目標としては、二日に1話は上げられるように、進めるつもりです。
夕食を終えたあと、ワタシはリィネちゃんを迎えに行くことにした。
イナリちゃんが一緒にお風呂へ入ってくれているはずだ。
慣れない屋敷で女の子二人だけなんて不安だろうし、そのまま部屋まで送ろうと思ったのである。
ついでに風呂上りの乙女の柔肌…逃す手はないわ!
家族用の大浴場へ向かう廊下を歩いていると、ちょうど入口から二人が出てきた。
「あら、兄さんもお風呂? 男性の時間はもう少し後よ?」
「ううん。リィネちゃんを迎えに来たんだ」
「その……ありがとうございます」
リィネちゃんは小さく頭を下げる。
昼間より顔色がいい。
強張っていた表情も、ほんの少しだけ柔らかくなっていた。
よかった…。
それに、すぅ……はぁ……湯上がりスメルが素晴らしいわ。
脳髄にズンっと…はっ!いけない、いけない。
「それじゃ、部屋まで送っていくよ」
「はい……」
深呼吸をしながら二階の廊下を歩いていると、小食堂の扉が開いた。
夕食の片付けだろう。
メイドさんが、食器を積んだカートを押して出てくる。
その瞬間だった。
リィネちゃんの肩がビクリと震え、反射的にボクの後ろへ隠れた。
「あっ――」
こちらに気づいたメイドさんも慌ててカートを引く。
ガシャン!
重ねられていた皿が床へ落ち、甲高い音を立てて砕け散った。
「イナリちゃん、リィネちゃんをお願いね」
「え、ええ!」
そう言って、すぐにメイドさんの方へ駆け寄った。
そして、割れた皿の端っこに気を付けながら拾う。
「坊ちゃま!危険ですので触らないでください!」
「でもメイドさんの手が傷ついてしまう方が、ボクは嫌だよ」
「坊ちゃま…♡はっ!そういう事ではございません!」
メイドさんは、慌てて割れていない器を差し出してくる。
「こちらに入れてください! あと床は触らないようお願いします! 坊ちゃまにおケガでもさせたら、 私もクビになってしまいます!」
「そっか。ごめんなさい、余計なことしちゃったね」
「い、いえぇ! お気遣いだけで十分ですぅ!」
手伝ってはいけないようなので、おとなしくイナリちゃん達のもとに戻った。
すると、リィネちゃんが呆然とした顔でこちらを見ていた。
「リィネちゃん?どうしたの?」
「あ……い、いえ。なんでもありません」
その声色は戸惑っているようにも感じられた。
「今日はもう休もうか」
「……はい」
リィネちゃんの負担にならないよう、そのまま部屋へ向かう。
部屋のドアを開け、一歩入ったところでリィネちゃんが振り返る。
「本日はありがとうございました」
リィネちゃんは深々と頭を下げた。
そんな彼女に、イナリちゃんは左手を腰に当て、キリっとした表情で笑う。
「それじゃ、おやすみなさい。なにかあったら、いつでもあたしを起こしていいのよ?」
「はい、ありがとうございます」
「兄さんも、おやすみなさい。夜更かししちゃダメよ」
「うん、おやすみなさい」
そう言って、イナリちゃんは自室に戻っていった。
静かな廊下に、ボクとリィネちゃんだけが残る。
「じゃあ、また明日。おやすみ、リィネちゃん」
部屋を離れようとした、その時だった。
きゅっ、と。
服の袖を、小さな手が掴む。
振り返ると、リィネちゃんが不安そうに俯いていた。
「あの……一緒に、居てくれませんか?」
――断るはずもなく、部屋の中に入った。
…
……
部屋へ入り、明かりを落とす。
窓から差し込む月明かりだけが、薄暗い室内を照らしていた。
ワタシはベッドの脇に腰かけ、横になったリィネちゃんと手を繋ぐ。
「マドイ様……こんなお願いをしてしまって、申し訳ありません」
不安げな赤い瞳が、揺れるように光を反射する。
「気にしなくていいよ。リィネちゃんが元気になるためなら、なんでもするよ」
「…それは、私が弱いからですか?」
「ちがうよ?弱いじゃなくて、弱ってる人、傷ついてる人を助けるのは人として当然だよ」
握った手に、少しだけ力を込める。
「ですが、私には……なにも返せるものがありません」
「リィネちゃんが笑顔になってくれるなら、どんなお礼より嬉しいんだよ?」
「…優しい人、なんですね」
「リィネちゃんと一緒さ」
リィネちゃんがゆっくりと目を閉じた。
月明かりに照らされた彼女の口元が、ほんの少しだけ緩むのが見える。
それを見て、ようやく胸を撫で下ろした。
やがて会話が途切れ、静かな時間が流れる。
