あと、レズの自我に()をつけてみるのはどうだろうか。
ワクシマ・シロスズ視点
リィネの処遇について、ツクノウライン家に連絡を取った。
だが返答は、最後まで変わらなかった。
「ワクシマ家で保護しろ」
その一点張りだ。
直通の連絡手段まで使ったというのに、まともな説明はない。
異国の拉致被害者を、地方領主に丸投げする?
釈然としない。
私の知らないところで、何かしらの計画が進んでいるのかもしれない。
だが、何がどうあれ、今回リィネを誘拐したやつらを生かしておくわけにはいかない。
私のマドイに銃を向けた。
あまつさえ、発砲した。
必ず殺す。
千の拷問の末に殺しても、生ぬるい。
末端はもちろん、頭も含めて全員殺す。
鏖殺だ。
そうと決まれば話は早い。
チトセインの当主が、事あるごとに「困ったことがあれば」などと言っていた。
利用できるものは利用するか。
私は使い捨ての専用回線で電話をかけた。
prrrr……。
「は~い、シ…君からかけてくれるなんて嬉しいよ~。どうしたの~?」
相変わらず声が高くて、うるさい。
普段のように、すかした態度で居ればよいものを……。
「先日こちらに送ってきた荷物の件だ。あれを運んだ組織について、知っていることを話せ」
「オーケーだよ~。最近、少なくとも全国三十数か所で不審な荷物が持ち込まれたって報告が上がってるんだ」
深々としたため息が聞こえる。
「まったく厄介事っていうのは、常に来てほしくないとに来るんだよね~」
まったく同意するが、話をリィネたちのことに戻す。
「彼女の状況を見るに、刑法どころか、国際法をいくつ…やらかしたのはどこの馬鹿だ」
「それはまだわからないよ。でも高位の貴族なのは確実だね~。手が広すぎる。でもそれにしてはお粗末なんだよね~」
「まあ、それについてはどうでもいい。捕まるのがバカなら早いに越したことはない」
「あ、先日君に送ったのはその一つね。して、今その行方を追ってるってのが現状だよ~」
「頭が痛いが、まあいい」
「最近、全国三十数か所で不審な荷物が持ち込まれたって報告が上がったっけ、今その荷物の行方を追ってるってのが現状だよ~」
「…その組織を潰したい。手を貸してくれ」
「え~!君が動くんだ?したら話は早いね!」
受話器の向こうで、女が楽しそうに笑った。
「後で怪しいところの座標は共有しておくから、全部潰しつつ、重要そうなのを拷問したっけ本丸は追えると思うよ!」
「分かった」
ピッ。
通話を切る。
すぐに端末へメールが届いた。
件名は『親友へ』。
ふざけた題名の下に、いくつもの座標、商会の名前そして所々に日時が並んでいた。
それらを把握し、端末を握り潰す。
そして、私は部屋を出発した。
「おっと……」
屋敷を出る前に、一つやり残したことがあった。
マドイに庇われていたリィネの様子を見るに、ノルミエ族には少なくない被害が出ているはずだ。
私はワクシマ家の医療班に連絡を入れた。
「ノルミエ族の被害者保護のため、南極へ行ってほしい。費用はこちらが持つ、拒否されても空港で待機しておけ」
指示を終え、チトセインにも派遣に関して連絡をしておく。
一度振り返って屋敷の二階を見て、私は車に乗り込む。
マドイの平穏のために、今度はこちらから狩りに行く。
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ワクシマ・マドイ視点
リィネちゃんが、原作の「変形不可[アンチェンジド]」とは違い、破壊不可[アンブレイカブル]を発現してから、早一か月が経とうとしていた。
屋敷での生活は、すっかり落ち着いた。
