ようこそ戦わなければ生き残れない教室へ   作:仮面の観測者

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第17話 中間テストを乗り越えろ

 中間テスト当日。クラスメイトは真剣な表情で挑もうとしていた。茶柱先生はトントンとしながらプリントの束を整えていた。

 

「もし、この中間テストと7月の期末テスト。この2つで誰一人赤点を取らなかったら、お前ら全員夏休みにバカンスに連れてってやる」

 

「バカンス、ですか」

 

「そうだ。そうだなぁ……青い海に囲まれた島で夢のような生活を送らせてやろう」

 

 そこまで言うと少し夏休みが楽しみになってきた。基山はシンプルに考えて、周りを見てみるとなんか気迫が伝わってくる。みんなも楽しみなのだろうか。

 

「な、なんだ。この妙なプレッシャーは……」

 

「みんな……やってやろうぜ!」

 

 池の一言で男子達は叫び声を上げた。基山も声は上げなかったが、腕は真っ直ぐ上げた。

 

 やがて収まると、中間テストが始まった。問題は過去問と同じだった。軽く見ただけでも過去問との違いは見つからない。そして基山が作った解説付き問題集があれば高得点は取れると確信した。

 もしかして自分、相当なものを作ってしまったのではと考えるが、まずは中間テストに集中することにした。

 

 中間テストは順調に進んだ。それは周りを見れば分かる。しかし一点だけ、相当焦っている場所があった。須藤が焦っているように過去問を凝視していた。その隣には堀北がいる。見ているだけで非常に嫌な予感がした。

 ……念のため、テストの点数を下げることにした。そもそも、今回のテストの赤点がはっきりしている気がしなかった。

 

 

 

 中間テストを終えると基山は軽井沢達に手応えを聞いた。みんな自信を持って高得点を取れたかもと言ってくれた。軽井沢も「見てなさい」と自信満々だった。自信があるのもみんなが頑張ったおかげである。

 

 そして中間テストの結果の発表日。クラスメイト達は固唾を吞んで待っていたため、只ならぬ気配が蔓延していた。

 茶柱先生と平田が会話をする。正直、平田には余裕がなかった。茶柱先生も手続きという不穏な単語を口にした。

 

「正直、感心している。お前達がこんな高得点を取れるとは思ってもいなかったぞ」

 

 茶柱先生は黒板に紙を貼り付ける。そこにはクラスメイトの点数が記載されていた。基山は英語以外100点を取っている。基山の勉強会のメンバーも1教科は100点を取っていた。その中で軽井沢は社会と数学で100点を取っていた。

 

(みんな、頑張ったな。……これは後でお祝いだな)

 

「見ただろ先生! 俺達もやれば出来るんですよ!」

 

「ああ、お前達が頑張ったことは認めている。だが……須藤、お前は赤点だ」

 

 赤いペンを持ち、須藤の名前の上に一本の線を引いた。

 

「は? なんで俺が赤なんだよ!」

 

「それはお前が英語で赤点を取ったからだ。今回の赤点のラインは41点未満。お前は39点を取っている。よって退学だ」

 

「今回のってどういうことだよ!?」

 

「なら、この学校の赤点の判断基準を教えてやろう」

 

 茶柱は簡単な数式を書いた。81.8÷2=40.9という数字が書かれた。

 

「赤点基準は各クラス設定毎にされている。そしてその求め方は平均点割る2。その答え以上の点数を取ること」

 

 最初に説明してくれたら、一瞬でも喜ぶようなことも無かっただろう。しかし行動に移さない限り須藤はこのまま退学だ。

 茶柱先生が淡々と説明したおかげで、他のクラスメイト達もこれが本当のことだと実感することになった。

 

 まず最初に動いたのは平田だった。採点ミスが無いか確認するが、暗い表情をする。採点ミスは無かった。

 次に動いたのは堀北。彼女は僅かな可能性に賭けて、小数点について指摘する。だが茶柱先生は四捨五入すると切り捨てた。

 

「これでホームルームを終える。私は行くぞ」

 

 そう言い残して茶柱先生は教室を出ていった。基山はそれでも須藤を助けられる方法があるはずだと考えていた。茶柱先生には悪いが、先生の行動について学園側に問い掛けることも視野に入れたが、それすら学園側は容認している可能性もある。

 そこまで考えてポイントでどうするか考えると、綾小路が飛び出していった。続いて堀北も後を追うように出ていく。

 

(綾小路も堀北のポイントでなんとかなるか? だが綾小路だ、何か考えていると思う。……茶柱先生にいじわるされなければ良いけど。……綾小路に乗ってみよう)

 

 基山は立ち上がり教室を出て綾小路と堀北の後を追おうとした。

 

「待って!」

 

 後ろを振り返れば軽井沢達5人がいた。

 

「みんな」

 

