ウルトラかぐや姫   作:ガンタンク風丸

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お待たせいたしました。
いつも感想ありがとうございます。励みになります。

朝日がGUYSに入った影響で難産でした。




勇気の証

 

 

 戦闘を開始してすぐ、ウルトラマンは違和感に気づいた。

 エネルギーがまとまらないのだ。

 試しに手刀や牽制の光線を出せば不発になる異常事態。

 

 放射能の赤い雨が、光を散らしている。

 それに加えて、体表を蝕む不快な感覚がウルトラマンの体力をジリジリと消耗させていた。

 

 どうやらウルトラマンにとって不利なフィールドらしい。

 

 戦闘機が出てくる様子はない。あちらもあちらで、何かが起こっているようだ。

 

 だがこの程度の苦境、ウルトラ兄弟達なら簡単に凌げるだろう*1。最後まで諦めず、不可能を可能にするのがウルトラマンだと、メビウスも言っていた。

 それにバラバとドラゴリーは強敵だが、遠距離攻撃を封じられているのはあちらも同じこと。やりようはある。

 

 ウルトラマンがファイティングポーズを取るのと同時に2体が駆け出した。宙返りして背後をとり、まずドラゴリーの背中を蹴飛ばす。

 

 顔面から転ぶドラゴリー。とても痛そうだった。

 ウルトラマンの体重が4万tなのに対し、ドラゴリーは5万6千t。

 もしも蹴ったのがバラバだったらこうはならなかった。

 バラバの体重は8万5千tとウルトラマンの2倍以上もあり、少したたらを踏む程度で転ばせるまでいかなかっただろう。

 

 事実、こちらへ向き直ろうと隙を晒したバラバへジャンプチョップをくりだすも、怯んだだけで全然ダメージになっていない。それどころか、こちらの手が痛む始末であった。

 

『GYUAA!』

 

 返しの鎌が、上から下へ振り抜かれる。

 素直に殴る蹴るのは得策ではないと悟ったウルトラマンは、あえて懐に潜り込んで腕をつかみ、勢いを利用して背負い投げることにした。

 

 重い地響きと共に、受け身を知らないバラバは大ダメージを食らった。

 

 ウルトラマンはすかさずマウントポジションを取り、柔らかそうな首へチョップを繰り返す。

 だがバラバもやられてばかりではなく、頭部から生えた剣が独りでに抜けてウルトラマンを切りつけた。

 

 赤い雨の影響ですぐに力を失い地面に刺さるも、ウルトラマンの身体は大きく仰け反り、そのまま振り払われてしまう。

 

 何とか立ち上がろうとしたウルトラマンを次に襲ったのは、転倒から復帰したドラゴリーだった。

 

 横腹を蹴られた後、強引に立ち上がらされて、みぞおちを何度も殴られる。

 

 ウルトラマンはこのまま攻撃を受け続けるのは不味いと、自身を掴んでいるドラゴリーの腕を取って前転。その勢いに巻き込む形でドラゴリーを投げた。

 

 ドォンと、また重い地響きが鳴る。

 

 ――ピコン、ピコン、ピコン。

 

 着実にダメージを与えられているが、ウルトラマンのカラータイマーは早くも点滅を始めた。

 

 

 

 

 赤い雨の中で戦闘機は無力だ。

 ミサイルとレーザーは効かず、できて囮程度。

 その囮も、バラバは右腕の棘鉄球から伸びる鎖付きのアンカーで何機もの戦闘機を堕とした実績があるためリスクが大きく、GUYSはウルトラマンが戦う姿を見ながら歯噛みするしかない。

 

「あの赤い雨さえ何とかなれば」

「ミサイルとかで吹っ飛ばせれば良いんだが」

 

 目戸がふと言った。

 

「マケット怪獣にどうにかできそうなのモノはないのかね?」

「封印されたモノの中になら、あるいは」

 

 マケット怪獣の中には、悪用ないし暴走した場合、1分間の時間制限の中でも甚大な被害を出せる怪獣が何体も存在する。

 そういった怪獣のデータは封印が施されて召喚できなくなっていた。

 

 封印は、総監なら解除することができる。

 

「じゃあ解除だ! ったく、また上にどやされるな」

「まあまあ、僕も一緒に怒られに行きますから」

 

 そうして朝日は、フェニックスネスト出入口の(ひさし)の下にいた。

 

『朝日君、やってくれ!』

「GIG!*2

 

