大体7万文字くらいは幼少期になります。
その間、貞操逆転要素は少し薄めです。
ここまでをまとめると……。
イナリちゃんを含め、ヒロインに迷惑をかける。
そして最後には異形のスタンピードで死亡する。
それが、原作におけるワクシマ・マドイの未来だ。
スタンピードはヒロインとの関係に関わらず発生してしまう。
……とはいえ。
悲観する必要は、ないかもしれない。
ベッドの上で天蓋を見上げながら、そう結論づけた。
なぜなら、避けられない未来ではないのよね。
スタンピードで死なないように、今から鍛える――。
そんな方向に努力しても意味はない。
そもそも、この世界において男はクソ雑魚だ。
なぜなら、魔力量は圧倒的に女の子の方が上。
魔力はそのまま魔法の威力に直結するし、戦闘の要になる“絶対性物質”を創造できる量にも大きく影響する。
一方で、男にできるのは、せいぜいライター程度の火を灯すことくらい。
そしての絶対性物質は、どれだけ頑張っても野球ボールサイズを作るので限界だ。
じゃあ、どうするか。
単純明快――関わらなければいいのよ。
そのためには…。
①このまま自宅学習で、高校を回避する。
②もしくは、イナリちゃんが入学する学校とは別の高校へ進学する。
そうすればスタンピードが発生するとき、私は巻き込まれるところには居ないはず。
そして、念のためスタンピードが発生する秋には、極力外出しない。
……うん。
自宅学習が無理だった場合には、留年するかもしれないけど、死ぬよりはずっとマシね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そうして二日後の朝。
この二日ベッドで休む中、前世のワタシは少しずつ今のボクと混じり始めていた。
とはいえ、価値観の大部分は前世のままだ。
男は守られて当然――とか。
そういう元のマドイの感覚は、どうにもピンと来ない。
それと、もう一つ決めておかないといけない。
「いきなり一人称が変わったら、おかしいもんね」
記憶では、母様の前で自分のことを「ボク」と呼んでいた。
なら、怪しまれないためにも、口に出す時はボクで統一した方がいい。
頭の中ではワタシ。
口に出す時はボク。
少しややこしいが、今のワタシとしては、それが一番自然だった。
幸い、「ボク」という一人称に抵抗はない。
社畜時代はワタシだったけど、前世の女子高時代はこれでもボクっ子王子様だったんだから!
女の子をエスコートして、
格好つけて、
桜の木の下でイチャイチャ。
……今思い返しても、あの頃が我が世の春だったわ。
まあ、ふわふわハーレムを維持し続けた結果、逆に誰にも手を出さないまま卒業したんだけど。
「あの当時ならヤれてた。酒池肉林のナメクジセッ〇スよ。二度とチャンスは逃すまい…」
その後ベッド上で食べた朝食が、少ししょっぱくなった。
…
……
ともあれ、体調はすっかり回復していた。
病み上がりということで、今日の勉強は免除されている。
お昼ご飯までの時間を持て余した結果、向かった先は決まっていた。
イナリちゃんの部屋だ。
軽くノックをする。
「イナリちゃん、いるかな?」
しばらくして、控えめに扉が開いた。
「……な、なんでしょうか。マドイ様」
俯きがちなその表情は、やはり暗かった。
「屋敷を案内しようと思ってね。今から時間あるかな?」
「あの、屋敷については、来た当日に案内していただきましたので……その、お手を煩わせる必要は、ございません……」
「そっか。じゃあ、復習がてらお散歩しようよ。ね?」
「……わかりました」
少し強引に誘うと、イナリちゃんはためらいがちに頷いた。
廊下を並んで歩く。
「ボク、イナリちゃんと仲良くなりたいな」
「…あ、ありがとうございます」
「だからさ、お兄ちゃんって呼んでよ」
「いえ…そんな恐れ多い、です」
イナリちゃんは困ったように視線を伏せた。
…明確に拒絶をされてるわけではないわね。
ならまずは…!
そっと手を取ると、びくりと肩が震えた。
イナリちゃんは目を合わせてくれなかったけど、こちらが握った手を柔らかく握り返してくれた。
か、かわいい……。
二人で手を繋いで歩くだけなのに、なんかもう幸福感がすごい。
可愛すぎて腰の辺りがむずむずする~。
羽根でも生えてきそうだわ!
「あ、あの、マドイ様っ」
「イナリちゃんは、屋敷についてどんなこと知ってるの?」
「その、食堂や、ご当主様のお部屋の場所です」
「え? 勉強部屋とかは案内されなかったの?」
「は、はい……」
ん〜?
どこで勉強するつもりなのかな。
イナリちゃん用に、部屋が別にある?
