基山の勉強会は続いた。自分の教え方によって軽井沢達が日々成長しているのを感じている基山。勿論躓くことだってあった。一度教えても理解出来なかったり、逆に基山が教え方が不器用だったりした。それでも基山は理解出来るまで付き添い、なんなら教え方も不器用なりに変えた。
基山の努力が伝わったのか、みんな必死に食らい付いたり、松下に至っては逆に教え方を伝えるといった奇妙なことも起きたりした。
佐藤は少しずつ理解していき、森も少しずつ進んでいく。松下は時々自分より賢いのではと思ったり。なにより……軽井沢は文句を言いつつも決して逃げなかった。だから、基山は不器用だけど、先生として頑張れるのだ。
基山の勉強会が開始して4日目を迎えた。今日もみんなそれぞれ席に着いている。
「今日もやるぞー! もう段々先生が慣れて来たんじゃないか~」
「「全然」」
基山の言葉に4人が反応した。
「え~、だってもう4日目だぜ? 俺も先生……」
「でも茶柱先生と比べると……」
「分かりやすくは……」
「ない、ね……」
「不器用すぎ」
「ぐはっ!」
4人の言葉が基山の心に衝突した。基山自身、自覚していることだからだ。沈没してから数秒、基山の心は立ち上がった。
「まぁ、茶番はここまでして、やろうか!」
基山の一言で勉強会が始まった。それぞれ考えて分からない場所を基山に聞く。そんな方針である中、この勉強会にも小さな変化が訪れていた。
「寧々、そこ違うわよ」
「えっ? そうなの?」
「そうね、あたしもここで躓いたことあるから。ここは――」
「佐藤さん、そこ違うよ」
「マジで?」
「ここはこういう考え方だけど、こっちの考え方をした方が良くて――」
軽井沢と松下が分からないところを教えていた。松下は時々教えているところを見たが、軽井沢が勉強を教えるようになるとは思わなかった。
(それだけ、余裕があるんだな。良いことだ)
そんな軽井沢も説明に悪戦苦闘していた。言葉にするのが難しいのだろう。基山はすぐに補助に入った。
基山も軽井沢の一件を得てからノートを使うようになった。言葉で分からないなら、目で分かるようにする。色々と工夫が必要だが、みんなが頑張れるならと基山も必死に頭を働かせている。
「なるほど、こういうことだったんだね。ありがとう、軽井沢さん、基山君」
森は理解して次の問題へと進んだ。基山と軽井沢はお互いを見た。
「なによ、意外なことでもないでしょ」
「いや、少しずつ成長しているんだなって」
「基山は先生か!」
「俺は先生だぞ、この時間だけ」
基山は微笑む。それを見た軽井沢も微笑んだ。
勉強会は進み、1時間が経過した。休憩時間も設けている。
(適度に休憩しないと俺も軽井沢達も疲れが溜まってそれどころじゃなくなる)
基山と軽井沢達は休憩している。軽井沢達は女子なので会話に花を咲かせていた。そこで軽井沢達を笑顔を見る度に心が燃える、やる気に満ちようとしていた。
(ああ、俺はみんなの笑顔を守りたいって、心の底から思えるんだな)
基山は軽井沢達を見ると自然に笑みを浮かべていた。すると軽井沢が気付く。小声で何かみんなと話した後、基山を手招きした。
「ん? どうかしたか?」
「別に、アンタを一人にしたくないだけよ」
「面白い話は言えないぞ」
「それでも良いわよ。基山のこと、知りたいの」
「……教えられる範囲でな」
そう言って基山は女子の中へと不器用ながら入っていくのだった。
少し長くなった休憩を終えて勉強会を再会しようとすると、みんなが2つの視線に気付いた。
「綾小路。それと……」
「佐倉さん?」
教室の外からこちらを覗いている綾小路と佐倉愛里の姿があった。相変わらず無表情な瞳をこちらに向けてくる綾小路と少し、いやかなり怯えていた。
取りあえず近付いて話しかける基山。
「綾小路に佐倉さん。どうかしたのか?」
「オレはお前に興味があるからいるだけだ」
「その言い方だと誤解されないか!?」
綾小路は観察対象としての自分が気になることを言いたいと基山は察した。しかし事実、軽井沢達はざわざわしている声が聞こえてきた。
「? なにが誤解されるんだ?」
「そりゃ、恋愛の価値観とかだよ。綾小路の言い方だと俺が特殊な恋愛の価値観持っているみたいじゃないか。俺は普通だぞ」
