再度、なのはさん宅リビング。
今度は横に金髪のお姉さん、向かい側にオッドアイの少女となのはさんが座る。
なのはさんがキッチンからジュースを持ってくると各々に注いで自分の分を口にする。
左手は再び固定の魔法で固めた。
このまま今は回復魔法を使って治療中だ。
しばらくは動かせないが。
それにしても・・・誰も何もしゃべらない。
「・・・なのはさん、私のこと知ってたんですね。」
黙っていても何も進まない。
どうするにしてもまずは状況把握。
脱走するときもシューにそういわれた。
「え・・・?」
なのはさんが聞き返してくる。
「だって、私が逃げたとき“アスナ”って呼んだじゃないですか。」
「あ、しまった・・・」
自覚なし、か。
まぁ、コレで私も認めたことになる。
自分が追われている立場の人間であると。
そして、わかったことは・・・
「もしかして、なのはさんは管理局の人ですか?」
ほとんど確証に近いが、あえて聞く。
「・・・はぁ。」
なのはさんは一息つくとゆっくりと話してくれた。
「うん。私とフェイトちゃん・・・あぁ、紹介がまだだったね。アスナのとなりの人が本局所属のフェイト・T・ハラオウン執務官。で、私は地上部隊所属高町なのは一等空尉。戦技教導をしてるの。で、この子が私たちの子供、高町ヴィヴィオ。」
・・・最悪だ。
本局の執務官と言えばエリートの中のエリート。
管理局員の中でも様々な権限を持ち、その中には捜査権や逮捕権もあったはず。
そして、戦技教導官。
こっちはそれほどの能力がなくてもなれると一見思えるが、実は実戦において、執務官以上に働くと言われている。
さらにはその子供。
どう考えても普通に生活しているとは考えにくい。
・・・ん?子供?
ヴィヴィオって、誰と誰の子?
髪や瞳の色から、多分フェイトさんだと思うけど・・・父親は?
・・・もしかして、なのはさん!?
「ち、ちがうよ!?私とフェイトちゃんはそんな関係じゃないよ!?」
いきなりなのはさんが私の思考を呼んだかのように叫ぶ。
な、なぜわかった!?
「・・・あ~、アスナちゃん。考えていることが口から漏れてるよ。」
フェイトさんが苦笑気味に忠告してくる。
ま、まじですか。
「けど、私は全然なのはとそんな関係でも構わないけどね。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
・・・うん、何も聞かなかった。
ヴィヴィオは嬉しそうにほほえんでるし、フェイトさんは恥ずかしそうに顔を朱くしてるけど・・・
そして、なのはさんは、
「それでね、私とフェイトちゃんはアスナちゃんの捜索依頼を受け持ってるの。」
流してる。
超自然に流してる。
あぁ、フェイトさんが寂しそうにジュースをすすってる。
「で、出来れば、何で逃げてるのか、教えて欲しいんだけど・・」
・・・何を言ってるの?
