自由気ままに短編集   作:好々爺

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悪者って憧れるよね【MHA】
1話 いざ行かん雄英高校


 幼い頃から見てきた戦隊モノで、一際輝いて見えたのはいつだって悪だった。社会に立ち向かえるような悪玉みたいに生きたい。そう考えたことは多々ある。いつも「自分がヴィランになったら」と想像するも、毎回「金欠で力尽きる」か「警察やヴィランに倒される」というエンディングで終わってしまう。

 よくある話だ。そりゃあ少数対多数なんだから、いつかは殺られてしまうだろう。なのでヴィランになるという夢は所詮妄想の中だった。

 

 しかし代わりに、ヒーローになりたいと思うようになった。ヒーローとヴィランは正反対の存在だが、ヴィランを1番間近で見られるのはいつだってヒーローである。これがヒーローを目指したクソみたいな動機。こんなカスな動機でも、現在雄英高校に入学することができた。要するに、夢を叶える際に必要なものはやる気である。

 

 

 雄英高校1-A、これが自分の所属するところ。周りの皆はきっとまともな動機を持ってここに居るんだろうと考えると、なんだか虚しくなる。正義感と倫理が欠如した人間でゴメンヨと両親へ向かって合掌した。

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」

 教室前方のドアから、みすぼらしいような男が現れる。

「──ハイ静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

 その発言は先生そのもので、その口ぶりからするにこのクラスの担任だろう。変わったヒーローもいるものだなと彼を見つめた。

「担任の相澤消太だ。早速だが体操服着てグラウンドに出ろ」

 

 これから入学式というのに何故?写真撮影?と考えていたが、どうやら「個性把握テスト」らしい。入学早々抜き打ちテストかよと悪態をついていると、相澤先生に軽く睨まれた。

 小中学校でやってきた体力テスト。それを今、個性アリでやれという。お手本としてソフトボール投げをしたトゲトゲ頭の口が悪いヤツは、705.2mという大記録を叩き出した。ボールってそんなに飛ぶもの?と思わずツッコミを入れかけた。

 生徒の1人が「面白そう!」と述べる。賛同しかけたところで、相澤先生の表情が曇ったことに気が付く。確かに、面白そうというのは良くなかったかもしれない。

 トータル成績最下位の者は見込みなしと判断して除籍処分、彼は淡々とこう述べた。

 

 緊張が走る中始まった第1種目の50m走。脚が速い個性の者はやはり有利で、記録は3秒など物凄く速い結果になった。そしてこちらの個性は、空間操作。詳細は以下の通り、問題は残るが50m走はなんとかなりそうだ。

 個性「空間操作」(エリアコントロール)。半径3メートル以内の空間を操作できる。空間を操作、なので自分が飛んでいくことなんて不可能。しかし空間内の物を動かす力を応用して自分の背中を押せば移動できる。自分の周り半径3メートルが領域なわけだし、集中すれば50mなんて割とすぐにゴールできちゃう。

 始まる合図と共に自身を押し出す。投げ飛ばすと言ったほうが正しいのかもしれない。結果は、2.09秒。これはいい記録だったと思う。しかし、問題はこれからだ。

 

 第2種目は握力。これからの種目はほとんど、自分の個性ではほぼどうにもできない。外から自分の手に圧力をかけて、握力を増やす程度。結果は70キロ。かなりマズイ。

 第3種目の立ち幅跳び。50m走と同じように自分を押し出す。重力に反するように押し出すと落ちない。筋斗雲に乗ったような優雅な旅を先生に見せてみれば、記録は(∞)無限となった。しかし実際は10分くらいしか持たないだろう。余裕の笑みを見せたおかげだろうか。

 

そして第4種目の反復横跳びは、59回。まあまあといったところ。

 

 第5種目はボール投げ。今のところ最下位は免れそう。最下位候補は確か緑谷出久?くん。焦りと不安と恐怖と緊張。そんな心境が伺えるような顔つき。立ち幅跳びと50m走がなれけば今頃自分もああなっていただろうと思うと寒気がする。

 緑谷くんが小言を呟きながら、円に立つ。覚悟を決めたように、大きく腕を振るう。が、しかし無情にも記録は46メートル。

 

「な……確かに今使おうって……」

 使おうと?その言葉に耳を傾ける。

「“個性”を消した」

 個性。視ただけで人の個性を抹消する個性。

 ああ、なんだよソレ。個性社会の天敵か。思わず乾いた笑いしか出なかった。彼は「抹消ヒーロー“イレイザー・ヘッド”」。彼の存在は知らなかったが、例の緑谷がそう説明した。

「見たとこ……個性を制御できないんだろ?また行動不能(・・・・)になって誰かに助けてもらうつもりだったか?」

「そんなつもりじゃ……」

 何の話をしているんだろうか。少しの説教が続いたのち、先生は個性を戻して残り1回のボール投げを勧めた。緑谷出久は個性を使って投げるのか、個性を使わないのか。クラスが固唾を飲んだ気がする。

「彼が心配?僕はね、全っ然」

「指導を受けていたようだが……」

「除籍宣告だろ」

 口々にそう呟き、彼の結果を見つめる。今のところ目立った記録もないしどう動くのだろうか。そう考えたところで、彼が大きく振りかぶる。普通の動作に見えた。しかし、ボールが指を離れる瞬間、自身の目に砂が入った。爆風が自身の目を襲う。結果が見えない。

