エロステータスが見えるヒロイン   作:SoftMcherry

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少しだけ貞操逆転要素が出始めます。




第6話「結婚に向けてGO!」

お兄ちゃんと呼ばれてから数日。

 

ワタシはイナリちゃんと並んで、授業を受ける日々を過ごしていた。

 

ゲーム世界の勉強とはいえ、困ることはほとんどない。

社会科以外は、小学生レベルの内容だ。前世の知識でどうにでもなる。

 

社会科だけはね、よくわからないわ。

 

都道府県の名前に加えて、その領主の苗字も同時に教わるのだ。

 

ワクシマ家は三重県の領主で中級貴族らしいけど…原作の貴族ってほぼフレーバーテキストなのよね…。

 

偉いのか偉くないのか、全くピンと来ないわ。

 

北海道にはチトセイン。

埼玉にはムサシノイン。

静岡はスルガノイン。

宮城にはツクノウライン

 

家庭教師が黒板に家名を書き連ねていく。

 

けれど、頭にはまるで入ってこない。

 

兵庫県は領主がユウキ家で上級。

鳥取と島根は両方ウキニワ家で中級。

 

このように、法則や関連が全くない。

 

「マドイ様はとても優秀でございますね」

 

家庭教師の言葉に、ワタシは曖昧に笑った。

 

褒められているはずなのに、どうにも居心地が悪い。

 

言われて5分覚えておくのは、誰だって出来るのよ。

明日には絶対覚えてない…。

 

一方で、イナリちゃんは大変優秀だ。

 

家庭教師が県名を言えば、その領主の名前をすぐに答えていた。

 

すでに3年先の範囲まで終えているらしく、授業は問題なく進んでいく。

 

むしろワタシに合わせて、復習をさせてしまっている。

 

「あの、先生…イナリちゃんに個別に、レベルを合わせた授業をしていただけませんか?」

 

「わかりました」

 

そう答えた教師にお礼を返すよりも早く、イナリちゃんが口を挟んだ。

 

「だめよ、兄さん。シロスズ様は兄さんのために授業料を払っているの。あたしのために別の授業をするなら、その分の費用が必要になるわ」

 

きっぱりとした口調。

 

イナリちゃんは、あれからお兄ちゃんと呼んでくれない。

 

どこか一歩身を引いているように見える。

 

でも。

 

砕けた口調になっているあたり、家族としての第一歩は歩み出せた。

 

その証拠に、こうして真面目に言い返してくれるのだから。

 

原作でのイナリちゃんの未来を知る者としても、本当にいいことだと思う。

 

「も~、イナリちゃんは優秀なんだから伸ばしていけばいいのに」

 

「っ…その、あたしは、いいのよ。あたしは、その…」

 

「言ったじゃないか、イナリちゃんが大切なんだから!イナリちゃんのためになるようにしたいんだよ」

 

「っ~!あっ、あたしは良いの!復習も大切なんだから!」

 

「う~ん…わかったけど、もし自分でやってる勉強でわからないところがあったら、遠慮せず先生に質問するんだよ?」

 

「わかったわよ!だから気にしないで!」

 

強引に話を切られてしまった。

 

――イナリちゃんは退屈そうで、ワタシも全く頭に入らない。なんとも生産性の低い時間が過ぎていくのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

授業が終わると、自由時間になる。

 

イナリちゃんとは、どこに行っても手を繋いで歩く。

 

あ〜こうしていたら、イナリちゃんがお兄ちゃん子になってくれないかしら…。

 

くれないよね…きっと最後は主人公に惚れて結婚報告とか。

 

そうなれば、胸の奥がもやつくどころか、暴れる自信があるわ。

 

あ…今なら、ファーストキスを奪うくらいの反抗はできるかしら!

 

も〜っとお兄ちゃん大好きっ子になったら、許してくれたり?

 

「くふっ…!」

 

……

 

お昼下がりの廊下は、空調が効いていて涼しく保たれている。

 

今日はある目的のため、態々一つ一つ部屋を見て回っている。

 

その目的とは、情報収集!

 

女の子との恋愛において、余念のない脳が天才的な結論を出した。

 

この世界の結婚可能な年齢は不明、つまりいつになったら出来るかはわからない。

 

けれど、婚約までいければどうせ結婚するんだから!

 

今からイチャイチャしてても無問題なのよ!

 

――作戦名。

[成人なんて待ってられない!

今日から婚約!毎日イチャイチャ大作戦!]

 

……というわけで、まずは結婚願望のあるメイドさん探しよ!