「もしかして、理由もなく私を追いかけてるというわけでは・・・」
「あぁ、ないない。ちゃんと理由はあるんだけど、それにしては・・・ねぇ。」
「・・・・・・?」
「・・・・じつはね。今回の捜査に当たってるのは地上部隊だけで6つ。執務官は2名、そして特別捜査官1名までいるの。たった一人の捜索のために。」
それはまた、すごいというか・・・
「でね、その理由が保護対象者が危険能力者だからってだけなの。どの程度危険なのかとかそういうのは一切なし。まぁ、あなたの魔法ランクぐらいは知ってるけど、それもこんなに人をさくほど危険ではないはずなの。」
だからね。っと言われる。
つまりだ。
そこまでしか
それ以上知ると何かしら決着を付けなくてはいけない。
ということは、私がしゃべればなのはさん達を危険な目に遭わせるといことでもある。
それは、いいのだろうか。
・・・ダメだ。
巻き込むわけにはいかない。
けど・・・
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
話さないとここから解放されそうにもない。
まぁ、施設にとっても私が切り札だ。
私が帰らなければ計画は露見して中止、運が悪くても凍結となるだろう。
それに、シューもいる。
シューが私と一緒に彼らから逃れていれば計画は少なくとも進まない。
「・・・わかりました。」
『ちょっ、アスナ!!』
シューが警告を発してくる。
すごく焦っているのか、マスターとは呼ばずに呼び捨てだ。
『いや、ちょっと話すだけだよ。』
『この人達まで巻き込むんですか!?』
『しょうがないよ。もう私をこうやって匿った時点で巻き込まれてる。変わらないよ。』
『しかし・・・』
『ね、お願い。』
『・・・はぁ、わかった。だけどあんまりしゃべりすぎないようにね。特に私のこととか。』
『うん。わかってる。』
私は息をつくと話し始めた。
* * * * *
私の出身世界、第8管理世界は、自然と魔法科学が共存した世界だ。
星の約6割が海におおわれ、陸地もそのほとんどが緑に覆われている。
所々に家が建ち、畑などはほとんど見あたらない。
では、食料などはどうしているか。
それは地下の大構造体にある。
魔法による光の集拡散技術が確立され、少ない地上の鏡からその百倍にもなる地面を照らすことが出来るようになったのだ。
だから地上にあるのは教会や、裕福な家の別荘だ。
ほとんどの住居は地下に存在する。
唯一の例外が、政府管轄の施設。
自然調査や観光用宿泊施設。
そして、実験施設。
とくに、人体に被害が出るものは地上で行われることが多い。
そんな施設の一つに私はいた。
いや、いてしまった。そうとは気づかずに。
政府支援孤児独立支援教育施設。
それが私のいた施設の表向きの名前。
親や保護者のいない孤児を施設に連れて行き、成長させて独り立ちできるように支援する。
そのための、孤児支援法という保護者のいない子供は政府が施設に連行できるという少々強引な法律もある。
そしてそれはいいことだと少なくとも一般市民にはそう認識されており、私も連れて行かれるまではそう思っていた。
しかしその実態は、人体実験施設。
子供を材料とした非合法的危険実験の実施。
人造魔導師や戦闘機人、サイボーグ、医療技術、・・・あげだしたら止まらない。
連れて行かれて三ヶ月、私は初めてその実態を知った。
そして、それからは地獄の毎日だった。
研究ラボに連れて行かれ、薬や魔法を使われたあとベッドに縛り付けられる。
そして、終わったら部屋に監禁。
食事は一応三回もらっているが、その内容は全て栄養剤。
肉や野菜などはあまり食べたことがなかった。
唯一、毎週日曜日は安息日と言うことで
その日だけは肉も、野菜も食べられた。
そして、施設の中をゆっくりと闊歩できた。
そんな中、出会ったのがシューだった。
たまたまどこかの研究室に入り込んでしまい、シューに話しかけられたのだ。
『私をここから連れ出してくれませんか。』
そういわれたとき、私は首を振った。
「無理だよ。ここから私は出られない。外に通じる道さえわからない。」
実際、私は施設に連れてこられるまでは目隠しをされていたし、外に通じる門や道は全て封鎖、近づくことさえ禁止されていた。
