魔法少女リリカルなのは -アルカ・ティ・エーナ-   作:星伝

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第6話 5日目 -根源-

 ******5日目******

 

 

 

 事件は午後遅くまで収拾がつかず、局員の人たちは現場検証におわれていた。

 夕方、ようやくそれも終わり、次元航行船でミッドチルダに向かえた。

 そして、ミッドについたのは夜の十時。

 それから傷を負ったり、実験動物扱いされていた子達は全員入院が決定。

 お医者さん達も徹夜で子供達を検査していった。

 その中にはもちろん私の両親も含まれる。

 一方、施設の職員の人はそのままクラナガンの拘置所に入れられ、一人ずつ事情聴取をさせられているそうだ。

 研究員の人はなにやら常識が欠ける発言ばかりで頭が痛いようだが、他の職員達は最初は渋っていたもののなのはさんの姿を見るとなぜか口を閉ざすことなくペラペラとしゃべってくれ、無事、解決に結びつきそうだ。

 そして翌日、私は再び聖王教会付属の病院にいた。

 今日、私の両親の検査結果が出るとのことだ。

 ほかのネイティ達の結果は既に聞いた。

 少し入院が必要な子もいるがおおむね健康だそうだ。

 ネイティなんか、即日退院できるとのことだ。

 つまり、それから予想するに私の両親もすぐに目覚めるに違いない。

 そう、思っていたのだが・・・

 

 「・・・・・・それ、ほんとうですか。」

 

 つれてこられた診察室で、お医者さんの口から言われた言葉が信じられなかった。

 

 「はい。・・・ほんとうに残念ですが、今の技術ではどうしようもなく・・・」

 

 お医者さんもどこか悔しそうな顔をしている。

 

 「・・・あと、どのくらい・・・・」

 「もって5日・・・おそらく3日が限度かと・・・本当に申し訳ない・・・」

 

 彼は頭を机につかんばかりに下げる。

 最善を尽くしてくれたのだ。

 だから、言わなくては。

 その結果がどうであれ。

 

 「・・・・ありがとうございました。」

 

 私は深く、頭を下げた。

 

 

 

 

 「父さん、・・・母さん・・・」

 

 私は二人がいる病室にいた。

 父さんの右手と、母さんの右手をそれぞれ握る。

 暖かかった。

 小さい頃と何ら変わりないぬくもり。

 父さんの手は大きくて、でも男の人とは思えないすべすべの手だった。

 母さんの手は対照的に、小さいけど、少しあれている。

 私のために仕事をしながら家事もしていたからだ。

 

 「そういえば昔、この手で夫婦げんかしてたよね。母さんがどうしてあなたの手はそんなに綺麗なのって。」

 

 考えれば考えるほどばかばかしい喧嘩だった。

 母さんがちょっとうらやましそうにお父さんの手のことを言って、それが嫌みに聞こえた父さんが反発して・・・

 結局仲がいいから出来た喧嘩だ。

 最後は訳が分からない私が泣いたから喧嘩云々はうやむやになって・・・

 いつもそうだったね。

 喧嘩になると、父さんも母さんも怖くなるから、・・・

 私が知らない人になってしまう気がして、泣いてた。

 そして、それを泣きやませるために二人は停戦協定のようにして喧嘩をやめ、私を一生懸命あやした。

 それも今は出来ない。

 

 「わたし、約束、守りたいなぁ・・・」

 

 母さんとした約束。

 海岸に行って綺麗な貝殻を探す。

 父さんとは約束していないけど、母さんはきっと父さんも一緒に連れて行く気だっただろう。

 だからさ、二人とも。

 寝てないで、一緒に行こうよ。

 約束したでしょ?