 マケットカプセルが取り付けられたGUYSメモリーディスプレイを空へ向ける。

 

 

「頼んだぞ、バリケーン!」

 

 

 ――RIALIZE――

 

 召喚されたのは、青い大きなクラゲといった見た目の怪獣、バリケーン。

 

 その異名はずばり台風怪獣。文字通り、台風を生み出すことができる。

 これで放射能の赤い雨を吹き飛ばす作戦だ。

 

 突然の闖入者にバラバやウルトラマンの動きが止まるのを尻目に、バリケーンの頭の笠が回転して大気を掻き乱しだす。

 例え放射能の赤い雨にどんな特殊能力が付与されていたとしても、所詮は局所的な積乱雲でしかない。バリケーンが生み出す台風の圧倒的なパワーにどんどん吹き飛ばされて、赤い雨からただの雨へと変わっていく。

 

「う、うおお!? よ、よし、いいぞ!」

 

 比例して風速がとてつもない勢いで上がり、朝日は柱にしがみつきながら拳を握った。

 ウルトラマンも状況を察し、バラバとドラゴリーを転ばせたりしてその場に押し留めている。このまま放射能の赤い雨を無効化できると思われた――その時だった。

 

『KYUAOOOO!』

 

 地面が割れ、超獣がもう1体現れた。

 

 極彩色に塗られた蟻のような頭部。

 節足動物のハサミを思わせる両腕。

 肩から天へ伸びるように生えた白い巨大な触角。

 

 大蟻超獣アリブンタ。ギロン人と共に怨念のパワーで蘇った、ヤプールの伏兵だった。

 

『もう1体だと!?』

『アリブンタまで!? 何体超獣を用意してるんだヤプールは!』

 

 アリブンタはバリケーンに飛びかかり、鋼鉄をも一瞬で融解させるギ酸を至近距離で吹きかけた。バリケーンは悲鳴を上げて必死に逃れようとするが、両腕のハサミでガッチリ掴まれて振りほどけない。

 

「バリケーン! 反撃しろ!」

 

 朝日の声に応えて、バリケーンが全身から稲妻を放射した。

 痺れるアリブンタを振りほどき、よくもやってくれたなと言わんばかりに触手で叩く*3も、その途中でバリケーンの身体は消えてしまった。

 活動限界を迎えたのだ。

 まだ1分たっていなかったが、ギ酸によりダメージを食らいすぎたのである。

 

 だが当初の目的通り、バリケーンの台風は放射能の赤い雨を光線が放てるまで弱めることには成功していた。

 

 

『よくやった朝日!』

 

 

 それはすなわち、GUYSの戦闘機も攻撃に参加できるということである。

 フェニックスネストから3機の戦闘機が飛び出し、今まで我慢したうっぷんを晴らさんと、ミサイルやレーザーが超獣達に降り注ぐ。

 

 だが遠距離攻撃が解禁されたのは超獣達も同じこと。

 バラバは目から怪光線、鼻からミサイルを発射して応戦した。

 ドラゴリーも目から怪光線、口から火炎弾、手の袖からミサイルを発射した。

 アリブンタは両腕から熱線を放射した。ギ酸は強風が吹いているため吐かなかった。

 

 金色に光り輝くマニューバモードを展開した戦闘機達は、空を縦横無尽に飛び回り、そのすべてを回避する。

 

 戦闘機に注意が向いている隙に、ウルトラマンは腕を十字に構えて、エネルギーを貯めた。

 

 狙うは接近戦が困難なドラゴリーだ。

 

 だが光が収束し、カラータイマーの点滅が早まったその時、突然フェニックスネストから禍々しいエネルギーが飛び出してきた。

 

 

「なんだあれ……?」

『デュア……?』

 

 

 ウルトラマンの目の前で黒い光はやがて人の形をとっていく。

 そして異民族風の仮面のような頭部に、棘が全身に生えた異次元超獣マザリュースとなった。

 

『デュオ!』

 

 だがウルトラマンが光線を放とうとした瞬間、その身体の輪郭がブレて、朝日のよく知る人物と同じ姿になる。

 

 それは酒寄紅葉その人であった。

 

 

「か、母さん!?」

『デュオ!?*4

 

 

 しかも50m級の紅葉である。

 これには管制室にいた全員もぎょっとした表情で立ち上がり、目を擦った。

 

