エヴァンジェリンの乱入などアクシデントに見舞われながらもギリシア神話の神性でヒュプノスとその依代の信徒を撃退し、新幹線脱線の危機を防いだ竜馬は事後処理の人員に葛葉の一人、葛葉 サンゲツが現れるであった。
葛葉!! ここに来て、葛葉一族か!
ライドウでもゲイリンでも、キョウジでもない、他の葛葉!
しかし、サマナーにも有名な術師に肖って名を付けられる子供もいるようだから一概に葛葉一族の出あるとは限らないようだ。
「では、簡単な事件のあらましを話したいと思います」
葛葉 サンゲツはメモを取りながら、起きた事件を説明してゆく。
彼はメモを取り終えると、何か思案し始める。
俺は何を悩んでいるのかを聞くべきか迷っていると、こちらに声を掛けてきた。
「君はこの件についてどう思う?」
俺は少し考えることにした。
今回の犯人は全てに絶望し、破滅を望んでいた末期癌患者。
その家族は古くからキ……一神教徒であり、同時にヒュプノスを信奉する矛盾を抱えた家系で、天涯孤独の身となるような事件が起きる。
そして、復讐という名の自殺の為に正体不明の人物から降霊術を学び、行使した。
今回は俺が現場に居合わせることができた為、最小限の被害で抑えることができた。
第三者または勢力が彼に降霊術を教え、事件を起こさせたのか、そこが本題だと思う。
今回考えるべきはWhoでもHowではなく、
一、俺という存在。
これは俺の黄龍の器としての威力偵察。
どこかから先の戦いを観察し、丁度良い手駒を拾えたので、当て馬の如く使った可能性はゼロではない。
そう考えた場合、戦闘向きではないにしても神性をぶつけるのは理に適っている。
もう一つは……ネギ少年達だろう。
なぜかは置いておくにしても、ネギ少年の魔力は魔法使いの中でもトップクラスであり、魔法世界の王族の血統でもある。
近衛さんも同様だ。
関西呪術協会の長を務める詠春殿の娘であり、近衛 近衛門の孫娘である。
故に、その膨大な魔力を利用しようと画策した可能性。
現に近衛さんは関西呪術協会の天ヶ崎一派に利用された。
ただし、これは可能性としては低い。
理由は単純明快、リスクが大きすぎるからだ。
何故なら、今回の主犯は破滅願望にも近い巻き込みを視野に入れた自殺行為。
制御しようにも暴走の危険が付き纏う。
更に言うならリターンも少ない。
ネギ少年を含めた強大な魔力持ちを誘拐すれば、関東魔法協会や関西呪術協会、ヤタガラスを敵に回す可能性がある。
ただ一つだけ言えるのは、
「いくつかは見当がありますが、どれも一長一短だと思われます」
サンゲツさんは少し考えたのち、声を出した。
「その
あ゛?
俺の中で怒りが渦巻くのを感じる。
始まりの魔法使いが実験で彼女を吸血鬼に変えたことで、数々の困難、苦行、責め苦、その善性を擦り切れさせるには十分な程に肉体も精神も擦り減らしてきたに違いない。
ナギ・スプリングフィールドとの出会いと恋慕は、彼女を善き方へと向かわせただろう。
でなければ対価ありとはいえ、ネギ少年に魔法の手解きをしたり、桜咲さんに叱咤を飛ばす訳がない。
本人はあまり良い顔をしないだろうし、どんな人生を歩んできたかなんて、作品でしか知らない俺が言うのもお門違いだろうが敢えて言う。
そんな幼気だった少女に向かい、そのような口。
「……けせよ……」
駄目だ。
「何だ? サマナーのくせに悪魔に絆されたか? 否……惚れたか?」
そのゲスな顔を見た瞬間、俺の中で怒りが腹から弾けて脳天まで突き抜ける。
俺はサンゲツの懐に入り込み、掌底を放つ。
サンゲツはそれを読んでいたのか、少しの動作でそれを回避。
俺は『龍昇脚』でサンゲツの水下への蹴りを放つ。
だが、その蹴りは二体の悪魔に遮られる。
黄肌の長腕の鬼と緑肌の足長の鬼。
テナガとアシナガを召喚したようだ。