『平気です。私が導いてあげられます。あなたには素質がある。』
「素質?」
『えぇ、魔法の素質。』
「・・・はははっ」
私は思わず笑った。
「そんなわけないよ。今まで使ったことも使えたこともないし。」
『いえ、それはあなたが知らないだけ。私が引き出してあげます。』
「・・・・本当に出来るの?」
『えぇ、保証しましょう。』
それから私は毎週のようにそこに通った。
綿密な計画を練り、どのように行動するか、そして、魔法はどのように扱うか。
そしてやってきた半年後。
私とシューは
* * * * *
「というわけで、私は今となります。」
『・・・結局私のこともしゃべってるし。』
『し、しょうがないでしょ?いきさつ上シューの登場は必須なんだから。詳しくは話してないんだからいいじゃない。』
『はぁ、しょうがないですね。まぁ、ばらされてまずいことは言ってないようですし。』
シューと念話で言い合っているとなのはさんの実声が割り込んだ。
「えと、シューっていうのは?」
「あ、はい。デバイスです。インテリジェントデバイス、正式名称“シューティングスター”。」
「へ~、流れ星かぁ。かっこいいね。見せてくれる?」
「えと、はい。」
私はポケットからシューを取り出す。
シューの待機形状はペンダントだ。
細い鎖の先に星をかたどったシルバーのアクセサリー。
「すてきだね。」
<ありがとうございます。>
シューがお礼を言う。
「ですよね、フェイトさんもそう思いますよね!?けど、シューったら<機能性を追い求めたらこの形になった。>って夢のないことを言うんですよ。」
<事実そうですから、マスター。>
「ははは・・・」
しばらく、デバイス雑談をする。
フェイトさんやなのはさんもそれぞれのデバイスを見せてくれた。
どちらもが私には目新しく、・・・というか、私はシュー以外のデバイスを知らない・・・色々な機能のことを聞いた。
その内の大半はシューも持っていて、そこでまた言い合いになる。
何で教えてくれなかったのか~って。
<マスターにそんなことを教える暇はありませんでしたから。>
そういわれた時はもう、返す言葉もなかったけど・・・
できの悪いマスターでゴメン。
『マスター!!』
雑談に花を咲かせていると急にシューが声を上げた。
いや、正確には念話か。
『なに?』
『家の外に多数の気配が・・・おそらく施設の連中かと。』
『・・・二人に裏切られた?』
『いえ、この家からはそのような通信は・・・おそらく探査魔法によるものだと思います。』
『逃げる算段は?』
『この三人をおいてですか?』
『・・・・・・別にあいつらは私が話したことを知らないんじゃ、』
『甘いです。彼らがそんなことで見逃すような甘ちゃんではないことは分かったことです。』
『・・・状況的には?』
『今のところ、最悪の状況としか。』
『つまり・・・』
『はい。やるしかありません。』
話が決まると私は席を立つ。
とたん、なのはさんとフェイトさん、そしてヴィヴィオの会話がとぎれる。
心なしか、なのはさんは警戒を顔に浮かべている。
「再度確認します。なのはさん、フェイトさん。あなた方は管理局の人間ですね。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
こちらの意図を探るような目を向けられるが、二人はしっかりとうなずいた。
よし、これで言い訳は立つ。
「・・・そうですか。」
私はいかにも哀しそうな顔をするとばっと高速移動をする。
場所は・・・ヴィヴィオの真横。
「動かないで!!」
私はヴィヴィオの頭に人差し指を突きつけて叫ぶ。
即座に動こうとしたなのはさんとフェイトさんが半立ちの状態で静止する。
「うごくと、この子がどうなるか、分からないですよ。」
指先に軽く発光魔法をかける。
その行動になのはさんとフェイトさんがすさまじい緊張感を漂わせる。
『マスター・・・悪役が板に付いてますね。』
『うるさい、やる時はやるのよ。これでも。』
『それにしても、手慣れているといいますか・・・』
『そうでもないよ。今でも心臓ばくばく言ってる。』
『そんな緊張されなくても・・・手先の魔法はただの発光魔法。光るだけで何の害もありません。それどころか、傷一つつけることなんて出来ません。』
