ようこそ戦わなければ生き残れない教室へ   作:仮面の観測者

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第8話 ルールと手料理

 教室から追い出された基山はそのまま寮の部屋へと戻ってきた。電気は付けず、鞄を置いてベッドの上に倒れ込んだ。

 

「はぁ……」

 

 基山はバカみたいに振る舞ってきたが、心は繊細だった。だから今回のように拒絶されることに慣れてない。慣れても、それは良いとは言えないだろう。

 基山はポケットの中にある龍騎のカードデッキを出して、見る。

 

「城戸さんならどうしてたかな……。言い返していたかな。それは間違えてるって。……でも、俺は言えないよ」

 

 城戸真司と違い、基山は拒絶された時どんな言葉を送れば良いか迷ってしまう。拒絶が更に深まるんじゃないかと恐れてしまう。何より、ポイントが無くて困っている生徒の気持ちを少しでも考えてしまった。

 今の状況が正しいのか間違いなのか、基山には分からない。その解決策も無い。

 

「城戸さんみたいに、なりたいのになぁ」

 

 その時だった。

 

――キイィイン

 

 耳鳴りが響く。基山は起き上がって周りを見渡す。気付けばフードを被った男がいた。顔はフードを深く被っているから見えない。基山はベッドから降りて立つ。

 

「お前は、誰なんだ」

 

「私の正体はどうでも良い。今の私はライダーバトルのGMだ」

 

「っ」

 

 深夜の時と同じようにノイズ混じりの声で自分はライダーバトルのGM、ゲームマスターだと宣言した。

 

「ライダーバトルのルールを説明しに来た」

 

「ライダーバトルの、ルール……」

 

 GMはライダーバトルのルールを説明する。

 

「1つ、ライダー同士で戦い続けて、最後の1人になる、又はライダーポイントが一番高かったライダーが勝者だ。勝者は願いを叶えることが出来る。どんな願いでもだ」

 

 基山はライダーバトルのルールが変わっていることに気付く。GMは続ける。

 

「1つ、ライダーが敗北した時、プライベートポイントの全損、ライダーポイントは倒されたライダーに剥奪、クラスポイント100の損失がある」

 

「っ!」

 

「1つ、ライダーが敗北した瞬間……ライダーだった者はライダーとしての記憶を失うことになる」

 

「嘘、だろ!?」

 

「これがルールの全てだ」

 

 基山はライダーバトルが学校のシステムと深く関わっていること、そして記憶を失うことに驚いていた。

 

(負けたらクラスにダメージを与えるし、記憶を失うって……命があっても、それ以外が削り取られてしまうじゃないか!)

 

「これがライダーバトルの全容だ。お前には戦って貰うぞ、ライダーの一人として」

 

「……俺は……」

 

 ライダーバトルに参戦することに恐怖を覚える基山。しかし仮面ライダー龍騎である以上、戦いは避けられない。そういう力を持ってしまったのだから。

 

「……なぁ、ライダーポイントをどれだけ集めれば、勝者になれるんだ?」

 

「……2000万ポイントを集められたら、上出来だろう」

 

 率直な感想は多いだった。絶望的な数だ。……だけど、それで願いが叶うんなら……やる価値はある。

 

「クラスの連中に復讐することか、それとも永遠の信頼を得ることか。お前の願いを言え」

 

 基山は願いを言う。

 

「俺の願いは……戦いを止めたい」

 

「……なに?」

 

「俺は仮面ライダー龍騎だから。龍騎の力は、人を守るために使う!」

 

 基山はGMに言い放った。それが基山の答えであり、願いだった。

 

「良いのか、お前は全ライダーを倒してまで叶えたい願いか」

 

「ああ。たとえ……たとえ、他のライダーの願いを潰すことになっても、これが俺の叶えたい願いなんだ」

 

 基山は分かっていた。願いを叶えるためにはライダーを倒さなきゃならない。ライダーポイントを集めなければならない。願いを持っている以上、戦いは避けられない。……それでも、叶えたい願いであった。