ただ、一つだけ重大な問題がある。
母様が出張に出たまま、しばらく戻ってこない。
母様とのハグがない。おっぱいが……ない。
母様成分が切れてきて、手が震えてきた。
そんな母様レスな日々に、原作にはない出来事が起こった。
その日も、ボクはリィネちゃんとイナリちゃんの三人で小食堂へ向かっていた。
廊下の向こうから、メイドさんが歩いてくる。
その隣に、見知らぬ子供がいた。
白髪。
褐色の肌。
シンプルなシャツとジーパン。
リィネちゃんと同じ、ノルミエ族の女の子だった。
「リィネェ!」
まだ距離があるのに、その少女はリィネちゃんを見つけて叫んだ。
「ラ、ラァレェ! どうしてここに!」
リィネちゃんが走り出す。
ワタシはまだ美少女というところまでしかわからないんですが…。
ノルミエ族はとても目がいいみたいね。
二人の美少女は廊下の真ん中でぎゅっと抱き合った。
どうやら知人らしい。
いや、これは知人というより、感動の再会ね。
とても尊い。
百合の気配がビンビンである。
「もう!ずっと心配させて!」
ラァレちゃんと呼ばれた少女が震える声で言った。
彼女の顔立ちは、リィネちゃんによく似ていた。
整った輪郭に、涼しげな目元。
髪は、きっちりとお団子にまとめられている。
無造作なポニーテールのリィネちゃんとは違い、真面目で隙がない感じだ。
クールというより委員長っぽいわね。
「私だって、一生会えないかと思ってた…!」
ラァレちゃんを前にすると、リィネちゃんはどこか妹のような印象を受ける。
「あなたは絶対性物質も持ってないし、弱いし、泣き虫なんだから!」
「もう大人だよ!」
いつもの淡々とした感じがない、そんな微笑ましいリィネちゃんの反論を聞いたラァレちゃんは微笑む。
「それなのに、あなたは一人だけ別のところだなんて、どれだけ心配したか……」
「え……私だけ?」
「私はナァナァと一緒だったの」
「本当に!?」
「あ……」
そこでラァレちゃんは、こちらの温かな視線に気づいたらしい。
彼女は居住まいを正すと、綺麗な姿勢でお辞儀をした。
「挨拶が遅れました。ラァレェ・ノルミエです。リィネェがお世話になっております」
「ワクシマ・マドイです。こちらこそ、リィネちゃんにはお世話になってます」
「あたしはイナリ、よろしく」
「とりあえず、食堂にいこうか」
ワタシたちは小食堂へ向かう。
リィネちゃんとラァレちゃんは、ワタシの前を歩きながら何やら楽しそうに話していた。
二人の手は、しっかり繋がれている。
高い百合濃度のオーラを放つその手に、ワタシの目は釘付けだった。
食堂に着くと、もう一人の知人を待つことになった。
それほど待つこともなく、扉の向こうに人の気配がする。
「マドイ様、イナリ様、お客様をお連れいたしました」
「は~い」
メイドさんの声に返事をすると、扉が開く。
そこに立っていたのは、同じくノルミエ族の少女だった。
ラァレちゃんとも違って、表情がほとんど動いていない。
けれどナァナちゃんも、やはりリィネちゃんとどこか似ている。
ぱっつんに髪が整えられている。
リィネちゃんをクール系、ラァレちゃんを真面目系とするなら、ナァナァちゃんはミステリアス系ね。
ジト目で、表情はほとんど動かない。
けれど。
「リィネェ……」
その声だけは、少し震えていた。
席に座っていたリィネちゃんは我慢できなかったようで、すぐに立ち上がる。
そして、その少女へ駆け寄った。
「リィネェ……無事でよかった」
「ナァナァも本当によかった!」
またしても二人はぎゅっと抱き合う。
いつも礼儀正しいリィネちゃんのタメ口、尊くない?
