気ままに巡るポケモンの世界   作:ひよこ大福

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第4話

ヤマブキシティの通りをひと通り歩き回って、街の空気を十分に感じたあと、少しだけ外にも出てみようかと自然に思う。建物の並びが途切れて、視界の先に開けた道が見えた時、その先に広がる景色を確かめてみたくなった。

 

「このまま外に出てみようか」

 

ロトム図鑑にそう声をかけると、すぐに反応が返ってくる。

 

「了解ロト!この先は8ばんどうろロト!ヤマブキシティとシオンタウンをつなぐルートロト!」

 

「シオンタウンに繋がってるんだ」

 

説明を聞きながら、道の先へ視線を向ける。街の整った景色とは違って、少しずつ自然の色が混ざり始めているのが分かる。

 

「そういう場所なら、野生のポケモンもいそうだね」

 

「出現率は高いロトよ!注意して進むロト!」

 

「分かった」

 

軽く頷いてから、一歩踏み出す。

 

街の喧騒が背中の方へ遠ざかっていって、代わりに聞こえてくるのは風の音や草の揺れる音になる。舗装された道の脇には背の低い草が広がっていて、ところどころに大きめの岩や木が見える。

 

「……ちょうどいいな、この感じ」

 

完全な自然じゃなくて、でも街とも違う。どちらの空気も残っている中間のような場所で、歩いているだけで気分が落ち着いてくる。

 

ヒノアラシの様子を見ると、街の中よりも明らかに動きが自然になっていた。周囲の環境が自分に近いからか、少しだけ警戒が解けているように見える。

 

「こっちの方が動きやすそうだね」

 

そう声をかけると、ヒノアラシは小さく首を動かして周囲を見回す。その背中の炎がわずかに揺れているのを見て、少しだけ安心しているのかもしれないと感じる。

 

そのまま道を進んでいくと、草むらの中で何かが動いた気配があった。

 

足を止めて、そちらに視線を向ける。

 

「……今、何かいたよね」

 

「反応ありロト!野生ポケモンの可能性高いロト!」

 

ロトム図鑑の声を聞きながら、少しだけ距離を取って様子を見る。無理に近づかず、まずは相手の出方を確認する方がいいと自然に判断する。

 

草が揺れて、その中から小さな影が飛び出してきた。

 

現れたのは、コラッタだった。

 

地面に着地して、こちらをじっと見上げる。その目にははっきりとした警戒の色があって、簡単に近づける相手ではないことが分かる。

 

「……やっぱり、すぐには距離詰まらないか」

 

自分の中でそう納得しながら、少しだけ姿勢を低くする。威圧しないように、ゆっくりと呼吸を整える。

 

コラッタは一歩だけ後ろに下がって、いつでも逃げられる位置を保っている。その距離感が絶妙で、無理に動けばすぐにいなくなるだろうと感じる。

 

「無理にはいかないよ」

 

小さく呟くように言って、その場で動かずにいると、コラッタは少しだけ様子を探るように首を傾けた。

 

ヒノアラシの方を見ると、こちらも少し身構えている。野生のポケモンと初めて向き合う状況だから、緊張しているのが伝わってくる。

 

「大丈夫、大丈夫」

 

ヒノアラシに向けて軽く声をかけると、わずかに動きが緩んだ気がした。その様子を見てから、再びコラッタの方へ視線を戻す。

 

「ここにいるってことは、この辺りで暮らしてるんだよね」

 

自分の言葉に対して返事があるわけではないけれど、相手の存在を認めるように話しかけることで、少しでも空気が和らげばいいと思う。

 

コラッタはまだ警戒を解いてはいないけれど、完全に逃げる気配もない。その微妙な距離が、この状況のすべてを表しているように感じる。

 

「……今日は、様子を見るくらいでいいか」

 

無理に捕まえる理由もないし、ここで関係を壊す必要もない。こうやって出会えただけでも、十分価値があると思えた。

 

少しだけ後ろに下がって距離を取ると、コラッタはその動きに反応して一瞬だけ身構えたあと、すぐに草むらの中へ戻っていった。

 

草が揺れる音が止まると、そこにはさっきまでの静けさが戻る。

 

「……逃げられたね」

 

ロトム図鑑が少しだけ残念そうに言う。

 

「まあ、あれが普通だよね」

 

そう返しながら、コラッタが消えた草むらをもう一度見る。ほんの短い時間だったけど、ちゃんと“出会った”という実感は残っている。

 

ヒノアラシの方に視線を向けると、さっきよりも少しだけ落ち着いた様子で立っていた。初めての野生との接触を経験して、少しだけ空気に慣れたのかもしれない。

 

「……悪くなかったな」

 

そう呟くと、ヒノアラシは小さく身体を揺らした。

 

すぐに何かが変わるわけじゃないけど、こうやって一つずつ経験していけばいい。焦らなくても、時間はちゃんとある。

 

「もう少し、この辺り歩いてみようか」

 

そう言って歩き出すと、ヒノアラシも自然とついてくる。その距離が、ほんの少しだけ近づいた気がして、静かに嬉しさが残った。

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