ようこそ戦わなければ生き残れない教室へ   作:仮面の観測者

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 最後に少し軽井沢視点があります。


第16話 説教

 基山は軽井沢と松下と共に教材作成室でルーズリーフを印刷した。このルーズリーフは軽井沢達が分かりやすいように作ってあるオーダーメイト製。つまりそれ以外のクラスメイトが見ても分からないかもしれないと基山と松下は考えた。よって、勉強会メンバーと綾小路分の6人分印刷。

 

 放課後、眠かったが少しだけ我慢してコピーした基山の解説付き問題集を軽井沢、佐藤、松下、森、佐倉、そして図書館へ行こうとした綾小路に渡した。

 綾小路は『オレはもうお前達の勉強会に参加していないぞ』と言ってきたが、基山にとっては関係ない。使うにしても、使わないで持っているだけでも良い。それでも渡したかったのだから。綾小路は無表情ながら受け取ってくれた。何を考えているかは分からなかったけど。

 

 流石の基山もここまでが限界であり、勉強会は平田達に任せて机に突っ伏して寝たのだった。

 

「んっ……んん~」

 

 基山は目が覚める。夕焼けが教室を照らしており、教室の中を見渡すと軽井沢達以外いなかった。ちょうど近くにいた軽井沢と目が合った。

 

「あっ、起きたわね」

 

「みんなは?」

 

「今さっき帰っていったわよ。ちょうど起こそうと思っていたところよ。……それより今元気?」

 

 軽井沢は真剣な表情で基山を見つめる。まぁ、今日は寝不足のまま登校したから気になるのだろう。

 

「ある程度は、元気になった! ありが――」

 

「基山」

 

 軽井沢は突然両肩を掴んできた。表情はいかにも怒っている。基山には怒られる理由が本気で分からなかった。

 

「な、なんですか?」

 

「今から、アンタの部屋に行くから。みんなで」

 

「へ?」

 

 軽井沢は一度、後ろに下がってくれた。みんなとは誰なのか、基山は一瞬で分かった。佐藤達も、怒っている。

 前みたいにみんなが慰めてくれた雰囲気は一切無い。あるのは本当に怒っているという雰囲気だけだった。

 

「な、なんで……」

 

「なんで、ですって。……説教よ。アンタに説教するために部屋に行くの。拒否権なんて無いわよ」

 

「り、理由だけでも……」

 

「なんか、言った?」

 

「いえ! 何も!」

 

 怒気を放ち、腕を組んだ軽井沢の前で基山は無力だった。軽井沢は携帯を弄る。誰かに連絡を入れているのは明らかだった。

 

(もしかして、まだ増える?)

 

「行くわよ。逃げられないようにあたしと佐藤が両手を塞いでやるんだから」

 

 連絡を終えた軽井沢がそう伝えてくる。基山は頷くしかなく、立ち上がると軽井沢と佐藤が両手を繋いできた。腕じゃないだけマシなのか、逃げられないと考えた方が良いのか、今の基山に考える余裕は無かった。

 

 

 

 基山達は寮まで到着する。男子の視線が痛くなかったのは、ある意味基山の心がロボットのように固かったからであろう。感じられるほど、余裕もない。

 基山は軽井沢達を部屋の中に通した。基山は一番先におり、部屋は朝の状態。幸い、資料や参考書を傷付けないために軽く整理していた。

 

 基山は気まずそうに振り返る。

 

「正座して」

 

「……はい」

 

 基山は正座した。見上げると軽井沢達が軽く打ち合わせして、佐藤と森、佐倉が前に出た。これから何を言われるのか、ちょっとだけ怖かった。

 

「基山君」

 

 最初に口を開いたのは佐藤だった。

 

「頑張ってくれたのは嬉しいよ。この部屋にある資料と参考書を見て更に嬉しくなっちゃった。でもね、基山君が倒れたらそれ以上に悲しくなっちゃうんだよ! 今日だって基山君が倒れないか心配だったんだから!」

 

「そうだよ! いつも寄り添ってくれる基山君が倒れちゃったりしたら、怖くて、後悔しちゃうの!」

 

「基山君が作ってくれたこの問題集、凄く分かりやすかったです……。この部屋を見て、どれだけ頑張ったかも、理解したつもりです。……だからこそ、倒れたら駄目なんです!」

 

 佐藤、森、佐倉は思っていることを言ってくれた。3人は感情的で瞳が潤んでいた。これだけで基山の心に大ダメージを与えている。反省を促せるが、まだ説教は終わらない。

 3人は下がって、今度は松下が前に現れてきた。笑顔のある圧は未だ慣れない。

 

「基山君が作ったこの問題集、全部見させて貰ったわ。本当によく出来てる。要領が良いのか悪いのか時々分からなくなるわ。……だけど私だって倒れちゃったら心配になるの。ちゃんと反省するように」

 

「はい……」

 

 松下は言いたいことを言えたのか素直に下がった。これで残りは軽井沢だけ……と考えたがふと記憶を遡る。連絡していたことを思い出したと同時に部屋のチャイムが鳴った。軽井沢が出迎えてくれて部屋の中まで案内する。

 やってきたのは一之瀬だった。

 

「一之瀬さん!?」

 

「にゃはは、来ちゃった」

 

「な、なんで?」

 

「実はね、勉強会の途中で私が来たんだ。基山君の様子を知りたくてね」

 

