魔法少女リリカルなのは -アルカ・ティ・エーナ-   作:星伝

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第3話 2日目 -檻の中 襲撃 発病-

******二日目******

 

 

 さっとなぐ涼しい風に目が覚める。

 

 「んっ・・・・」

 

 明るい光がまぶたを焼いている。

 目を開けるとそれが窓から差し込む光である事が分かる。

 ゆっくりと身を起こすとスルッと肩から毛布が滑り落ちた。

 

 「ん~、なのは~・・・・」

 

 ふと自分のでない声が耳をくすぐる。

 下を見ると私の寝ていたベッドに寄っかかるようにしてフェイトさんが寝ていた。

 どうやらつきっきりで一緒にいてくれたようだ。

 そのことに、なぜだか心の中で感謝する。

 

 「・・・なのは~、ダメだよそんなこと。・・・けど、なのはがどうしてもっていうなら~、・・・んん~・・・」

 

 感謝はするが、若干身の危険を感じて私はベッドから降りる。

 ちょっとフェイトさんへの価値観が自分の中で変わってしまった。

 斜め下の方向へ。

 私はベッドから降りると窓に近づく。

 窓は半分だけが開いていた。

 どうやらここから風が入ってきたようだ。

 外を見るとレンガ道のような所をたくさんの人が行き来していた。

 向かいの建物の中もそうだ。

 時間は・・・九時半。

 既に仕事は始まっているのだろう。

 

 『マスター、おはようございます。』

 

 空に視線を移すとシューが声をかけてきた。

 

 『うん、おはよう。』

 『体調はどうですか?』

 『すこぶる快調。久しぶりにベッドになたからなかぁ。今すぐにでも走り出したいよ。』

 『・・・意味の分からないことをいわないで下さい。』

 『え~、わかんないかなぁ。こう気分がいいと走りたくならない?』

 『なりません。』

 『・・・まぁいいや、腕の治療はどう?』

 『応急処置でしたら100%完了(コンプリート)です。しかし、完治にはまだほど遠いです。』

 『そっか、まぁ動かす分には問題ないでしょ。』

 『あります。』

 『ないの。』

 『・・・・・・』

 

 なぜか沈黙が返ってきた。

 若干の批難も感じる。

 

 「・・・ん~、あれ?寝ちゃった?」

 

 不意に後ろから声が聞こえた。

 振り返るとフェイトさんが寝ぼけ眼をこすっている。

 

 「おはようございます、フェイトさん。」

 「ん~、おはよう、アスナちゃん。」

 

 しばらくフェイトさんは目をこすっていたが、近くにあったコップに水をくむとクイッとのみ干す。

 そして、昨日とおなじ柔らかい笑顔にもどった。

 

 「さて、と。・・・あれ、なのはは?」

 「・・・さぁ?」

 

 私が目覚めた時にはいなかった。

 

 「おはよう、フェイトちゃん、アスナちゃん。」

 

 その答えが返ってきた。

 ちょうど扉が開いてなのはさんがお盆を持って現れた。

 

 「おはようございます。なのはさん。」

 「おはよう、なのは。ゴメン、寝ちゃってた。」

 「ううん、いいよ。連日仕事で疲れてたみたいだからね。・・・と、アスナちゃん、体調はどう?」

 「はい、すこぶる快調です。」

 「そう・・・左腕は?」

 「・・・えっ?」

 

 一瞬返答に詰まる。

 

 「ほら、昨日分からないようにかばってたみたいだけど・・・折れてるでしょ?」

 「・・・ばれてましたか。」

 「え、嘘、そうなの?」

 

 私は溜息をつき、気付いていなかったフェイトさんが慌てる。

 

 「うん、昨日寝かせる時にね。一瞬腕があり得ない方向に曲がったし、変に軽い上にすぐに固定されたみたいだから。」

 「そうですか。」

 

 苦笑混じりに返答しながら私はシューに念話を開く。

 

 『ちょっと、どうしてばれてるのよ!?』

 『それはマスターが寝てしまうからです。それに、あの状況ではどうしようもありませんでした。』

 『けど、今一瞬あり得ない方向に曲がったって。』

 『補助魔法を追加した瞬間だったんですよ。おかげで回復スピードが2%落ちましたが、マスターにはベッドで寝て、体力を回復して頂く必要もありましたから。』

 『・・・なんか、もういいや。』

 