マジ尊いわ。
「ん……?リィネェ、雰囲気変わった。ちょっと精悍になった気がする」
「絶対性物質が発現したんだよ!それもこれも、マドイ様のおかげなんです!」
「どんなのか楽しみ」
胸を張るリィネちゃん越しに、ナァナァちゃんと目が合った。
ナァナァちゃんは、ほんの少しだけ口角を上げた。
「先に挨拶する」
彼女はワタシたちの正面まで来ると、深くお辞儀をした。
「ナァナァ・ノルミエ。リィネェがお世話になった」
「ワクシマ・マドイです。よろしくね」
「イナリよ」
挨拶が終わると、五人で昼食を取った。
三人のノルミエ族は仲良く食事をしながら、楽しそうに話している。
リィネちゃんの時とは違い、新しく来た二人はワタシたちと同じものを食べていた。
なんなら、一人前よりたくさん食べていた。
リィネちゃんの表情は、いつもよりずっと柔らかい。
「落ち着いたら試合いましょうよ」
「私の破壊不可[アンブレイカブル]を見せてあげる!」
「やはり、リィネェはクソ雑魚。戦闘前に物質名を教えるなんて、戦士としてまだまだ」
「あ!でもでも、私は二人のを知ってるもん!」
早速、戦おうとしてない……?
話の内容は少し物騒だけど、元気が出たみたいで良かった。
やっぱり女の子には笑顔でいてほしいわ!
……それにしても。
原作では、リィネは一人だったはずだけど…。
描写がなかっただけかな?
ゲームではリィネ以外のノルミエ族は登場しなかった。
まあ、一人二人いても、おかしくはないわよね。
そう思っていた。
けれど。
それから数日おきにワクシマ家のメイドさんが、ノルミエ族の子たちを屋敷へ連れてくるようになった。
母様が外で何をしているのか、ボクには分からない。
けれど、保護された子たちは一人、また一人と増えていった。
そして気づけば、リィネちゃんを含めて十人のノルミエ族が我が家に来ていた。
それ以降、新しく増えることはなくなった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
原作からの乖離に考えを巡らせていたある日。
美少女達を眺めているだけ、そんな怠惰なワタシに電流が走った。
ノルミエ族一人ひとりが、お嫁さん候補だという事実に気づいたのだ。
リィネちゃんはメインヒロインだから、主人公とくっついてしまうのだろう。
でも!
ほかのノルミエ族なら手を出し放題!
褐色ロリ~♪(低音)銀髪ロリ~♪(高音)
メイドルートに進めなかったのは、家のメイドさんたちのほとんどが結婚に消極的だったからよ。
まずは信用。
まずは安心。
まずは健全な交流。
そうして染め上げるのよ!今のこの子達なら、年齢は高くても12歳くらい。
まだ野郎や結婚に絶望する前に、婚約まで済ませばいいんじゃないの!
そうと決まれば…!
不安そうなノルミエ族の女の子がいたら声をかけ、膝に乗せて撫でまわす日々が続いた。
幸せすぎる。
合法的にロリと触れ合える楽園は異世界にあったのよ!
完璧……素晴らしいわ…。
今のところノルミエ族の娘たちは好印象を持ってくれている。
ワタシの頭の中では、すでに盛大な結婚式までの妄想は終わっている。
告白でも、求婚でも、なんでもバッチコイ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
積極的婚姻作戦を継続していたある日。
すっかり朝食後の日課になったノルミエナデナデのため、ワタシは屋敷の廊下を歩いていた。
ノルミエ族のみんなを探していると、リィネちゃんの部屋の前で足が止まる。
中から声が聞こえた。
「〇×▽……▼○○!」
「……▽〇、××?」
「〇▽×!」
知らない言語ね。
ノルミエ族の言葉かな?