 

清掃済みの部屋を見ては、次の部屋へ。

そんな姿を見て、イナリちゃんが不思議そうに声をかけてきた。

 

「兄さん、部屋を回って何をしているの?」

 

「ん~?大人に聞きたいことがあるんだ」

 

「ふ~ん?」

 

イナリちゃんは納得していなさそうだけど、ついてきてくれた。

 

Hなことは、思春期にさえ入ってしまえば…出来るわよね?。

でも、野郎のそれっていつからくるのかしら?

 

前世思い返すと…胸に気持ち悪い視線感じ始めたのは…。

中学生くらいだったかしら?

 

それはさておき!

 

メイドさん〜♪メイドさん〜♪

 

「……いた」

 

部屋の中で、メイドさんが花瓶を新しい物に入れ替えをしていた。

 

振り向いたのは、黒髪を丁寧にまとめたブリティッシュメイド服な女性だった。

 

…あれ?こんな人いたっけ?

 

ここ数日この屋敷で過ごしてきたが、彼女を見たことはなかった。

 

「こんにちは!」

 

「ん?ワk、坊ちゃま!?いかが致しましたか?」

 

彼女は驚いた様子で振り返った。

 

「お仕事中ごめんなさい。聞きたいことがあったんだけど、初めましてですよね。ボクはワクシマ・マドイです。よろしくね」

 

「あの、その…サガ・カナです。本日は臨時で参りました。よろしくお願いいたします」

 

すぐに落ち着いた様子に戻り、サガさんは深々と頭を下げた。

 

サガ・カナさん、覚えたわ。

 

髪の毛は黒で、とても良く手入れされていて綺麗。

しかしメガネの度がつよいのか、そういうグラスなのか目元が微妙に伺えない。

 

雰囲気がミステリアスでとっても素敵!

 

ボンキュッボンの魅惑の肢体も合わせて…おそらくヘタレ受けの美人ね。

 

ワタシの目は、美少女を見抜くことに関しては他の追随を許さないのよ。

 

「サガさんに聞きたいんだけど、結婚ってどういうもの?」

 

これで否定的な意見でなければGO!GO!

 

押して押して押し倒せ!

 

「結婚…ですか?」

 

サガさんは少し考えるように視線を落とし、考える素振りを見せた。

 

「素敵なものだと思います。愛し合う者同士が共に生きる――それが叶うのであれば。ですが、ワタシどもでは到底出来ないことです」

 

どこか遠い響きのある言葉と笑顔だった。

その言葉に思わず…。

 

「結婚してください!」

 

先手必勝!運命の出会いは作るものなのよ!

 

「え!?ええっ!?」

 

「兄さんっ!」

 

部屋中に響くイナリちゃんとサガさんの声に、思わず肩が跳ねた。

 

「ダメよ!結婚っていうのは、事前に色んな事をしなきゃいけないんだから!」

 

「い、いい、イナリ様の言う通りです!よくお考えください!」

 

二人に同時に止められる。

しかぁし!ダメとは言っていない!

 

土下座か?土下座が足りんのか!?

 

「ボクきっといい夫になります!婿入りでも大丈夫です!」

 

「兄さんっ!ちょっと来なさい!」

 

次の瞬間、イナリちゃんに身体を抱え上げられた。

 

「ちょっ、ちょっとイナリちゃん!?」

 

イナリちゃんにお姫様抱っこされて、そのまま廊下へ連行される。

 

イナリちゃんったら、意外と力持ち!

 

いつもと違う、下から見上げるイナリちゃんにキュンと来てしまう。

 

そして廊下で降ろされると、すぐにイナリちゃんに壁ドゥンされた。

 

「兄さんっ!さっきのはどういうこと!」

 

「その、結婚したくて…」

 

「さっきも言ったけど貴族にとって結婚は大きなことなの!それに、いきなりプロポーズなんてはしたないわ!」

 

「は、はしたない?」

 

なんで!?グイグイいくのがタチってものでしょ!

 

誘い受けなど邪道ォ!

 

「そうよ!普通は、男としてその、やっちゃいけないことなのよ!」

 

「え?」

 

イナリちゃんは一度言葉を飲み込み、少しだけ頬を赤くしてから続ける。

 

「さっきみたいなことは普通は女からやるのよ。それも長い時間をかけて、お互いの意思を確認して、家同士の同意を得た後にするの!」

 

「そっか…そうだったんだね」

 

この世界だと、プロポーズは女性側からするのが普通なんだろうか。

 

女性が強い社会だとこうなるのかな?

