自由気ままに短編集   作:好々爺

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2話 “教師”について

 

「──君にとって、教師オールマイトとは?」

 登校の最中マイクとカメラを持った人が話しかけてきた。大方取材だろう。どう対応するか迷っていると、相手はズンズン距離を詰めてきた。強引に押し付けられたマイクを前に思わず驚く。目線を右往左往させたのち、「100点中90点」と答えてみせた。まさかあのオールマイトに点数をつけるとは思っていなかったのだろうか。混乱した記者へ挨拶をして去る。

 あとから考えてみたけれど、この行動はヒーロー志望として間違っていそうだ。

 

 そう考えていた後ろでシャッターが閉まったような音がした。振り返ってみると正門が閉まっており、正門からこちらへ向かう相澤先生を発見したので聞いてみた。

「ああ、アレか。“雄英バリア”とか呼ばれてるらしいアイツは、学生証とか通行許可証を持ってないヤツが門をくぐるとこう、セキュリティが働く。」

「へえ流石雄英高校」

 早く教室に入れ、と急かされたので会話はこれで終わった。雄英高校ってお金持ちだなと改めて実感。

 

 

 

 教室に着いてからは少し、朝インタビューされたことについて話した。そのあと先生がやってきて、爆豪勝己と緑谷出久に先日(戦闘訓練)についての話をしていた。

「さてHR(ホームルーム)の本題だ。急で悪いが君らに……学級委員長を決めてもらう」

「「学校っぽいのキターーー!!!!」」

 その声を合図としてクラスのほとんどが委員長に立候補している。わざわざ面倒な役を、と思ったが少し待て。委員長という肩書きがあればヒーロー事務所選びに有利に働くのでは?「じゃあ俺は副委員長!」と手を挙げる。

 

「静粛にしたまえ!」

 教室の一角、1人から声があがる。

「“多”を牽引する責任重大な仕事だぞ! “やりたい者”がやれるモノではないんだろう! 周囲からの信頼があってこそ務まる聖務。民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら──」

 ああ、ごもっともな意見。

「──これは投票で決めるべき事案!!!」

「手ぇそびえ立ってんじゃねーか! 何故発案した!!」

 教室の一角。高々とそびえ立つ彼の右手に1人の生徒が思わずツッコミを入れた。

 

 まあとにかく行った投票の結果、緑谷出久に3票が入り八百万百(やおよろずもも)に2票が入っていた。残念ながらこちらは自分の1票のみ。公正なる投票に基づき、委員長は緑谷出久・副委員長は八百万百で決定となった。悔しそうに俯く、投票の発案者飯田少年に、合掌。

 

 

 

 そのあとは普通な授業が続き、皆楽しみ昼飯の時間になった。食堂は混んでいて、自分が料理を受け取ったときには狙っていた座席が空いていない様子。離れたところで食べようと思っていたのに。

「おーい目盛! ここ空いてるぞ!!」

 振り返ると手招きする──たしか名前は、上鳴電気。椅子を引いてこちらが座りやすくした気の使える切島鋭児郎と、スペースを作ってくれた瀬呂範太の側へ向かう。

「いいの? ここ1席しか空いてないけど」

「モチロン座れよ」

 じゃあ遠慮なくと椅子に腰掛け、3人の頼んだ料理を見渡した。

「皆の料理も美味しそうだね、1口ちょうだいよ」

「えーお前のやつくれたらあげる」

「漢は黙って渡すもんだろ?」

「上鳴と切島の決定的な“差”だな」

 取引成立だ、と3人のご飯を1口頂き自分のハンバーグを一欠片渡そうとしたとき。校内に響き渡るように警報が鳴る。唐突な大音量でつい、ハンバーグをテーブルに落としてしまった。

「あっクソハンバーグ……」

「おおい待て拾うのは後でいいから!」

「バッカ雄英に警報だぞ急いで逃げろ!!」

 瀬呂範太と上鳴電気に急かされ、テーブルにぽつんとハンバーグを置き去りにしてしまった。両腕を引かれ強引に廊下へ連れ出される。物珍しい警報に思わず目をくらませながら、放送の指示に従って屋上へ向かう。