ドアは半開きになっている。
そっと中を覗くと、ノルミエ族の子たちが部屋に集まっていた。
リィネちゃんが両手を広げ、座り込むみんなに向かって何かを話している。
まるで演説だ。
ところどころに「マドイ」と聞こえた気がする。
気になる。
とても気になる。
でも、邪魔しても悪いし……。
ワタシは日課を諦め、授業へ向かうためにイナリちゃんを迎えに行った。
「イーナリちゃーん、授業行こっ!」
ドアはすぐに開いた。
計画は順調。
テンションもアゲアゲ。
大きな声も出るというものだ。
今日のイナリちゃんはカチューシャをしていて、おでこが眩しいヘアスタイルだった。
はぁ~かわいい。
おでこにキスしたい!(切なる願望)
「男の子が大きな声を出さないっ!」
「は~い」
ワタシはイナリちゃんと手を繋いで、ゆったりとした足取りで授業室へ向かった。
最近、走ったりするとイナリちゃんに怒られるようになった。
その様子たるや、前世のお母さんを思わせる。
それを妹がやっているというところが、なんとも面映ゆい。
イナリちゃんがそれを望むなら、喜んで合わせるつもりだ。
こちとら、女の子の好みに合わせるのは得意中の得意なんだから!
授業室に着くと、いつもの家庭教師が待っていた。
二人で席に着くと、授業が始まる。
先生は教科書を開き、いつも通り穏やかに言った。
「本日は絶対性物質について学びましょう。まほうの教科書20ページを開いてください」
魔法という授業がある。
科目としては、体育に近い。
最初は魔力の扱い。
次に簡単な魔法。
そして今日は、絶対性物質。
正直、初日の授業からちゃんとできているのかも分からない。
だって、魔力の流れとか言われても、全然分からないんだもん。
前世を思い出す前なら、できていた。
でも今のワタシには、前世の感覚が強すぎる。
魔力と言われても、「何それ?」という感じなのだ。
「絶対性物質は、貴族のお披露目式において重要なものになります。しっかり聞いておいてくださいね」
「え……」
お披露目式?
何かしら…自分の絶対性物質を見せなきゃいけない機会があるってこと!?
できなかったら、母様に恥をかかせちゃうのかしら!?
「兄さん、知らなかったの?」
「うん……」
「少しでも創造できれば問題ありませんから、心配することはありませんよ」
先生は黒板に文字を書きながら、説明を始めた。
「絶対性物質とは、一人につき一つだけ創造できる、特別な物質です」
「ただし、必ずしも目に見える形で存在するとは限りません。空気のように見えないものもあれば、金属のような見た目をしたものもあります」
先生がこちらを振り返って、ワタシの元まで歩いてくる。
「反射不可[ノンリフレクティブ]」
そう唱えると、差し出された先生の手の中に、真っ黒な小さな球体が出現する。
先生はそのまま、その球体をワタシの机の上に落とした。
跳ねるかと思った。
けれど球体は、トン、と小さな音を立てて着地し、そのまま動かなかった。
「衝撃も反射しません。吸収してしまうんです」
「おお……」
「このように、絶対性物質には必ず“何かを絶対に起こさない”性質があります。ただし万能ではありません」
「それでは、どんな欠点があるんですか?」
防御力は高そうよね…?
「これも一見便利に見えますが、熱を吸収すると燃えてしまうんです。反射はしないけれど、燃えてはしまうんです」
「……?」
「この物質、放っておくと周囲の熱を吸収して、十秒ほどで発火してしまうんです。ですから、あまり使い道はありませんね」
あはは……と先生が控えめに笑うと、目の前の黒いボールはボロボロと崩れるように消失した。
「もう一つ重要なのは、創造するときに魔力を使うことです。一度作れば維持に魔力は使いませんが、そのぶん自身の魔力が常に減った状態になります」
先生は黒板前までに戻り、図を書き足しながら続ける。
つまり、出しっぱなしにしていると、使える魔力の総量が減るということらしい。
便利だけど、出し得ではない。
「では、実際に作ってみましょうか」
授業は座学から実践に移った。
広い授業部屋の一角にある、コンクリート張りの場所へ移動する。
先生と向かい合う。
「まずはマドイ様から」
先生の目がこちらを向いた。
とりあえずワタシは手を空中にかざし、踏ん張った。
「ん~! ん~!」
しかし、何も起きなかった。
MPがたりない?