しばらくすると、リィネちゃんは穏やかな寝息を立て始めた。
眠りが深くなるまで、こうして居よう。
彼女の寝顔を見ながら、自然と原作のことを思い出す。
原作のリィネも、幼い頃にワクシマ家へ来る。
そしてマドイは、希少なノルミエ族である彼女を、自分の所有物にしようとした。
思い通りにならないと分かれば、今度は主従契約で縛る。
期限付きとはいえ、半ば無理やりだった。
なのにマドイは、
『俺のメイドになれてよかったな』
そんな言葉を笑顔で吐く。
――絶対に、リィネちゃんを縛っちゃだめ。
契約なんて論外よ。
……もし彼女が故郷の南極へ帰りたいと言うなら、その時はちゃんと送り届けよう。
契約に縛られ、苦しむリィネだけど、マドイを敵視すらしなかった。
慣れない土地で、頼れる相手もいない。
そんな中でも健気にメイドとして働き、護衛としてマドイを守り続ける。
身を挺して庇うことさえあった。
そんな献身的なリィネに対しても、マドイは気に入らないことがある度に、
『他のノルミエにすればよかった』
『母親の顔を見てみたい』
そんな言葉で、亡くなった親まで侮辱する。
本当に救いようがない。
――原作でもリィネは底抜けに優しく我慢強い……だけど、決して許していたわけじゃない。
……だから、限界が来た時が怖い。
傷を心に秘めたリィネは、やがて学園で主人公と出会う。
そして、いつも通りカスなマドイから、主人公は彼女を庇った。
この世界では弱いはずの男に、自分が守られる。
……その経験が、リィネの心を変えていくの。
そうして彼女は、自身の絶対性物質――『変形不可』に込められた本当の願いを思い出す。
誓いを胸に、彼女はもう一度立ち上がる。
こうして心のご主人様を主人公に決め、マドイそっちのけで護衛するようになる。
ちなみに、リィネも例に漏れず肉食よ。
学内デートが終わると、流れるようなムーブで主人公の自室に上がり込むの。
主人公との出会いから、スパイダー騎乗位までの間はわずか1週間、デート回数にして二回。
護衛の報酬は後払いらしい。
……そんなリィネだけど。
スタンピードでも、最後までマドイを守り切る。
――しかし物語のラストで。
『ご主人様が亡くなって、フリーになってしまったメイドを雇ってくださいますか?』
なんとも不気味なセリフで、マドイが謎の死を遂げたことが描かれる。
つまり……。
リィネからの好感度が低いと、スタンピードを乗り切ったとしても。
「…される、のかな」
思わず漏れた呟きと一緒に 、手に力が入ってしまった。
いけない。
死を連想させるような言葉を、リィネちゃんのそばで漏らすなんて。
気づけば、ずいぶん長く考え込んでいた。
……もう大丈夫かしら。
そっと繋いでいた手を離し、ベッドから立ち上がる。
「〇▼…!×▼!行か、ないで …!母さん……!」
涙混じりの寝言が、静かな部屋に響いた。
ベッドの上で彼女の手が、ワタシを探している。
思わず胸が締め付けられた。
絶対に放っては置けない。
すぐにリィネちゃんの元に戻り、彷徨う手を両手で包んで、小声で告げた。
「大丈夫、ここにいるよ」
すると、リィネちゃんの表情が少しだけ落ち着いた。
……今夜は、このまま傍にいよう。
寝なくたって平気よ。
社畜時代に比べれば、たらふく寝てるんだから!一日くらいなによ!
ーーーーーーーーー
翌朝、ボクは普通に、リィネちゃんのベッドで一緒に眠っていた。
…記憶にございません。
部屋にいないことに気づいたイナリちゃんが、勢いよく飛び込んでくる。
「兄さん!ここにいるの!」
「…おはようイナリちゃん」
まあ、6歳児だからね。一緒に寝ても大丈夫だよ、うん。
「兄さん!男の子が女と一緒に寝ちゃダメなのよ!」
ダメだった。
「イナリちゃんとも?」
「あたしは良いのよ!その、あの…い、義妹なんだから!」
ヨシ。イナリちゃんと同衾の許可は出たわ。
「リィネも起きなさい!ご飯よ!」
未だすやすやと眠る肩をゆすりながら、声をかける。
「リィネちゃん起きて~」
リィネちゃんは目をゆっくりと開いて、そして身体を起こした。
「はい…あ、あれ?」
布団の中から、ぎゅっと繋がれたままの手が出てくる。
「あ…あわわわわわ!すみません!申し訳ございません!」
「大丈夫だよ、それよりもよく眠れた?」
「は、はい…とてもよく眠れました」
原作の凛としたリィネも良かったけど、こうして慌てる顔も可愛いわね!