 しかしその最中、雄英生徒の大移動に巻き込まれてしまった。皆一目散に屋上へと走っていて、周りの押し潰れた生徒のことは気にしていない様子。否気にしていられない様子。マズイ。そう思っても行動する方法はない。生徒に揉みくちゃにされながらただ流れに身を任せることしか出来なかった。

 

「皆さん……大丈ー夫!!!!!」

 絶叫、罵声、焦燥。そんな中でも耳に入ったのは、先程の飯田少年の声であった。顔を上げると彼は非常口の上に、立っていた。

「ただのマスコミです! なにもパニックになることはありません大丈ー夫!! ここは雄英! 最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!!」

 段々と、人のゆく足が止まり彼の言葉に耳を傾けていった。話終える頃にはみな落ち着いており、踏み潰されることもなかった。そしてふと窓の外を見る。そこにいたのは朝いたマスコミたちとそれの対応をする先生。

 

 おかしい。なんだか変。あんなマスコミたちが雄英バリアを突破出来たのか? その時自身に備えられた「(ヴィラン)レーダー」が点滅した。きっとこれは裏にナニか(・・・)がいる。きっと、自身の勘は外れるまい。ニヤリと上がった口角を抑えながら、屋上へと冷静に避難を進めた。

 

 

 

 

 それ以降は平穏な日々が続いた。ようやく普通の学校生活を過ごすことができた。そんなある日、雄英高校A組にほんの少し特別な出来事が起こる。

「今日のヒーロー基礎学だが……」

 PM0:50。相澤先生が話す。

「俺とオールマイトそしてもう1人の3人体制で見ることになった」

 珍しい。瀬呂範太がなにをするのか尋ねた。

「ああ、災害水難なんでもござれ“人命救助(レスキュー)”訓練だ。今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。訓練所は少し離れた場所にあるからバスで乗っていく。……以上準備開始」

 人命救助、それは1年生がまだやっていない訓練。救助とか苦手なんだよなと考えながらコスチュームに着替え、バスへと向かった。

 

 バスの中の雑談で緑谷出久の個性の話題が挙げられた。彼の個性は強力でオールマイトみたいな個性。派手で強い個性だ。それで言ったら爆豪と轟も、と誰かが言う。

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」

「んだとコラ出すわ!!」

「ホラ」

 こんな密室で怒鳴るなよと思わず悪態をついた。

「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」

「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!!」

 君のボキャブラリーも何だろう。

 

「──それで言ったら、目盛くんの個性も凄いよね!」

 ぼーっとしていると横にいる緑谷出久が声を掛けてきた。

「ン? ああ、ごめん、聞いてなかった」

「お前って中々自由人(マイペース)だよな」

「うるさいよ上鳴電気クン」

 否定はしないのかよと切島鋭児郎にツッコまれる。そんなこんなで他愛のない話をしていると、ついに会場へついた。

 その会場は広く、滝や池に火山や岩山まで多種多様な風景が広がっており開放的な空間となっていた。本当に広いその会場に思わず「「USJかよ!!」」とツッコむ。

 

「──水難事故、土砂災害、火事etc……あらゆる事故や災害を想定し僕がつくった演習場ですその名も……」

 その名も。

ウソ(U)の 災害()や 事故()ルーム!」

「「USJだった!!」」

 訓練場を説明するのは、災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なヒーロー“13号”。彼、または彼女(どちらにせよ宇宙服を着た性別の分からない)ヒーローのことを麗日お茶子は推しているらしく、ただ今テンションが上がっている様子が見られる。

 そして、オールマイトの姿は見当たらない。遅刻なのか急用なのか。英雄の彼の事情は一般生徒の俺たちにとっては知ることの出来ない内容らしい。まあ仕方ない。特に自分は健康優良児であるという自覚もないし。

「えー始める前に小言を1つ、2つ……3つ……」

 増える。

「皆さんご存知かと思いますが、僕の個性は“ブラックホール”」

「その“個性”でどんな災害からも人を救い上げているんですよね!」

「ええ、しかし簡単に人を殺せる力です」

 13号、彼女がどこかで道を踏み間違えてヴィランに堕ちていたらどんな災悪なんだろう。ああ彼女のもうひとつの道も見てみたかった。なんていう期待の眼差しを向けて話を聞く。

「君たちの力は人を傷付ける為にあるのではない。助ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな……以上! ご清聴ありがとうございました!」

「ステキー!」「ブラボー! ブラーボー!!」

 

 それに続くするようにこちらも口笛と拍手を送る! 素晴らしい! 模範的で理想のヒーロー像だ。こんなヒーローになりたい、と皆は思っているに違いない。

 

 

「そんじゃあまずは……」

 

 俺の、客観的あるいは敵レーダーに基づいて。

 

「サスガ! 13号流石!」

 

 皆とはちょっと変わった考えだから分かる。

 

「おっ目盛珍しいな乗り気で人のコト褒めんの!