 

 「・・・アルカ・ティ・エーナ」

 

 自分の信じるものに誓うって。

 ・・・そういえば、二人が信じるものってなんだろう。

 私の場合は・・・・その、父さんと母さんだけど。

 

 「・・・・何考えてるんだ私は。」

 

 頭を振って考えを散らす。

 そんなことをしていると、扉が開いた。

 入ってきたのは知らないお医者さんだった。

 

 「あの、・・・・」

 

 私は何か用事があるのかと聞こうとした瞬間だった。

 

 「動くな、FHC2705-13A。」

 

 医者はデバイスを私に向けた。

 

 「・・・なんのまねですか。」

 「お前に発言権はない、道具。」

 「私は道具ではありません。アスナ・シルフィードです。」

 「道具に名前などいらない。種類特別が出来ればそれでいい。それより、私についてきてもらおう。」

 「・・・あなたも第8管理世界の出身者ですか。」

 「いいや、違う。」

 「ならなぜ?」

 「あの実験には、ミッドチルダも関係しているのだよ。」

 「・・・・そういえば、」

 

 管理局の高官にも顔が利きそうなことをなのはさんの家を襲撃した男達は言っていた。

 つまり、どこの管理世界も一枚噛んでいるかも知れないと言うことか。

 

 「いらん時間を消費した。ほら、行くぞ。」

 

 医者・・・改め、男は私を抱えると窓から飛び出そうとする。

 瞬間、

 

 「動くな!!」

 

 窓の外にフェイトさんがいた。

 ハーケンフォームのバルディッシュが男の首に突きつけられる。

 男はとっさに首をひねって、後ろに飛ぶ。

 ドアから出ようと後ろを振り返るが、

 

 「こっちも行き止まりだよ。おとなしく武器を捨てなさい。」

 

 なのはさんがレイジングハートをこちらに向けていた。

 既に空中には魔力弾が浮かんでいる。

 

 「・・・・ちっ。」

 

 男は一つ舌打ちをすると、叫ぶ。

 

 「動くな、こいつがどうなってもいいのか。」

 

 男は手に持ったデバイス・・・おそらくストレージタイプだろう・・・を私の頭に突きつけた。

 なのはさんとフェイトさんが苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

 「あなたは既に包囲されています。おとなしく投降すれば弁護の機会もあります。どう転ぼうが、あなたの・・・」

 「うるさい。こっちに人質がいれば、私に負けはない。おい、そこをどけ!!」

 

 男はなのはさんにあごをしゃくる。

 なのはさんは渋々と、後ろに下がる。

 私は一つ、溜息をついた。

 

 「シュー、セットアップ。」

 <了解、マスター。スタンバイ・レディ、セットアップ。>

 

 私はシューを起動させ、杖を握る。

 しかし、男はあざ笑った。

 

 「無駄だ、FHC2705-13A。お前が魔法を使えないのは調査済みだ。」

 

 私はまた一つ、溜息をつく。

 

 「ダメだよ、アスナ!!魔法を使ったら死んじゃう!!」

 「そうだよ、アスナ。私達が何とかするから!!」

 「カードリッジロード。」

 <ロードカードリッジ>

 

 なのはさんとフェイトさんが必死に止める。

 しかし、私は手を止めずにカードリッジをロードする。

 三発。

 

 「フラッシュ・バースト」

 <フラッシュ・バースト。>

 

 瞬間、あたりに閃光が満ちる。

 一瞬ひるんだ男の腕を見逃さず私は逃げ出すと、なのはさんの後ろに隠れた。

 閃光が収まると、男は既にフェイトさんが取り押さえていた。

 

 「お疲れ様です、フェイトさん。」

 

 フェイトさんをねぎらっていると、なのはさんがかがんで私の肩を揺さぶった。

 

 「だ、大丈夫なの!?いたいところとかない?心臓は平気!?」

 

 ぐらぐら揺らされて、脳みそがシャッフルされる気がする。

 かすむ視界でなのはさんは血相を書いていた。

 

 「だ、大丈夫です。大、丈夫です、から・・・ゆすら、ないデゥェ!?」

 

 イッターッ!!