『こういう演技自体が初めてなんだからいいの!!』
「・・・アスナちゃん、ヴィヴィオを離して?」
なのはさんが優しく語りかけてくる。
その笑顔は若干怖い。
・・・当たり前か。
一人娘を、保護してあげた人にいきなり人質に取られたんだから。
理性を失っていないこと自体がすごい。
「すみませんが、少しの間付き合ってもらいます。もちろん、危害を加えるつもりはありません。」
「別に付き合うのはいいけど、そんな事しなくても私はついて行くから。」
言いつのるなのはさんに私は首を横に振る。
「・・・ゴメンね、ヴィヴィオ。ちょっとだけ付き合って。」
ぼそっと呟くと私はヴィヴィオを歩かせて玄関へと向かった。
後ろから機会をうかがっているなのはさんとフェイトさんに内心謝りながらも玄関の扉を開けた。
するとばっとこちらを玄関前にいた男達が振り向く。
全員黒服のスーツ。
常人だったらあまりの異様な光景に萎縮するだろうが、私にとっては日常茶飯事。
なんせ、施設の人間の約8割はこのスーツを着て仕事をしている。
男女共だ。
着ていないのは研究員と思われる一部の白衣を着た人間だけだ。
言わせて頂ければ、彼らはいわゆるモノクロなのだ。
だから私は白も黒も嫌い。
好きなのはカラー、色。
色が付いていれば私は大概好きだ。
それがたとえ血の赤であったとしても。
「動くな!!」
取り押さえるために動こうとした数人を見て私は叫ぶ。
もちろん、指の先の発光魔法は発動したままだ。
「検体番号FHC2705-13Aだな。」
黒服の一人が呼びかけてくる。
「違う。私はアスナ・シルフィードだ。」
「どちらも一緒のこと。その子を離して我々の元にもどってきなさい。今ならまだ寛大な処置で・・・」
「うるさい!!私は戻らない。絶対にだ!!」
「・・・そういえば、インテリジェントデバイス
「あるよ、ここに。」
「そうですか。ならそれだけでも私達に返して下さい。そうすれば、あなたのことを自由にしてさしあげましょう。」
「・・・えっ?」
一瞬、なんて言われたか分からなかった。
「だから、H280001を私達に返してもらえば、あなたに用はありません。今後は自由にしてもらってかまわないと言っているのです。」
自由?この私が?
あのつらい実験から、あの狭苦しい施設から、私が解放される?
「・・・・・・」
『・・・マスター。』
シューが念話で私を気遣うような声を上げる。
その裏にある思いが伝わってくる。
私をあいつらに差し出してもいいですよ、と。
私は一瞬、そうしたい衝動に駆られる。
そうすれば、私は晴れて自由の身だ
・・・けど、
「断る!!」
そう答える。
当たり前だ。
あいつらは自由にしてあげると言った。
私を施設から解放すると。
私は
つまり、私は戻っても、シューを渡しても殺される。
そういうことだ。
いや、もどれば殺されはしないけど、今まで以上にひどい実験が私を待っているに違いない。
そんなのゴメンだ。
「さっさと散れ!!私の前から消えて!!さもないとこの子の親が所属する管理局が私ごとあなた達を潰すよ!!」
そう叫ぶ。
これで少しは引いてくれるはず・・・
「ははっはははっはははは・・・」
しかし、男達は笑ってそれを流した。
「管理局?それがどうした。私達は管理局なんて怖くないぞ?」
『マスター、無駄です。彼らの裏には管理局の高官達がついています。そんなのはどうとでもなるのでしょう。』
『・・・くそ、他に手はないのか?』
『・・・・・・一つだけあります。』
『何、あるの!?』
『はい。・・・ただ、後ろの二人にも演技に協力してもらわないといけなくなりますが・・・』
『・・・念話をしている暇はないわね。』
『では、私の言うとおりに・・・』
私はまず一歩横に移動する。
すると、ちょうど真後ろにいたなのはさんとフェイトさんが彼らの視界にしっかりと入る。
「彼女たちを見ても、そんな風に言える?」
「・・・・?」
いまいち理解していないような彼ら。
なのはさん達もクエッションマークを頭上に浮かべている。
もちろん、私も分からないが・・・
「何を隠そう、そこにいる髪が亜麻色の女性は管理局のエースオブエース。小4の頃にかの
ピクッと何人かが震えた。
なのはさんも心なしか青筋が立っているような・・・
なぜ?
