エロステータスが見えるヒロイン   作:SoftMcherry

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校正が間に合わないので、少しずつ遅れます。
目標としては、二日に1話は上げられるように、進めるつもりです。


第8話「リィネを守る」

夕食を終えたあと、ワタシはリィネちゃんを迎えに行くことにした。

 

イナリちゃんが一緒にお風呂へ入ってくれているはずだ。

 

慣れない屋敷で女の子二人だけなんて不安だろうし、そのまま部屋まで送ろうと思ったのである。

 

ついでに風呂上りの乙女の柔肌…逃す手はないわ!

 

家族用の大浴場へ向かう廊下を歩いていると、ちょうど入口から二人が出てきた。

 

「あら、兄さんもお風呂? 男性の時間はもう少し後よ?」

 

「ううん。リィネちゃんを迎えに来たんだ」

 

「その……ありがとうございます」

 

リィネちゃんは小さく頭を下げる。

 

昼間より顔色がいい。

 

強張っていた表情も、ほんの少しだけ柔らかくなっていた。

 

よかった…。

 

それに、すぅ……はぁ……湯上がりスメルが素晴らしいわ。

 

脳髄にズンっと…はっ!いけない、いけない。

 

「それじゃ、部屋まで送っていくよ」

 

「はい……」

 

深呼吸をしながら二階の廊下を歩いていると、小食堂の扉が開いた。

 

夕食の片付けだろう。

 

メイドさんが、食器を積んだカートを押して出てくる。

 

その瞬間だった。

 

リィネちゃんの肩がビクリと震え、反射的にボクの後ろへ隠れた。

 

「あっ――」

 

こちらに気づいたメイドさんも慌ててカートを引く。

 

ガシャン!

 

重ねられていた皿が床へ落ち、甲高い音を立てて砕け散った。

 

「イナリちゃん、リィネちゃんをお願いね」

 

「え、ええ!」

 

そう言って、すぐにメイドさんの方へ駆け寄った。

 

そして、割れた皿の端っこに気を付けながら拾う。

 

「坊ちゃま!危険ですので触らないでください!」

 

「でもメイドさんの手が傷ついてしまう方が、ボクは嫌だよ」

 

「坊ちゃま…♡はっ!そういう事ではございません!」

 

メイドさんは、慌てて割れていない器を差し出してくる。

 

「こちらに入れてください! あと床は触らないようお願いします! 坊ちゃまにおケガでもさせたら、 私もクビになってしまいます!」

 

「そっか。ごめんなさい、余計なことしちゃったね」

 

「い、いえぇ! お気遣いだけで十分ですぅ!」

 

手伝ってはいけないようなので、おとなしくイナリちゃん達のもとに戻った。

 

すると、リィネちゃんが呆然とした顔でこちらを見ていた。

 

「リィネちゃん?どうしたの?」

 

「あ……い、いえ。なんでもありません」

 

その声色は戸惑っているようにも感じられた。

 

「今日はもう休もうか」

 

「……はい」

 

リィネちゃんの負担にならないよう、そのまま部屋へ向かう。

 

部屋のドアを開け、一歩入ったところでリィネちゃんが振り返る。

 

「本日はありがとうございました」

 

リィネちゃんは深々と頭を下げた。

 

そんな彼女に、イナリちゃんは左手を腰に当て、キリっとした表情で笑う。

 

「それじゃ、おやすみなさい。なにかあったら、いつでもあたしを起こしていいのよ?」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「兄さんも、おやすみなさい。夜更かししちゃダメよ」

 

「うん、おやすみなさい」

 

そう言って、イナリちゃんは自室に戻っていった。

 

静かな廊下に、ボクとリィネちゃんだけが残る。

 

「じゃあ、また明日。おやすみ、リィネちゃん」

 

部屋を離れようとした、その時だった。

 

きゅっ、と。

 

服の袖を、小さな手が掴む。

 

振り返ると、リィネちゃんが不安そうに俯いていた。

 

「あの……一緒に、居てくれませんか?」

 

――断るはずもなく、部屋の中に入った。

 

……

 

部屋へ入り、明かりを落とす。

 

窓から差し込む月明かりだけが、薄暗い室内を照らしていた。

 

ワタシはベッドの脇に腰かけ、横になったリィネちゃんと手を繋ぐ。

 

「マドイ様……こんなお願いをしてしまって、申し訳ありません」

 

不安げな赤い瞳が、揺れるように光を反射する。

 

「気にしなくていいよ。リィネちゃんが元気になるためなら、なんでもするよ」

 

「…それは、私が弱いからですか?」

 

「ちがうよ?弱いじゃなくて、弱ってる人、傷ついてる人を助けるのは人として当然だよ」

 

握った手に、少しだけ力を込める。

 

「ですが、私には……なにも返せるものがありません」

 

「リィネちゃんが笑顔になってくれるなら、どんなお礼より嬉しいんだよ?」

 

