魔法少女リリカルなのは -アルカ・ティ・エーナ-   作:星伝

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第7話 6日目 -アルカ・ティ・エーナ(約束)-

 ******6日目******

 

 

 さて、日付はもどってアスナが誘拐されそうになった翌日。

 朝も日が開ける前から私は父さんと母さんの病室にいた。

 右手には起動したシューを握っている。

 

 「父さん、母さん、約束、守るよ。」

 

 私はシューを抱きかかえた。

 

 「行くよ、シュー。」

 <マスター・・・・>

 

 心配そうな顔のシューに笑いかけると、私は魔法を発動した。

 

 

 

 その日の朝、私の両親の病室を訪れた看護婦は悲鳴を上げた。

 悲鳴を聞きつけてやってきた医者も驚きの声を上げた。

 

 「「なんで、意識があるの!?」」

 

 そこには、優雅にお茶を飲む私の母、ミーナ・シルフィードとアスナとじゃれ合っている私の父、ハリー・シルフィードがいた。

 ハリー・シルフィードにいたってはベッドから起き上がり、私をだっこして振り回していた。

 

 「あぁ、お見苦しいところを。」

 

 父さんは私をおろすと恥ずかしそうに頭をかいた。

 

 「あなた、ちょっとはしゃぎすぎですよ。」

 「いやな、大きくなったアスナを見ると、なんというか・・・うれしくてな。」

 「その気持ちは分かります。アスナ、こっちにいらっしゃい。」

 「は~い、母さん。」

 

 私は母さんの横に座る。

 すると、母さんがクッキーを私に差し出した。

 

 「あ~ん。」

 「あ~ん。」

 

 口を開けるとぽいと入れてくれる。

 クッキーは私が持ってきた物だが、いつも食べているのより、なんかおいしく感じる。

 

 「へへへ~。」

 

 思わず笑うと、父さんも母さんも笑った。

 唯一・・・いや、ほとんどついて行けてないのが周りの人間だった。

 

 「説明して下さい!!ほら、ミーナさんも、ハリーさんもクッキーとか急に食べたりしないで。ベッドに入って下さい!!」

 

 お医者さんがクッキーを取り上げて、父さんの背中を押し、ベッドに入れる。

 看護婦さんも紅茶を取り上げ、代わりの水をついだ。

 その時、なのはさんとフェイトさんもやってきて二人の意識があることに驚きの声を上げた。

 それが収まった頃、やっと説明を始めた。

 

 「う~ん、なんというか・・・奇跡、だね。」

 

 父さんがそういった。

 

 「あなた、あくまでも一科学者なら奇跡はないんじゃなくて?せいぜい魔法でしょう。」

 「いや、魔法とは言わずにやはり奇跡の方が夢があっていいじゃないか。」

 

 言い合いを始める両親に私は手を打った。

 

 「ほら、説明するんでしょ。」

 「「はい・・・」」

 

 私にたしなめられる二人。

 なんか、それがおかしくて声には出さないが、笑みがこぼれた。

 

 「まぁ、結論から言うと、魔法で1日だけ意識を取り戻しました。」

 

 あまりにも簡潔な答えに周りは「はぁ。。。」と気の抜けた答えを返す。

 

 「アスナが魔法を使って、一日だけ私達に動く時間をくれたんだよな。」

 

 父さんがなでてくれる。

 懐かしい感触に、えへへ~と声が漏れる。

 

 「アスナが魔法!?」

 

 なのはさんが声を上げた。

 

 「アスナ、大丈夫なの!?」

 

 心配そうに駆け寄ろうとするが、私は笑った。

 

 「はい、大丈夫です。今回の魔法は普通とは違うんで。」

 「いや、いくら何でも治療魔法はカードリッジシステムでは補いえないよ!?」

 「そこは・・・」

 「そこは・・・?」

 

 

 「・・・・・・・ひみつです☆」

 

 

 可愛く言うと周りはずっこけた。

 しかし、

 

 「あ~ん、かわいい~!!」

 「さすがうちの子だ。可愛く育っている。」

 

