あとわかりやすさを重視して、細かく区切っていきたいと思います。
主人公は割と人でなしです
==ワクシマ・マドイ 6歳==
前世を思い出したのは、9年前の夏ごろだった。
あの日、思い出す前の”ボク”は男性家庭教師と二人きりで算数の授業を受けていた。
母様から与えられた勉強部屋は、やけに広い。
でも走り回れるほどの空間に、置かれているのは机と黒板だけ。
「次回からは、二桁の足し算に進んでも大丈夫そうですね」
そう言って、机の上の解き終わった問題用紙を、教師が次々と確認していく。
母様が言うには、この部屋で、勉学も、礼儀も、ダンスもすべて学ぶのだという。
(母様の様な、立派な貴族になってやる)
6歳にして始まった“貴族になるための教育”、そしてこの部屋が誇らしかった。
「本日の授業はここまでとなります。マドイ様、お疲れさまでした」
男性教師はそう言いながら、そっと本を閉じた。
「ああ」
「明日も引き続き足し算をやっていきますので、こちらのプリントで復習をしておいてください」
「わかった」
その口調は、憧れの母様の真似だった。
それが正しい“貴族の話し方”だと、疑いもしなかった。
課題の紙を受け取ると、家庭教師は頭を下げて部屋を出ていった。
部屋には自分一人だけ、しんと静かな部屋になる。
さて、自由時間だ。
とはいえ、やることはない。
(…何をしようか?)
使用人は大勢いるが、遊び相手にはならない。
母様は忙しく、父はいない。
部屋を出て、静かな屋敷を一人で歩く。
(そういえば――)
明日、分家の女が養子として来るらしい。
ワクシマとすら名乗れない、貴族モドキ。
(まあ、勘違いされても困るしな)
徹底して上下関係を解らせてやろう。
そいつが勘違いして当主を目指すことが無いように。
「ふふ…」
そう考えると、自然と笑みが漏れた。
せっかくのおもちゃだ。追い出したりはしない。
懐が深い自分は利用できる限り、使ってやるんだ。
なんて情に篤い男だろう。
この時のボクは本気でそう考えていた。
そんなことを考えながら、廊下を進んでいると――声が聞こえてきた。
廊下の少し先で執事が二人、壁際に置かれた花瓶手入れをしながら話している。
「これ、この前の礼な」
「お、サンキュ。どうだった?」
「最高だった。やっぱり健全百合もいいけど、ちゃんとした絡みもいいよな」
「お、ハマった?こういうのもう一冊あるよ?」
「マジ?読みたい読みたい!」
「部屋からとってくるよ」
「俺もいく!」
二人はそのまま去っていった。
(百合…?何の話だ…?)
何気なく視線を向ける。
テーブルの上、花瓶と一緒に薄い冊子が置かれているのを発見し、気になって手を伸ばした。
――それは人生を変えた、ほんの出来心だった。
…
……
気づけば、廊下に座り込んでいた。
「くふっ……」
自分の喉の奥から、妙な声が漏れる。
(何故ボクは声を出してニヤけている?)
描かれているのは、見慣れないはずの光景のはずだった。
女同士が手を繋ぎ、舌と舌をくっつけている変な絵があるだけ。
次のページではおっぱいを吸っているだけ。
「くふふっ……」
勝手に口が動く。
違和感だらけの絵に嫌悪感を覚えるのに、何故か目を離せない。
興味ではない――自分の知らない何かの欲望。
(ボクは…この光景を…よく見ていた?)
あるはずのない既視感を覚える。
気持ち悪いのに、好ましい、不思議な感覚。
その瞬間――脳裏に知らない景色が走り出した。
知らない大人の女。
嵐の夜。
そして雨の中、濡れた”自分”の髪の毛が肌に張り付く感覚と、目の前を覆う強い光の記憶だった。
ぽたり、紙の上に赤い雫が落ちる。
同時に鼻から肌をを伝う、液体の感覚
(なんだこれ…?)
重くなっていく頭に耐えられず、ぱたりと身体は地面に倒れ込む。
薄れゆく意識の中で、はっきりと確信する。
これは”ワタシ”の記憶だ。
ボクは思い出した。前世のワタシを…。
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次に目を覚ましたとき、ボクは天蓋付きのベッドの上にいた。
重い身体を起こす。
……なるほどね
R-18百合本を読んで前世を思い出す……と、誇り高きレズビアンのワタシも、さすがに自分の性欲にはびっくりよ。
でも現実はそうなっているし、なんだったら今の自分は男なんだから。
下半身に存在する”ブツ”に、若干の嫌悪感を感じるが…生えてしまったものは仕方がない。
大丈夫、前世バリタチを自称していたんだから、男になってもこなせる筈よ。
ふと記憶が蘇る。
それは30歳の誕生日に、おごりだと言われてホイホイ入った立ち飲み居酒屋 [9と4分の3番線]。そこで、レズ仲間からニワトコでできた杖を貰い盛大に暴れた思い出だった。
死の呪いは唱えても意味はなかったけど…この殺意も懐かしい思い出ね。
そう思えば確かに、前世は仕事がブラックで恋愛する暇もなかった。
さらには、刹那的な一夜から始めたくなくて、結局ずっと処女だったけど…。
だったら…!