 

そうすると、サガさんからはだいぶビッチな感じに映ったのかな…。

 

あぁ、せっかくのお嫁さん候補なのに、子供故の所業と大目に見てくれないかなぁ。

 

無理かなぁ…。

 

そのまま、サガさんと別れた。

 

その後も、屋敷の人間に話を聞いて回った。

だが――結果は芳しくなかった。

 

それにしても結婚に対して、否定的な意見が多い。

 

夢はあるが現実的ではない、とか。

世の男を見ていればあきらめもつく、とか。

一人の方が気楽、などなど。

 

なんなら執事の方はもっと否定的だった。

することになるとは思うがマトモな女はいない。

家の為にすること、などなど。

 

そんな言葉ばかりだった。

 

廊下を歩きながら、ショックのあまり視界がぐるぐるし始めた。

 

この世界は結婚が…出来ない世界なの?

 

例え出来てもそこに、愛はないの!?

 

前世から憧れていたものが、音を立てて崩れていく。

 

男になっても、結婚は夢のままなのか。

 

心に空いた穴から、チョロチョロと力が抜けていく気がした。

 

「……母様に、聞こう」

 

はぁ、母様に会いたい。

母様に確かめたい。

 

貴族でも結婚できないのか、それを確かめる。

 

ワタシはトボトボと、重い足を引きずるように、執務室へ向かった。

 

イナリちゃんが握ってくれる手の温かさがなければ、歩くどころか立ってもいられなかった。

 

執務室の前に着きノックをしたが、返事がなかった。

 

「兄さん?シロスズ様は昼からお出かけよ?夕方まで戻られないそうよ」

 

「そんなぁ…!」

 

ダブルショック!

誰かワタシの心を癒して!

 

「イナリちゃん、お部屋いこっか」

 

「ん?ええ」

 

自分の部屋に着くと、そのままベッドに寝転んだ。

 

寝返りを打つと、部屋の入口に立つイナリちゃんの心配そうな顔が見える。

 

「兄さん大丈夫?」

 

「うん、身体は元気だよ」

 

「別のところが悪いなら…教えなさいよ」

 

「イナリちゃんこっちきて〜」

 

「何?」

 

お願いすると、イナリちゃんはベッドの方までトコトコ歩いてくる。

 

その間に家履きを脱いで、掛け布団をかぶった。

 

「手を握って〜」

 

手だけ布団から出して、イナリちゃんに向かって差し出す。

 

「もぅ、なんなのよ」

 

そんな事を言いつつも、イナリちゃんは手を握ってくれた。

 

――その瞬間、手を引いて、掛け布団の中にイナリちゃんを収納した。

 

「ちょ、兄さん!なにしてっ!」

 

「…さみしくなっちゃったんだ」

 

「に、兄さん…っ!」

 

その一言で、イナリちゃんは途端に大人しくなった。

 

代わりに胸元におでこを当てて、身体を抱きしめてくれる。

 

その力は強すぎず、だけど確かに温もりが伝わる。

 

ゆっくりと気力が湧いてくる、安心させる優しい感触だった。

 

「兄さんは、結婚したかったの?」

 

「うん…でも無理みたい」

 

「そんなことないわ。兄さんなら大丈夫よ、きっと…良い人が見つかるわ」

 

「イナリちゃんは結婚してくれる?」

 

「っ〜!その、ダメだと、思う。嫌とかじゃないの!でも、その…」

 

身体を抱く力が、少し強くなった。

 

けど…はっきり断られちゃったわ。

 

「そっか」

 

やっぱりメインヒロインは、主人公とくっつく未来にあるのかな。

 

でも、だからこそ!

 

――イナリちゃんからもらった優しさで、再び立ち上がる元気が湧いた。

 

そうよね。

 

簡単にはいかなかったとしても、努力して愛を勝ち取らないと!

 

ウジウジしてられない!

 

……それはそれとして、イナリちゃんの体温が高くて、湯たんぽみたいな温かさで眠気が。

 

あぁ…zzz。

 

……

 




第六話、おつかれっしたせんせー!

今回さぁ、“世界の男女観”がちょっと見えてきたね!

マドイの中身は前世レズ女性だから、
「好きなら押せ!愛は勝ち取れ!」
って価値観なんだけど、この世界だと完全に逆方向なんよね。

本人だけ超真剣なのジワる。


あと、サガさん。

絶対あとでなんかあるでしょこの人。

次回も楽しみ〜!

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