「おやおや、図星ですか。 その歳で幼女趣味とは……終わっているなぁ! 関東呪術協会の秘蔵っ子!!」
サンゲツは新たにオカッパ頭の鬼、オバリヨンを複数体召喚する。
俺は一呼吸置いて、駄目だ。
我慢ならん、故にコチラも罵倒を以て伊達に返そう。
「葛葉の教育は地にあると見えるね」
ここからは意趣返しの時間だ、こんなゲスは下っ端も下っ端だろう。
その言葉にサンゲツは眉間に皺を寄せる。
「あ? 今何と宣っまた?」
俺は声を大にして言う。
「貴様ら葛葉は下の人間の教育を疎かにしている、と言っているんだ、葛葉の
サンゲツの顔はみるみるうちに赤くなる。
俺は再びGUNPを起動する。
GUNPはプログラムを呼び起こし、召喚を行う。
《SUMMON》
その画面が現れた瞬間、宙に三つの魔法陣が展開され、そこから妖精達が現れる。
「お仕事の時間ホ」
「えーっもう仕事? それでもやっちゃうよー!」
「オイラのランタンの火を食らうホ!」
俺とサンゲツ、悪魔達が激突を始めようとした矢先、それは現れた。
牛と馬の頭部をした筋骨隆々の悪魔二体と金髪褐色肌の革の鎧と兜を身にまとった偉丈夫、遮光器土器の悪魔。
牛頭と遮光器土器が俺と使役する悪魔を、偉丈夫と馬頭がサンゲツの前に立ちはだかり、両者を牽制する。
「困るなぁ、サンゲツ。 また勇み足で事態を悪化させる気か?」
操縦席側の扉から一人の男が入って来た。
年頃は俺より少し上、黒髪の短髪をざんばらに切り揃えつつもどこか清涼感を感じさせ、その下には不敵なれど人当たりの良さと怜悧さを兼ね備えた笑顔を湛えた快男児。
その瞳には他の追随を許さないと言わんばかりの鋭い眼光を宿している。
「ぐっ……ライドウッ!」
ライドウ!?
葛葉 ライドウか!?
葛葉が立て続けに二人も出てきた。
更に、あの悪魔達は相当な強さと連携を持っている。
牛頭と馬頭、アラハバキ、ジークフリート。
昨日今日程度で契約した俺や仲魔達では全く歯が立たないだろう。
「三体とも、戻ってくれ」
俺は彼らにそう言い、UNSUMMONを実行する。
三体は何かを言いたそうだったが、それを押し殺して退去する。
「緋勇 竜馬殿、我が
葛葉 ライドウはこちらに体ごと向け、身体を九十度直角に曲げた最敬礼にて謝罪を始める。
「ライドウ、貴様!! このような木っ端に頭を下げるなッ!」
サンゲツの不敬極まる発言に、偉丈夫の悪魔は首筋に刃を当てて静止させる。
「サンゲツ……貴様は謹慎処分のはずだ、何故この件に出てきた」
ライドウは父さんにも負けず劣らずの武威を滾らせ、サンゲツに詰め寄る。
サンゲツは齢を二十後半から三十前半であろう年頃のはずだが、ライドウの武威に萎縮し始める。
「お、俺には名誉の挽回が必要なのだ!」
「その名誉挽回が今回の謹慎処分だったはずだが……それすら守れないとは……」
サンゲツを助けようと手長足長の鬼たちは襲い掛かろうとするが、偉丈夫の一振りの斬撃により地に伏し、懐の何かへ吸い込まれ、オバリヨン達もスゴスゴとサンゲツの懐の何かへと帰ってゆく。
「サンゲツ殿……否、サンゲツだった召喚師の男よ」
その一言にサンゲツはあからさまに動揺し始める。
「サンゲツからの要請により、汝を葛葉から除名し、本家筋の有望な若手からサンゲツの名を襲名させる事が決定したことを伝える」
サンゲツ……否、サンゲツだった召喚師は膝を折り、蹲りながら呻き始める。
確か葛葉 ゲイリンは晩年まで妻子を持たず、弟子を取り、その弟子を次代のゲイリンにした、と記憶している。
このサンゲツだったサマナーは葛葉の上層部から直々に引導を渡された訳か……。
「流石は緋勇さんの息子だ、僕の二つ下でありながら、隙が無いね」
父さんを知っている?
「ッ!? 待て!? 今緋勇と言ったのか!?」
元サンゲツは驚いたようにコチラを見る。
父さんは何をしたんだ?
客演?で妖魔學園紀に登場したが、この世界では何をしたんだ?