 擦って目を開いたときには、彼のボール投げは終わっていた。705.3メートル。これが彼の記録。普通と思っていた少年の大きな記録に思わず笑った。変色し腫れ上がった人差し指を抱えて彼は「まだ動ける」と笑う。

 そんなカッコイイ彼に見惚れていると、横にいたトゲトゲ頭の彼が飛び出した。

「どーいうことだこらワケを言えデクテメェ!!!」

 コチラにも言って欲しい。個性の爆破を使いながら飛び出た彼を、先生は捕縛武器と呼ばれた細い布を使って拘束する。

「ったく何度も個性を使わすなよ……俺はドライアイなんだ」

 瞬きをすると解けるらしいその個性にとっては、ドライアイが天敵。勿体ない。そう同情していたところで名前が呼ばれた。

 

 

「んじゃパパっと結果発表」

 全種目を終え、先生が画面を見せる。

「ちなみに除籍はウソな。最大限を引き出す合理的虚偽」

 クラスメイトの発狂が耳を劈く。結果は11位。立ち幅跳びがなければ詰んでたかも、と寒気がした。しかし11位、されど11位。このクラスは21人で、11位はど真ん中。上には上がいる、そう実感した。

 

 

 

 

 翌日。午前は必修科目・英語等の授業の普通の授業で終わり、正直退屈だった。昼は大食堂で一流シェフの蕎麦を頂いた。そうして午後の「ヒーロー基礎学」。

「わーたーしがー普通にドアから来た!」

 テレビでたまに見ていたオールマイトが教室へ入ってくる。想像していたよりも大きな身体で思わず笑った。

「早速だが今日はコレ!戦闘訓練!そしてそいつに伴ってこちら、戦闘服(コスチューム)!!着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!」

 オールマイト先生がそう告げ、教室から離れる。

 

 戦闘服に着替えると、小柄な誰かが話しかけてくる。

「お前の服めっちゃシンプルだな?もっとヒーローらしく派手に行こうぜ?」

「まあ機能性だけを求めた結果、コレになったんだよね」

「確かに敵には見つかりにくいだろうけどさあ〜。」

 名前を聞くと彼は“峰田実”と名乗った。確かに周りを見てみるとカラフルで奇抜で目立つような服装ばかり。流石ヒーロー志望と感嘆し、グラウンドβに向かった。

 

 グラウンドβは入試の演習場だった。

「今日は屋内での対人戦闘訓練さ!君らにはこれから敵組とヒーロー組に別れて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」

 オールマイトはこう説明する。「(ヴィラン)がアジトに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとする。“ヒーロー”は制限時間以内に敵を捕まえるか核兵器を回収する事。“(ヴィラン)”は制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえる事」コンビ・対戦相手はくじで決めるらしい。

 このクラスは奇数なので、代わりに誰かがもう1回戦い3対3をするチームがあるだとか。こちらのくじの結果は、ペア相手が氷男で、相手が尻尾と透明人間。

「轟焦凍だ」

「うん宜しく。こっちは目盛穹(めもり そら)

 見た目の通り少々冷たい性格だが、名目上ヒーロー志望の俺はこんなところで挫けない。

「ところでどうやって相手を倒す?こっちはヒーローだけど」

「大丈夫」

「……ン?」

「大丈夫」

「……ウーン?」

 何度聞き返しても大丈夫の一点張り。作戦も何も立てずに始まった試合。

「おい、外出てろ危ねえから」

「轟焦凍くん待ってね。これはチーム戦だよ?」

「早くしろ」

「ヒーローが敵を前に逃げていいと思う?」

 敵を見るためにヒーローになろうとしているのに。彼に詰め寄ると舌打ちをされた。そして軽く胸板を押され、バランス悪く転びそうになったところで、彼が何をしようとしているのか分かった。多分きっと、凍らせるんだ。全部。

 彼が冷気の発する手を床に当てた瞬間、この建物は全て凍結した。個性を使って浮いていなかったら、敵と同じく氷漬けだったろう。まあ、“敵と同じ”というのは悪くない。

 

 冷たい床をなんとか歩きながら轟焦凍の背を追う。扉を開けた先には敵の2人が凍らされていて、動くと足の皮が剥がれてしまいそう。可哀想に。そのまま徘徊するように核兵器を触った轟焦凍のおかげで、こちらヒーローチームが勝利した。

「俺結局なにもしてない」

 尻尾の彼に話しかけると「俺もだよ……」と悲しそうな声色で呟いた。轟焦凍が氷を溶かす。融解する音と共に室内が暖かくなる。彼の個性は「半冷半燃」、全く、強個性でズルいばかりだ。

 

 

 そんなこんなで大きな怪我を負った緑谷以外が集まり、オールマイトの話を聞き、授業が終わった。

「えーっとなんだっけ?目盛だよな?」

 赤髪のトゲトゲに話しかけられる。

「お前のチーム凄かったな〜、一瞬だったわ。あ俺は切島鋭児郎!体力テストの時も思ったけど浮くのズリぃわ〜」

「ウン目盛穹。ほぼ轟のおかげだよ。俺なんか作戦聞いても“大丈夫”しか言われなかったし」

「まあなんか話しかけにくいしな、よくやった!」

「褒めても何も出ないよ鋭児郎。」

 そう反省会もとい雑談をしていたとき、緑谷出久が帰ってきた。彼はクラスメイトと少し話したあと、教室を出ていった。おおかた爆豪勝己と話をしに行ったのだろう。

 その後反省会を続けたのち解散し、雄英高校初めての授業は終了した。




執筆終了。こういう時期ってありますよね。決して自分のことではありません
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