 シューも私のことを考えてしていたのだ。

 感謝こそすれ、文句を言う筋合いはない。

 

 「それでね。その腕の治療もかねて、今日は病院に行きます。」

 「病院・・・」

 「うん。ついでにそこで簡易検査をして、身体に異常がないかも調べるよ。」

 「・・・検査ですか。」

 

 さて、やばいことになった。

 このままだと持病のことがばれてしまう。

 そうすると、色々と行動に制限がかけられてしまっていろいろやりにくい。

 どうしよう。

 

 「まぁ、検査といってもちょっと採血するだけのものだけどね。」

 「そうですか。」

 

 まぁ、採血ぐらいなら分からないだろう。

 

 「よろしくお願いします。」

 

 私はまだこの時、自分の考えが甘かったことに気がつかなかった。

 

 

 * * * * *

 

 

 

 聖王教会付属総合病院の一室。

 

 「は~い、ちょっとチクッとしますからねぇ。」

 「はい。」

 

 右腕にすっと注射器の針が侵入していく。

 馴れたその感触に微かな安堵を覚え、同時に驚愕を内心隠せなかった。

 ・・・自分はそこまであの施設に馴染んでいたのだ。

 

 「はい、おわりです。左腕は固定と回復魔法をかけておきましたので明日には治ると思います。」

 「明日・・・ですか。」

 「うん、折れたあとの処置が適切でね。折れたところは既にくっつき始めてて、ホントは今日の午後にでも治ってるとは思うんだけど・・・まぁ、そこは療養の意味もかねてね。」

 「はい、ありがとうございました。」

 「うん、じゃあまた明日ね。検査結果はそのころには出てると思うから。」

 「失礼します。」

 

 診察室を出ると、待合室のソファーに座っていたなのはさんとフェイトさんが顔を上げた。

 

 「どうだった?」

 

 なのはさんの問に簡潔に答える。

 

 「はい、腕の方は今日の午後には治ってるそうです。」

 「今日の午後!?」

 

 フェイトさんが驚きの声を上げる。

 

 「はい。何でも応急措置が適切だったとかで、既に骨自体はくっついているそうです。」

 「へ~、よかったね。」

 「はい!」

 

 なのはさんが窓口で会計を済ませる。

 ・・・て、あれ?

 

 「あ、あの、診療費は自分で・・・」

 「あぁ、いいのいいの。どうせ管理局持ちだから。」

 「へっ?」

 「うん、一応今の私達の任務はあなたの保護と護衛、そしてこれはその必要経費。」

 「・・・けど、」

 

 自分の負った怪我は任務中の話ではない。

 つまり、これは任務外の出来事のはずだけど・・・

 

 「・・・融通が利かないんだね。」

 

 なのはさんが苦笑する。

 

 「いえ、そういうわけでは・・・」

 

 言い訳はしてみるものの、いまいち納得できない。

 そんな様子を見かねてフェイトさんがこういった。

 

 「じゃぁさ、ここは私達が立て替えておく。今はあまり自分で自由に出来るお金もないんだし、何より、昨日から私達は家族、でしょ?」

 「・・・はい。」

 

 そういわれると、弱い。

 

 「ま、どうしても気になるっていうんなら大きくなってから返しに来てね。」

 「了解です。覚えておきます。」

 「・・・はははっ。」

 

 びしっと敬礼を返すとなのはさんは笑った。

 フェイトさんも私の行動をみて微笑んでいる。

 そして、私も笑っていた。

 

 「はははっ。」

 

 何気ないことで笑える。

 これってすごくいいことだ。

 こんなひとときがとても愛おしい。

 いつまでも続けばいい。

 そして、他の人たちにもこの笑顔を配ってあげたい。

 そう私は思った。

 

 「さて、これからどうする?」

 

 ひとしきり笑ってからなのはさんはそう聞いてきた。

 

 「どうする・・・というと?」

 

 質問の意図がいまいち飲み込めない。

 