 母さんは抱きつき、父さんは自慢げにうなずく。

 へへへ~、と笑いながら私はなのはさんに念話を飛ばした。

 

 『すみません、事情はあとで説明しますからここは見逃して下さい。』

 『あとでって・・・いつ?』

 『出来れば明日で。』

 『・・・はぁ、しょうがないね。いいよ、明日で。』

 『ありがとうございます。』

 『けど、本当に大丈夫?体・・・』

 『あぁ、今は大丈夫です。ご心配おかけします。』

 

 そこまで言うと、私は念話を切った。

 

 「ね、母さん。約束守ってよ。」

 「あ、いいわね。今から行きますか。」

 「なんだ、約束って?」

 「うん、母さんがね。別れ際に“今度海に行って綺麗な貝殻拾いましょ。”ていったの。」

 「そうよ。あなたも行くでしょ?」

 「そうだな・・・久しぶりに家族で行くか。」

 「おぉ~~!!」

 

 医者が今の発言に頭を抱えるが、私はそれをあえて無視した。

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

 「うみだ~~!!!」

 

 私は両親と手を繋ぎながら叫んだ。

 目の前には大きな海が広がっている。

 ちょっとはいるには水が冷たすぎるが、それでもこれただけでうれしい。

 ちなみに、医者は何とか説き伏せた。

 なのはさんも私を察してかフォローしてくれた。

 

 「ね、ね、お城つくろうよ。」

 「お城かぁ。いいな、おもしろそうだ。」

 「え~私はいやよ。手が汚れるから。」

 「いいじゃん、母さんも一緒にしよう。」

 「・・・しょうがないわね~。」

 

 私は手を引いて砂浜に降りる。

 そして、早速山を築く。

 しっかりと固めたら、三人がかりで崩しに入った。

 

 「あらあなた、そっちは門ではなくて?」

 「いやいや、そっちが門だろう。私の手先にかかれば、お城の尖塔なんてちょちょいのちょいだからな。」

 「あら、私だって負けませんよ?」

 

 二人は私を放ってお城の塔を築き上げていく。

 仕方なく、私はお城の門をつくる。

 

 三十分後、

 

 「「「できた~~~!!」」」

 

 大きなお城が出来た。

 うん、なかなかの出来だ。

 

 「すごいね~~。」

 

 今まで黙っていたなのはさんが後ろで言った。

 

 「ホント、お二人とも手が器用で・・・」

 

 フェイトさんもほほえましそうに笑う。

 この二人は、今回の同行者だ。

 医者が許可したのが、この二人の同行だ。

 この二人なら、海から病院までほんの数分。

 つまり、急変があれば、有無を言わさずに連れて帰ってこいとのことだ。

 

 「よし、お城も造ったし、貝殻でも探そうか。」

 「うん!!」

 

 当初の目的を果たすため、私達は海岸をゆっくりと歩き始めた。

 

 

 

 日が既に傾き始めていた。

 あかね色に染まった空がこの幸福な時の終わりが近いことを示唆する。

 

 「今日は楽しかったな。」

 

 父さんが私の手を取りながら言う。

 

 「えぇ、私、あんなにはしゃいだの久しぶりよ。」

 

 母さんも笑いながら手を取る。

 

 「そうかなぁ~。いつも家では喧嘩してはしゃいでいた気がするよ~?」

 

 私も、笑みを絶やさずに両手をゆっくりと振る。

 胸元には綺麗な貝殻のペンダントがぶら下がっている。

 海岸で見つけたものだ。

 私の髪に良く映えると母さんがいい、父さんがアクセサリー店でペンダントにしてくれた。

 ちょっと細工して、貝殻の裏には三人の名前と、あの言葉が刻まれている。

 

 アルカ・ティ・エーナ ハリー・I ミーナ・I アスナ・I  と

 

 約束。

 それは私と父さん、母さんしか知らない、心の中の永遠の約束。

 絶対に守られる、私の大切な約束。

 

 「あぁ、もう着いたか。」

 

 父さんは目の前に見える建物を見て溜息をついた。

 

 「しょうがないですね。約束ですから。」

 