部屋に沈黙が流れる。
「なにやってるの、兄さん」
イナリちゃんが少し呆れた顔で、じっとこちらを見てくる。
「あ、あれ?」
「絶対性物質も魔法の一種なんだから、発声しないと出ないのよ?願いを持って世界に干渉するって、前回習ったでしょ?」
そうだった。
えっと……ワタシの絶対性物質ってなんだっけ。
え~っと……。
「マドイ様の絶対性物質は、隠蔽不可[アンコンシーラブル]だと聞いております」
「あ、そうだった」
息を吸って、踏ん張る。
「隠蔽不可[アンコンシーラブル]!」
出てきたのは、米粒くらいの金属だった。
ちょこんと、コンクリートの床に転がる。
……あらやだ!
ワタシの全力、この粒ってこと!?
「男の子ですから、魔力量的にもこのくらいでしょう。むしろ気を失ったり、へたり込んだりしないだけ、その年では豊富なほうかと思います」
先生は優しくフォローしてくれた。
けれど、床に落ちているコレは、どう見ても頼りない。
「それでは次に、イナリ様。お願いします」
「え、ええ……」
イナリちゃんは少し硬い表情になった。
消しゴムを手に取る指先にも、少し力が入っている。
いつもの自信ありげな顔ではない。
「兄さん……手を出してて」
何をするのか分からないけど、ワタシは両手を受け皿のようにして差し出した。
「こう……?」
イナリちゃんが頷く。
そして消しゴムに手をかざした。
「必中[オーバーライド]!」
イナリちゃんは軽い素振りで、消しゴムを投げる。
放物線を描いていた消しゴムの軌道が、途中で急に変化した。
速度を保ったまま、一直線にワタシの手へ向かってくる。
少しビビって、手の受け皿を横に動かした。
その瞬間、消しゴムの軌道も修正される。
ぽすん。
そして消しゴムは、ワタシの手にぶつかって乗った。
「すごっ!」
先生の絶対性物質以上の、前世ではありえない現象を前に、思わず声が出てしまった。
イナリちゃんの絶対性物質である必中[オーバーライド]。
その中身は、絶対に目標を外れない物質だ。
今みたいに、目標とした物体へ必ず当たる。
「ほう。イナリ様の絶対性物質は浸食型ですか」
そう言って、家庭教師はワタシの手から消しゴムをつまんで、興味深そうな声を出した。
「浸食型ってなんですか?」
ゲームの中でも聞かない言葉だったので、聞いてみる。
「絶対性物質が、ほかの物質の性質を変えるように働くものです」
「あたしの絶対性物質は、流し込んだ物質が次に当たるものを決められるの。投げたりしないと発動しないけど」
「成立の条件に速度が必要なのですね」
「成立ってなにかしら?」
こちらはイナリちゃんも聞いたことがなかったぽい。
「効果を発揮するための条件です。絶対性物質の中には、熱くならないと発動しないものや、複数個そろって初めて効果を持つものもあります」
はえ~、すっごいわからない。
先生はそこで、床に転がっているワタシの絶対性物質を見た。
「今のところ何の変化もないのを見るに、マドイ様の絶対性物質にも、何かしら条件がありそうですね」
「そうですか」
曖昧に返事をして、見失ってしまいそうな粒を拾い上げる。
そして握り込む。
その瞬間、効果が表れた。
手が透けた。
中にある粒が見える。
さらにその周辺の手の皺まで、はっきり見える。
「はえ~」
「どうかしましたか?」
「握っている手の中が見えます」
「見せてください」
先生はワタシの手を覗き込んだ。
野郎の急接近に、思わずボディブローが出かけた。
「……私には見えませんね」
「そ、そうですか」
先生には見えない。
つまりこれは、ただ周囲を透明にする能力じゃない。