 

「……なら戦え。ライダーとして、戦え……」

 

 フードの男は鏡に吸い込まれるように消えた。基山は龍騎のカードデッキを見る。

 

「これが俺の願いなんだ。……城戸さん」

 

 

 

 それから基山はRアプリ(ライダーアプリ)を起動してRポイントを見た。続いてルールを確認すると今日説明されたことが書かれていた。

 基山は考えるために使ってないノートを開いて、どうやってライダーバトルを戦い抜くか箇条書きする。

 

「モンスターを倒してRポイントを稼ぐだろ。ライダーと戦う時はまずは説得する。……出来ることなら他のライダーも脱落して欲しくないなぁ。協力とか出来ないか?」

 

 自分のルールを書いていく。それは甘ったるい理想なのかもしれない。だとしても、書かずにはいられなかった。

 悩んで、迷って、消してを繰り返していく。気付けば結構時間は経過していた。

 

 そんな時、携帯に連絡が届いた。

 

「軽井沢?」

 

『アンタの部屋に行きたい。だから案内して。ロビーで待ってるから』

 

「?」

 

 取りあえず、基山はノートを元あった場所に戻して、寮のロビーに向かうことにした。

 ロビーに到着するとそこには軽井沢、佐藤、松下、森の4人が待っていた。ちょっと緊張しながら軽井沢達に声を掛ける。

 

「き、来たぞ……」

 

「全く、遅いわよ」

 

「軽井沢さん、ソワソワしてたもんね」

 

「麻耶、余計なこと言わないで」

 

「ごめん」

 

 佐藤は謝りながらも微笑んでいた。基山は軽井沢や松下が白いレジ袋を持っていることに気付く。

 

「軽井沢、松下さん。それは?」

 

「そう言えばまだ言ってなかったね」

 

 軽井沢は立ち上がる。それに合わせて佐藤達も立ち上がった。

 

「あ、アンタの部屋で、料理作ってあげるんだから」

 

「……分かった?」

 

「なんで疑問形なのよ!」

 

 ということで基山は軽井沢達を部屋まで案内する。部屋に到着すると基山は変に緊張してきた。

 

(今更だけど女の子を部屋に連れて来たことなかったなぁ)

 

「意外と普通の部屋だね」

 

「俺自身もそんなに物欲があったわけじゃないからな」

 

 森の質問に基山は普通に答えた。軽井沢と松下は部屋のキッチンへと真っ直ぐに向かった。佐藤と森は基山の両手を塞ぐ。

 

「へっ?」

 

「ごめんね。基山君には何もさせたくないの」

 

「基山君は私と森さんの話し相手になってもらうからね!」

 

「あ、ああ……分かった……」

 

 基山達は机の前に座り込む。基山は奇しくも佐藤と森に挟まれてしまった。

 

(こういうのって喜んだ方が良いのかな?)

 

 基山達は会話をする。主に基山に対する質問が多かった。その間にも料理は進んでいき、良い匂いがしてきた。軽井沢はずっとキッチンにおり、松下達が交代しながら料理を進めていく。

 その様子を基山は見ていた。

 

「気になる?」

 

 松下の質問に基山は微笑みながら答えた。

 

「気になるけど……それ以上に嬉しい」

 

「嬉しい? それは女の子達の料理を食べられるから?」

 

 松下はどこか試すように聞いてみる。基山はそれを分かりながら素直に返答する。

 

「それもある。だけど、みんなといるってこんなにも輝かしい日常なんだって思う。……心の底から守りたいものがあるって実感するんだ」

 

「ちょっと飛躍し過ぎじゃない? 嬉しいけどさ」

 

「そうかもね。それでも、みんなといれて、嬉しい。俺の居場所がちゃんとあるんだって分かる」

 

 この素直さにみんなはなんて答えれば良いか分からなくなる。ただ、心は温かく不思議と微笑んでいた。

 やがて軽井沢が言う。

 