「基山、ポイントいくつあるのよ」

 

「……4万ちょい」

 

「頼りないわね。……須藤を助けるんでしょ」

 

 軽井沢の言葉に基山は頷いた。

 

「私は反対かな。須藤君がいなくなった方がメリットがある。それに一部のクラスメイトはホッとしていたわよ」

 

「私も、反対。何を起こすか分からないよ?」

 

 松下と森は須藤を助けることに反対だった。基山はその言葉を聞いて受け止めた。だが止まるつもりもなかった。

 

「俺はあの日、全員は助けられなかった」

 

 基山の言うあの日が5月1日のことを佐倉を除く4人は理解した。

 

「それでも、俺は助けられるなら助けたい。今の自分が出来ることは精一杯やりたいんだ」

 

「……また、自分だけ損することになっても?」

 

 佐藤が基山に問い掛ける。まるで意思を確認するかみたいだった。

 

「うん。俺、後悔しないと分からないんだ」

 

「バカね。……あたし達も力貸すわ。良いわよね?」

 

 軽井沢が勉強会メンバーを見渡す。みんなは迷いなく頷いた。基山は良いのかと言いたかったが、迷っている時間も無かった。

 

「ありがとうみんな!」

 

「今からポイントを預けるわよ」

 

「ああ! ……ポイントってどうやって受け取るんだ?」

 

「アンタよくあの時にポイント返そうと動けたわね!?」

 

「いやぁ、反射的にと言いますか……」

 

「褒めてない!」

 

 軽井沢を除くみんなは苦笑いをしていた。軽井沢からポイントを受け取り方を教わった後、みんなから15000ポイントずつ貰った。これで10万ポイントは超えたものになる。

 

「それじゃ、行ってくる」

 

「行ってきなさい、基山」

 

 基山は少し駆け足気味で職員室に向かう。すると1階の廊下に綾小路と堀北、そして茶柱先生がいた。綾小路も堀北も苦い表情をしていた。

 

「これは、遅くなっちゃった感じか?」

 

「いやちょうど良い。基山、お前は10万ポイント持っているか。今出せるなら、須藤の退学を取り消しても良い」

 

 茶柱先生はまるで試すように基山に言葉を掛ける。珍しく綾小路も堀北も祈るような視線だった。

 

「はい。俺の、俺達のポイントを出します」

 

 基山は自分の学生証を出した。茶柱先生は一瞬目を見開いたが、すぐに微笑み学生証を預かった。

 

「須藤に2点を売るという話、受理した。お前達から合計20万ポイントを徴収させてもらう」

 

 そんな話になっていたのかと今更ながら基山は知った。綾小路と堀北は茶柱先生と会話する。その中で堀北が不良品とクズの違いについて説いた。

 堀北は「ほんの少し修理、変化を与えるだけで、それは良品へと変わる可能性がある」と口にしていた。基山は微笑むだけにした。

 

 茶柱先生の会話が終わった後、俺達は教室へと戻った。堀北が須藤の退学が取り消しになったことを打ち明けるのだった。

 軽井沢と視線が合った時、基山は頷いた。それだけで軽井沢は微笑んでいたのだった。

 

 

 

 中間テストの結果発表をなんとか乗り切った。放課後、基山の部屋に勉強会のメンバーがいた。5月1日の時と違う点は佐倉がいるのと、基山がキッチンに立っていた。

 基山は0円で売ってあった食品を使って、料理を作った。ちなみに今の基山はエプロンをかけている。

 その料理を軽井沢達は食べ続けていた。

 

「基山、アンタめっちゃ作るじゃん!」

 

「なんか、女子力で負けた気がする……。あっ、美味しい」

 

 軽井沢はめっちゃ作ることに驚いており、佐藤はなんか負けた気がしたらしい。

 

「でしょう。俺、料理得意なんだよね!」

 

「趣味に料理って言えるだけ……いやこれ、プロにも負けないんじゃ」

 

 松下も基山の料理の腕を絶賛していた。事実、食べる手が止まらない。松下に同意するように無言に食べ続けていた森と佐倉が頷いた。

 

「いやぁ、流石にプロには負けるよ。でもみんなが美味しく食べてくれるだけで嬉しい」

 

「またアンタは……天然なんだから」

 

 軽井沢は何か呆れていたが、基山はその理由を深く理解しようとは思わなかった。

 

「さぁ、どんどん食べてね!」

 

「これ以上食べると太っちゃいそう」

 

「でも美味しいから、止まらない……」

 

 森と佐倉も基山の料理に釘付けになっていた。みんな箸が止まらない。

 

「俺も食べるか。いただきます!」

 

 基山も皿に料理を乗せて、ベッドに腰を下ろして食べ始める。自分の作った料理だから、その分美味しく感じた。

 この嬉しく、みんなが笑っていられる時間が、基山は好きである。




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