戦い終えた龍騎とナイト――基山と綾小路は現実世界に戻ってくる。そのまま基山は綾小路を連れて自身の部屋へ戻ってきた。
基山は綾小路を机がある場所へと座らせた。コップも出して作っておいた麦茶を入れる。麦茶を入れる音が部屋に響いた。
麦茶を綾小路に出した。
「はい、これ」
「ああ……」
お互いに麦茶を飲んで落ち着いた。その様子を見ていた綾小路がナイトのカードデッキを出す。基山も龍騎のカードデッキを出した。
「それで、何を話せば良いんだ?」
「出来れば全部語って欲しいが……難しそうだな」
「そうだな。確定していることとまだ推測の域を出ないことが多くて……」
基山は困ったように頭を掻いた。その様子を見ていた綾小路は提案をする。
「ならお互いに変わったところを探すぞ」
「変化?」
「デッキ以外に何か変化があるかもしれない。聞くが、部屋にこのデッキが置かれていた以外変わったところはないんだな?」
「ああ、無かったと思うぞ」
「なら……」
綾小路は端末を出す。基山も後に続くように端末を見た。
「っ、なんだ、これ?」
「基山にもあったか」
端末のアプリに昨日までには無かったものがあった。表には『R』と映っている。基山と綾小路はアプリをタップする。すると一番上に数字、その下から文章があった。スワイプして読んでみると、基山は絶句して、綾小路は興味深く眺めている。
(仮面ライダーやミラーワールドのことが書かれている!? それだけじゃない、Vバックルにカードデッキ、龍騎のスペックまで!?)
仮面ライダーが何を意味するのか、ミラーワールドとはなんなのか。大切な知識が書かれていた。……しかし、基山は気付いた。
(願いに関することが書かれていない? それにライダー同士で戦うことも……)
ライダーバトルに関することが表記されていなかった。これが良いことなのか悪いことなのか、今の基山には分からない。
基山と綾小路はルールを見る。
『R(ライダー)ポイント』
契約モンスターにポイントを支払う。それがエネルギーとなる。
ミラーモンスターを倒すことで入手することが出来る。
プライベートポイントに変換することが出来る。
支払えなかった場合、契約モンスターは弱体化する。
「この数字はRポイントというのか」
「そうみたいだな(こんなルール知らないけど、似ているところはあるかな)。それにしても……」
「どうした?」
「いや、誰がこんなものを用意したのかなって。これって……」
「ああ、限られた人物にしか出来ないだろうな」
基山と綾小路は同じ考えを浮かべていた。端末にこのようなアプリを入れ込むことが出来る人間は限られてくる。だがその正体までは現段階では分からなかった。
一通り見終わった基山と綾小路は端末を仕舞う。改めて向き合うと、綾小路は無機質な瞳で基山を見ていた。それはまるで精密機械がこちらを測っている風に見えて、背中に薄寒いものを感じる。
「さてと、俺の知りたいことは大体知ることが出来た。だが、お前は何故あの時迷わず行動することが出来た」
「それは……勘だよ。なんとなく危ない方向が分かるんだ。……綾小路にだって聞こえるだろ、あの耳鳴り」
基山にとって当たり前だった。何故なら仮面ライダー達は耳鳴りで動いていたのだから。しかし綾小路にとってはそうではない。
「そうだな。だが、オレもそこまでの考えは思い浮かばなかった。ノイズとしか、精々耳鳴りだと思っていたんだ、お前が動くまではな。お前はあの耳鳴りを意味のある情報として扱っているのか」
綾小路は試している。自分がどこまで情報を知っているのか。分かってはいるが、基山は前世の記憶で物語として知っていた、なんて言えなかった。
「……それは、さ。なんて言うか、結局、勘に戻ってきちゃうんだよ」
自分でも苦しい言い訳だと思った。綾小路は口が割れないと判断したのか、小さく息を吐く。そして淡々と言葉を告げる。
「基山がそう言うならオレにも考えがある。……オレはお前を観察させてもらう。学園の生活から、目に入る所もな」
「観察?」
基山は言葉の意味をそのまま受け取った。綾小路は無気力な瞳ではない。鋭い瞳で、これが冗談ではないと語っていた。
その上で基山も覚悟を決めた。
「……分かった。綾小路が俺を観察対象にするのは構わない。だけど条件がある」
「……なんだ」
「……死ぬなよ、綾小路。この戦いは命懸けだと思うからさ」
綾小路は無表情を保っている。しかし微かに体が震えている風に見えた。綾小路は一度瞼を閉じて、再び開けると先程の鋭さは無かった。
「観察するって言われた男からの言葉とは思えないな」
「言っておくけど、本心だからな」
「……分かっている」
綾小路はナイトのカードデッキを持って去ろうとする。基山は見送ることにした。
「またな、綾小路」
「……ああ、また明日な」
基山と綾小路はここで別れた。これからどうなっていくのか基山も、そして綾小路も分かっていなかった。
深夜になる前、基山はベッドの上で考えていた。まず絶対条件として、学業を疎かにしない。それでもミラーモンスターが現れたら戦って撃破する。この2つは絶対だった。しかし不安があるのも事実であった。
(俺は、城戸真司みたいに強くないし、あんなに一生懸命にもなれない……だからこそ憧れたり、好きになった)
今日は仮面ライダー龍騎として戦ったが、綾小路が来てくれなかったら危なかったかもしれない。城戸真司は危なくなっても、戦い続けていただろう。そんな勇気は持っていなかった。
ここで基山の脳裏にある考えが浮かび上がった。
「俺が、城戸真司みたいになれたら……」
城戸真司を行動の基準にしようと考えた。強い憧れから考え付いた理想。基山の中で城戸真司の尊敬が大きくなっていく。
「……俺は、城戸さんみたいに逃げない男になれるかな」
これは挑戦であり、ライダーバトルとミラーワールドの戦いへの抗いであった。
一方、その頃綾小路もベッドの上で横になっていた。考えていたのは基山のことだった。
「初めてだ……観察と言われて、拒絶しなかったのは」
綾小路にとって観察するのは当たり前のことだ。利用価値がある駒かどうか判断するために、必要不可欠だった。
普通、こんなことを言われたら気味悪がるか拒絶しそうではある。しかし、基山は受け入れた。綾小路は理解が出来ないでいた。それだけじゃない。
「死ぬなよ、か。こんなことを言われたのも初めてだ。あいつはただの感情で人の生死を気にする人間なのか」
基山は自分の知らないことを知っていると綾小路は気付いていた。本心で話しているが、同時に何かを隠している、いや背負っている風に見えたのだ。
(まぁ、それはこれから観察していけば良い。基山、お前は駒になるのか。それともオレに変数を与えるのか、見極めさせてもらうぞ)
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