気ままに巡るポケモンの世界   作:ひよこ大福

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第5話

8ばんどうろをしばらく歩いて、さっきのコラッタとの短い出会いを思い返す。あの距離感は悪くなかったと思うけど、あれ以上近づこうとしたら、たぶんすぐに逃げられていた気がする。

 

無理に捕まえたいわけじゃないけど、せっかくならもう少し自然に関われたらいいなと思う。あの一瞬のやり取りだけでも十分価値はあったけど、もう一歩踏み込める方法があるなら知っておきたい。

 

「ロトム、ちょっといいかな」

 

声をかけると、すぐに横へ寄ってくる。

 

「どうしたロト?」

 

「野生のポケモンと、もう少し仲良くなる方法ってあるのかな」

 

自分の中で思っていた疑問をそのまま口にする。捕まえる前提じゃなくて、あくまで距離を縮める方法を知りたい。

 

ロトム図鑑は少しだけ間を置いてから、いつもの調子で答えた。

 

「あるロト!基本は警戒させないことと、安心できる要素を見せることロト!」

 

「安心できる要素?」

 

「そうロト!分かりやすいのはエサロトね!」

 

「エサか」

 

その発想は自然に納得できる。人でも動物でも、食べ物を介して距離が縮まることはあるし、この世界でもそれは同じなんだろうと思う。

 

「でも、今持ってないよね」

 

自分の手元を軽く見ながらそう言うと、ロトム図鑑がくるりと回った。

 

「持ってるロト!」

 

「……え?」

 

思わず聞き返す。

 

「ハルトの背負ってるリュックの中に入ってるロト!」

 

言われて、ようやく自分がリュックを背負っていることに意識が向く。転生した時から違和感なく身についていたから、あまり気にしていなかったけど、言われてみれば中身を確認していなかった。

 

「……そういえば、見てなかったな」

 

肩からリュックを下ろして、手に持つ。見た目は普通のバッグにしか見えないけど、触れてみるとどこか軽くて、でも中に何かが入っている感触はちゃんとある。

 

「開けてみるロト!」

 

ロトム図鑑に促されて、ゆっくりとファスナーを開ける。

 

中を覗いた瞬間、少しだけ違和感があった。

 

「……思ったより広い?」

 

外から見たサイズに対して、内側の空間が妙に奥行きがあるように感じる。手を入れてみると、すんなりと奥まで届いて、そこにいくつかの物が収まっているのが分かる。

 

ひとつ取り出してみると、それは袋に入ったフードだった。

 

「これがポケモンフーズ?」

 

「その通りロト!野生ポケモンの好みに合わせて調整されたものロト!」

 

袋の中身を軽く振ってみると、カラカラと小さな音がする。見た目はシンプルだけど、これが関係を築くきっかけになるなら、かなり重要なものだと感じる。

 

「最初から入ってたんだね」

 

「転生特典の一部ロト!」

 

「……そういうことか」

 

そこでようやく、いくつかの点が繋がる。このリュック自体も、ただの持ち物じゃないんだろうと自然に思えた。

 

「このリュック、他にも何か入ってる?」

 

「もちろんロト!それはアイテムボックスになってるロト!」

 

「アイテムボックス」

 

聞き慣れた言葉だけど、実際に使う側になると少しだけ感覚が違う。

 

「必要なものは基本的にここに入ってるロト!取り出したいものをイメージすれば出てくるロトよ!」

 

「……便利すぎない?」

 

思わず素直な感想が口に出る。生活も整っていて、移動も自由で、その上で必要なものがすぐに手に入る環境。

 

「その分、好きに動けるようになってるロト!」

 

ロトム図鑑の言葉に、改めて納得する。確かに、こういう仕組みがあるからこそ、余計な心配をせずにやりたいことに集中できる。

 

「じゃあ、このフードを使えば、さっきみたいな野生ポケモンとももう少し関われるってことか」

 

「そうロト!ただし焦らないのが大事ロト!」

 

「無理に近づかない方がいいってことだよね」

 

「その通りロト!少しずつ慣らしていくロト!」

 

袋に入ったフードを見ながら、その使い方を考える。近くに置いて、あとは相手が来るのを待つ方がいいだろうか。それとも、少し距離を取って見せるくらいがいいのか。

 

「……試してみたいな」

 

自然とそう思えた。

 

ヒノアラシの方を見ると、こちらの様子を静かに見ている。その視線が少しだけ柔らかくなっている気がして、さっきの経験が無駄じゃなかったことを実感する。

 

「まずは、もう一回探してみるか」

 

そう呟いて、リュックを背負い直す。中にあるものの感触が、さっきよりもはっきりと分かる気がする。

 

歩き出すと、ヒノアラシも自然とついてくる。その距離が少しだけ近づいていることに気づいて、ほんの少しだけ足取りが軽くなった。

 

焦る必要はないし、急ぐ理由もない。

 

でも、少しずつできることが増えていくのは、思っていた以上に楽しいと感じていた。

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