 「うん、今日の予定はここまでしか立ってないんだけど、アスナは何かしたいことはあるかなぁと思って。」

 「今日は私となのは、オフ・・・というか、アスナの護衛任務という名のお休みをもらってるから一日暇なんだ。」

 「・・・と言われましても。」

 

 急にいわれても何も思いつかない。

 

 「そうだ。この前出来たマリンワールドにいってみる?」

 「あぁ、確かオープン前に何か事件で崩落したけど、つい最近ようやっと完成してオープンしたってあそこ?」

 「うん、どうかな、アスナ?」

 「う~ん、・・・というか、マリンワールドって何ですか?」

 「えとね、確かここら辺のページにガイドブックがあったような・・・ほら、ここ、ここ。」

 

 なのはさんがモニターをいくつか操作すると、私に見せてくれる。

 映っていたのはその、マリンワールドとかいうところのHP。

 ガイダンスを見る限り、水族館のようなものらしい。

 ただ、色々な遊具も設置されているようだ。

 

 「はい、ここでいいです。」

 

 私はうなずくが、なのはさんは立ち止まった。

 

 「・・・ここで(・・・)?」

 「・・・・・・?」

 

 質問の意図をはかりかねて、思わず首をかしげる。

 しかし、すぐに気がついた。

 

 「いえ、ここが(・・・)いいです。」

 「よし、ならレッツゴー!!」

 「うん。」

 

 他人に合わせるのではなく、自分で決めろ。

 自分のしたいようにしていいといわれたのだから、自分で決めなくては。

 そう、なのはさんに気付かされた瞬間だった。

 

 

 * * * * *

 

 

 「・・・ここが、マリンワールド。」

 

 ガラス張りの空間に私達は閉じこめられていた。

 薄い、ガラス一枚隔てた向こうは水の世界。

 大きな魚から小さな魚。

 見たことないようなものからいつも食卓で見かけるようなものまで、たくさんの種類が悠々と泳いでいた。

 不意に、上を大きな陰が横切る。

 

 「・・・なにあれ?」

 

 思わず私が呟くのもうなずけるだろう。

 あんなに大きな魚、資料でしか読んだことがない。

 

 「あぁ、鯨ね。」

 「クジラ?」

 「うん、第97管理外世界現地名称地球にすむ、大型のほ乳類だよ。」

 「え、あれでほ乳類!?」

 「そう、あれだけの大きさのほ乳類で水を泳ぐのは他の世界でも例を見ないってここの一躍有名人(?)になったんだよ。」

 「へ~~、」

 

 思わず、そのゆったりとした動きに見せられる。

 大きな水という空を自由気ままに泳ぐ。

 なんて気持ちよさそうなんだ。

 ・・・けど、同時にあの子もかごの中の鳥なんだ。

 この水族館という名のガラスの檻に閉じこめられたかわいそうな子。

 ・・・私みたいだな。

 

 「あれ、どうしたの?」

 

 不意にフェイトさんが私の顔をのぞき込んだ。

 なのはさんもその後ろから心配そうに私を見ている。

 

 「傷でも痛むの?」

 

 指で私のほおを流れる涙をすくわれて、初めて私は泣いていることに気付いた。

 

 「い、いえ、そういうわけでは・・・」

 「・・・そう、ならいいんだけど。」

 

 私は一生懸命泣きやもうと目をこするが涙が止まらない。

 ・・・昨日とおなじだな。

 不意にそう思う。

 感傷に浸っているのだ。

 あの施設から逃げ出せたということと今の安全の保障から過去の自分を哀れんでいるのだ。

 いけないこととはいわないけど、ほめられた行為ではない。

 

 「ほら、みて!!」

 

 不意になのはさんが私を抱き上げた。

 いくら私が子供だといっても、その腕力は驚きに値する。

 しかし、次の瞬間に私は別のものに驚いた。

 通路の一部が水面の上を通っていた。

 そして、そこは、広大な水面が広がっていた。

 

 ・・・海だ。

 

 そう思わせる、何かがあった。

 いくら擬似的とはいえ、彼ら()は広大な海を泳いでいたのだ。

 檻は檻でも、世界という名の檻。

 それは、自然世界ではあふれたこと。

 美しい光をたたえた青が、爛々と輝き、その中を彼らは泳ぎ回る。

 そこは、自然と差異のない世界だった。

 

