仕事が忙しかったのと、エースとメビウスと大怪獣バトルとZを見直していました。
ここ好きや評価感想ありがとうございます。執筆の励みになります。
【前回のあらすじ】
ガマスを倒した彩葉は、朝日に引越し先の保証人になってもらうためフェニックスネストへ向かった。
そこで母・紅葉と鉢合わせる。
「京都に帰るで。朝日、彩葉」
「ちょっと母さん1回落ち着けって」
つかつかとハイヒールを鳴らして詰め寄ってきた紅葉から彩葉を隠すように朝日は前に出た。
必然、朝日は険のある顔をした紅葉と至近距離で相対することになる。
「落ち着く? 何言うてはりますの? 母さんは冷静です。冷静だからこそ、こないな危ない場所に子供を置いとけへんって言うとるんや」
怪獣は地球全土に出現しているが、数多くの防衛隊基地があった関東圏は群を抜いてその出現頻度が高い*1。
特に東京はマグマ星人およびレッドギラスとブラックギラスによって大津波が起き、1度水没したこともあるほどだ*2。
そうでなくともウルトラマンと怪獣が戦うたびにビルは崩れるし地面も陥没するし橋が落ちる。宇宙人による誘拐殺人も数知れずと来た。
毎度の如く凄まじい速度で復興する日本はまさに不死鳥のようであったが、とにもかくにも、東京が危険なことはぐうの音も出ない事実であった。
「朝日も嬉しいやろ。GUYSなんて危ない仕事、嫌だったちゃいます? ウチが両手を振ってやめさせたげるさかい」
「俺は……」
朝日がGUYSに入隊してまだ3週間しか経っていない。
最初はスポンサーに言われて仕方なしだったし、リュウのシゴきは辛いものだった。
この前に改造ゴモラと戦った時など、心臓が飛び出るかと思った。
やめたくないと言えば噓になる。
帰ると一言いえば楽になる。
京都に戻ってもプロゲーマーとしての活動には何ら支障はない。元の生活に戻れるのだ。ここでやめない理由は……ない。
紅葉は黙ってしまった朝日から彩葉に視線を移した。
「彩葉もや。甘ちゃんなりに1年ちょっとがんばりはったようやけど、もう潮時や」
視線が合わさると、彩葉は途端に身体が石のように重くなった気がした。
「ウチは……」
成人している朝日は最悪縁を切ってでも東京に残ることができるが、彩葉は未成年の子供だ。元々無理を言って上京している手前、保護者である紅葉が京都に帰すと言えば拒否できない立場にある。
だがもしも京都に帰ることになれば……かぐやはどうなる?
かぐやは地球人ではなく月星人だ。戸籍はなく、不法入国者ならぬ不法入星者であり、突つかれれば痛いところしかない。
―――私、彩葉とずっと一緒にいたい!
―――ず、ずっとって、月はどうすんの?
―――帰らない! ず~っと一緒にいる! 今決めた!
天真爛漫で、わがまま放題で、それでいて人を惹きつけてやまないキラキラと光り輝くかぐや。
引っ張っていくつもりが、いつのまにか引っ張られていて。
自分のような陰キャとは正反対の存在で。
ずっと一緒にいたいだなんて、恥ずかしいセリフを簡単に言ってしまえる凄い子。
かぐやと一緒にいるのが自分なんかで本当にいいのか、何度も考えた。
ずっと一緒にいたいなんて、こちらのセリフだ。
(かぐやを裏切りたくない)
その笑顔が、彩葉に1歩を踏み出す勇気を与えた。
「……母さん、ウチは京都に帰りたない」
朝日は驚いて彩葉を見た。紅葉は更に顔を険しくする。
「それ、どういう意味か分かって言うとるん?」
「分かっとる。でも、ほっとけへん友達がおんねん」
「今の時代、離れてもどうにでもなるやろ」
「それじゃ駄目なんや……!」
毅然と言う彩葉に、紅葉は訝しげに片眉をあげた。
「酒寄さん、何か揉めているようですがどうかされましたか?」
その時、剣呑な空気を切り裂くように、迫水リョウタが現れた。
遠巻きに様子を見守っていたスタッフたちはホッと息を吐き、こぶしを握ってエールを送った。
「あんたは?」
「私はGAYS JAPANの迫水リョウタ隊長です。いかがいたしましたか?」
「ウチは朝日の母の紅葉言います。早速ですが、今日をもちまして朝日は京都に帰らせていただきます」
その言葉に思わずリョウタは目を瞬かせた。
「えと……なぜ?」
「こないな危ない所に子供を置いとけません」
「それはまあ、確かにそうですが」
認めるんかい、とその場にいた全員が思った。