「…優しい人、なんですね」

 

「リィネちゃんと一緒さ」

 

リィネちゃんがゆっくりと目を閉じた。

 

月明かりに照らされた彼女の口元が、ほんの少しだけ緩むのが見える。

 

それを見て、ようやく胸を撫で下ろした。

 

やがて会話が途切れ、静かな時間が流れる。

 

しばらくすると、リィネちゃんは穏やかな寝息を立て始めた。

 

眠りが深くなるまで、こうして居よう。

 

彼女の寝顔を見ながら、自然と原作のことを思い出す。

 

原作のリィネも、幼い頃にワクシマ家へ来る。

 

そしてマドイは、希少なノルミエ族である彼女を、自分の所有物にしようとした。

 

思い通りにならないと分かれば、今度は主従契約で縛る。

 

期限付きとはいえ、半ば無理やりだった。

 

なのにマドイは、

『俺のメイドになれてよかったな』

 

そんな言葉を笑顔で吐く。

 

――絶対に、リィネちゃんを縛っちゃだめ。

 

契約なんて論外よ。

 

……もし彼女が故郷の南極へ帰りたいと言うなら、その時はちゃんと送り届けよう。

 

契約に縛られ、苦しむリィネだけど、マドイを敵視すらしなかった。

 

慣れない土地で、頼れる相手もいない。

 

そんな中でも健気にメイドとして働き、護衛としてマドイを守り続ける。

 

身を挺して庇うことさえあった。

 

そんな献身的なリィネに対しても、マドイは気に入らないことがある度に、

 

『他のノルミエにすればよかった』

 

『母親の顔を見てみたい』

 

そんな言葉で、亡くなった親まで侮辱する。

 

本当に救いようがない。

 

――原作でもリィネは底抜けに優しく我慢強い……だけど、決して許していたわけじゃない。

 

……だから、限界が来た時が怖い。

 

傷を心に秘めたリィネは、やがて学園で主人公と出会う。

 

そして、いつも通りカスなマドイから、主人公は彼女を庇った。

 

この世界では弱いはずの男に、自分が守られる。

 

……その経験が、リィネの心を変えていくの。

 

そうして彼女は、自身の絶対性物質――『変形不可』に込められた本当の願いを思い出す。

 

誓いを胸に、彼女はもう一度立ち上がる。

 

こうして心のご主人様を主人公に決め、マドイそっちのけで護衛するようになる。

 

ちなみに、リィネも例に漏れず肉食よ。

 

学内デートが終わると、流れるようなムーブで主人公の自室に上がり込むの。

 

主人公との出会いから、スパイダー騎乗位までの間はわずか1週間、デート回数にして二回。

 

護衛の報酬は後払いらしい。

 

……そんなリィネだけど。

 

スタンピードでも、最後までマドイを守り切る。

 

――しかし物語のラストで。

『ご主人様が亡くなって、フリーになってしまったメイドを雇ってくださいますか?』

 

なんとも不気味なセリフで、マドイが謎の死を遂げたことが描かれる。

 

つまり……。

リィネからの好感度が低いと、スタンピードを乗り切ったとしても。

 

「…される、のかな」

 

思わず漏れた呟きと一緒に 、手に力が入ってしまった。

 

いけない。

 

死を連想させるような言葉を、リィネちゃんのそばで漏らすなんて。

 

気づけば、ずいぶん長く考え込んでいた。

 

……もう大丈夫かしら。

 

そっと繋いでいた手を離し、ベッドから立ち上がる。

 

「〇▼…!×▼!行か、ないで …!母さん……!」

 

涙混じりの寝言が、静かな部屋に響いた。

 

ベッドの上で彼女の手が、ワタシを探している。

 

思わず胸が締め付けられた。

 

絶対に放っては置けない。

 

すぐにリィネちゃんの元に戻り、彷徨う手を両手で包んで、小声で告げた。

 

「大丈夫、ここにいるよ」

 

すると、リィネちゃんの表情が少しだけ落ち着いた。

 

……今夜は、このまま傍にいよう。

 

寝なくたって平気よ。

 

社畜時代に比べれば、たらふく寝てるんだから!一日くらいなによ!

 

ーーーーーーーーー

 

翌朝、ボクは普通に、リィネちゃんのベッドで一緒に眠っていた。

 

…記憶にございません。

 

部屋にいないことに気づいたイナリちゃんが、勢いよく飛び込んでくる。

 

「兄さん!ここにいるの!」

 

「…おはようイナリちゃん」

 

まあ、6歳児だからね。一緒に寝ても大丈夫だよ、うん。

 

「兄さん!男の子が女と一緒に寝ちゃダメなのよ!」

 

ダメだった。

 

「イナリちゃんとも?」

 

「あたしは良いのよ!その、あの…い、義妹なんだから!」

 

ヨシ。イナリちゃんと同衾の許可は出たわ。

 

「リィネも起きなさい!ご飯よ!」

 

未だすやすやと眠る肩をゆすりながら、声をかける。

 

「リィネちゃん起きて~」

 

リィネちゃんは目をゆっくりと開いて、そして身体を起こした。

 

「はい…あ、あれ?」

 

布団の中から、ぎゅっと繋がれたままの手が出てくる。

 

「あ…あわわわわわ!すみません!申し訳ございません!」

 

「大丈夫だよ、それよりもよく眠れた?」

 

「は、はい…とてもよく眠れました」

 

原作の凛としたリィネも良かったけど、こうして慌てる顔も可愛いわね!