 困ったのはウルトラマンだ。いくら元がマザリュースだろうと紅葉の姿をしたものに光線を撃ち込むわけにもいかず、アリブンタへ向きを変えるが、マザリュースもとい紅葉が邪魔するように射線に入ってきた。

 

 そして笑顔を浮かべると、おもむろにウルトラマンに掴みかかってくる。ウルトラマンは光線を中断する他なく、そのままガッチリと組み合うことになった。しかしエネルギーが切れかけの現状、どんどん抑え込まれて行き、ついには膝を着いてしまう。

 

『おい朝日、あれがお前の母さんって本当か!?』

「見た目は!」

『クソ、厄介すぎるだろ!』

 

 もし本人だった場合一般人を殺してしまうことになる。

 仮に本人でなくとも、人の姿をした相手に攻撃することは、どうしても躊躇いが生まれてしまうものだ。

 

 だが迷っているうちにもウルトラマンはどんどん追い込まれ、カラータイマーの点滅は早くなっていく。

 

 そして管制室に、彩葉とサユリが飛び込んで来た。

 

 

「お母さん! ……お母さん???

 

 

 ウルトラマンと取っ組み合う紅葉を見て思考が停止する彩葉。

 サユリも呆気にとられていたが、すぐ気を取り直し「大変なんや!」と叫んだ。

 

「おばちゃん、無事だったか!」

「おかげさまでこっちはピンピンしとるで! せやけど朝日とこの子のお母ちゃんがヤプールの仲間と合体してもうた!」

「では、あれは本物と」

「さしずめ人質というところかね」

 

 サユリから事情を聞いたテッペイと目戸は難しい顔をしたが、リュウがふと思い出すように言った。

 

「……なあ、確か昔もこういうこと無かったか、テッペイ。お前の知り合いの女に怪獣が憑依してよ」

「憑依……ああ、フェミゴンですか!」

 

 人魂怪獣フェミゴン。

 過去に2度出現しており、52年前にジャックが倒した個体と、23年前にメビウスが倒した個体がいる。

 

 今リュウが言っているのは23年前の個体だ。

 生物に憑依することで実体化する特徴を持つフェミゴンは、テッペイの後輩ミサに憑依したが、メテオール『スピリットセパレーター*5』によって分離することができた。

 

「ですが奴は超獣です。果たして同じように行くかどうか……」

「それに、ウルトラマンにそこまでの体力があるのかね?」

「そうだ、ウルトラマンは――」

 

 

 

 

『デ、デュワ……』

 

 

 ウルトラマンは紅葉にボコボコにされていた。

 人の姿をとり、人質をとれば、ウルトラマンはまともに戦えない。

 

 そしてその対抗策も、残念ながら遅すぎた。

 

 ウルトラマンは力尽き、消えた。

 苦しげに呻く人間態の元に、朝日が駆け寄る。

 

「大丈夫か!?」

「……うぐ、朝日か。すまない、負けてしまった」

「謝んなや。あんたはよく頑張ったって」

「だが、私は……ウルトラマンだ」

「ウルトラマンも神様やない。1個の命や。できることに限界はあるやろ」

「……そう、か。いや、そうだったな……」

「何1人で納得してんねん。ほら、逃げるで」

「――お前の母はどうするつもりだ?」

 

 紅葉も戦闘機を堕とそうと空に手を伸ばしたり、ジャンプしている。どうやら見た目相応に肉弾戦しかできないらしい。

 

「……最悪の想定はせなあかんかもな」

「スピリットセパレーターがあるのだろう?」

「おま、聞いてたんか?」

「聞こえるさ。テレパシーの応用だ」

「そやけど、あれはウルトラマンの光線がないとどうしようも」

「そうだ」

 

 ウルトラマンが、変身アイテムを差し出す。

 

「朝日、私と一体化しよう。君の母を助けるにはこれしかない」

「……ええんか?」

 

 思ってもみない提案だった。確かにそれなら、またウルトラマンとして戦い、光線を撃つことができる。

 飛びついて喜ぶべきかもしれない。しかし、朝日の中には1つだけ懸念があった。

 

「今聞くことじゃあらへんかもしれんけど……なんというか、人間と一体化するの、嫌だったんちゃうん?」

 

 ウルトラマンにとって、地球人との一体化は自身の責務を――ウルトラマンであることを押し付ける行為であり、それに忌避間があるのではないかと、朝日は見抜いていた。

 

「……私はそんなに分かりやすかったか?」

「バレバレやで」

 