「そして、その横の金髪の女性。本局執務局のエースであり、同時にあの白い悪魔を恋い慕う女性。白い悪魔と力を合わせ、闇の書事件を根性と愛で解決。破壊不可能といわれたロストロギアをもその情愛で木っ端みじんにしてしまったという疾風の恋姫。」
さらに幾人かが体を震わせる。
フェイトさんの顔も笑っているのになんかオーラが・・・
「さらにさらに、未だ記憶に新しいJS事件では機動六課隊長として聖王のゆりかごに単独で潜入し破壊。同時にスカリエッティのアジトまでをも崩壊に追い込み、その驚異的な力で事件を解決。聖王までを泣きついて謝らせたといわれるのは彼女たち二人の事よ。」
今度は黒服の男達全員が一歩下がった。
いや、正確にはなのはさんとフェイトさんから身を遠ざけた。
そして、ヴィヴィオが苦笑し、・・・何か後ろからすさまじいオーラを感じる。
一瞬振り返ると二人とも笑っているのに、目が燃えていた。
いや、別に本当に二人のことを言ってるわけじゃないんだから、そんなに怒らなくても・・・
「そんな彼女たちが怖くないなら、私を捕まえに・・・」
そこまで言ったところで誰かに両肩を捕まれた。
振り返ると杖のような・・・そう、デバイスを持った二人が私の方をいたいほどつかんでくる。
「・・・あ、あの?」
あまりの負のオーラに逃げろと本能が訴える。
しかし、いくら動こうとしても動けない。
「アスナちゃん、ちょっと頭を冷やそうか。(ニコッ)」
「大丈夫、痛くはしないよ。一瞬だから。(ニコッ)」
いつの間にかヴィヴィオが私の腕から逃げ出し家の中に入っていった。
「全員、退避~~!!」
黒服の男達も駆け足で逃げていく。
よ、よし。これで脅威は去った。
あとは事情を二人に・・・
「あ、あの!!」
「「んっ?何か遺言でもある?」」
ゆ、遺言って何!?
私、もしかして何か地雷でも踏んだ?
「き、協力ありがとうございました。こんな茶番に付き合わせてしまって申し訳なかったと言いますか、」
「あ、なのは。ここでやると周りに被害が出るから、訓練場に連れて行こう。」
「そうだね。そこでお仕置きすればいいね。それじゃぁ、いこうか。」
そのまま私はずるずると引きずられる。
「ママ達、頑張ってね~~。アスナさん、ご愁傷様です。」
ヴィヴィオがドアから顔をのぞかせて手を振っている。
てか、ご愁傷様って!?
数分後、私の悲鳴が、青い空に響き渡った。
* * * * *
「ほんと、ごめんね。」
「傷の方は大丈夫?まだ手当てしてないところとかない?」
現在、私は管理局の施設と思われる場所の医務室で治療を受けていた。
泣きついて謝りまくり、事情を説明した私の声もいじめ・・・もといお仕置きが終わったあとでやっとの事で届いた。
「いえ、説明していなかった私も悪かったと言いますか、まさか本人だったとは露にも思っていなくて。」
そう、私はまさか二人が話の本人だとは気づかず、シューの言ったまんまを口にしていた。
そして、私の話を聞いて激怒した二人が訓練場で・・・思い出したくもない。
「ま、そのことはおいときましょう。それで、今後はどうする?」
「どうするとは?」
なのはさんの質問の意図が見えない。
「う~ん、ほら。今私達はあなたを捜索していたんだけど、ここでもしあなたが管理局に保護を求めるとね。その捜査はいったん中断。あなたを管理局の名の下に保護して、話を聞きながら別の捜査を行うことが出来るの。」
フェイトさんが丁寧に説明してくれる。
「その場合、保護者として私となのはがあなたの保護者となるんだけど、どうかな?」
「・・・つまり、管理局にいても私をあの施設に送り出さないと言うことですか?」
私の答えにうんと二人はうなずく。
『どうする、シュー?』
『そうですね。・・・それが最善の気がしますけど、』
『管理局もどこまで信用できるか分からない?』
『はい、マスター。先程の施設の奴ら態度も気になります。』
・・・管理局の高官が背後についてるか。
『けど、この二人は悪い人ではないと思うよ?』
