気ままに巡るポケモンの世界   作:ひよこ大福

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第7話

8ばんどうろでの時間は、思っていたよりもゆっくりと流れていた。ポケモンフーズをきっかけに集まってきたポケモンたちは、最初こそ距離を取っていたけれど、時間が経つにつれて少しずつその警戒を解いていく。

 

こちらが何もしなくても、ただそこにいるだけで空気が変わっていくのが分かる。

 

「……落ち着いてきたね」

 

小さく呟くと、ヒノアラシが横でわずかに身体を揺らした。街の中にいた時よりも、明らかに動きが自然になっている。

 

草むらの奥から、また一匹が顔を出す。さっきまで見ていた個体とは違って、少し臆病そうにこちらの様子をうかがっている。

 

「いい流れロト!無理してないのがいいロト!」

 

ロトム図鑑の言葉に軽く頷きながら、その場の空気を崩さないように静かに様子を見る。

 

やがて、一匹のコラッタがゆっくりとこちらに近づいてくる。他の個体はまだ様子見の距離を保っているけれど、その一匹だけが少しずつ前に出てきた。

 

「……どうする?」

 

穏やかに声をかけると、コラッタは一瞬だけ動きを止めて、それからさらに一歩踏み出した。

 

その流れに合わせて、静かにモンスターボールを取り出す。

 

「来るなら、無理しなくていいから」

 

差し出したボールに、コラッタがそっと触れる。赤い光に包まれて、その体が収まった。

 

「……二匹目だね」

 

手の中のボールを見ながら、ゆっくりと息を吐く。

 

そのあとも、同じようなやり取りが続く。慎重に近づいてきたポッポ、少しだけ距離を測ってから来た別のコラッタ、そして少し遅れて様子を見ていた個体も加わる。

 

無理に増やすわけではなく、来る個体だけを受け入れる。その流れが自然に続いていく。

 

気がつけば、手元のボールは五つになっていた。

 

「……このくらいでいいかな」

 

それ以上は無理に増やす必要はないと思えた。まだこちらを見ているポケモンもいるけれど、ここから先は“来るタイミングじゃない”と感じる。

 

「いい判断ロト!ちょうどいい数ロト!」

 

ロトム図鑑の声を聞きながら、軽く頷く。

 

「じゃあ、そろそろ戻ろうか」

 

そう言って立ち上がると、ヒノアラシもすぐに動いた。最初よりも自然に隣へ来るその動きに、少しだけ変化を感じる。

 

「帰るよ」

 

ロトム図鑑に視線を向けると、すぐにゲートが開く。向こう側には、あの静かな拠点の景色が広がっていた。

 

一歩踏み込むと、空気が一気に変わる。人の気配も音もない、落ち着いた空間。

 

「……やっぱり静かだな」

 

小さく呟いてから、すぐに家の外へと視線を向ける。

 

「外で出そうか」

 

室内じゃなく、この自然の中の方がいいと思った。急に閉じた空間に出すよりも、少しでも開けた場所の方が落ち着けるはずだ。

 

家の前の草地へ移動して、ゆっくりとボールを手に取る。

 

「出るよ」

 

軽くそう声をかけてから、順番に解放していく。

 

赤い光が広がって、コラッタとポッポたちが姿を現す。

 

突然の環境の変化に、最初は全員がその場で動きを止めた。周囲を見回して、空気を確かめるように慎重に視線を動かしている。

 

その様子を見ながら、ゆっくりと声をかける。

 

「ここが、新しく暮らす場所だよ」

 

落ち着いたトーンでそう言うと、ポケモンたちはすぐには動かないものの、少しずつ身体の緊張が抜けていくのが分かる。

 

風が草を揺らして、その音が空間に広がる。危険がないことを感じ取ったのか、一匹がゆっくりと歩き出す。

 

それをきっかけに、他の個体も少しずつ動き始めた。

 

草の匂いを確かめたり、周囲を見回したり、それぞれがこの場所を理解しようとしている。

 

ヒノアラシも少し離れた位置からその様子を見ていたけれど、やがてゆっくりと前へ出る。他のポケモンたちとの距離はまだあるけれど、同じ空間にいることを受け入れているのが分かる。

 

「……いい場所だと思うよ」

 

誰に言うでもなくそう呟くと、ポケモンたちはそれぞれの動きを続ける。

 

逃げ出す個体はいない。

 

それだけで、この場所が受け入れられている証のように感じられた。

 

「……五匹か」

 

改めてその光景を見ると、確かに増えている。数というより、“ここにいる存在”が増えたという感覚の方が強い。

 

「いいスタートロトね!」

 

ロトム図鑑の声を聞きながら、ゆっくりと周囲を見渡す。

 

静かな空間の中に、いくつもの気配がある。その変化が、不思議と自然に馴染んでいる。

 

「……悪くないね」

 

小さくそう呟いて、少しだけ肩の力を抜く。

 

ここから、少しずつでいい。

 

焦らず、この場所を“暮らし”にしていけばいいと思えた。

 

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