5月1日。基山は携帯でポイントを確認する。支給されたポイントは0であった。
「まぁ、何の条件も無しに得られた時点で怪しむべきだったか……」
残念なことに基山の勘は当たってしまった。それも最悪な形として。
教室に到着する。ポイントの半分以上を使ってしまった生徒達が、何故ポイントが入らないのか不思議そうな顔をして会話していた。
基山はいつも通り挨拶することはせず、静かに席へと座り込んだ。
やがて茶柱先生が教室に入ってきて、数回生徒達と話をした後切り込んだ。
「……本当に愚かな生徒達だな」
茶柱先生の瞳は先生がして良い目ではなかった。生徒を生徒として見ていないのだから。
(茶柱先生、知っていたんだ。知っていても口に出すことは許されなかった。……だから見ていることしか出来ず、ストレスが溜まっていたのか)
基山は何度も茶柱先生と交流している。それなりにポイントは残してある。余裕があるからこそ、理不尽なんて考えは浮かばなかった。
茶柱先生と平田の話は進んでいく。遅刻や私語、携帯を弄る回数の多さ。ポイントの説明こそされなかったが、義務教育で悪とされたことを平然とやってしまったこと。今、どれだけ遅刻や私語をしようがポイントは減ることは無いと。
平田の論を茶柱先生は真正面から切り捨てていった。
ホームルームの終わるチャイムが鳴り響く。だがここからが本題だった。
Aクラス 940
Bクラス 650
Cクラス 490
Dクラス 0
(これは、各クラスの成績表か?)
黒板に1枚の紙が貼り付けられる。気付いた者達はこれが各クラスの成績表だと判断する。周りは可笑しいやなんでと言った疑問が話されている。
「段々と理解してきたか? お前達が何故Dクラスなのか」
茶柱先生は言った。
「この学校では、優秀な生徒達の順にクラス分けされるようになっている。最も優秀な生徒はAクラスへ、ダメな生徒はDクラスへと。つまり、ここは落ちこぼれが集まる最後の砦だ。お前達は最悪の不良品と言うことだ」
茶柱先生の言葉は続く。この結果はDクラスでも初めてのことらしく、逆に感心したらしい。瞳そのままに立派を2回続けて言い、拍手まで付け加えた。
「俺達は他の連中に馬鹿にされるってことか」
ガンと机を蹴る音が響く。
「なんだ、お前にも気にする体面もあるんだな、須藤。だったら頑張って上のクラスへ上がれるようにするんだな」
「あ?」
「クラスのポイントは毎月振り込まれる金と連動しているわけじゃない。このポイントの数値がそのままクラスのランクに反映される」
ここまでの説明を入れた茶柱先生はもう1つ伝えるべきことがあった。同じように紙を黒板に貼り付ける。それは小テストの結果であった。
「良かったな。これが本番だったら7人は入学早々退学になっていたところだ」
「この学校では中間テスト、期末テストで1教科でも赤点を取ったら退学になることが決まっている。今回のテストで言えば32点未満の生徒は全員対象と言うことになる」
基山の頭の中ではある考えが浮かんでいた。
(生き残りをかけた戦い……まるで、学校版ライダーバトルじゃないか。……どんな点数なんだ)
基山は関りある者達の点数を確認する。軽井沢は下に位置しており、次に森、綾小路、佐藤、松下の順番だった。
「絶対、須藤と同じ馬鹿キャラだと思った……は? はあああああ!?」
池は声を大きく上げた。基山もどうしたと思いながら池を見ると目が合った。
「基山お前! どうして90点を取っているんだよ! バカな癖して!」
基山の取った点数は90点。同率首位の1人だった。
「へっ? ああ……これが現在の俺の実力としか言えない……」
基山は誤魔化すわけでもなく、普通に答えた。前世の記憶頼りに解答しただけとは言えなかった。それに基山は、難しい問題を解いて2問間違えている。だから普通に誇れるような点数でもなかった。
茶柱先生は一度咳払いをして話の続きをする。と言っても、これで最後である。
「それからもう一つ。国の管理下にあるこの学校は高い進学率と就職率を誇る。それは周知の事実だ」
「だがお前達のような低レベルな人間がどこにでも進学、就職出来るほど世の中はそう甘くは出来ていないだろう」
「つまり希望の就職、進学先の恩恵を受けるためにはCクラス以上に上がる必要がある……ということですね?」
平田の言葉を……茶柱先生は否定した。
「それも違うな平田。この学校で将来の希望を通したければAクラスに上がるしか方法はない。それ以外の生徒達に学校は何一つ保証はしないだろう」