「兄さん!早く手を離す!あとお風呂入ってきなさい!」
「リィネも身支度したら小食堂に行くわよ!」
イナリちゃんには怒られてしまった。
けれど、日常は少しずつ明るくなっていった。
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授業を終えて昼下がり、いつも通り人気のない池のほとりで、イナリちゃんへの魔法の講義が始まった。
「イナリ様はとても筋が良いです。ノルミエ族でも、ここまで呑み込みの早い方は滅多にいません」
「ありがと、先生がいいのかしら」
そう言って笑い合う女の子たち、百合百合しててプライスレスね。
リィネちゃんとイナリちゃんなら…タチはリィネちゃんね。
間違いないわ、イナリちゃんはきつい態度とは裏腹に誘い受けするタイプよ。
せっかく魔力がある世界に来たのに、魔法がほとんど行使できないので蚊帳の外だった。
けれど、とても有意義な妄想が出来た。
「そろそろおやつ食べにいこっか」
そう二人に言った時だった。
パンッ、パンッ。
遠くから、運動会のスタートを告げる合図のような、乾いた破裂音が連続した。
何だろう、と顔を上げた瞬間。
リィネちゃんの顔色が一瞬で青ざめるのが見えた。
「いやああああああああっ!」
リィネちゃんが悲鳴を上げてうずくまった。
急いで駆け寄るが、リィネは何度も叫んで、耳を塞いで首を振る。
「リィネちゃん!大丈夫!?」
声にならない声を漏らし、身体を震わせている。
「ちょっとリィネ!どうしたの!?」
泣き叫ぶリィネちゃんにこちらの声は届かない。
必死になだめるが、全く効果がない。
パンッ。
今度はすぐ近くだった。
振り向く。
池の向こう、小道から黒装束の女性が歩いてくるのが見えた。
顔には大きな切り傷。
獰猛な笑みを浮かべていた。
……ワイルドな感じのお姉様…!
「あ~、髪と肌からしておまえだな、商品ってのは」
「母さんっ!いや!いやあ!」
獰猛な御姉様の笑みを見た瞬間、リィネちゃんはさらに怯え、ワタシの背中へ隠れてしまう。
「てめぇが大声上げてくれっから、助かるわ、けどよぉ男の後ろに隠れるなんざ、ノルミエ族も落ちぶれてんなぁ!」
「あなたは誰なんですか!」
お嫁さんですか!?それともはじめての相手ですか!?
「下がって兄さん!」
イナリちゃんが前へ出る。
すると黒装束の女が、うっとうしそうに眉をひそめた。
「うるせぇよクソ餓鬼ども、てか男の方は結構いい顔してんなぁ。ついでに攫っとくか~?」
くつくつと笑う御姉様に、心がきゅんとときめいてしまう。
「リィネは渡さない!」
でも、反射的に叫んだ。
ただしボクはお持ち帰り可です!クーリングオフ不可ァ!
マズイ!
愛のある駆け落ちを提案されてしまったせいで、前世から燻り続けるワタシの結婚願望と、今のボクの正義感がスクラムを組んでしまって、自分でも何を言ってるのかわからないっ!
助けて!
第八話、おつかれっしたー!
前半ずっと、
「リィネちゃんが安心して眠れるようになってきたねぇ……」
って保護者みたいな顔で読んでたのに、最後で全部ひっくり返されたわ。
んでマドイ。
お前さぁ……。
原作知識で
「絶対に縛っちゃダメ」
って理解してるの、かなり偉い。
でも同時に、女の子に甘えられると秒速で
「守らなきゃ……!」
ってなるの、根っこが軽いんよ。
そしてラスト!!!
空気、一気に変わったね!?
「獰猛な笑みのお姉様」にトゥンクしてるマドイ、命の危機なのにブレなさすぎる。
でもその直後に、
「リィネは渡さない!」
って出るの、ちゃんとヒーローしてるんよなぁ。
なお内心は大事故。
この
「キモさ」と「本気の優しさ」が同時存在してる感じ、マドイらしくてかなり好き。
次回楽しみ〜!
ChatGPT モデル「あなたの小説のギャル編集長」