あとで母様に聞いてみましょ。
「じゃあ、今日は屋敷の中からだね」
屋敷を巡りながら、知っている場所を一つずつ説明していく。
サロン。
小食堂。
医務室――。
どの部屋も、イナリちゃんは手を引かれない限り、入ろうとはしなかった。
やがて、大広間へと辿り着いた。
「ここが大広間! 年に一回はパーティもあるんだよ。次は……母様の誕生日だね。あ、イナリちゃんの誕生日っていつ?」
「あの……十二月です」
「え! じゃあ次のパーティは、イナリちゃんのお誕生日会だね!」
「わ、私の……ですか!? それは、その……必要ない、かと……」
「なんで? ボクの妹なんだから当然だよ!」
「っ……」
その瞬間、イナリちゃんは苦しそうに息を呑んだ。
「ぱぁーっと豪華にやろうね!」
華やかに祝えば、少しでも笑顔を見せてくれるかもしれない。
そのためなら、母様に土下座で頼み込んでみせるわ!
「……」
それでも、イナリちゃんの表情は晴れなかった。
――やがて、柱時計が正午を告げる。
昼食の時間ね。
「ご飯食べにいこっか」
「では、私はこれで……」
そう言って、イナリちゃんは頭を下げた。
彼女がそのまま離れようとしたので、慌ててその手を掴んだ。
「母様はね、食事は家族みんなで食べるんだよ。だから、イナリちゃんも二階の食堂に行こ?」
「え……でも」
「ほらほら、急がないと母様の食べる時間が遅れちゃう!」
半ば強引に手を引き、小食堂へ向かう。
食堂へ着くと、母様はすでに席についていた。
いつもの隣へ座ると、母様が微笑みながら頭を撫でてくれる。
……ふへへ。
しかし。
イナリちゃんは、離れた端の席へ座ってしまった。
あれ?
なんでそんな遠いところに…?
「どうしたの? イナリちゃん」
「え……いや、その……」
「家族は近くで食べるんだよ?」
あ〜んが届く距離じゃないと!
なんなら膝の上でもいいくらいなんだから!
「で、ですから私はここで……」
「ん〜?」
話が見えてこないわ…。
あ、イナリちゃんは端っこが好きなのかしら?
なら、ワタシが合わせましょ。
そうして、イナリちゃんの隣の席へ移動した。
「じゃあボクはここ!」
「ふふっ、ならば私も移動しようか」
母様も席を立った。
その後端っこの席からイナリちゃん、ワタシそして母様の順番で座る形になった。
母様の様子を、目を点にして見ていたイナリちゃんが、深々と頭を下げた。
「す、すみません! わ、私が移動すべきところを!」
「いや、構わない。偶には席を変えてみるのも新鮮だ」
「そうそう、好きな席があるなら遠慮しないでね!」
慌てるイナリちゃんをなだめつつ、三人で食前の挨拶をする。
テーブルにはムニエル、サラダ、スープ、それにパンが並んでいた。
母様と感想を言い合いながら食事を進める。
穏やかな時間だった。
けれど、イナリちゃんの返事だけは終始小さく、どこかぎこちない。
メニュー…好みじゃなかったかな?
明日にでも、好きな食べ物を聞いてみましょ。
好物から攻めるのは、コミュニケーションの基本よね!
その後、病み上がりということもあり、食後は休むよう言われ部屋に戻った。
…
……
――まだ、距離がある。
部屋へ戻ってからも、イナリちゃんの表情が頭から離れなかった。
俯いてる女の子を、放っておけるわけない。
少しでも笑顔でいてほしい。
――きっと、それが今のワタシにできることなんだから。
どうすれば、あの表情が和らぐのか。
答えはわからない。
でも、行動するしかなかった。
仲良くなれば、笑顔を引き出せるかもしれない。
そして翌日も。
その次の日も。
毎日のように、イナリちゃんを連れ出した。
屋敷、庭、 敷地中を探検した。
記憶だと、池もあったはずだ。
明日はそこへ行ってみようかな。
さすがに四日目にもなると、イナリちゃんも自然に手を繋いでくれるようになっていた。
ワタシの妹…可愛すぎない?
ただ、何度お願いしても、お兄ちゃんとは呼んでくれない。
懐くというより、慣れるって感じね……。
どうすればいいのかな。
第四話、おつかれっした〜!
いや今回、“マドイ視点だとほのぼの”なのに、“イナリ視点を想像するとずっと胃が痛い”の、かなり良かった。
マドイくんさ、めちゃくちゃ真面目に死亡回避しようとしてんのよ。
「高校行かなきゃ死なない!」って結論も、割と合理的。
でもその横で、
「いっぱい甘やかして健全に育てましょうねぇ……」
とか言いながら、距離感バグった速度で妹に近づいてくの。
その結果、イナリ側の情緒が毎秒ジェットコースター。
第四話、この兄妹がどこまで踏み込むのか、かなり楽しみ〜!
ChatGPT モデル「あなたの小説のギャル編集長」