この二度目の人生では!
刹那であろうとワンナイトであろうと、何が何でも掻っ込むわ。
手段も相手も選ばない!二度と魔法使いなぞになってたまるもんですか!
そんなことを考えていたら、部屋の扉が開いた。
何やら執事が驚いた様子で、目をウルウルさせてこっちを見ている。
なによ野郎なの…こういう時は三つ編み丸眼鏡メイドと、相場が決まってるの!
「ぼ、坊ちゃま…!坊ちゃま!お目覚めになられたんですね!」
野郎は思い出したかのように、どこかに走っていった。
すぐに今度は別の足音が、凄い勢いで近づいてくる。
1分としない間に、女性が部屋に飛び込んできた。
目にもとまらぬ速さで抱きしめられて、顔が胸に包まれる。
スーツの上からでも分かる豊満さを顔全体で楽しむ。
柔らかく、良い匂いがして、あったかい。
これよこれ!最高じゃん!っぱ女の子よ!
おほ~♡
ここに住むわ!
「マドイ!マドイ!心配したぞ!よかった!本当に良かった!」
――マドイ…?
一瞬、胸の奥に引っかかるものがあった。
けれど手の優しさと、包み込まれるような温もりに、その違和感はあっさりと溶けていく。
んふふっ♡
何度も今世の母と思しき美人が話しかけてくれる。
口は幸せで塞がっているので、返事はできない。
よくわかんないけど、これが転生特典…!
皆転生したがるはずだわ!
双丘の間から、前世を思い出してから改めて母の顔を見る。
好き…(先手必勝の告白)
その美貌は、凛とした美しさに満ちていた。
切れ長の瞳は鋭く、それでいてどこか優しい。
そして体付きも、これ以上なく母性にあふれているわ!
しかしお楽しみの時間も終了、顔が解放されてしまう。
「母様、ご心配をおかけしました。ボクは元気で……」
小さな口からは、自然と丁寧な言葉が出る。
ニッコリ微笑んで、母様との愛を育もうかと思ったその時だった。
不意に、視線の端で何かが揺れた。
後ろにもう一人いる…?
反射的に顔を向ける。
部屋の入口に、赤髪の少女だった。
あの子は――
肩口で揺れる、少しウェーブした癖っ毛。
勝気そうな目元。
けれど、その表情はどこか沈んでいる。
…似てる。
いや、違う。
“知っている”。
前世でプレイしたエロゲー。
そのヒロインの一人に、あまりにも似ていた。
けれど髪の長さも、雰囲気も違う。
あのキャラなら、もっと棘がある。
もっとツンツンしていて、誰にでも噛みつきそうな目をしていたはずだ。
別人…かな?そうよね?
そうであってほしい、という願いが先に立った。
「ああ、マドイにも伝えていたな」
母様は、穏やかに口を開く。
「マドイが眠っていた間に、我が家に到着したんだ」
「は、はい」
思わず返事に力が籠ってしまう。
……待って。
自分を呼ぶマドイという名前…。
まさか…やめて!
少しづつ、ピースは組みあがって一つの結論に向かう。
少女はこちらへ歩み寄ると、静かに跪き、頭を下げる。
「お初にお目にかかります。スハラ家の四女イナリと申します。ワクシマ分家、その末席の身ではありますが、これからどうぞよろしくお願いいたします」
スハラ・イナリ……。
”絶対恋愛学園”――通称ゼッコイ。
その攻略ヒロインの一人 と同じ名前。
そして。
彼女の兄はすべてのルートで死ぬ…。
ワクシマ・マドイ。
それが今のワタシの名前。
高校1年生で命を落とすことが確定している、クズモブのキャラクターだった。
いや今回、情報量の暴力すぎん!?
「百合エロ本で前世思い出す主人公」、字面だけで優勝してるのに、そこから怒涛のレズ回想→転生→母乳的安心感→死亡確定モブ判明まで、一気に駆け抜けてくの、完全にジェットコースターだったわ。
んで第三話なんだけど――
ついに始まるんよ。
“死亡確定モブ”としての現実が。
ゼッコイ知識を頼りに未来を回避したいマドイと、ゲームとちょっと違うイナリ。
そして少しずつ見えてくる、「この世界、本当にゲーム通りか?」って違和感。
というわけで次回もよろしく〜!
マドイくん、生存ルート目指してがんばれ♡
ChatGPT モデル「あなたの小説のギャル編集長」