 「ここのお魚はね、各世界から特徴のあるものが集められているんだけど、それもたった1年の間だけ。つれてこられて1年がたつと、元いた世界にもどされるんだよ。」

 「自然を壊し、人間のエゴで魚たちの自由を奪ってはいけない。そういうここの館長の方針らしいよ。」

 

 彼らは決して自由を奪われてはいなかった。

 少しの間、窮屈な環境と感じるかも知れないが、それでも自由が約束されている。

 ・・・私もそうなのかな。

 施設では窮屈でいやな思いばかりしたけど、今は少しではあるが自由を手に入れている。

 もしかしたら、今後もこの状態が続くかも知れない。

 この魚たちのように。

 

 「ほら、次に行こうか。」

 「・・・はいっ!!」

 

 私はもう一度涙をぬぐうと笑った。

 笑えば、心も温かくなる。

 大切な時間を無為に過ごすこともない。

 もう、瞳から涙があふれることはなかった。

 

 

 * * * * *

 

 

 「ふぅ~、つかれたね。」

 

 マリンワールドを全て回った後、遊具施設というところに行ってみた。

 そこは様々なアトラクションがあって一つ一つを真剣にけど楽しくこなしていたら、いつの間にか夕方になっていた。

 マリンワールドも閉館の時間ということで、私達は近くの広い公園にいた。

 一面が芝生のグラウンドのような所だ。

 

 「けど、たのしかったね。」

 

 フェイトさんの言葉に私はうなずく。

 楽しかった。

 まさか、施設に入ってからはそんな言葉が出るとは思いもしなかった。

 ・・・これもシューに出会って外でなのはさん達と出会えたおかげかな。

 

 「さて、そろそろヴィヴィオも学校が終わる時間だから帰ろうか。」

 

 なのはさんがそういった瞬間だった。

 

 『マスター!!』

 

 念話が響く。

 シューだ。

 

 『どうしたの?』

 『誰かが私達を取り囲んでいます。』

 『・・・』

 『おそらく、施設の人間です。』

 

 なんで、・・・何でこんないい時に。

 空気をぶちこわしに来るんだ!!

 

 「アスナはフェイトちゃんと一緒にいて。」

 

 気付いたなのはさんが手を伸ばすと、彼女のデバイスと思われる赤い宝石のついた杖が現れた。

 

 <シューティングモード>

 

 「なのは、あまり暴れちゃダメだよ?」

 

 <アサルトフォーム>

 

 そういいながら、フェイトさんも黒い杖を取り出す。

 すると、木陰にいた複数のスーツ男が出てきた。

 

 「我々は、そのことそのデバイスを回収しに来た。おとなしく渡すならお前達に危害は加えないと保障しよう。」

 

 男の一人が進み出てそういった。

 

 「・・・そのお前達というのにはアスナも入ってるの?」

 

 なのはさんが問いかけるが返事はない。

 ・・・つまりがそういうことだ。

 

 「・・・なら、無理だとだけ行っておきます。私達は管理局のものです。この子は現在、管理局の保護下にあるので安全が保障されない場合、または本人が望まない場合は特定の条件をのぞいて身柄を預けることは出来ません。お引き取り下さい。」

 「どうしてもか。」

 「・・・はい。」

 

 静かに、けれどきっぱりと彼女は答える。

 

 「・・・なら仕方がない。」

 

 男はそれだけいうときびすを返した。

 私はほっと息をつく。

 

 「・・・()れ。」

 

 瞬間、男の冷たい声に反応して、魔力弾が飛んできた。

 なのはさんとフェイトさんは間髪を入れずにシールドを展開する。

 ファイアリングロックがはずされているのか、はじかれた弾が芝生を燃やし、木々を灰に変える。

 ぱっと見ただけでも男達の魔力弾は威力は低くない。

 けれど、私に熱風さえも届くことはなかった。

 それどころか、いつの間にか前にいたなのはさんの姿がかき消えていた。

 

 「ディバイン、シュート!!」

 <ディバイン・シューター>

 

