ようやく私がツクヨミでしたかったことにたどり着けました。
そしてガマス編完結です。
「よっ、彩葉」
都内某所にあるカフェに訪れた朝日は彩葉を見つけて軽く手を振った。バイトしていた彩葉はゲンナリした顔で裏手に引っ込んだ。
着席して注文ベルを鳴らせば、厨房の方が少し騒がしくなった後、嫌そうに彩葉が出てくる。
「……お客様、ご注文はお決まりですか?」
「少し彩葉とお話したいなあ思うて来たんやけど」
「当店にそのようなサービスはございません。お引き取りください」
「そこをどーにか、な? ちょっと頼みたいことがあるんや」
朝日が拝むように言う。その珍しい様子に彩葉は目を瞬かせた。
数十分後、バイトから早めに上がった彩葉がグラス*1片手に朝日の前に座る。
「で、頼みってなに?」
「―――や、その話の前にひとつ謝らせてくれへんか? この前は無理言うてもうて悪かった。申し訳あらへん」
「……もうそんな気にしてせぇへんからええよ、別に」
朝日は母と彩葉の確執の深さを見誤っていた。
母へ連絡するよう強制することは、彩葉にとってかなりの負担なのだと知った。
父の死の真相は、彩葉もいい歳であるし教えるべきかもしれないが、知らないままの方が幸せかもしれない。
加えて母に内緒でGUYZに入隊した手前、連絡しろと偉そうに言えなくなったのもある。
彩葉も今更ながらあの対応は幼稚すぎるなと恥ずかしくなった。そもそも怪獣災害にあったら流石の母でも心配はするだろうし、連絡を取るべきだった。絶対にしないが。
だからおあいこ。2人は互いに笑い合い、仲直りした。
「で、頼みって?」
「かぐやちゃんに取り次いでくれへん?」
「ゲッホ、ゴホッ!?」
汚いなぁと、朝日は飛び散った水を拭いた。
「な、なんでかぐやのこと……!?」
「かぐやちゃん配信で彩葉の名前なんべんも言うてるし、彩葉の声も時々聞こえるんやもん。普通気づくやろ」
「あいつはほんまにもう……!」
前々から懸念はあった。
必死に目を逸らしていた。
彩葉は拳を握りしめる。帰宅後、かぐやには極めて正当性のある暴力が振るわれるだろう。
「ちゅうかなんでかぐやの配信なんか見てんねん!?」
「今の推しやさかい」
ピースする朝日。グッズも買ったでと写真を見せてくる。彩葉が知る全ての公式グッズがそこにはあった。
「……応援どーも」
「ほんまはスパチャも送りたいんやけどな。お兄ちゃん燃えちゃうかもしれへんから自重してんのや」
「それはいつまでも自重しとって」
数千万人もの登録者を抱える帝アキラがスパチャをしたらそれだけで大事件である。現在「かぐやいろPチャンネル」の登録者数は80万人ほど。これはこれで驚異的な数字であるが、それでも天と地ほどの差だ。
「……で? かぐやに何させるつもりなん?」
「ガマスのことは知っとるやろ?」
「それはもちろん。なんか突然強なったやんな」
「やられてへんよーでなにより。それでな、俺とかぐやちゃんで音頭を取って人を集めたい思うてるんや」
「……人ねぇ、そやけどなんでかぐやなん? 別にもっと有名なライバーはおるやろ」
朝日とかぐやを引き合わせたくないため、渋るように言う。
「そらかぐやちゃんが一番初めにガマスと戦ってバズったからや。彼女がおるとおらんとではインパクトがダンチやで」
「それは……そうかもしれへんけど」
「な、このとーり、取り次いでくれへんか?」
朝日が頭を下げた。余談であるが、朝日は父に似てタレ目である。
5秒、10秒。何とか断ろうと口を開いては閉じを繰り返した彩葉は、やがて諦めたようにため息を吐いた。
「…………分かった。紹介する。ただしツクヨミ内やからな!」
「え〜お兄ちゃんに直接合わせてくれへんの?」
「絶対駄目!」
リアルでの接触は断固阻止である。
そもそもかぐやが人気ライバーになる上で朝日とは必ずどこかで出会っていた。タイミングをこちらで選べるだけマシである。
