5月初日から早くも1週間が経過した。クラスメイトのみんなは普通に授業を受けていた。
「たうわ!?」
綾小路が声を出した時は驚いたが、なんか考え事でもしてたんだろう。それか寝不足で、夢を見て一瞬で覚めたとか。どっちも外れているだろうけど。
そんな日の昼休み。いつも通り弁当を食べようとしたところ、平田が教壇に上がった。
「茶柱先生の言っていた中間テストが近付いている。赤点を取ったら、即退学なのは全員理解していると思う。そこで、参加者を募って勉強会を開こうと思うんだ」
平田も勉強会を開くつもりだと宣言した。平田の説明だと、中間テストで良い点数を取れば査定が良くなり、ポイントが増える可能性があるということ。
そのために、テスト上位点数者で対策問題を作ったらしい。基山は呼ばれてないが、勉強を教えていた教室で何かやっていたなと基山と教えてもらった軽井沢達は知っていた。
「今日の5時から教室でテストまでの間に、毎日2時間やるつもりだ。参加したいと思ったら、いつでも来て欲しい。途中で抜けても構わない。僕からは以上だ」
平田は教壇から降りる。すぐに点数の危ない赤点組が平田の元へ集まった。どうやら救世主にでも見えている。それにしても――
「見事に時間と場所が被った……」
午後4時50分、教室にはクラスメイト達が残っている。そんな基山の勉強会が始まる前に綾小路が抜けると表明した。
「そう、なんだ」
「少し寂しくなるね」
「すまん。オレも堀北の勉強会を手伝わなければならないんだ」
綾小路の堀北が勉強会を開くという情報に軽井沢達は驚いてた。基山も驚きこそあるが、やると言ったらやるのだろう。
「あの堀北さんが……」
「やると言ったらやるんだろうなぁ。凄いよ」
「じゃあ、なんで櫛田さんと、話してたの?」
森の質問に綾小路は誤解なく、丁寧に答えた。
「櫛田には協力して貰ったんだ。須藤達を集めるためには、必要不可欠だった」
「櫛田もアンタも苦労するわね。あたしにだって、須藤達が勉強が苦手なのと嫌いなのが分かるわよ」
軽井沢の言葉にみんなが頷いた。綾小路は話を続ける。
「まぁ、そういうことがあってだな。勉強会に参加出来るのは今日で最後になるだろう」
「そうか。まぁ俺に出来ることはいつも通り教えることくらいだ。だから遠慮なく、質問をしてくれ」
「お前は不器用だからな。期待しないでおこう」
「いや、そこは期待してくれよ!?」
綾小路の基山弄りに軽井沢達は笑みを浮かべた。
午後5時。基山の勉強会と平田の勉強会が始まった。基山は軽井沢、佐藤、松下、森、佐倉、綾小路の勉強を見る。対して平田はテスト上位者達と一緒に大勢のクラスメイトを見ていた。
基山は勉強を教えることに集中しながら、教わる側の軽井沢達を見ていた。その様子に気付いた軽井沢が声を掛ける。
「基山、そんなに嬉しそうな顔してどうしたのよ」
「いや、みんな自分の力で問題と向き合っている。それがさ、嬉しくてたまらないんだ」
「それは、基山君のおかげだと、思います」
「確かに俺はみんなに勉強を教えた。それでも今は、自分の力で問題と向き合ってるだろ? 立派な成長だよ。先生になるって、こんな気持ちなんだなって、実感した」
基山は自分の言葉を聞いて、少しだけ照れ臭くなった。頭を掻いていると、軽井沢は口を開く。
「なに言ってんのよ。あたし達は寄り添って貰いたいわ。……そして、今以上に成長するから」
「……言ったな、楽しみにしてるぞ」
こうして基山の勉強会は進んでいった。
50分くらい経過した頃、基山の勉強会は休憩を挟んでいた。
「……僕達も少し休憩しようか」
平田の勉強会も奇しくも休憩時間へ入った。基山達は時々平田の勉強会を見ていたが、基山とは違った意味で良いところがあった。
「……スマートよね」
「そうだな。俺と違い、効率が良いな」
軽井沢と基山は軽く言葉にした。佐藤達はその言葉に同意するように頷いた。