「オレも普通だぞ。……言い方を考えるべき、だったのか?」
綾小路の言葉を聞いた直後、声が静かになった軽井沢達。一先ず安心して貰ったところで基山は佐倉を見る。
「まぁ綾小路は俺に興味があるとして、佐倉さんはどうしたんだ? もしかして、勉強が苦手なのか?」
「……はい。基山君達が、その、勉強会をしているのを聞いたので、来てみたんです」
佐倉が勉強が苦手であることを打ち明けた。そして勉強会のことも耳に入っていた。クラスメイトのみんなは見ているんだなと実感した。
「……その、駄目でしたか?」
「いや良いよ。入って入って! ほら綾小路も!」
「待てオレは……」
「興味があるんだろ、勉強会に! なら参加して分かることもあるんじゃないか?」
「……仕方ないか」
綾小路と佐倉が教室の中へ入る。まさか増えるとは思ってもみなかった軽井沢達だが、なんか納得したような表情になった。
「ん? どうしたんだ?」
「「基山(君)だからね」」
「? 俺だから?」
「「はぁぁ……」」
軽井沢が代表して口を開く。
「人たらし」
「……意味は分からないけど、褒め言葉として受け取るよ。佐倉さんは松下さんの隣、綾小路は佐倉さんの隣な」
基山の勉強会は人数が増えて再開した。基山はみんなを平等に見ながら、勉強が苦手だと言った佐倉を気にかけていた。
「あの、ここが分からなくて……」
「ここはね――」
一度言葉で説明しても佐倉は理解したとは言えなかった。だからノートを使った。佐倉が分からないと思ったところを目で分かるようにした。
「あっ……そうだったんですね」
佐倉は理解したみたいだった。基山は他を見始める。
「ああ、もう!」
すると軽井沢が声を上げた。どうしても解けない問題があったみたいだ。基山は軽井沢に向かう。
「どこがどう分からない?」
「……ごめん。ええっと――」
声を荒げたことを謝りながら、どう分からないか、自分の考えを説明してくれた。基山は最後まで聞く。
「そうか。ここは本当はこうした方が良くて――」
基山はノートを使いながら説明していく。軽井沢は段々と自分がどう間違えたのか理解した。
「そうなのね」
「そうだ。……それと」
「?」
「確実に成長してる。ほんの前の軽井沢だったら、自分がどう考えて、どう間違えたのかは言えなかったはずだ。だから、成長してる。胸を張って良いと思うぞ」
「……バカ」
そう言った軽井沢は微笑んでいた。
「……良いですね」
「でしょ」
「……」
これが基山の勉強会であった。
(基山の勉強会を見て、参加したが……)
綾小路は勉強会に参加してノートとシャーペンを使って問題を解いては消し、止まり、一般生徒のように振る舞っていた。それでも考えていることは基山の勉強会のことであった。
(あまりに非効率だ、基山の負担が大きい。……だが)
綾小路は基山と軽井沢達の様子を見る。そこにはいやいや勉強している様子もない。だが、完全に勉強が分かっている訳でもない。ただ、みんなはここで人間関係を作っていると分析。
(確実に成長している。そして、その中心にいるのは基山だ。そして基山だけで成り立っている訳でもないだろう)
基山が中心になっているのは間違いない。だが基山も軽井沢達の影響を受けている。そうでなければ、最初から分かりやすい説明をしている。しかし基山の説明は分かりやすくなっているが、不器用な部分もある。軽井沢達は、それを受け入れているのだろう。
(全く、理解は出来ないが、面白い男だ)
基山真司とは、綾小路清隆にとってどういう存在になっていくのか、まだ誰にも分からなかったのだった。
この小説、このままの文にするか試しに変えた方が良いかアンケート取ります
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このままで良い
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一人称視点で書いてみて
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完全に作者に任せます!