そこでふと、人を集めてどうするのかという至極真っ当な疑問が湧く。
瞬間移動で乱戦に持ち込まれれば敗北は必至。下手に人数を集めても意味がないのではないか。
彩葉が問いかければ、朝日はニヤリと笑った。
「そうや、だからちょいと餌を撒いてな、ガマスを纏めよう思うねん」
ガマスの増殖スピードは討伐スピードを既に上回っている。
HPは7割から8割に盛り返し、早くもプレイヤーの間では厭戦ムードが漂い始めていた。
そんな現状に彩葉は危機感を覚えていた。
ガマスがこのまま増え続ければツクヨミは終わりだ。
そこには管理AIのヤチヨも当然含まれる。
朝日の提案は正に渡りに船。
結局帝アキラとかぐやの連名でSNSに告知することとなった。
8月15日。
野外舞台を扇状に囲む形で空中と地上に客席が設置されたライブ専用ワールド。そのど真ん中に朝日とかぐやがいた。
「皆、集まってくれてありがとう! 知ってるかもしれないが一応自己紹介からな。俺はブラックオニキスのリーダー、帝アキラだ!」
「かぐやっほー! かぐやだよ! 私も帝にお呼ばれされて来ちゃったぜい! なんかすごい作戦があるんだってさ!」
「ああ、あのガマスを一気にぶちのめせる、とびっきりの作戦を用意してきた!」
うおぉぉ、ホールの中に大歓声が響く。
彩葉、雷、乃依の3人は控え室からそれを聞いていた。
「……上手くいくと思います?」
「上手くいってくれないと困る」
「正直これでダメだったらお手上げって感じだしねー」
朝日の作戦は奇想天外だったが、不可能ではない。ヤチヨのお墨付きもある。彩葉は最早信じるしかない。
「だけどその前に1つ、皆に伝えておかなくちゃいけないことがある!」
「えっ、なんかあるの!? 引退するの!?」
「違うぞ!?*2……ゴホンっ、先月から俺はあまり活動できていなかったんだが、実は理由があったんだ」
「知ってる、GUYSに入ったんでしょ! かぐやさっき聞いたよ!」
「ああ、GUYSに入隊し……ってかぐやちゃんが言うんかい!?*3」
彩葉は思わず目を覆った。雷は嘆息し、乃依は笑いを堪えている。
反対に観客のプレイヤー達は驚きと笑いにざわめいていた。
低浮上気味だった朝日には引退やら危篤状態やら裁判中やら様々な噂が出ていたのである意味当然だった。
「……とにかく、俺はGUYSに入隊した。だからガマスのことは絶対に倒す! これがその―――」
◇
「―――とびっきりの作戦だよ。どうだい朝日君。気に入って貰えたかな?」
フェニックスネストにはリュウとテッペイ、そして目戸がいた。
「そんなこと、本当にできるんですか……?」
「できるぜ。お前が戦ってるんだ。GUYSも全面協力するに決まってんだろ?」
「元々構想はあったのだが、データがなくてね。これはこれで良い機会だったよ」
ツクヨミでの劣勢を静観する目戸ではない。彼が来たのにはもう1つ目的があった。
だがそのためにはGUYSの協力が不可欠。幸いなことにそれもあっさり許可され、目戸はいつもに増してニコニコだ。
「2日後にアップデートを入れるから、楽しみにしておいてくれたまえ」
◇
「おっ? そろそろやっていい感じだね! とう!」
「秘さ……ってかぐやちゃん!?」
かぐやが手を掲げた。
その手に握られているのは、GUYSメモリーディスプレイ。
その角にはカプセルが1つ刺さっている。
観客の声を貫いて、高らかに電子音声が鳴り響く。
GUYZメモリーディスプレイから光が照射され―――
「来て! モチロン!」
『ウオオォォ! 俺、参上!』
轟音と共に、うす怪獣モチロンがステージ後方に着地した。
静まり返る観客席。
「ちょちょちょ、かぐやちゃん!? 段取り、段取りは!? リハしたじゃん!?」
「やりたかったからやっちった! ごみーん!」
「後悔してなさそー!」