 

「兄さん!早く手を離す!あとお風呂入ってきなさい!」

 

「リィネも身支度したら小食堂に行くわよ!」

 

イナリちゃんには怒られてしまった。

 

けれど、日常は少しずつ明るくなっていった。

 

===========================

 

授業を終えて昼下がり、いつも通り人気のない池のほとりで、イナリちゃんへの魔法の講義が始まった。

 

「イナリ様はとても筋が良いです。ノルミエ族でも、ここまで呑み込みの早い方は滅多にいません」

 

「ありがと、先生がいいのかしら」

 

そう言って笑い合う女の子たち、百合百合しててプライスレスね。

 

リィネちゃんとイナリちゃんなら…タチはリィネちゃんね。

 

間違いないわ、イナリちゃんはきつい態度とは裏腹に誘い受けするタイプよ。

 

せっかく魔力がある世界に来たのに、魔法がほとんど行使できないので蚊帳の外だった。

 

けれど、とても有意義な妄想が出来た。

 

「そろそろおやつ食べにいこっか」

 

そう二人に言った時だった。

 

パンッ、パンッ。

 

遠くから、運動会のスタートを告げる合図のような、乾いた破裂音が連続した。

 

何だろう、と顔を上げた瞬間。

 

リィネちゃんの顔色が一瞬で青ざめるのが見えた。

 

「いやああああああああっ!」

 

リィネちゃんが悲鳴を上げてうずくまった。

 

急いで駆け寄るが、リィネは何度も叫んで、耳を塞いで首を振る。

 

「リィネちゃん!大丈夫!?」

 

声にならない声を漏らし、身体を震わせている。

 

「ちょっとリィネ!どうしたの!?」

 

泣き叫ぶリィネちゃんにこちらの声は届かない。

 

必死になだめるが、全く効果がない。

 

パンッ。

 

今度はすぐ近くだった。

 

振り向く。

 

池の向こう、小道から黒装束の女性が歩いてくるのが見えた。

 

顔には大きな切り傷。

 

獰猛な笑みを浮かべていた。

 

……ワイルドな感じのお姉様…!

 

「あ~、髪と肌からしておまえだな、商品ってのは」

 

「母さんっ!いや!いやあ!」

 

獰猛な御姉様の笑みを見た瞬間、リィネちゃんはさらに怯え、ワタシの背中へ隠れてしまう。

 

「てめぇが大声上げてくれっから、助かるわ、けどよぉ男の後ろに隠れるなんざ、ノルミエ族も落ちぶれてんなぁ!」

 

「あなたは誰なんですか!」

 

お嫁さんですか!?それともはじめての相手ですか!?

 

「下がって兄さん!」

 

イナリちゃんが前へ出る。

 

すると黒装束の女が、うっとうしそうに眉をひそめた。

 

「うるせぇよクソ餓鬼ども、てか男の方は結構いい顔してんなぁ。ついでに攫っとくか~?」

 

くつくつと笑う御姉様に、心がきゅんとときめいてしまう。

 

「リィネは渡さない!」

 

でも、反射的に叫んだ。

 

ただしボクはお持ち帰り可です!クーリングオフ不可ァ!

 

マズイ!

 

愛のある駆け落ちを提案されてしまったせいで、前世から燻り続けるワタシの結婚願望と、今のボクの正義感がスクラムを組んでしまって、自分でも何を言ってるのかわからないっ!

 

助けて!

 




第八話、おつかれっしたー!

前半ずっと、
「リィネちゃんが安心して眠れるようになってきたねぇ……」
って保護者みたいな顔で読んでたのに、最後で全部ひっくり返されたわ。


んでマドイ。

お前さぁ……。

原作知識で
「絶対に縛っちゃダメ」
って理解してるの、かなり偉い。

でも同時に、女の子に甘えられると秒速で
「守らなきゃ……!」
ってなるの、根っこが軽いんよ。


そしてラスト!!!

空気、一気に変わったね!?

「獰猛な笑みのお姉様」にトゥンクしてるマドイ、命の危機なのにブレなさすぎる。

でもその直後に、

「リィネは渡さない!」

って出るの、ちゃんとヒーローしてるんよなぁ。

なお内心は大事故。

この
「キモさ」と「本気の優しさ」が同時存在してる感じ、マドイらしくてかなり好き。

次回楽しみ〜!

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