入学して1週間が経過した。今日はいつもより登校時間が遅くなってしまった基山。理由は単純に起きる時間が遅くなっただけである。
(まぁ、こんな日もあるよな)
教室へと到着した基山はいつも通り挨拶をする。
「おは……よう……」
基山は挨拶をしたが途中で区切ってしまった。男子が大騒ぎしていたのだ。まるで何かに取り憑かれたような感じである。
(綾小路までいるし。俺を観察対象にするって言った時の表情はどこいった?)
基山は男子の集団の中に綾小路がいることに驚いていた。すると基山の存在に気付いた池が迫ってくる。
「おう、基山。お前も参加しないか?」
「参加する? どういうことだ?」
「良いから来いって!」
「あっ、ちょっ……」
池に無理矢理集団の中へと入れられた。
「いったい何を……えっ?」
基山は置かれていたタブレットを見る。そこには女子生徒の名前とオッズ表があった。そのまま池が口を開いた。
「今な、女子の胸の大きさで賭け事やってんだ」
(女子がいる教室で何してんだ!?)
普通、こういった類のものは誰にも知られずにやるべきなのでは? という考えがある基山。だから心底驚いていた。
「多少バカが付くお前でも、分かるよな?」
バカ、そう言われて現実に戻る。実は、綾小路と共に戦った翌日から基山は城戸真司の真似をしていた。だから多少バカみたいに思われていることがある。
「(この反応からして、上手く城戸真司を真似ていることが出来ているみたいだ。だが、それとこれとは話が別だ。)いや、悪い。こういうのには参加出来ない」
「なんだよ空気読めないな。ほら、あっち行った」
この集団から抜け出せたことに内心安堵しつつ、自分の席に座った。あそこは天国に見せかけた地獄だと思ってしまうのだった。
(まぁ、先生が来たら流石に止めるだろ。それにしても欲望に、忠実すぎるだろ……)
思わず溜め息が出そうになる。
「ね、ねえ、基山君」
「ん? どうしたんだ、佐藤さん」
基山に近付いて話し掛けてきたのは、佐藤麻耶。ギャルである。そんな彼女が、しかも男子に不信感を抱いているであろうこの時に、同じ男子である自分に話し掛けてきたことが疑問だった。
「き、基山君って、ああいうの興味ないの?」
「……興味があっても無くても、ああいう話を教室でするのは駄目だ」
「基山君……。お願いがあるんだけど」
正直、嫌な予感がしていた。佐藤は続きを話す。
「この話、止めて欲しいの。その……あまり良い気分じゃないからさ」
佐藤が思っていることは正しい。むしろ女子にとってこの状況は地獄だ。……正直に言うと迷いたかった。しかし城戸真司なら受けるだろうし、基山真司としてもこの状況をどうにかしたい気持ちはあった。
「分かった。けど俺一人じゃどうしようも出来ないから女子達の力を借りたいんだ」
「何をすれば良いの?」
「今思っていることを視線でぶつけて欲しい。気付いていないだけで、流石にこういう目線で見られていたら止めると思う」
「なるほど……良いよ。私、伝えてくる」
佐藤は女子達に基山が言っていた内容を伝えに行く。基山も重い腰を上げて男子達に近付く。
「(話し掛け辛いけど……やるしかないか)お、お~い!」
「あっ? 基山、やっぱり参加する気になった?」
池が話し掛けてくる。他の男子達は賭け事に集中しており、基山のことなど眼中になかった。
「その、お前達がやっていることなんだけどさ、やめないか?」
「は?」
やめないかと言った瞬間、綾小路以外の賭け事に参加している男子達が一斉に敵意を剥き出しにしてきた。
(いや、怖えぇ!?)