 母さんも寂しそうに笑った。

 私は思わずぎゅっと手を握る。

 

 「・・・行くか。」

 「・・・はい。」

 「・・・うん。」

 

 私達は病院へと足を踏み入れた。

 病室に着くと、なのはさんとフェイトさんはどこかにいなくなった。

 きっと気を利かせてくれたのだろう。

 

 「いいか、アスナ。なのはさんやフェイトさん、それに教会の方にあまり迷惑かけるなよ。」

 「そうよ、いくら私達の目がないからって羽目を外さないようにね。」

 「分かってるよ、そんなの。」

 

 私は、両親が眠ったあと、聖王教会に預けられることになった。

 もちろん、他の施設の子達もだ。

 はやてさんが手を回してくれたみたいで、教会には入れない子もどこかの家庭に入れることとなったらしい。

 

 「それから、健康には気をつけて。」

 「好き嫌いしてちゃダメよ。」

 「は~い。」

 

 無駄な、だけど幸福な時間をゆっくりと過ごす。

 ゆっくりと、噛みしめながら・・・・

 永遠に続くかのように感じる時間が・・・終わりを迎えた。

 

 「なんか、眠くなってきたわ。」

 「そうだな。わたしもだ。」

 

 父さんと母さんがベッドに横になった。

 目はまだ開いてはいるが、どこか遠くを見ている。

 

 「幸せだなぁ、私達は。」

 「そうね。幸せですよ。」

 「おまえがいて。」

 「あなたがいて。」

 「「アスナがいて。」」

 

 ゆっくりと閉じられていく瞳。

 私は必死に感じる涙をこらえる。

 

 「お休み、父さん、母さん。私、今とても幸せだよ。」

 

 ぎゅっと二人の手を握る。

 その手はまだ温かい。

 

 「そうか、幸せか。よかった。」

 「うん、よかったよかった。」

 

 私は、母さんは、父さんは最後に笑った。

 

 

 「「「ありがとう。」」」

 

 

 ぱたりと二人の手から力が抜ける。

 二人の目は、既に閉じられていて、動かない。

 息づかいも感じない。

 

 「ありがとう・・・ありがとう・・・」

 

 何度も、何度も呟く。

 

 「ありがとう・・・」

 

 三人が幸せであるように・・・

 

 それは約束であり、願い。

 私と、母さんと、父さんの三人でした、約束。

 アルカ・ティ・エーナ

 絶対に守るよ。

 

 私は二人の手をかき抱いて、泣いた。

 

 

 * * * * *

 

 

 翌日、小さいながらもお通夜と葬式が執り行われることとなった。

 

 「さて、ちょっとつらいかも知れないけど、約束だよ。説明してね。」

 

 なのはさんとフェイトさん、そしてはやてさんが私を管理局の一室に呼んでそういった。

 

 「・・・はい。」

 

 私は懐にあるシューを起動すると、カードリッジを一発消費する。

 

 「この資料を見て下さい。」

 

 私はモニターに資料のようやくを映し、三人の手元のモニターには詳細資料を送り、表示させる。

 

 「これは、私の故郷、第8管理世界“ル・シェート”につたわる秘宝、流れ星(シューティングスター)の資料です。」

 

 私はそういうと、机の上にシューを置く。

 

 「これが、その秘宝です。」

 「やっぱり・・・」

 「事件捜査の時のデバイス名が一緒だったからね。」

 「そうだと思ったわ。」

 

 三者三様に反応する。

 

 「シューが秘宝と言われるのには、その特別なシステムにあります。」

 「システム?」

 「はい、その名は、“グランツ・ドリーマー(夢を叶える)”。つまり、絶対に無理なことでも、少しの融通で叶うと言うことです。」

 「・・・・・・・だから、シューティングスターか。」

 「はい。」

 

 私は、さらにモニターを浮かべる。

 

 「このシステムは正当な主に一回だけ、動かすことが出来ます。」

 「この場合はアスナ?」

 「はい。」

 

 私は、昨日の朝早くにやったことを簡単に説明する。

 