『・・・あんな事されて、よく言えますね。』
『うっ、まぁ、そうなんだけど・・・話をしていた感じがね。』
『・・・私はマスターの意志に従います。』
『そう。なら今後ともよろしくね。』
『はい。』
「・・・では、それでよろしくお願いします。」
「よし、話は決まったね。書類はもう出来てるからあとはここにサインして、・・・そうそう、それでこれを事務に出せば、OK。」
「これでしばらくは私達の家族だね。」
「そうだね。ヴィヴィオとフェイトちゃんと私、そしてアスナの四人家族。」
「・・・家族。」
二人から出た言葉に、不覚にも涙が出てきた。
「あ、あれ・・・?」
止めようと、目をごしごしとこするが、気持ちがあふれて、止まらない。
「え、やっぱりどこか痛い?」
なのはさんが心配そうにのぞき込んでくる。
「い、いえ、そういうわけでは・・・その、すぐに泣きやみますから。」
そういうが、なかなか止まらない。
ど、どうして・・・
「・・・いいんだよ。泣いても。気持ちを抑え込まないで。」
不意に後ろからフェイトさんが抱きしめてくれる。
暖かい感覚に包まれて、余計に気持ちがあふれ出す。
「寂しかったんだよね、一人で。・・・でも大丈夫。私達がもういるから。」
「うん、そうだね。」
なのはさんも私の手を握ってくる。
そ、そんな事されたら、私・・・
「「もう、だいじょうぶだよ。」」
二人の暖かさに包まれながら、私は泣いた。
暖かくて泣いたのは・・・この感覚は、ほんと久しぶりだった。
* * * * *
「というわけで、今アスナちゃんは医務室のベッドで寝てるよ。」
『そうか~、いやお疲れさんな、なのはちゃん。』
医務室の外の廊下でなのははモニターに向かってしゃべっていた。
相手ははやて。
元機動六課部隊長現本局特別捜査官八神はやて二佐。
今回の捜査の責任者でもある。
「ううん、とてもいい子みたいだから私としてはほっとしたかなぁ。」
『アスナちゃんがヴィヴィオを人質に取った時、焦ったやろ?』
「にゃはは。いきなりあんな事されるなんて思いもよらなかったよ。」
『けど、動かなかったみたいやないか。』
「それはヴィヴィオに魔法の発動した指先を突きつけられていたから・・・」
『嘘やな。どうせすぐに気付いたんやろ?外に不審人物がぎょうさんおることに。』
「それもあるけど・・・発動していた魔法もただの発光魔法だったから。」
『・・・なんやそれ、つまりブラフやったんか、あれ?』
「そう。・・・多分、私達を巻き込まないためのね。」
『なんや、話を聞いてるとホントいいこのようやな。』
「うん。頭の回転も速いし、魔法の素質も高そうだよ。」
『へぇえ、・・・教導魔導師としての血が騒ぐか?』
「へへへ、うん。あの子の意思次第だけどね。」
『まぁ、そこら辺はお任せやな。それで今後は?』
「う~ん、さっき寝かせた時に気付いたんだけど、あの子左手骨折してるみたいなんだよね。」
『・・・逃げてる最中にか?』
「たぶん。でも、それは自己責任の域だろうから向こうを傷害で訴えることは出来ないね。」
『そうかぁ、・・・ま、ならまずは病院か?』
「うん。病院に連れて行って、治療のついでに簡易検査。・・・話を聞く限りじゃやばそうな薬も使ってそうだし。」
『せやな。それで何か見つかれば・・・』
「・・・フェイトちゃんの出番かな?」
『一応、うちもやけど。』
「そうだね、特別捜査官さん。」
『ははは・・・ほなら、検査結果が出るまではそのまま現状維持ということで、検査結果如何で今後のことを決めるか。』
「うん。けど、いくつかのパターンは予想して対策を練っとかないと。」
『了解や、そっちはこちらで会議しとくから二人はアスナちゃんの安全をよろしくな。』
「は~い。では、状況報告終わりです。」
『はい。ではまたあとで。』
ピッという電子音のあとに回線が閉じ、モニターが消える。
なのははしばらく外の空を見上げていた。
next day and to be continue...