「酒寄さ……朝日さん*3は良いのかい?」
「……隊長」
「僕は、朝日さんはGUYSに合っていると思っています。あの時バキシムに立ち向かう勇気をくれたのは他の誰でもない、あなたですから。ね、皆さん」
リョウタがそう言って周りを見渡せば、皆笑顔で頷いた。
朝日の流星シュートはGAYSの全員が知っている。
それはクルーやメカニック、一般職員から食堂のおばちゃんに至るまでの全員だ。
フェニックスネストが強襲され、関東各地の基地も壊滅状態となり、士気がどん底状態に落ちていたその時に、人の身ひとつで超獣へ一矢報いて見せたその姿に心打たれたのは、何もリョウタやウルトラマンだけではない。
GAYSの全員が勇気をもらっていたのだ。
朝日はようやく自分が、GAYSの一員として多くの人に認められていたことを知った。
ふと、紅葉に反抗して見せた彩葉が目に入る。
その背がなんだか、いつもより高く見えた気がして、兄として負けられないなと思った。
◇
「懐かしいな。お前の母ちゃんもあんな感じで乗り込んできたっけ」
「ありましたねー。あの時は皆さんにとんだご迷惑をおかけしました」
テッペイがGAYSに入った時も、ああやって母・ケイコがフェニックスネストに乗り込んできたことがあった。仲間たちのお陰で無事入隊を認められたが、はたして今回はどうなるか。
「はっはっは。いやぁ、青春だねぇ」
目戸は特別顧問として臨時勤務するようになっていた。元々会社でも好々爺としていろいろな部署に顔を出しており、行き先が1つ増えたようなものだ。
あっという間にGAYSに馴染んだ目戸は、冷えたウーロン茶を飲みながらリュウらと同じように監視カメラ越しに出歯亀していた。
「サコミズ隊長もこんな気分だったんかねぇ」
「かもしれませんねぇ……ん?」
計器からピコンと音がした。見れば周囲の放射線濃度が急上昇しているではないか。リュウが眉を顰める横で、嫌な予感がしたテッペイがモニターを起動する。
「たしか今日の天気は晴れだったはずなのに……」
外にはいつのまにか曇天の空が広がっていた。
そしてポツリと雨が降り出す。
赤い雨だった。
「これは……まさか!」
「どうした? なんかあったのか?」
「リュウさん、超獣がきます!」
「なに?」
「ふむ」
テッペイの言葉にリュウの目つきが変わる。そしてすぐさま手元のボタンを叩くように押した。
テッペイの知識量は圧倒的である。彼が来ると言えば来る。信頼ゆえに、その動きに迷いはない。
「リージョン・リストリクター起動!」
フェニックスネスト周囲の地面が展開し、ガンタレットが聳え立つ。
「ほほう。これが噂のリージョン・リストリクターかね」
「目戸のじいさんが見るのは初めてだよな? こいつで異次元空間をふさいで、ヤプールの野郎をぎゃふんと言わせてやるんだよ」
リージョン・リストリクターはメテオールの1種だ。
ディメンショナル・ディゾルバーと異なり効果は一時的であるものの、超獣が開く異次元ゲートを強制的に閉じることができる。
通常はトライガーショットでも撃つことができるが、この3週間でタレットへ搭載し、より性能を向上させることに成功していた。
GAYSメカニックチーム渾身の1作に、リュウは得意げに息巻く。
空に赤いヒビが入り、ガンタレットが狙いを定めた。
1拍遅れてセンサーがヤプールの反応を検知し、警報が鳴り響き始める。
万全の体制である。だがテッペイの嫌な予感は晴れなかった。
否、それどころかさらに増していくばかりである。
目戸はそれを見て、同じように嫌な予感を覚えた。
やがて異次元ゲートが開き、超獣の姿が露わになる。
ギラギラとした黄色い目に、長い牙が生えた猛獣のような顔つき。
頭には幅広の剣が無造作に生えている。
身体は全体的に黒くがっしりとしていて、右手は棘鉄球が、左手は鎌が生えていた。
「殺し屋超獣バラバ! やはり今回の相手こいつですか!」
「あいつは強いのか!?」
「いえ、ですが――」
バラバの実力はバキシムと同程度。ウルトラマンエースにも一方的に負けている。
だがそれ以上に厄介なのは、共に降る放射能の赤い雨の存在だ。
当時の防衛隊TACの武装を全て無効化し、ウルトラマンエースは孤軍奮闘を余儀なくされた。
そしてウルトラマンエースが対バラバ戦で光線技を一切使わなかったことから、テッペイの中にはある説があった。