 ────目盛?」

 

 だからいち早く、“変”なことに気がついた。

 

 

 

 

 (ひと)かたまりに──。「奇しくも命を救うはずの──なって、動く──訓練時間にA組の前に現れた」(、な!!!」

 

 相澤先生が生徒を止めた声がした気がする。数多くの人間、侵入者を前に先生は、生徒を守るように動いた。そう、あれは紛れもない(ヴィラン)。祭りの始まりだった。

「13号に、イレイザーヘッドですか……先日頂いた(・・・)カリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが……」

 残念だけど、居ないみたい。

「どこだよクソせっかくこんなに、大衆引きつれてきたのに──平和の象徴(オールマイト)がいないなんて……」

 手だらけの男が不機嫌そうに、こちらを見る。

「──子どもを殺せばくるのかな?」

 その姿が自身の目を射った。

 ああこの眼光はきっと、世界に追われるような大悪党になりえる。

 

「──先生! 侵入者用センサーは!」

「もちろんありますが……」

 委員長の質問に、轟が予測を立てる。

「現れたのはここだけか学校全体か。何にせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそういうことできる“個性(ヤツ)”がいるってことだな」

 校舎と離れた隔離空間、そこに少人数が入る時間割。彼らは用意周到で間違いなく(ヴィラン)の有精卵。手だらけの男と黒影の男が主犯なのだろう。彼ら2人を観察していると目が合った。逸らすことなく見つめ返す。数秒後、相手は飽きたのか別な方向を見た。

 そんなことをしている間に、ゴーグルをつけた相澤先生が下っ端の方へ歩き出す。まさかあの大人数と戦うのか? 多数対少数。悪くない。ヒーローもカッコいいものだと実感した。

 敵を蹂躙する先生を眺めながら、魅入るように戦いに没頭した。一つ一つの動きに無駄がなく完璧にトレースされている。

 

「させませんよ」

 背後から声がした。黒影の男がモヤで出口を塞ぐ。

「初めまして我々は敵連合。せんえつながらこの度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは……平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 モヤが周囲を覆う。だんだいと背後へ進み逃げ場がなくなっていく。その瞬間、爆豪勝己と切島鋭児郎が影の男に殴りかかった。

「そのまえに俺たちにやられることは考えてなかったか!?」

「ダメだどきなさい2人とも!!!!」

 その言葉を皮切りにして、黒の霧が俺たちに迫った。目の前が暗い。何も見えない。口を手で覆いながらもう片方の手を伸ばし何かを掴もうとする。

「っ、ゴホッ! ゴホ」

 地面を這い視界が開けた。後ろには霧が迫っている。だんだんと皆の声が遠のいていった。

 多分、残っている生徒は、俺1人。

「…………おや? まだ残ってましたか、失礼」

 視線を上げる。男がこっちに向かってきている。周りの生徒は全員消えた。“個性”? 転送? 分からない。

「ごほ、何故? お前はだれ? わからない、もっと知りたい」

「“黒霧”とでもお呼びください。興味があるのなら敵連合に加入してみては?」

「うーん、それは、勘弁かな」

「そうですか……ではまた」

 

 また視界が塗り潰される。皆と同じところに行くのだろうか。身を任せるように目を瞑って見せた。

 きっと未来は昨日よりも明るいと信じながら、もう一度目を開けてみる。

 




目盛空「個性:空間操作」
直径3mの領域内の空間を操作できる。人を浮かせるのはまだ難しい。今のところは物体を引っ張ったり押したりすることが可能。性格が小悪党なだけで常識人

爆豪派閥
目盛が変わったヤツだと理解してくる。好きなヒーローを聞いても、特にいないと返された。変なの。
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