気ままに巡るポケモンの世界   作:ひよこ大福

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第13話

拠点に戻ってきてから、外の空気がゆっくりと身体に馴染んでいく。エンジュシティの落ち着いた空気とはまた違って、ここはもっと静かで、余計なものが削ぎ落とされたような穏やかさがある。

 

「……帰ってきたって感じだね」

 

小さくそう呟いて、視線を外へ向ける。

 

草地には、昨日迎えたポケモンたちの姿があった。コラッタとポッポたちは、それぞれの距離を保ちながら、落ち着いた様子で過ごしている。草をかき分けて歩いたり、風に揺れる枝に止まったりと、その動きはどこか自然で、この場所にしっかりと馴染んでいるのが分かる。

 

「……穏やかに暮らしてるみたいだね」

 

思わずそう呟く。昨日連れてきたばかりなのに、無理に縛られることもなく、それぞれが自分のペースで過ごしている光景が、想像していた以上にしっくりきた。

 

ヒノアラシの方を見ると、その視線は同じように草地へ向いていた。少しだけ身体を前に出して、その様子を確かめるように見ている。

 

「……行く?」

 

軽く声をかけると、ヒノアラシは一瞬だけこちらを見てから、ゆっくりと外へ歩き出した。

 

その後ろ姿を見ながら、無理に呼び止めない。

 

ヒノアラシはポケモンたちの少し手前で止まる。距離はまだあるけれど、昨日よりも迷いの少ない動きだった。

 

コラッタの一匹がそれに気づいて、少しだけ顔を上げる。でも逃げることはなく、また自分の動きに戻っていく。

 

「……いい距離だね」

 

無理に縮める必要はなくて、今の関係のまま少しずつ変わっていけばいいと思える。

 

「いい流れロト!」

 

ロトム図鑑の声に、軽く頷く。

 

「そうだね」

 

しばらくその光景を見てから、ゆっくりと家の中へ戻る。

 

中に入ると、外とはまた違う静けさに包まれる。音が少ない分、自分の呼吸や足音がはっきりと感じられて、自然と気持ちが落ち着いていく。

 

「……少し整理しようか」

 

独り言のように呟いて、リュックを下ろす。

 

中に手を入れると、ポケモンフーズやモンスターボールの感触が指先に伝わる。そのひとつひとつが、今日の出来事をそのまま残しているようで、ゆっくりと実感が湧いてくる。

 

「ボックスのこと、少し確認してみる?」

 

ロトム図鑑が横で聞いてくる。

 

「そうだね、気になってた」

 

六匹を超えた分が送られると聞いていたけれど、この拠点での扱いは少し違う気がしていた。

 

「表示するロト!」

 

ロトム図鑑が軽く光ると、目の前に情報が浮かび上がる。

 

そこに表示されたのは、今関わっているポケモンたちの状態だった。

 

ただ、思っていたような“ボックスに分かれて管理されている表示”ではなかった。

 

「……あれ?」

 

思わず声が漏れる。

 

「ボックスの中にいないんだね」

 

表示されているのは、今この拠点の周りで過ごしているポケモンたちの情報だけだった。

 

ロトム図鑑がくるりと回る。

 

「この拠点は特別仕様ロト!基本は自然のまま生活する形ロトよ!」

 

「……なるほど」

 

その言葉を聞いて、さっき見ていた草地の光景がそのまま繋がる。

 

無理に管理されるわけでもなく、それぞれが好きな場所で過ごしている状態。

 

「ここにいるポケモンたちは、外で自由に暮らしてるってことか」

 

「その通りロト!ボックスは必要な時だけ使う補助ロト!」

 

「……そっちの方がいいね」

 

自然とそう思えた。

 

全部を抱え込む必要はなくて、この場所を“居場所”として使ってもらえればいい。

 

画面が消えて、静かな空間が戻る。

 

椅子に腰を下ろして、軽く息を吐く。

 

「……今日は、いろいろあったな」

 

疲れているわけではないけど、動いた分だけ身体の奥に余韻が残っている。

 

ふと、入り口の方を見ると、ヒノアラシが戻ってきていた。

 

外と中の境目で少しだけ止まって、どちらにいるかを選んでいるような動き。

 

「中、入る?」

 

軽く声をかけると、ヒノアラシは少しだけ迷ったあと、ゆっくりと中へ入ってくる。

 

「……こっちに来るんだね」

 

その選択に、自然と表情が緩む。

 

ヒノアラシは少し距離を取った位置で止まって、そのままこちらを見ている。完全に近づくわけではないけれど、同じ空間にいることは受け入れている。

 

「無理しなくていいよ」

 

そう言ってから、ゆっくりと立ち上がる。

 

「明日はどうしようか」

 

ロトム図鑑の方へ視線を向ける。

 

「どこでも行けるロトよ!」

 

少しだけ考える。エンジュシティの静けさも良かったけど、また違う空気の場所も見てみたい。

 

「……湖とか、そういう場所もいいかもしれないね」

 

すぐに決めず、そのままの感覚を残す。

 

ヒノアラシがその場で身体を丸める。完全に眠るわけではないけど、落ち着いた状態に入っているのが分かる。

 

その様子を見ながら、ゆっくりと息を吐く。

 

「……いい感じだね」

 

小さくそう呟いて、静かな空間の中に身を委ねる。

 

焦らなくてもいい。

 

こうやって少しずつ、この場所が“暮らし”になっていくのを感じていた。

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