「恐らく……やつに遠距離攻撃は効きません」
「なんだって!?」
止める間もなくリージョン・リストリクターが発射される。
渦を巻きながら空を突き進む青い閃光は、しかし赤い雨に阻まれて徐々に力を無くし、やがて霧散してしまう。
リュウが呆気にとられているうちに、バラバは異次元ゲートから飛び出して咆哮を上げた。
「ヤプールめ、まさかこんな方法でリージョン・リストラクターを無効化してくるだなんて!」
テッペイが悔しげに拳を握る。
だが用心深いヤプールの策はこれだけではない。
超獣がもう1体、異次元ゲートから現れたのだ。
「あいつは確か俺たちも戦ったことがある……!」
「――蛾超獣ドラゴリー! まさか2体目だなんて!」
ドラゴリーは24年前にリュウ達も戦ったことがある超獣だ。
全身が武装化されており、目からは光線が、牙には猛毒*4が、口からは火炎が、両腕からはミサイルが、果てには人間への憑依能力まで備えている。
だがそれらはドラゴリーの能力の一端に過ぎず、真に恐ろしいのは怪獣を軽く引き裂くほどの超怪力*5だろう。
遠距離攻撃が禁じられたフィールドにフィジカル特化の超獣が2体並び立つ。あまりのヤプールの本気度合いにリュウとテッペイが戦慄し、目戸はドラゴリーをじっと見つめていた。
◇
冷やし中華をすすっていた男が顔を上げる。
ヤプールの強いマイナスエネルギーの波動を感じ取ったのだ。
あたりが晴れ渡る中、視線の先には不自然に重い雲が立ち込める場所がある。
「休暇は終わりだ」
ベランダに出て手を掲げ、スティックのボタンを押す。
その身体は一瞬で光となり、フェニックスネストへ飛んだ。
◇
『デュワッ!』
ウルトラマンがバラバとドラゴリーの前に現れた。
慌てた様子で持ち場に戻ろうとしていたスタッフ達は思わず足を止め、歓声を上げる。
「先に行ってますから!」
リョウタはそう言って食堂から駆け出して格納庫に向かった。
朝日もまた駆け出そうとして――その手を紅葉が取る。
「まさか、アレと戦うなんて言わんやろね!?」
「ッ、そうや。ウルトラマン1人でほっとけへんやろ!」
「そんなん任せとけばええ! 朝日が行く必要なんて何処にもあらへん! 死ぬかもしれへんのやぞ!」
どうせウルトラマンが倒してくれるなら、無理に戦う必要はない。
死ぬ可能性のある戦場へ、息子に向かって欲しくない。
紅葉が言うことは正しい。正しいが。
「そやけど、一緒に戦わへん理由にはならんやろ!」
手を振り払って、駆け出した。
呆然とする紅葉はいつもの完璧な母ではなく、ただ1人の人間に見えた。
一応補足
〇殺し屋超獣バラバ
ヤプールの秘策その1。
暴君怪獣タイラントの腕パーツとして有名。52年前はエースキラーの前座orシメとしてエースにボコボコにされたが、ウン十年ぶりに客演したZではタイラントの腕としての誇りを胸に、Zの最強フォームを撃破した上、応援に来たエースと合わせて1対2の状況になってもかなり善戦した。
〇放射能の赤い雨
ヤプールの秘策その2。
52年前、バラバを守るためにヤプールが降らした雨。
戦闘機の機銃とミサイルを逸らして無効化する。
レーザーの類は通用するはずだが、強化されてリージョン・リストリクターを無効化した。
バラバ固有の能力疑惑があるが、前座戦では降っていたのに〆戦では何故か降っていなかったので、ヤプールが頑張って降らしていると思われる。
常に降らしておけばいいのに……。
〇蛾超獣ドラゴリー
ヤプールの秘策その3。
52年前にエースと、24年前にメビウスと戦った。
52年前はメトロン星人Jrと共に現れ、エースを挟撃する。
ちなみにこのメトロン星人Jrは目戸の息子である。
エースを撤退まで追い込んだこともあり、乱入してきたムルチを引き裂いて殺した。
24年前の個体は52年前と同個体。怨讐により復活し、異次元物理学の権威フジサワ博士に憑依してリージョン・リストリクターを排除or基地破壊の1歩手前まで行った。ヤプールの指示無しなのに凄い。ただ豊富な武装を生かしきれず撃破された。噛み付けばワンチャンあったと思う。
〇ヤプール
「ゼェハァ、3週間ワンオペで頑張ったぞ……これだけ用意すれば憎きウルトラマンと酒寄朝日を殺せるだろう。ん? なんかガマスの反応がないな? まあ、いいか( ˘ω˘ ) スヤァ…」
感想評価お待ちしております!