として称されるようになった。そしてその『九十九あきら』が暴走しそうになった時、脇からすっと現れてハリセンで頭をしばいたクマのぬいぐるみもまた、全世界レベルで認知されるようになったのだ……
なんでやねん。
「アメリカってなんでもおっきいのねぇ。一人前も食べられなくてびっくりしたわ」
「アメリカの食事は闘いだって聞きますねぇ。あれ一般家庭の食事だと思ってたんですが」
渡米して1週間。ゴールデンウィークの間の研修旅行の為、アキコさん他VVVの面々はそろそろ日本に帰る予定だ。まぁ、アキコさんとマックス氏のご挨拶と米国支社を訪問以外は仕事なかったからな。最初の日以降はひたすらテキサス観光してたらしい。毎日どこそこに行ってきたと報告を受けてお土産も貰うしそれは嬉しいんだが、木彫りのクマは正直いらなかったかな。
「兄さん、兄さん。ところでぇ、噂のヴァーイちゃんとのご挨拶とかは」
「不動さん。揉み手してすり寄ってきてもダメです」
「そんなぁ! ズルい! マックス氏だけズルいっすよ! 私もあんな無知っ子に世界のなんたるかを教えたい!」
「御園さん。やっちゃってください」
帰国の準備を始めたVVV社員の中から、ヴァーイと会ってみたいという声が上がったが流石にこれは許可が出せない。というのも現在はヴァーイの人格データの根幹を作るためのパートで、ヴァーイはマックス氏や向こうのAI研究者たちと付きっ切りで人間社会の常識や善悪についてをインプットしているのだ。その過程を彼は自身のSNS等で動画にして上げているのだが、これがまた大きな反響を呼んでいる。
気持ちはわかる。可愛い無知な子を大人が自分の色に染め上げる話というのは、古今東西人気がある題材なのだ。光源氏とかね。
そしてそんな状況だからこそ、余計なデータを入れ込みたくないのだ。例えばこの目の前でひたすらハリセンでしばかれてるおバカのデータとか。ちゃんと基礎の人格データが完成したらVVVのスタッフは全員ヴァーイと絡むことになるだろうし、それまで大人しく待っててほしい。
「え、じゃあその内ヴァーイちゃんと話せるんですか!?」
「うん。というかヴァーイは米国支社最初の専業Vタレになる予定だからね。当然同じ会社の人とはコラボもしやすいし。注目度も高いからこの機会に世界の需要をVVVで浚っちゃいましょう」
「それ狙うんなら世界一注目度の高いクマさんに便乗し痛い! みっきちゃんそれハリセンじゃなくてグー! グーだから!」
余計な事を口にする不動くさりに御園みつきが鉄拳制裁しているのを眺めながら親指を立ててグッジョブのサインを作る。俺の場合は注目度が高いという寄りも悪目立ちというんだよ。大統領しばいたり同僚しばいたりテロリストしばいたりしてるせいでVタレ界隈随一の武闘派みたいな扱いになって、格闘系とかイカついアイコンの人から声かけられるようになってしまったけど狙ってやってるわけじゃないから。
なんで総合格闘技にVタレ事務所のスタッフが招待されるんだよ。頭おかしいんじゃないか主催者。絶対行かないからな。
山里一也(男)26歳
視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)
『魂羽織』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)
『拳創成期』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)
『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)
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