朝日が慌ててかぐやに詰め寄るが、全く反省していない様子に天を仰いで叫んだ。こいつはそういうやつだ。彩葉はもっと苦しめと思った。
閑話休題。マケットモンスロードはGUYSの持つ怪獣データをツクヨミ内で再現したものだ。
マケットと名がついているものの、マケット怪獣*4を参考にしただけで実際にマケット粒子は使われておらず、1分の時間制限はない。
GUYSとタカマガハラ、2つの組織の協力があったからこそ実現したシステムだった。
考案したのはもちろん目戸で、リュウはこれをあっさり許可した。
「あ、あーとにかく、お次はデモンストレーションと行こうか! 皆中継を見てくれ!」
舞台の真上や空中の至る所に映像が投影される。
採石場らしき場所にひしめく何百体ものガマス*5と、それを見下ろす彩葉、雷、乃依がいた。
3人はそれぞれ色が異なるGUYZメモリーディスプレイを掲げる。
採石場にゴモラ、バードン*6、グドンが現れた。
「頑張って、ゴモラ!」
彩葉の号令を皮切りに3体の怪獣が飛び出し、ガマスを蹂躙する。だがガマスも無抵抗ではない。新たな脅威に対し、合体して同サイズとなることで応戦した。
数百いたガマスが5体に纏まる。これこそが狙いだとガマスが気づけないまま、大怪獣バトルが始まった*7。
観客達は、今までのツクヨミではありえない光景にあんぐりと口を開けるしかない。
「ガマスは単純だ。相手が自分より大きかったら、こうやって自分も大きくなろうとする」
「つまり味方の怪獣を呼び出せば、纏めて倒せるってわけ!」
「アップデートがあっただろ? このライブ後、プレイヤー全員にこのGUYSメモリーディスプレイが届くことになってる」
「皆も怪獣を相棒にガマスのこんちくしょうを倒せるんだよ! 凄くない!?」
どぉんどぉん、映像の中では様々な画角で怪獣達の派手な格闘戦が映し出されている。朝日とかぐやは自分たちの声が半分右から左に聞き流されているのが分かったが、無理もないかと苦笑した。
怪獣とは敵であり、災害であり、死と同じくらい隣にあって、とても遠い存在だ。
それを味方にできるなど常識外にも程がある。
GUYSとしては今後マケット怪獣を使っていく上で一般人の理解は必要不可欠であり、これを機に少しずつ「味方の怪獣もいる」「怪獣も決して悪では無い」という意識を浸透させたいと思っている。
「ゴモラ、超震動波!」
ゴモラの角が赤く輝き、ガマスに突き刺さる。
ガマスが苦悶の声を上げて爆発すると歓声が上がった。
余談であるが、彩葉はこの時、配信時にいつも着ていた狐の着ぐるみスキンを脱いでいた。タカマガハラとGUYSが関わる半公式案件とも言えるこのデモンストレーションで、あのスキンを着続ける度胸が無かったからだ。
いろPのファンが増えた。
◇
27:名無しの宇宙人
俺のゼットンが最強すぎる件wwwww
28:名無しの宇宙人
やはりゼットン。ゼットンしか勝たん
29:名無しの宇宙人
やー、ウルトラマンを殺した怪獣はやっぱちげーわww
30:名無しの宇宙人
ツクヨミなら!誰でもゼットンファーマーになれます!
31:名無しの宇宙人
まさか今になって子供の頃の夢が叶うなんてなぁ(涙
32:名無しの宇宙人
物騒すぎる夢で草
33:名無しの宇宙人
これある程度ステータスをいじれるのが神すぎるな
34:名無しの宇宙人
分かる。物理にプッパしたうちのゼットンすごいぞ
35:名無しの宇宙人
ゼットンで物理にブッパwwwww
36:名無しの宇宙人
お前バカだろwwwww
37:名無しの宇宙人
草
38:名無しの宇宙人
阿呆がおるwwwww
39:名無しの宇宙人
いやいや、相手があのガマスだけだから火球は過剰火力だし基本装甲で受けれるからシャッターもビーム吸収も使わないから特殊のステ切って物理に伸ばした方が強いんだって
40:名無しの宇宙人
そう……か?