 姿を探していると上空から声が聞こえた。

 見上げるといつの間に飛んだのか、靴からピンクの羽をはやし浮いたなのはさんが魔力弾を大量に浮かべて次々と飛んでくる弾を相殺していく。

 そして、飛んでくる弾がなくなると次々と男達にぶつけていく。

 

 「・・・・・・・」

 

 圧倒的だった。

 レベルが違うとはこのことか。

 彼らの弾は一切届かないのに彼女の弾はおもしろいように当たっていく。

 三十人ほどいた相手が既に数人を残して皆倒れていた。

 

 「すごいね、シュー。」

 <えぇ・・・あれ、全て訓練弾ですよ。>

 「訓練弾?」

 <はい。衝撃はあるんですけど、傷などは一切負わない弾のことです。いわゆる魔力ダメージという奴でしょうか。>

 「・・・へ~。」

 

 ちょっと理解できなかった。

 けど、何となくいいたいことは分かる。

 つまりが、手加減して、相手を傷つけないようになのはさんは戦っているのだ。

 相手が本気でやっているのに。

 

 <マスターも見習って下さいね。>

 「無理だよ。・・・というか、私にそこまでの才能はないし。」

 <いえいえ、才能だけでいえば、ピカイチですよ。まだまだ未熟ですが。>

 「う~~。」

 

 そうこう言っているうちに男達は逃亡を始めた。

 弾が飛んでこないのを確認するとフェイトさんはシールドをたたみ、男達の元へと近づいた。

 

 「意識、あるよね。」

 

 男のうち一人がうっすらと目を開けた。

 どうやらフェイトさんはこの男の意識があることに気付いていたらしい。

 なのはさんもフェイトさんの横に降り立った。

 

 「あなた達を傷害・及び殺人未遂の疑いで逮捕します。詳しい話を局で聞かせてもらいます。」

 「・・・くそっ、管理局のくせして。」

 

 男は微かに毒づく。

 しかし、それを歯牙にもかけない様子で彼女は順次バインドをかけていく。

 しばらくすると、なのはさんが呼んだ武装局員が大勢やってきて、男達を連行した。

 

 「さて、アスナは平気?」

 「はい、おかげさまで。」

 

 頭を下げる。

 

 「すみませんでした、巻き込んでしまって。」

 「ううん、これも仕事だから。それより、そろそろヴィヴィオを迎えに行く時間なんだけど、一緒に行かない?」

 「え、私がついて行ってもいいんですか?」

 「うん。フェイトちゃんは・・・」

 

 ちらっとフェイトさんを見る。

 フェイトさんはやってきた武装局員の人と話していたが、視線に気付き、話を中断させてこっちにやってきた。

 

 「なに、なのは?」

 「うん、フェイトちゃんは今からお仕事?」

 「うん、そうなる。あの人達の取り調べもあるけど、ちょっと別の仕事が舞い込んできて、そっちの整理もしてしまわなくちゃいけないから。」

 「え~、また~?そんなにはたらいて体壊さないでね。」

 「大丈夫、なのはよりは無理してないから。そっちはどうする?」

 「うん、ヴィヴィオのお迎えに一緒に行こうかと。」

 「あ、いいね。ついでに騎士カリムやらに会っておくといいかもよ。今後の捜査で必要になるかも。」

 「だね。最悪護衛役を交代してもらえるかもだし。」

 「うん。・・・それじゃぁ、仕事が待ってるから。」

 「了解、気をつけてね。あ、帰る時は連絡して。」

 「うん、じゃあね。アスナも。」

 「はい。頑張って下さい。」

 

 フェイトさんは再び局員の元に行くと話を始めた。

 

 「じゃぁ、いこうか。」

 「はい。」

 

 私となのはさんは焦げた跡の残る芝生を踏みしめて、ヴィヴィオのいるセント・ヒルデ魔法学院に向かった。

 

 

 * * * * *

 

 

 学院につくと、ヴィヴィオは校庭にいた。

 

 「ヴィヴィオ~、」

 「あ、ママー。」

 

 なのはさんが呼ぶとヴィヴィオはこちらに気づいて手を振る。

 ヴィヴィオの周りにはたくさんの子供がいた。

 

 「何してるの?」

 

 なのはさんの問にヴィヴィオが答える。

 

