気ままに巡るポケモンの世界   作:ひよこ大福

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第10話

やけたとうを出てからもしばらく、あの静かな気配が身体の奥に残っていた。風の音や街のざわめきが戻ってきても、さっきまで見ていた光景がゆっくりと重なってくるようで、足取りが自然と穏やかになる。

 

「……少し休もうか」

 

ヒノアラシの様子を見ながらそう言う。無理をしているわけではなさそうだけど、知らない場所を歩き続けているのは負担にもなるだろうと思った。

 

「賛成ロト!ちょうどいい施設があるロト!」

 

ロトム図鑑の声に頷きながら、案内される方向へと歩く。

 

少し進むと、見慣れた赤い屋根の建物が見えてくる。

 

「……ポケモンセンターか」

 

ポケモンセンター エンジュシティの入り口に立つと、どの地方でも変わらない安心感のある空気を感じる。中に入ると、落ち着いた照明と穏やかな雰囲気が広がっていて、外とはまた違う“休む場所”としての空間になっていた。

 

「いらっしゃいませ」

 

優しい声が聞こえて、カウンターの方へ視線を向ける。

 

そこに立っていたのは、白い服に身を包んだ女性――いわゆるジョーイさんだった。

 

「こんにちは」

 

軽く頭を下げて挨拶を返すと、穏やかな笑顔で応じてくれる。

 

「こんにちは。旅の途中ですか?」

 

「そうですね、今日はエンジュシティを見て回っていて」

 

自然な流れでそう答えると、ジョーイさんは優しく頷いた。

 

「それなら、ゆっくり休んでいってくださいね。ポケモンも一緒にどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

ヒノアラシの方を見ると、少しだけ周囲を気にしながらも、その場に留まっている。人のいる空間はまだ完全に慣れていないかもしれないけど、嫌がっている様子ではない。

 

「ここなら落ち着けそうだね」

 

小さく声をかけると、ヒノアラシはわずかに身体を揺らした。

 

近くの席に座って、軽く息を吐く。歩き続けていたわけではないけど、やっぱり一度落ち着ける場所に入ると、身体がゆるむのが分かる。

 

「……いい場所だな」

 

「ポケモンセンターは安心安全ロト!」

 

ロトム図鑑の言葉に軽く頷く。

 

しばらく休んでから、カウンターの方へ向かう。せっかくなら、この辺りのことも少し聞いておきたいと思った。

 

「すみません」

 

声をかけると、ジョーイさんがすぐにこちらを向く。

 

「はい、どうされましたか?」

 

「この辺りで、野生のポケモンがいる場所ってありますか?」

 

そう聞くと、少し考えるようにしてから、丁寧に説明してくれる。

 

「エンジュシティの周辺だと、少し外れた森や草地に行くと見かけることが多いですね。特に、東の方へ進んだ場所には、比較的落ち着いて観察できるポイントがありますよ」

 

「そうなんですね」

 

無理に捕まえる場所じゃなくて、“観察できる”という言い方が、この街らしいと感じる。

 

「この辺りのポケモンは、人との距離を保つのが上手な子が多いので、ゆっくり関わるのがいいと思います」

 

「それは助かります」

 

自分のやり方と合っている話を聞けて、少しだけ安心する。

 

「焦らずに、ですね」

 

「ええ、その方がポケモンたちも安心しますから」

 

穏やかな言葉に、自然と頷く。

 

「ありがとうございます。参考にしてみます」

 

「いえいえ、良い旅を」

 

軽く頭を下げてから、席へ戻る。

 

「いい情報だったね」

 

「有益ロト!ハルトのスタイルに合ってるロトよ!」

 

ロトム図鑑の言葉に小さく笑う。

 

ヒノアラシの方を見ると、さっきよりも少しだけ落ち着いた様子で座っていた。こういう場所にも、少しずつ慣れてきているのかもしれない。

 

「無理せず行こうか」

 

そう声をかけると、ヒノアラシはゆっくりとこちらを見る。

 

外の世界も、拠点も、どちらもちゃんと使いながら進んでいけばいい。

 

急ぐ必要はないし、やることを増やす必要もない。

 

「……いいペースだね」

 

小さくそう呟いて、次に向かう場所を静かに考え始めていた。

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