「出来たわよ。それじゃあ食べましょう」

 

「待ってました!」

 

 順番に盛り付けを行い、机に持っていく。出来た料理はカレーだった。基山の隣には軽井沢と佐藤がいた。机の大きさが中途半端なせいで少々きついが気にしないことにした。

 

「「いただきます」」

 

 基山達はカレーを食べる。女子達は談笑しながら食べる中、基山だけは黙々と食べていた。

 

「ちょっと、何かないの?」

 

「……美味しい。凄く、美味しい」

 

 基山の言葉に嘘はなかった。心まで温まる料理であり、基山はまた黙々と食べ続ける。

 

「……バカ。当たり前でしょ」

 

 軽井沢はそう言いながらも、とても安心した表情をしていた。その様子を微笑ましく見ている佐藤達。

 

「「ごちそうさまでした」」

 

 カレーを食べ終える。とても美味しかったカレーと、心温まる時間だった。

 

「ありがとうな、俺のためにここまでしてくれて」

 

「彼氏(役)であるアンタが元気がないとこっちが調子狂うのよ」

 

 ツンデレみたいな回答をする軽井沢を見て基山は笑った。佐藤達はそれを見て安心した。

 

「ただ、ちょっと真面目な話になるんだけど。勉強どうする?」

 

「アンタ、今それ言う!?」

 

「まぁ、俺に提案がある。……俺がみんなに勉強教えるよ!」

 

 基山は言い切った後、渾身のドヤ顔をした。みんな呆気に取られている。でも元気は出たという証拠にもなった。

 

「アンタ、教えるの得意なの?」

 

「分からない。ただ頭が良いだけ。それと分からないところがあったら一緒に考えるくらいしか出来ない」

 

「十分じゃない?」

 

「良いね! よろしく、基山先生!」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 松下が突っ込み、佐藤が流れに乗って、森が慌てふためきながらも答えてくれた。問題は軽井沢である。軽井沢は勉強が苦手だと考えている。素直には乗れないのが現状だった。そんな軽井沢に基山はちょっと真剣になって言葉を紡ぐ。

 

「軽井沢、自分自身を変えたいと思うか?」

 

「なに、急に……」

 

「勉強は良い、なんて口では簡単に言える。どうしても分からない、苦手な問題はある。でも、それが分かった時、最高じゃないか? 自分自身が変わったみたいでさ」

 

「……」

 

「勉強って誰のためでもない、自分自身の血肉にするためにあるものだと思う。自分自身が変わったと思える第一歩でもある、って俺は考える。……軽井沢は自分自身に自信を持って欲しいんだ。強引に変われなんて言わない。一歩ずつで良い。軽井沢も……変身して欲しい」

 

 軽井沢は自らの過去を思い出す。悲惨だった。いじめられて、心をズタボロにされて、寄生という生き方を考えなければならなかった。

 

 目の前にいる基山の言葉を聞く。『変身』。それを聞いたのは自分を助けてくれた時。竜騎士のような姿であの怪物と戦っていた。言葉通り、変わった。

 軽井沢は、自分を変えられるか考える。問い掛けてみても分からなかった。でも目の前にいる基山は今まさに、自分に手を伸ばしている。……軽井沢の答えは決まった。

 

「しょうがないわね。ここまで言われたら、応えるわよ」

 

 軽井沢は基山の伸ばしてくれた手を掴んだ。自分自身で『変身』するために。

 

 基山の勉強会が決まった。明日からということになり、色々と決めた。基山は自分がミラーモンスターでいなくなるかもしれないからと、松下にいない時の代理を頼んだ。松下は驚いたが――

 

「しょうがないかな」

 

 引き受けてくれた。基山は決意する。

 

(軽井沢や佐藤達が笑える未来と日常は、守ってみせる。それが、俺の戦いだ)

 

 不器用な基山なりの決意であった。

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