気ままに巡るポケモンの世界   作:ひよこ大福

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第12話

エンジュシティの東側でしばらく歩いたあと、少しだけ開けた場所に出る。木々の密度が緩くなって、陽の光が地面まで届いているせいか、さっきまでの少しひんやりした空気とは違って、柔らかい温度に包まれている。

 

「……この辺り、過ごしやすそうだね」

 

そう呟きながら足を止める。無理に何かを探すというより、こういう場所で少し腰を下ろして様子を見るのもいいかもしれないと思えた。

 

ヒノアラシも、さっきまでより自然に歩いている。草の匂いを確かめるように鼻を動かしたり、小さく周囲を見回したりと、少しずつこの環境に馴染んできているのが分かる。

 

「ここで少し休もうか」

 

軽く声をかけて、その場に腰を下ろす。地面の感触は少し硬いけど、外で過ごすにはちょうどいい。

 

リュックに手を入れて、ポケモンフーズを取り出す。昨日と同じように使うつもりはないけど、少しだけ試してみたいことがあった。

 

「今回は、少なめにしてみようかな」

 

独り言のように呟いてから、ほんの少しだけ地面に置く。ばら撒くというより、置いてみるという感覚に近い。

 

「様子見ロトね!」

 

ロトム図鑑の声を聞きながら、すぐには離れず、そのままの距離で待つ。

 

しばらくして、草の奥で小さな動きがあった。

 

視線を向けると、そこにいたのはメリープだった。

 

ふわふわした体を揺らしながら、慎重にこちらの様子を見ている。昨日のコラッタたちとは違って、少しだけ距離の取り方が穏やかに見える。

 

「……来るかな」

 

小さく声を落とす。ヒノアラシも動きを止めて、その様子を見ていた。

 

メリープはゆっくりと一歩進んで、また止まる。完全に警戒を解いているわけではないけど、興味はあるようだった。

 

「焦らなくていいよ」

 

自分に言い聞かせるように呟く。昨日と同じで、無理に距離を詰める必要はない。

 

しばらくすると、メリープはフードの近くまで来て、小さく匂いを確かめるように鼻を動かした。それから、ゆっくりと口をつける。

 

「……食べたね」

 

その様子を見て、ほんの少しだけ息を吐く。

 

ヒノアラシの方を見ると、さっきよりも落ち着いた状態でその光景を見ていた。昨日の経験があるからか、すぐに構えるような動きはしていない。

 

「昨日より、いい感じかもね」

 

そう言うと、ヒノアラシは小さく身体を揺らした。

 

メリープはフードを少し食べたあと、こちらをちらりと見る。その視線には警戒だけじゃなくて、何かを確かめるような色が混ざっていた。

 

「どうする?」

 

静かに問いかける。

 

モンスターボールをすぐに取り出すことはせず、その場の流れに任せる。昨日と同じで、選ぶのはあくまで相手の方だ。

 

メリープはしばらくその場で考えるように動きを止めていたけど、やがて一歩、こちらに近づいた。

 

そのタイミングで、ゆっくりとボールを取り出す。

 

「来るなら、無理しなくていいから」

 

差し出すようにして、少しだけ前に出す。

 

メリープはボールを見て、またこちらを見る。その繰り返しが少し続いたあと、そっとボールに触れた。

 

赤い光が広がって、その体が中へ収まる。

 

「……来てくれたね」

 

手の中のボールを見ながら、小さく呟く。

 

「いい流れロト!無理がないロト!」

 

ロトム図鑑の声に頷きながら、少しだけ周囲を見回す。さっきまでいた場所とは違って、ここはまた別のポケモンたちがいる環境なんだと実感する。

 

「場所が変わると、出会いも変わるんだね」

 

「当然ロト!環境ごとにポケモンは違うロト!」

 

「それも、面白いな」

 

そう思えるのは、この旅の目的が“強くなること”じゃないからだろう。出会いそのものを楽しめる余裕がある。

 

ヒノアラシの方を見ると、少しだけこちらとの距離が近くなっていた。意識していなかったけど、自然に動いてきたらしい。

 

「……そっちの方が安心する?」

 

小さく聞くと、ヒノアラシはわずかに身体を揺らす。

 

その反応に、思わず少しだけ笑う。

 

「無理に変わらなくていいよ」

 

そう言ってから、ゆっくりと立ち上がる。

 

「今日はこのくらいにしようか」

 

ロトム図鑑の方へ視線を向けると、すぐに反応が返ってくる。

 

「戻るロト?」

 

「うん、一度拠点に戻ろう」

 

この場所もまだ見ていないところがあるけど、全部を一度に回る必要はないと思える。

 

「分かったロト!」

 

ゲートが開いて、その向こうに見えるのは、あの静かな空間。

 

一歩踏み出す前に、もう一度だけ周囲を見渡す。

 

「……また来よう」

 

そう呟いてから、ゲートの中へ足を踏み入れる。

 

ヒノアラシもすぐ後ろについてきて、そのまま拠点へと戻る。

 

静かな空気に包まれながら、今日の出来事をゆっくりと整理していく。

 

焦らなくてもいい。

 

こうやって一つずつ重ねていけば、それでいいと思えていた。

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