 「うん、ちょうど今日ね、魔法の授業で基礎の基礎を教わったの。で、その練習。」

 「へ~、どんな基礎?」

 「うん。こうやって魔力の弾を浮かべて一定の大きさに保つの。それをいくつも作っていくの。」

 「あぁ、それね。私もよくやるよ。」

 「そうなの!?」

 「うん。基礎は大事だからね。」

 

 なのはさんの話をよく聞こうと子供達がなのはさんを取り囲む。

 なのはさんはそんな中とても楽しそうに子供達に教えていく。

 

 「あ、さっきよりも3つ多くできた!!」

 

 なのはさんの言葉を実践した子供がうれしそうな声を出す。

 

 「お、すげぇ。俺もやってみる。」

 「フフ~ん、お前じゃ無理だね。」

 「言ったな、見てろ!!」

 

 みんな次々と挑戦する。

 限界はわきまえているのか、それとも指導がよいのか一定の数まで来ると皆安定させる方に集中する。

 そんな中男の子二人が白熱していた。

 

 「まだまだ、だからな。」

 「くそ、こっちだって。」

 

 ただ浮かべているだけではあるが、既にその数は15を超えた。

 

 「ちょっと、そこの二人。あまり熱くならないで!!」

 

 なのはさんが声をかけるが、あまりの負担なのか、二人には聞こえていないようだ。

 しだいに二人の作り出した弾が揺れ出す。

 

 「やめなさい、二人とも!!」

 

 なのはさんの叱咤にやっとの事で我に返る。

 しかし、それがいけなかった。

 ぷつんと切れた集中力で、今や制御のない弾と化した魔法が縦横無尽に飛び交う。

 

 「レイジングハート!」

 <りょうかいです。ディバインシューター。>

 

 なのはさんは緊急起動したレイジングハートで次々と弾を壊していく。

 しかし、限界は彼女にもあるようだ。

 三つの弾がなのはさんの攻撃をかいくぐり木の下にいる・・・ちょうど私から少し離れたところの女の子の方へ向かう。

 うち二つは、気付いたなのはさんが打ち落とすが、それでも弾数が足りない。

 

 「くそっ!!」

 

 私はその場を駆け出す。

 あの弾は弱いが、だからといって防御なしの状態で受けたら軽い怪我ではすまない。

 最悪、死んでしまうかも知れない。

 そんな危険を見過ごすわけにはいかない。

 

 <マスター、やめて下さい!!死にますよ!?>

 

 シューが叫ぶが、私は速度を落とさない。

 魔力弾が徐々に女の子に迫ってくる。

 私はぎりぎりのところで女の子に追いつくと、魔法を展開した。

 

 「バリア!!」

 

 私の意志に反応して魔力が流れる。

 強固な壁を作り出し、私と女の子を弾から守ってくれる。

 弾はバリアに当たると霧散した。

 同時にバリアも消滅する。

 

 「ナイスだよ、アスナ!!」

 

 なのはさんがぐっと親指を立てた拳をこちらに向ける。

 私もグッと立て返す。

 

 「あ、ありがとう。」

 「いいえ、どういたしまして。」

 

 女の子がお礼を言ってくれる。

 それを笑顔で返事した時だった。

 

 「・・・かはっ・・・」

 

 急に胸が痛くなった。

 心臓が不規則なリズムで暴れ出す。

 さーっと血の気が引きまるで大型の冷蔵庫に放り込まれたような感覚に陥る。

 やってしまった。

 分かってはいたが、やはり見過ごせなかった。

 ドクンドクンと脈の音が変に大きく聞こえる。

 ふと景色が回転する。

 しばらくしてやっと自分が地面に倒れてしまったことを理解する。

 

 <マスター、しっかり!!>

 「アスナ!?」

 

 なのはさんが近寄ってくる。

 シューが心配そうに声を上げる。

 他のみんなも、そしておそらくこの学院の先生とおぼしき大人も私に近づいてくる。

 何かを皆が叫んでいるが、聞こえない。

 耳鳴りがすごい。

 何か音も拾っていて、光を見ているが、何がなんだか理解できない。

 だんだんと意識が薄らいで・・・私は気を失った。

 

next day and to be continue...

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