ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
ヴァーイをツブヤイターに実装するには幾つかの問題がある。ソフトの方はほぼ完成と言って良いが、サーバーなどのハード面がまだヴァーイを動かすほどの性能ではないのだ。このため、現在急ピッチでツブヤイターのサーバー関係は増強しているのだが、これが終わるのがどれだけ早くても1月後。
流石にそこまでは待てないため、VVVのスタッフは一度日本に戻る事になった。と言ってもヴァーイが実装された際には式典を催すそうなので、その時はまた渡米する事になるだろう。少なくともアキコさんと『あきら』は。
俺も呼ばれるかもしれないが、正直今回のヴァーイ開発ではそこまで役に立ってる気がしないので行かなくてもいいかな、と思っている。式典の招待客としてなら『あきら』の翻訳係もいらないだろうしね。
「っつーわけで俺達日本に戻るから。またこっちの事務所の管理よろしくな」
『嫌あぁぁぁぁぁ!! 超来客が多くて大変なんですけど! 私はヴァーイなんてミリも知らないのに聞かれるんですけどぉ! 一也さぁん! 残って!!』
「いやー残りたいけどビザが問題でなー。技術的な事は配信で『あきら』に聞いてくれって言っといてくれ。じゃ、頼んだよ『ひばり』(鬼畜クマ成分)」
名残惜しい所ではあるが、日本でも仕事があるからな。いやー、忙しい忙しい。帰りもマックス氏のプライベートジェットに乗って悠々自適の飛行機の旅だわ、まったく忙しいぜ。
まぁ、俺と『あきら』は本当は残っても良いんだけどね。なんかこのままアメリカに居たら1か月後くらいに総合格闘技のリングに自分が立ってるって夢を見てしまってな。『リリーベル』に相談したら十中八九予知夢だからって断言されちゃったんだよ。
『まぁ、その内見るとは思ってたけど。結構日が空いたわねぇ。蝶子の方がやっぱり才能はあるのかしら』
「才能関係あるのか、これ」
『あるわよ。見ない人は一生見れない。99%才能に左右されるのよ、予知って』
ちなみにタロット占いは技術ね、と口にして『リリーベル』はキセルの端を噛む。近くに蝶子ちゃんやひなちゃんら未成年組が居るから火はつけていないが、何もしないと口が寂しいのだとか。俺はタバコ系は嗜まないが、そういうもんなのかねぇ。
まぁこのままだと間違いなくに面倒ごとに巻き込まれるみたいだからさっさと日本に帰ろう。多分『ひばり』の近くに居て何かに巻き込まれたんだろうな。じゃなきゃ一般サラリーマンが体中にタトゥー入れてる筋骨隆々の男とリングの上で殴り合うなんて起きる筈がない。とっとと日本に帰ろう。うん。
「と思ってたんだけどなぁ」
「? 師匠、どうしたんだすか」
「いや、こっちの話」
「旦那! 旦那! あっちでも路上パフォーマンスがやっとんで! すげぇテクのおっさんがサックス拭いとる!」
右隣を歩くピンク色のギグバッグを背負った百山さんの言葉にそう返事すると、百山さんはちょこん、と首をかしげてこちらを見上げてきた。彼女は165cmと日本人女性としては少し高めの身長だが、『日華』をレンタルした時に180cm台に身長が伸びていた俺相手だと頭一つ分くらいの差がある。26歳なのに身長が伸びるってなんだよと思ったが、多分これも『NEET NOW』の影響なんだろう。最早何が起きてもおかしくないぞ、『NEET NOW』。
そしてそんな百山さんとは反対側を御園みつきさんが陣取り、周囲で演奏するストリートミュージシャンたちに歓声を送っている。後ろをちらりと見ると、同じように3期生の他の面々――満腹たべるに不動くさり、そして幻の5人目と名高い……っと、それは流石に失礼だな。彼女はコラボが苦手という事で現状の3期生の配信スタイルだと中々配信が出来ていないだけで、楽器の練習配信を毎日やっている努力家なんだから。
まぁ、つまりは3期生全員がこの場に居て、俺は彼女たちの引率として路上ライブで有名なオースティンのシックスストリートに連れてきているという訳なんだが。流石は路上ライブの聖地とも呼ばれるシックスストリート、演奏してるストリートミュージシャンのレベルが半端ない。この場で一番レベルが低いミュージシャンですら百山さんを覗いた3期生全員よりも上だろう。半年以上鬼畜クマのレッスンを受け続けた彼女たちよりも。中には百山さん以上の腕前のミュージシャンだって散見されるほどだ。
その事は彼女たちにも分かっているのだろう。歓声を上げながらも、周囲のミュージシャンたちを見る3期生たちの視線は声音とは裏腹に鋭いものだった。
うん、悪くない。帰国の準備をしている最中、百山さんに「あのぉ、お願いがあるんだどもぉ」と遠慮がちにシックスストリートの路上ライブを見たいと言われた時は例の総合格闘技の件もあったしどうしようかと迷ったからね。俺が迷ってる間にいきなりクマ野郎が表に出てきて即決でオースティンに来る事が決まっちゃったんだけども。
今現在もクマの奴は彼女たちの姿を見てやる気満々で、俺の頭に指導指導指導教育教育教育実践実践実践と電波を送ってきている。本気でウザいが、まあ、この子たちの成長にちゃんと寄与してるから良いか。
「|お、君たち日本人かい? 俺、日本人大好き! どうだい5人一緒にそっちの暗がりで俺らと夜のミュージカルしないか?《F〇ck!》」
「
とはいえ、可愛い子が5人も集まるとこういう事も起きてしまう。
満足気にシックスストリートの感想を語る3期生の様子に、来てよかったと思いながらさて、そろそろ今夜の宿へ向かうかと口を開けようとしたとき。自然と惹かれるように視線が動き、道端に空き缶を置いた一人の女の子が目に入った。
マネージャーだ。マネージャーが俺の身体を動かしている。
その子は恐らく10代後半に入ったくらいの白人の女の子だった。たった一人、清潔そうだがお洒落とは程遠い洋服を着て、緊張からかこわばった顔で周囲を見ている。喉の調子を確かめている所を見るに、恐らく歌を歌うつもりだろう。楽器もなく、ラジカセすら持たずに。周囲の人もまばらなこの場所で、彼女はこれから歌おうとしている。
見るからに場慣れしていない。ぱっと見だと少し夢を見た素人がこの場の空気に充てられているようにすら見える彼女は、しかし空気を纏っていた。周囲から隔絶した、アヒルの中に白鳥が混ざっているような異物感をマネージャーは感じていた。
『ろっこ』
「え、あ、はい?」
『あの子を見ろ』
マネージャーは俺の口を使ってそう百山さんに告げる。
彼女の歌が始まった。
山里一也(男)26歳
視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)
『魂羽織』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)
『拳創成期』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)
『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)
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