 抱え込みがちで、生真面目で、どこか彩華と似たウルトラマンの思考をトレースすることは、朝日にとって造作もないことだった。

 

「そうだ、私は地球人と一体化したくなかった。過去にウルトラ族と合体した者たちは、いずれも過酷な運命が待っていたし、そのまま互いの人格の境界が無くなり、人ではなくなってしまったからだ*6

「まじかいな」

 

 ウルトラマンとの一体化とは、人間をやめるということ。

 まさかの事実に朝日が固まると、ウルトラマンは笑った。

 

「すぐ分離すれば問題ない」

「お、脅かすなや。なら問題あらへんな」

 

 朝日はウルトラマンの手を取って立ち上がらせる。

 

「もっかい聞くけど、俺でホンマにええんよな?」

「君以上に勇気がある人間を、私は見たことがない」

「勇気って、なんもしとらんよ」

「いや、君の流星シュートがあったから、私は立ち上がることができたんだ」

「またアレ(流星シュート)か……みんな中々忘れてくれへんなぁ」

「忘れないとも」

 

 照れて頬をかく。

 

「頼む、母さんを助けさせてくれ」

「ああ、共に戦おう、朝日」

 

 そして、ウルトラマンが光の粒子となり朝日と一体化した。

 手にはウルトラマンの変身アイテムだけが残る。

 

 朝日はボタンを押そうとして、ふと動きを止めた。

 怪訝そうなウルトラマンの声が頭に響く。

 

『どうした?』

「あんたの名前、思いついたで。ずっとなかったやろ。かわいそうやから、俺がつけたる。一体化特権や」

『い、一体化特権』

 

 

 

「あんたの名前はプラック。ウルトラマンプラックや!」

 

 

 

プラック(勇気)か……もらいすぎだ、朝日』

 

 

 

 

*1
ジャック「そっ 、そうだな」

*2
了解という意味。

*3
カスダメ。

*4
本当か!?

*5
着弾後、ウルトラマンの光線を照射することで人間と怪獣を分離できる。

*6
ウルトラマンジャック×郷秀樹 / ウルトラマンエース×北斗星司 / ウルトラマンヒカリ×セリザワ・カズヤ




一応補足


〇台風怪獣バリケーン
ウルトラマンジャックに登場。
マケット怪獣の封印に関してはオリ設定です。基本的に単体で天災を生み出せたり気象を変えれる怪獣は封印されています。
ゼットンは悩ましい所です。1兆度火球がガチのやつなら問答無用で封印指定ですが、M78ワールドではなんか大したことないので実用圏内かもしれませんが、メビウスで電子空間とはいえ暴走した実績があるので難しそうです。
パンドンあたりが丸いですかね。

〇大蟻超獣アリブンタ
ずっとスタンバっていました。
前話のギロン人とセットで蘇った個体です。
鋼鉄をも一瞬で溶かすギ酸が最大の武器ですが、強風の中そんなことして自分にかかったら元も子もないので実質使えない悲しい子。

〇異次元超獣マザリュース
原作で戦ってすらないため、逆に一体なにできるんだ枠。
仕方が無いので紅葉さんの姿に化けさせました。朝日がGUYSに入隊しない本来のプロットでは、彩葉に化けてました。

バラバ、ドラゴリー、アリブンタ、マザリュース、ギロン人、マザロン人、放射能の赤い雨。以上がヤプールが夜なべして用意したメンツです。
ですがこれだけしてもなお地球側とどっこいどっこいというバグ。

なにせ力関係だけ見るなら
序盤メビウス≒一般怪獣≒メテオール戦闘機≦超獣<インペライザー<メビウスBB≒戦闘機×3合体メテオール<ウルトラマンタロウ……etc
となるので、本当に下手な怪獣では脅威になりません。
GUYS側にもデバフをかなりかけたつもりでしたが、それも解除されてきているのでいよいよ怪しいです。
メビウス以降警備隊が派遣されなかった、ないし大怪獣バトルまで年代が一気に進んだのも納得ですね。

プラックをそれなりに弱く設定しましたが、まだ弱くてもいい。宇宙警備隊ではないので、ゼアスくらいの弱点をつけても良かったなと思ってます。


〇ウルトラマンプラック
最初に考えた候補のうちの1つがこれでした。
意味は困難な状況に立ち向かう勇気。
朝日がGUYSに入らなければ、ウルトラマンいろはでした。


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