「君のお父上……緋勇 龍麻さんとは先代からの付き合いで、体術の指導をしてもらってたんだ」
ライドウ……さんは俺に近づき、耳元に顔を寄せる。
(君がどのような
やはり、知っているのか……黄龍の器としての俺の運命を。
ライドウさんは俺の肩に手を乗せ、力強くも、敵意のない力加減でコチラを見てくる。
「故に、改めて今回の事件のあらましを教えてくれないか?」
…
……
………
俺が話し終えるとライドウさんは考え込み始め、後ろでは三十代かそれに近しい大人が悔恨の末の呻きを上げているカオスな状況に俺はかなり頭を悩ませている。
「…………あぁ、そう言えばまだ居たんだな」
ライドウさんは事もなげに呟くと、携帯を取り出してどこかに連絡を入れる。
「……では、そのように」
そう言い残して電話を切ると程なくして、清掃員姿の男性二人と女性一人が乗り込んできて、元サンゲツを連れ出してゆく。
女だけが残り、こちらに向かって歩いてくる。
「二十代目ライドウよ、この方があの……」
「ヤタガラスの使いよ、この方がそうだ」
ヤタガラスの使いと呼ばれた女性は俺に向かい恭しく礼を取る。
「魔人の血統、緋勇 竜馬殿。 此度は偶発的にとはいえ、悪魔騒動の鎮圧にご助力いただき誠に感謝申し上げます」
ヤタガラスの使いがここまで遜る理由は何だ?
言ってしまえば、俺はただの『力』持つ中学生だ。
たかだか一介の中学生にふんぞり返りはしないだろうが、遜る程ではない。
それを察したのか、目元は隠れているが口元から喜色が伝わってくる。
「何故、我々がそのような態度なのか気になるご様子ですね?」
俺は肩を震わせる。
気がついていたのか?
ヤタガラスの使いは抑揚を落としつつも軽快に語り始める。
「貴方のお父様は、五年程前にある学園に潜む脅威を祓い、その地の戒めを解いたのです」
「我々はその地の守り人とその配下達に阻まれ、龍脈も荒れに荒れておりました」
学園……守り人……。
何だ? 何か引っ掛かる。
「当時はトレジャーハンター協会……ロゼッタ協会にエージェントとしてある若者と貴方のお父上が協力して事で事態を解決してくださりました」
ロゼッタ協会!?
まさか、その学生は!
「……これは詮無い話でしたね、つまりは我々の任務に多大な貢献をしてくださった方であり、現在はライドウに代わり、東京の守護を担っていただいている緋勇 龍麻殿の御子息……その貴方が二代続けて我々の任務を手伝っていただいているのですから、最上級の礼儀は必要となるのです」
父さん、貴方どういう経歴なのか気になり始めたぞ!!
そんなこんなで、今回の件の後始末の為にヤタガラスの使いは俺とライドウさんを残してその場を去っていった。
「まぁ、追々サマナーとして指導しようと思うが……確か、ヴィクトルもそちらに行くと言っていたな」
ライドウさんは少し考え込んだあと、俺の肩を叩きながらこう言った。
「今追っている案件が片付けば……教導名目でそちらに行こう。 その時はよろしく頼むぞ、後輩悪魔召喚師よ」
ライドウさんは先程までとはうって変わって、後輩ができて嬉しいような顔で俺へ別れを告げた。
?
この異変内で気づけなかったが、最近感じた事のある氣が近くにある。
俺はそこまで行き、席を覗く。
そこには、綾瀬 夕映さんがいた。
次回予告
氣や悪魔を綾瀬 夕映に見られた竜馬は口封じをするかの選択を迫られる。
その時、竜馬の下す選択は?
次回、口止。
あとがき
今回も拙作を読んでいただき、誠にありがとうございます。
ちょっと前にリメイクを早々に書くかも、と言っていたのですが……。
現在、物語を再構築&加筆修正しつつ時系列の見直しすると共にパワーアップした内容をお届けできるように鋭意作成中ですので、お待ちください。
なお、本作の更新も引き続き行いますので、これまで通りのご愛顧をお願いします。
お気に入り登録、評価、誤字脱字、感想、その他、この作品を支えてくれている全ての人に感謝を!
以上、雑食紳士でした。
この小説の文章力は?
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プロには及ばないが上手い
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一般人よりマシ
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普通
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一般人より下手くそ
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素材だけで成り立たせているだけ、ゴミ文章