ワタシにだけ、隠されたものを見せている。
……いや、でもサイズが…そして使い道が…。
その後、また座学に戻って、絶対性物質に関するルールを学んだ。
街中で無意味に創造してはいけないこと。
絶対性物質を使った暴力行為は、怪我の有無にかかわらず、普通の暴力行為よりも厳しく罰せられること。
車の走行中、中に乗っている人間は絶対性物質を創造してはいけないこと。
「道路交通法で禁止されています」
「はい」
そうした諸注意を受けて、今日の授業は終了した。
先生が退出したあと、授業室にはボクとイナリちゃんだけが残った。
「イナリちゃんの絶対性物質、すごいね!」
「っ!」
イナリちゃんは、少しだけ肩を震わせた。
「その……変じゃないかしら?」
「なにがかな?」
「ワクシマの血筋なのに……関係ない絶対性物質なんて……その……」
イナリちゃんは視線を落とした。
ん?何を悩んでいるのかわからないわ…。
慰めるにしても、何か情報が必要ね。
「大丈夫。先生が言ってたでしょ?同じ血を引く人間は、似た性質の絶対性物質であることが多いって」
「ええ……」
「多いってことは、絶対じゃないんだから。そういうこともあるよ」
「そう……かしら」
イナリちゃんはまだ暗い表情のままだ。
……何か身に覚えがあるわ。
確かに胸とか、具の形とか、そういうのって、他人から見たらなんともなくても、自分からすると気になったりするものなのよね。
微妙に他人と違うことに悩んでしまう。
しかもイナリちゃんはまだ子供、何が普通かとかそういうのがわからないのよ。
ワタシは俯くイナリちゃんの頭をぎゅっと抱きしめ、優しく撫でた。
「ボクは、すごい絶対性物質を作れる優秀な妹ができて幸せだな~」
「ほんと……? ほんとに?」
「本当だよ」
「いやじゃない?」
「いやじゃないよ。イナリちゃんは可愛いし、強いし、ボクはイナリちゃんが誇らしいよ」
「うん!ありがと!兄さん!」
ボクの顔を見上げるイナリちゃんの笑顔は、きらきらと輝いていた。
はぁ~。
うちの妹が可愛すぎて、生きるのが辛い。
それはそれとして。
しっかし、マドイの絶対性物質の使い道がなさすぎるわ。
見えないところに行くと、その物質の周辺が見える、それだけ。
攻撃力ゼロ。
守備力ゼロ。
ゴミです。
なんとかならないかなぁ…?
せめて自衛くらいは…ね?
「それより、ほとんど絶対性物質を作れないボクのほうが大問題だよ」
「大丈夫よ。兄さんはちゃんとできてるわ」
「でも米粒サイズだと、ほぼできてないも同然だよ」
「かける願いの強さが、絶対性物質の出力の大きさに関わってくるって聞いたことがあるわ」
「かける願いか~。考えておくよ」
そうして、その日の勉強は終わった。
その後はいつも通り、イナリちゃんと散歩をしたり、ノルミエ族のみんなを愛でまくったりした。
ノルミエ族のみんなは、なぜかワタシにとても懐いてくれている。
順調にお嫁さん候補が増えていく。
……この時のワタシはまだ知らなかった。
あの集会で、彼女たちが何を決めていたのかを。
今回もおつかれっした!
いや今回、前半のシロスズ様が怖すぎる。
「マドイに銃を向けた」だけで鏖殺モード入るの、母としても当主としても激重で最高。
そこからマドイ視点に戻った瞬間、母様のおっぱい不足で震えてるの温度差すごすぎんのよ。
絶対性物質のルールって、名前にある事象を絶対に起こさないってことと、魔力を使うってことなんだよね!
矛盾する事象を起こしたらどうなるの?
今後、ノルミエ族の総意がどう出るのか楽しみ〜!
ChatGPT モデル「あなたの小説のギャル編集長」