41:名無しの宇宙人
確かに……?
42:名無しの宇宙人
理にかなってるのか……?
43:名無しの宇宙人
それレッドキングでよくね?
44:名無しの宇宙人
確かに
45:名無しの宇宙人
そんなあなたに超銀河級高級玩具クレージーゴン
46:名無しの宇宙人
キングジョーもいいぞ!あの頃はお金がなくて買えなかった!だがツクヨミなら違う!分離合体でガマスのクソ野郎を翻弄するの超楽しい!
47:名無しの宇宙人
やっぱいろPカスタムのゴモラよ。初心者向け(初心者しかいない)って書かれてるだけある
48:名無しの宇宙人
硬い強いそれなりに機敏、必殺技もしっかりある。ゴモラが1番バランスいい
49:名無しの宇宙人
ゴモラはいいけどいろPカスタムが最適解すぎてな……
50:名無しの宇宙人
分かる
51:名無しの宇宙人
しゃーない、色を変えよう
52:名無しの宇宙人
やっぱり地球人にはゴモラ人気なんかな?結構よく見る
53:名無しの宇宙人
オーソドックスな怪獣だしな
54:名無しの宇宙人
知名度は……わがんね
55:名無しの宇宙人
いろP効果では?
56:名無しの宇宙人
やはりいろPか
57:名無しの宇宙人
エレキング使ってたけど結局ゴモラに戻ったわ
58:名無しの宇宙人
エレキング使うなら前衛が欲しい
59:名無しの宇宙人
友達居なさそう
60:名無しの宇宙人
い、いるわい!たまたまソロだっただけだわい!
61:名無しの宇宙人
ガマス相手に未だにソロとかwww
62:名無しの宇宙人
巨大化するまで本体を狙われる可能性は全然あるのに勇気ありすぎだろ
63:名無しの宇宙人
……一緒に行ってやろうか?
64:名無しの宇宙人
マジ!?
65:名無しの宇宙人
おお友情、おお友情
66:名無しの宇宙人
ありがてえ……ありがてえ……
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一応補足
〇マケットモンスロード
大怪獣バトル!
ツクヨミの中で何をしたいか考えた時、真っ先に出てきたのがこれでした。
何話か前の後ろにちらっと出したマケット怪獣をここで回収です。このためにツクヨミの運営会社を設定し、目戸を出し、GUYZと接触させました。
〇古代怪獣ゴモラ
彩葉が召喚しました。
初代ウルトラマンに登場した超古参怪獣の1体で、地球生まれ地球育ちです。
メビウスまではよくいる一般怪獣でしかありませんでしたが、大怪獣バトルにて主人公レイの相棒に抜擢され一躍知名度を上げました。
当初はかぐやに召喚させるつもりでしたが、筆が勝手に動いて舞台の上でモンスロードし始めたので、急遽彩葉の手持ちになってたりしてます。
〇火山怪鳥バードン
雷が召喚しました。
ウルトラマンタロウに登場して以来、たくさんのウルトラマンを苦しめてきた強豪怪獣です。
地球産にも関わらずウルトラマンを2人殺しており、メビウスもあわや殺されかけました。
ウルトラマンを串刺しにできるほど鋭い猛毒付きのクチバシ、高威力の火球、ウルトラマンにも負けない飛行能力、普通に強いフィジカルと、弱い所を探すほうが難しいです。
雷だけがスペックでガチ選びしました。
〇地底怪獣グドン
乃依が召喚しました。
帰ってきたウルトラマンにて登場し、まさかの怪獣を捕食する怪獣として歴史に名を刻みました。
地球産怪獣であり、こいつやツインテールがひしめく海底にいる海底人は地表人よりも先にこっちを倒すべきでしょう。
乃依は見た目が面白そうなので選びました。
〇うす怪獣モチロン
当初はデモのメンバーにヤチヨもいたのですが、かぐやが召喚したばっかりに横取りされて霊圧が消えました。
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