 「私は朝早くに病室に行ってこのシステムを起動しました。願いは“私の夢が叶いますように”です。」

 「・・・それってかなり遠回りなんじゃない?」

 

 フェイトさんが鋭くつっこむ。

 

 「はい。けど、いくらこのシステムがすごくても、叶わないこともあります。例えば、死者蘇生。不老不死。前者の場合は別のクローンを作ると言われ、後者の場合は一度肉体を殺し、精神のみをその死した肉体に宿らせるそうです。」

 「それってゾンビなんじゃ・・・」

 「だから、少しの融通で何でも叶うんです。私の場合、普通に“意識を取り戻し、生活できるようにする”とすると、既に寿命がない二人はゾンビにされて活かされてしまいます。」

 

 そう、シューから説明を受けた。

 今回の場合は、こうした方が適切だと。

 

 「だから、一日だけの蘇生か。なるほどなぁ。」

 

 はやてさんは納得したようにうなずく。

 

 「けど、それじゃぁ、魔法を使ったアスナはどうなるの?どうして発作を起こさなかったの?」

 「それは、まぁ、私の夢は三人で貝殻を拾い、遊ぶでしたから。私を倒れさせるわけにはいかなかったんです。」

 

 これもシューの助言だ。

 二人を復活させたところで、私が生きていなくては意味がないと。

 

 「けど、そんな無茶なシステム、魔法で動いてるんだったらなんのフィードバックもないはずが・・・」

 

 なのはさんの言うことももっともだ。

 魔法は必ず、肉体に還る。

 魔法は万能ではない。

 それなりの代償の上に成り立つ。

 ただの砲撃をとってもそうだ。

 あれは自分の精神であるエネルギーを代償に発動する。

 同時に、肉体への疲労もフィードバックする。

 今回の私のシステムを使った魔法。

 その代償は・・・

 

 「えぇ、フィードバックはあります。私の寿命です。」

 「・・・・・・」

 

 沈黙が、部屋に落ちる。

 先程まで、目の当たりにしたことのないシステムに輝いていた空気が、黒く沈む。

 

 「たいていの場合、このシステムを使うと寿命が縮むそうです。」

 

 願いの規模によってその消費は異なる。

 小さな・・・例えば空を自由に飛びたいであれば、魔力だけで終わる。

 しかし、人を生き返らせたり、無い物を作ったりすると、どうしても魔力ではカバーしきれない部分が出る。

 そこで出るのが寿命だ。

 ありがちだが、確実に何者もが持っている物だ。

 

 「今回の場合はほんの数日、短くなる程度だそうです。あまり実例がないそうなんで、何とも言えないんですが。」

 

 それに、寿命なんて人それぞれで、今分かることではない。

 その時になってやっと分かることだ。

 

 「・・・そうか。」

 

 はやてさんがうなずく。

 フェイトさんはつらそうな顔をする。

 そして、なのはさんは・・・

 

 「そっか、終わったことは仕方がないね。」

 

 笑っていた。

 いや、無理に笑おうとしていた。

 

 「やりたいことがあって、どうしてもかなえたくて・・・そういう時に精一杯やるのはしょうがないよ。どうしようもなくて、そうなったのなら仕方がない。」

 

 なのはさんは立ち上がると、お茶を入れに行った。

 その間もしゃべり続ける。

 

 「けどね。そのあとはまずは謝ろう。心配かけでごめんなさいって。そして、笑おう。笑って、楽しく精一杯生きるんだ。」

 

 急須にお湯を入れると、それを持ってもどってくる。

 そして、一人ひとりのコップにつぐ。

 

 「そして、なるべく二度と、そういうことはしない。心配かけたり、困らせたり、絶対にしない。二度目はないと思って事前に頑張ろう。」

 

 ねっ、と今度は完璧な笑顔でなのはさんは言った。

 

 「・・・はい。」

 

 私は、ゆっくりとうなずいた。

 

 「よし、ならこの話は終わり。ちょっとつらいけど、このあとお通夜にお葬式。やることはいっぱいあるよ。」

 「はい。がんばります。」

 「うん。」

 

 私は、三人に見守られながら部屋を出た。

 

to be continue to the epilogue...

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