 舌噛んだ。

 

 やっとこさ、私が涙目になっているのに気付いたなのはさんが揺するのをやめてくれた。

 

 「それで、本当に大丈夫なの?」

 

 未だに心配そうにするなのはさんに思わず私は苦笑する。

 

 「はい。以前にもいったじゃないですか。簡単な初級魔法であれば、カードリッジを消費することで私の方から魔法の供給をせずに魔法を使えるって。」

 

 まぁ、カードリッジを三発も消費したのは正直痛いが。

 しかたないか。

 

 

 * * * * *

 

 

 後日、男は管理局との繋がりや、その他諸々も全て吐いて、管理局本局に波風をもたらした。

 本局の上層部のほとんどが黒だったのだ。

 しかも、

 

 「まさか、こんな紙切れとデータチップが原因だったとはなぁ。」

 

 はやてがペラペラと古い紙を振る。

 そこには、完全ではないが人造生命や死者蘇生の法が載っていた。

 

 「これがアルハザードの遺物だって言うんだから、何とも人騒がせな。」

 「こんなもの、こうだね。」

 

 フェイトが、紙切れに火をつけた。

 

 「あぁあああっ!!」

 

 そばにいたユーノが悲鳴を上げる。

 彼は、この紙切れの検証にやってきたのだ。

 

 「それ、大事な事件証拠だよ!?それに、そうでなくても大事な歴史資料なのに!!」

 

 しかし、なのはさんは笑った。

 

 「にゃはは、ユーノ君まだ気付いてないの?」

 「えっ?」

 

 なのはさんが焼けて黒ずんだ紙を机の上に置く。

 

 「レイジングハート。おねがい。」

 <了解、マスター。既定魔力バイパス、起動。織り込み済みプログラム、再生。>

 

 パーッと燃えたはずの紙片が再び輝く。

 

 『この仕掛けに気付いたと言うことは、これが偽物であると気付いたわけだな。うむ世界はまだ価値あるものであるようだ。』

 

 ホログラムが立ち上がり、見知らぬおじさんの映像がしゃべる。

 

 「これ、だれ?」

 「えとね、名前はルチカ・マルベス・セントリー。アルハザードの研究者だったかな。」

 「じゃぁ、やっぱり!!」

 「うん、アルハザードのものなんだけど、良く聞いて。」

 

 なのはがユーノの注意をホログラムに向ける。

 

 『実はこの紙、燃やしても、水につけても、たとえちぎっても再生するように出来ている。だから、私の伝言は今後永遠に残るだろう。』

 

 言うとおり、紙は燃えたはずなのに端からゆっくりと白くなっていった。

 

 『これは、世界が価値あるものであり続けるために私がつくった。ここに書いてあるものは全て偽物だ。虚偽情報。』

 「偽物・・・」

 「うん。」

 

 ユーノが茫然とする。

 

 『ヤ~イ、バ~カバ~カ。不老はあるけど不死や死者蘇生なんてあるわけ無いだろうが、アホ。たく、人間はすぐそうやって命を長らえさせようとする。書いてあるのを実践した輩は人類のカスだな。』

 「・・・このおじさんて、ホントにアルハザードの科学者?」

 「うん。それもかなり天才的な部類に入る。」

 「・・・・・・」

 

 ユーノが疑わしそうな目でホログラムを見つめる。

 

 『さて、蔑むのはそれくらいにして。私の同類よ。研究はほどほどにな。人は考え、動いている時が一番美しい。そして、それを終え、眠りにつく姿も。それを忘れるな。』

 

 言いたいことを言うと、ホログラムは消えた。

 

 「・・・これ、ちぎってもいい?」

 

 ユーノが紙の端を握りつぶしながら聞く。

 

 「うん、いいけど、どうせまた元にもどるよ?」

 「だからだよ。」

 

 ユーノは紙を取ると、ビリビリに引き裂いた。

 細かく、細かく・・・まるで何かの怨念を込めるようにして。

 粉々になった紙は、しかし、独りでに動き、元にもどる。

 すさまじい技術だ。

 これを応用出来れば、大事な資料などは失われずに済む。

 たく、本局のお偉いさんもこっちの研究をしてほしいよ。

 

 完全にもどった紙を四人は見つめながら溜息をついた。

 

next day and to be continue...

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