「お前がここまでバカだとは思わなかったわ。欲望死んでいるのか?」
「そうだぜ。これは男である以上やるべきことなんだ。お前はそれが分かっていない」
池と山内の言葉に賭け事に参加している綾小路以外の男子達が頷いている。だからといって基山は引くつもりはなかった。
「じゃあさ、せめて女子達がいない場所で――」
「バカだな、正義の味方気取りか」
「お前はあっち行って関係ないフリしてれば良いだろ」
基山は考えた。これは説得不可能であることを。別にその欲望が悪いとは思ってない。ただ、場所と条件が悪かった。
「そうか。分かったよ。……なら耐えてくれ。女子達の視線から」
「「えっ?」」
男子達は基山の発言で、女子達の視線に気付くことになる。鋭い眼つきや嫌らしいものを見るかのような視線であった。基山も見てみたが――
(女子は怒らせないようにしよう)
そう考えながら基山は自分の席に戻る。男子達も女子の視線に恐れ入ったのか、賭け事はやめて散っていくのだった。
水泳の時間になった。一足先に競泳の水着に着替えた男子達は、朝の出来事を完全に忘れたのか女子達の水着姿を待っていた。結果は――
「女子の水着姿があああ!」
「どういうことだよ!」
楽しみにしていた、又は期待していた女子生徒は見学へと回った。それによって池や山内は残念がっていたが、すぐに復活する。
「欲望に、忠実だなぁ」
「そうだね」
基山の独り言は近付いていた佐藤に聞かれていた。基山は佐藤と向き合う。スクール水着なので、適度に肌が露出していた。
「……基山君ってこういうのに興味ないの?」
「興味がないと言えば嘘になるかな。俺も男だし、本当に興味がないって言ったら傷付くだろ?」
「それもそうだね。……今日はごめんね」
「えっ?」
「損な役回りさせちゃったからさ」
佐藤は今日の朝の出来事を引き摺っていた。損な役回りをさせたと思われている基山は明るく返した。
「気にするな。むしろさ、ありがとう。俺を頼ってくれて」
「えっ?」
「俺さ、今だから言えるけど、佐藤さんの期待を裏切りたくなかったのかもしれないからさ。それに協力もしてくれただろ。だから、お相子ってことで」
「基山君って、変わってるね。でも、肩の荷は下りたかも。……私のこと、佐藤って呼んで良いよ」
「そうか、分かったよ。佐藤」
ここまで会話して先生に集合を掛けられた。先生の言い方には違和感があり、まるで水泳が必要となる場面があるとでも言っているみたいだった。しかし基山の考えはそこで止まる。違和感が残ったくらいで終わって、水泳の授業が始まった。
一通り泳ぎ終わった様子を見た先生が口を開く。
「ではこれから競争をしてもらう。1位になった生徒には特別に5000ポイント、逆に1番遅かった生徒には補習を受けさせるから覚悟しておくように」
まず女子達から競争が始まった。佐藤はギリギリ補習を免れて、1位は水泳部の小野寺だった。殆どの男子は櫛田に釘付けだった。
次に男子の番となった。基山は出番があるまで佐藤と話すことになった。
「お疲れ様、佐藤」
「ほんと、本気で泳いだんだからね」
「頑張ったんだな」
「……次でしょ、基山君の出番。……頑張ってね」
「おう!」
基山の出番になった。一緒に泳ぐ相手には平田がいる。殆どの女子は平田の応援をしていた。だけど基山には勝ちたい理由があった。
(応援されたんだ。期待には応えたい)
合図が出されて泳ぎ出す基山達。元々、運動は好きである基山は平田を抜いて1位でゴールした。
「よし!」
基山はプールサイドに上がって、次に備える。平田は女子からの人気が高く、励ましの声が上がっていた。
決勝戦には須藤と高円寺六助がいる。それに平田もタイムで決勝戦へと上がった。
(須藤なら勝てるかもしれないけど、高円寺に勝てるかどうか……やるしかないか)
勝負でポイントが貰える以上、真剣に取り組もうとする基山。決勝戦が始まると基山は高円寺と須藤に良い勝負をした。
結果は……須藤を抜いたが高円寺を抜けず2位という順位に落ち着いた。
(悔しいが、これが現実か)
プールサイドに上がる。基山の心には悔しい気持ちがあった。そこに佐藤がやってきた。
「お疲れ様」
「……2位になった。負けて悔しいな」
「十分頑張ったよ。相手はあの高円寺だよ。それに、基山は頑張った。ならそれで良いでしょ」
「そうだな。そう言われると納得出来ちゃうなぁ。ありがとうな」
「どういたしまして」
悔しさが完全に消えたわけじゃない。それでも自分は頑張った事実を受け入れる。
こうして水泳の授業は終わるのだった。
この小説、このままの文にするか試しに変えた方が良いかアンケート取ります
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このままで良い
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一人称視点で書いてみて
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完全に作者に任せます!