思い付いた妄想の断片 詰め合わせ(健全版) 作:精神に多大なる変調を来して入院!!
おぞましい雰囲気を纏った熱線が、地面を深く太くくっきりと抉り取る。
華麗なローリングを決めながら間一髪で回避したブラックとホワイトは、土汚れだらけの顔で眼前の敵を仰ぎ見た。
メタリックで近未来的な材質のロリータファッション。
可愛らしい意匠がふんだんにあしらわれた、おもちゃめいたデザインながら殺傷力のある長槍。
バサバサとなびくウルフカットのロングヘアは、絹糸を集めたかのような白髪。
爛々としてこちらを見下ろす赤紫の瞳は、行為の残虐さに対して純粋な好奇心を帯びているように見える。
完全なる奇襲でこちらを殺しにかかってきた、この謎の少女は――ふたりの持ち合わせる知識で形容するなら、格好だけならまさしくプリキュアとしか言いようがなかった。
「わぁ、驚いた。この時期でも強いのだねぇ、君たちは」
少女は、パーに開いた手を口に当て、妙に偉そうな口調で感嘆する。
「翌年だと『ルミナス』の存在が厄介になるから、君たちが中学二年生の内にミッションを成し遂げようとしたのだが……いやはや、流石初代。敬服してしまうな」
「『ルミナス』? 『初代』……? どういうこと?」
「わけわかんないことばっか言わないでくれる!?」
「失敬。そうそう、早く君たちを抹殺しなければなるまいね。」
ホワイトとブラックの抗議の声に、推定プリキュアは悠然として長槍を構えた。先程禍々しい熱線を放ったあの槍が、チャリッと金属質の音を立てる。
「君たちはだねぇ、私のいる世界線とは似て非なる世界の『初代プリキュア』……。つまり互いにパラレルワールドの存在なのだよ。――であるからして、君たちを殺したところで私たちの世界は一切影響を受けないため、このようなミッションが課されたのだな。うん」
バシュンッ! 長々と会話をしながら、推定プリキュアは無造作に熱線を放つ。ふたりは、再び地面を転がりながらそれを避けた。もうだいぶ、見切ることができてきた気がする。
それを見て、推定プリキュアが口を開いた。先程までと違って、目は笑っていない。
「……無傷で避けられた、本当にそう思っているのかね? 君たちは」
「え? そりゃあ、見ての通りそうでしょ」
首を傾げるブラックの横で、ホワイトが顎に手を当てじっと考える。
「……直撃じゃなくても、至近距離ならダメージが入る。それにあの熱線――放射線?」
「グレイト!」
推定プリキュアが、指を鳴らしながら喜ぶ。それを、未だによくわかっていないブラックと、青ざめた顔のホワイトが見上げる。
「――そう、私もプリキュアだ。ただし、君たちと違って人工モノの、ね」
推定プリキュアはまたあの妙に偉そうな態度で、一人面白そうに語り始める。
「私は、ここからおよそ500年未来の生まれ。その時代の各国政府の共同研究により、プリキュアの力を得たのだよ。その際に、武器として原子力をエネルギー源としたブツを与えられたのさ。人工プリキュアである私とこの槍。その動作テストとして――」
彼女は長槍を曲芸のようにくるくると回す。
「『初代プリキュア』とネーミングされた君たち……それも、タイムパラドクスを引き起こさないパラレルの君たちと戦って見事殺してくる使命をつかまつったのだよ」
「半分くらいよくわからなかったけど、何それ勝手すぎない!?」
「そうね、説明の何もかもが勝手すぎる」
憤慨や嫌悪感で眉をひそめながら、ふたりは臨戦態勢をとる。
「流石の精神力だねぇ、君たちは! どうする? 私を殺すか!?」
「いやいや。大体、なんで命を奪うか奪われるかの二択なのよ? アンタも私たちも同じ人間で、プリキュアでしょ?」
「私もそう思う。それに、未来の法律はよくわからないけどその命令は根本的に人権侵害よ」
あなたがそれに従う道理なんてないわ、とホワイトが言う。しかし気遣われたのにも関わらず、推定プリキュアは怪訝そうな顔をした。
「人権? アハハ、そんなご大層なものは私には無いよ」
彼女は不愉快そうに笑いながら、バレリーナのようにくるくると回転する。
「なんてったって、私は生まれ自体が試験管の中。研究目的で作られたヒトだからね。――そう!」
推定プリキュアは、大げさな動きで槍を天に掲げた。
「私に与えられた名前はキュアグレイ! 生まれながらのプリキュアっ!! ……キュアブラックとキュアホワイト、遥か未来にて君たちの遺した細胞から遺伝子を抽出し、ラボで掛け合わせて生まれた――遺伝的実娘なのさ!!」
今のところ続く予定はないけど、なんかあったら続くかもしれない。