「基山が目当てだとは思ってもみなかったわよ。でもそれであたし達は繋がって、連絡先を交換したって感じ」

 

 そんな流れがあったとは。基山が知らない間に繋がっていたらしい。そして女子の団結力を思い知ることになる。

 

「さぁ、一之瀬。やってしまいなさい」

 

「え?」

 

「うん。基山君、叱らせてもらうからね」

 

 また笑顔で圧を掛けられる。しかも同じライダーである一之瀬からも説教されるとは思ってもみなかった。

 

「私、基山君の姿を見た時、ちょっと後悔したんだ。どうして止められなかったんだろう、協力だって出来たはずなのにって。基山君言ったよね、いつでも頼って良いって。お互い倒れたら心配するだろ? って。それを基山君自身が破っちゃったんだよ! 私ってそんな頼りなかった?」

 

「いや! 違い、ます……」

 

「……それが分かっているなら、今度からちゃんと頼ってね。一人で無茶するのは、駄目だよ」

 

「……はい」

 

 一之瀬の正論と約束を破ってしまった罪悪感が基山の心に湧き上がった。一之瀬の悲しい表情も相まって完全に反省した。

 そして最後の一人が現れる。不機嫌と怒りが合体したような表情をしている軽井沢だった。

 

「まさか、あたしという彼女(役)がいながら、一之瀬を口説いているとは思わなかったわ」

 

「……別に口説いたわけじゃない、です」

 

「あっそ。それよりも今日のことよ。何よあの顔。ゾンビかと思ったわ。本当は心配だったのよ! 強制にでも寝かせてあげたかった! なに、もう少し苦しんでくるよ! バカじゃないの! アンタが苦しんで欲しいと、みんな思ってないわよ! バカ基山! だから……だから! 少しでも良いから、自分を大切にしなさいよ!」

 

 軽井沢は感情を爆発させながら基山にぶつけた。軽井沢も、基山も涙が溢れる一歩手前だった。基山は大変なことをしてしまったと深く反省している。ここまで自分を大切に想っているとは考えられなかった。良くも悪くも普通だと思っていたから。

 

「……あたし達は言いたいことを言ったわ。アンタから言うことはある?」

 

「ごめんなさい!!」

 

 基山はすぐに頭を下げた。今回の件でみんなを心配させてしまったことを十分に理解したからである。

 

「……頭を上げて」

 

 軽井沢の言葉に従って頭を上げた。

 

「……みんなはどう思う? あたしは許しても良いと思うけど」

 

「私も良いと思うよ、ここまで反省しているみたいだし」

 

「最初の時点でもう反省してたっぽいし」

 

「だね」

 

「……私も許しても良いと思います」

 

「逆に引きずられるとこっちが困るわね。それに今回の功績が大きいのも事実だから」

 

 みんなの意見が一致した。

 

「良いわよ、許してあげる」

 

「……ありがとう」

 

 基山は安堵するように息を吐いた。それほど今回の説教は身に刻んだのだ。ただライダーバトルでは、きっと無茶を続ける。それが自分の願いへの道だから。

 でも学校の生活で無茶する時は彼女達が止めてくれると確信する。それが心地よかった。

 みんなの表情からはもう怒りは消えていた。

 

「いやぁ、俺もさ、徹夜はもう懲り懲りだ」

 

「なに当たり前なこと言っているのよ」

 

「そうだよ。それよりも、はいこれ」

 

 一之瀬はビニール袋を渡す。中には消化に優しいゼリーと栄養ドリンクがあった。基山はすぐにポイントを明け渡すために携帯を出そうとするが、一之瀬が止めた。

 

「大丈夫だよ、気にしないで」

 

「でも……」

 

「気にしないの。私が勝手に買ってきただけだから。それに貰うのも気が引けるから、素直に受け取って」

 

「……分かった。ありがとうな」

 

「どういたしまして」

 

「……よし、言いたいことも言えたし、帰るわよ!」

 

 軽井沢達は笑顔で帰っていった。基山にとって、この時間は大切な記憶の一部となるのだった。

 

 

 

 それから基山は復活する。軽井沢達も基山の解説付き問題集を使って勉強会に参加していた。その様子を見て嬉しさが湧き上がったのだった。

 

 時間は過ぎていく。テストの前日にはなんと、中間テストの過去問が配られた。これには流石の基山もびっくりしたが、茶柱先生が言っていた『赤点を取らずに乗り切れる方法はあると確信している』意味を理解する。

 

 基山は過去問を受け取って、自分の作った問題集と比べてみると出ている問題ばかりだった。

 

「いやぁ、俺も凄いことしたんだな。二度としないけど」

 

 ある程度自画自賛した。

 

 そして遂に、中間テスト当日がやってきた。

 

 

 

 軽井沢恵も過去問を貰った。しかし、他の生徒達とは違い、全部過去問に頼ろうとは思わなかった。そしてそれは勉強会メンバーは同じことを考えていると確信していた。

 基山の解説付き問題集を見てみる。そこには過去問には無いものが沢山詰まっていた。

 

(基山、見ていなさい。アンタから貰ったもので、今までよりも高い点数を取ってやるんだから!)

 

 クラスメイトが過去問の存在に喜んでいる傍で、人一倍気合いを入れる恵がいた。




次回辺りで第1巻終わりです。長かったですかね?

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