「見ていた限り、空気が良いな。誰も不満らしきものを言っていない。分からない問題があれば分かるように難易度の調整も行っていた」
「そうだね。そこは不器用な基山君とは違うところだよね。……だけど、私の気のせいじゃなければ、無理している。特に平田君」
「空気を崩さないようにしてるんでしょ。周りを大切にするあまり、自分を削っている、気がする」
綾小路と松下、軽井沢の分析は当たっている。それは基山達にも十分理解出来た。
「……なんとかしたいな。俺も教える側の苦労とか分かっている気がするから」
「……一番の解決法は、平田の負担を減らすことだ。メンバーの大部分を平田が占めている。オレ達に出来ることがあるのなら、それは勉強をしながら、同時に教え側にも回ること。それと分からないを共有することだ」
「分からないところを共有することで、味方だと認識させるってことね」
松下の見解を綾小路は頷いて肯定した。
「……俺はみんなを信頼しているから言えるけどさ、混ざってやりたい? 別に無理して混ざれとは言わないぞ」
基山の言葉に軽井沢はみんなを見た。みんな頷いている。
「いつもアンタを頼っている。だから、基山のお願いもあたし達は受けるわよ」
「……ありがとう。じゃ、いつでも動ける用意だけしといて」
基山は平田に近付く。
「お疲れ様、平田。勉強を教えるって意外と苦労するだろ」
「基山君。……そうだね。ここまで教えるのに苦労するとは思わなかったよ。それで何か用かな?」
「単刀直入に言うぞ。平田の勉強会に俺達も混ぜてくれないか?」
「願ったり叶ったりだけど、どうして?」
「俺が、いや俺達が平田の力になりたいからだ。それに平田の勉強会は効率も良くて空気が良い。あと、俺一人のやり方だと限界が来そうなんだ。頼む」
基山は頭を下げる。それが最低限の礼儀であると思うから。
「あ、頭を上げてくれ。むしろこっちの方こそお願いしたい。……でも、僕はあの時、基山君を……」
あの時というのが、5月1日の対策会議であることはすぐに理解した。
「確かに、俺はあの時傷付いた。でも、その後で俺は一人じゃないって気付くことが出来た。だから、今度は俺がクラスメイト達に寄り添う番だと思う。これは、心に余裕がある綺麗ごとだけどな。それでも良いか?」
「……お願いだ基山君。一緒に手伝って欲しい」
「分かった。じゃあ、早速で悪いんだが……席を1つずつ空けて欲しいんだ。そこに俺が教えている仲間が入るから」
「分かったよ。みんな、聞いてくれ!」
平田の信用の高さが伺える指示だった。空いた席に軽井沢達は座る。その際、良きコミュニケーションを取っていた。
「これから勉強会を再開する。分からないところがあったらいつでも聞いて欲しい」
「分からないことは別に恥でも失敗でもないぞ。聞いてくれたら、俺は嬉しいし応えたくなる」
「さあ、始めよう!」
勉強会が再開する。基山は不器用に分からないところ、躓いたところを一緒に考える。軽井沢や松下、綾小路も基山流の教え方をしていることが耳に入る。佐藤や森、佐倉は分からないところを共有した。
基山も一人ではなく、複数の教えている生徒がいたからやりやすく、自分のペースを維持出来た。その際、ノートを見せるやり方が称賛された。
なにより平田の負担が激減した。教え戻ってきた基山に声を掛ける。
「ありがとう、基山君」
「気にするな。背中は任せろ……この台詞一度言ってみたかったんだ」
「あははは」
基山は初めて、本当の平田の笑みを見た気がした。
この小説、このままの文にするか試しに変えた方が良いかアンケート取ります
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このままで良い
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一人称視点で書いてみて
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完全に作者に任せます!