「そ、そんな……そんな話は聞いてないですよ! 滅茶苦茶だ!」
メガネをかけた幸村という生徒が立ちあがって慌てる。怒りに満ちていた。基山はこの光景を見ながら考えていたのは、茶柱先生の言葉。
(命が取られることは無い。ただそれ以外はライダーバトルと似ている。……残酷だ)
願いを叶えるためには最後の一人になるまで戦うライダーバトル。Aクラス以外、希望を通すことの出来ない高度育成高等学校。基山は似ているとそれなりに分析した。
幸村と高円寺の口論は終わった。
「浮かれていた気分は払拭されたようだな。お前達の置かれた過酷さを理解出来たのなら、この長ったるいHRにも意味はあったか。中間テストまであと3週間、まぁじっくり熟考して退学を回避してくれ。お前達が赤点を取らずに乗り切れる方法はあると確信している」
茶柱先生は説明を終えた後、教室から退室するのだった。
放課後。基山は平田主催の対策会議にいた。個別に話し掛けられて、基山は承諾した。基山は自身は最初断ろうと考えた。ポイントが減るであろうことを知っていた基山は居心地の悪さを感じられずにはいられなかった。それでも受けようと思ったのは平田の熱意に負けたから。そして城戸真司なら断らないと考えたからだ。
(城戸さんなら断らないから。……それにしても)
教室にいるクラスメイトはポイントの貸し借りをしていた。
(城戸さんなら……もっと被害を抑えられたのか? 俺は……)
軽井沢にポイントを使わないように注意したのは、軽井沢の自立のためだ。佐藤達は偶然通り掛かり、そのまま教えただけに過ぎない。
そんな軽井沢や佐藤達はポイントの貸し借りをしていなかった。基山と同じように教室の光景を見ている。
(目を背けるな。これが現実なんだ。俺は、全員は助けられなかった)
勘だと言い訳した。その結果がこれであった。別に基山は全員を助けられたはずだとは考えない。ただ、行動しなかった。ポイントが減ることが分からなくても、注意くらいは出来た。それをしなかった結果を受け止めようとしていた。
やがて、平田の対策会議が始まった。しかし案という案は出ず、会議は泥沼化していった。クラスメイトも不満が溜まっている。……溜まっている、からであろう。
「ていうかさ……」
不意に池が基山を見る。基山は不思議そうな表情をした。
「どうかしたか?」
「お前、ポイントの貸し借りしなかったよな。ポイントに余裕があるんじゃないか?」
ポイントに余裕があるのは事実だ。この流れが外れても限定パフェを奢れる分だけのポイントは余裕にあった。
追撃したのは山内だった。
「お前、テストで90点取ったよな」
「あ、ああ……」
そして、言ってしまう。
「本当は賢いお前なら、ポイントが減るの知ってたんだろ」
「っ!」
基山の表情が固まる。事実、勘として減るかもしれないとは考えた。茶柱先生の言葉に違和感を覚えたのも確か。何より軽井沢達にそのことを話して、ポイントの危機的状況から免れた。
否定する材料が無かった。
「基山君……それは、本当なのかい?」
平田が基山に問い掛ける。ここで嘘を言っても良かったかもしれない。しかし基山は不器用で、クラスのみんなを裏切りたくはなかった。だから――
「……勘だけどな。この状況まではいかなくても、ポイントが減るとは……考えていた」
言ってしまった。瞬間、クラスの空気が冷めたように感じる。爆発したのは池と山内だった。
「お前知っていたのかよ!」
「どうして言わなかったんだよ! お前、本当は俺達のこと見下してたんだな!」
「ち、違う! そんなことは――」
クラスメイト達の不満が爆発する。そして、その全てが基山に襲い掛かった。裏切り者、見下し、言ってくれがあらゆる暴言となって飛んでくる。平田の静止は意味を成さない。
軽井沢達はそれを見ていることしか出来なかった。耐えられないと考えたからだ。それを見た基山は唯一安堵した。
「出ていけよ! この裏切り者!」
遂には出ていけとまで言われてしまった。基山もこれ以上は耐えられないと判断する。基山は鞄を持つ。
「……ごめん」
謝った後に教室から出ていき、寮へと帰っていった。
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このままで良い
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一人称視点で書いてみて
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完全に作者に任せます!