いつも感想ありがとうございます。励みになります。
ウルトラマンテオがもうそろそろで始まりますね。
直前スペシャルも1番初めにメビウスがフォーカスされて嬉しかったです。
――プラック、まずは母さんを拘束したいんやけど。
――了解した。私にいい考えがある。
『ジョッ!』
プラックとなった朝日は胸の前で腕をクロス。直立姿勢のまま横に高速回転し、フラフープのような光の輪っかを3つ生成した。それらは放物線を描いて紅葉に飛んでいき、がっちりと捕まえる。
初代ウルトラマンがゼットンに使った拘束技、キャッチリングである*1。
身動きが取れずもがく紅葉に申し訳なく思いながら、インナースペースで頭を下げる。
――次や、プラック。
――ああ。それにしても飲み込みが早いな、朝日。お前なら光の国でもウルトラ警備隊にすぐなれそうだ。
――せやろか? ま、プロゲーマーやさかい、このくらい朝飯前やで。
ウルトラマンになるというのは不思議な感覚だった。
世界が小さくなり、あれだけ大きく感じた怪獣と視線がかち合う。
だが戸惑ったのは最初だけだ。
ゲームが変われば戦い方が変わるように、朝日にとってウルトラマンとして戦うことは、その延長線上に過ぎなかった。
手足の長さ、筋力の違い、重心の違い、特殊能力の有無、そんな普通の人間とは異なる要素に次々と順応する。
フルダイブゲームが現実になったらこんな感じなんだろうなと、場違いなことを考える余裕すらあった。
次の狙いはアリブンタだ。
助走をつけてジャンプし、キックの体勢をとる。キャッチリングを使った際にコツを掴んだ高速回転を再び行い、威力を上げるのも忘れない。
――コイツはバリケーンの仇や!
戦闘機のアシストにより動きを止めたアリブンタは、錐揉みキックをモロに食らって吹っ飛んだ。
――なるほど、回転で威力を上げたのか。
――光線は疲れるんやろ?
――ああ、なるべく温存するべきだ。
――よしきた。
回転は全てを解決する。
朝日はダウンしたアリブンタの尻尾を掴んで今度は振り回し始めた。ジャイアントスイングだ。
鈍い風切り音が大気を揺らし、最高速になったところでドラゴリー目掛けてアリブンタを投げ飛ばす。
2体は激しくぶつかり合い、団子状態で倒れ込んだ。
――これで2体まとめてお得やな。
満を持して、朝日は腕を十字に構えた。
「ジュワァッ!!!」
フリーになった2機の戦闘機も全兵装を叩き込み、幾条もの閃光がドラゴリーとアリブンタに殺到する。
結論は言うまでもなく、2体は爆散。
フェニックスネストから歓声が上がった。
「よし!」
「やった!」
「流石ウルトラマンだぜ!」
朝日とプラックの勢いは止まらない。
最後に残ったバラバへ向き直る。
同胞が2体やられても、バラバの戦意はまるで衰えていなかった。
超獣は兵器であり、恐怖という感情を持たないからだ。
バラバが目から発射した怪光線を側転で回避する。
迫り来るバラバをどう迎え撃つか。一瞬の逡巡の間に、朝日はソレを見つけた。
――リサイクルやな!
――それはリユースではないか?
バラバの頭部に刺さっていた剣を掴み取り、次の怪光線を弾く。手に強い衝撃が走るが、煙の上がる剣には刃こぼれ1つない。流石は元超獣の1部である。
かつてエースにもやられた武器返し戦法を見たバラバが怒りの咆哮を上げた。棘鉄球の先から鎖を伸ばし、ぬるりと朝日の腕に巻きつく。チェーンデスマッチとなってしまったが、武器を得た朝日はあえてそれを解かずに、バラバへ突撃した。
『GYAOON!!!』
『デュワ!!?』
剣と鎌が何度もぶつかり、やがて鍔迫り合う。
だが拮抗もつかの間、バラバの目が光り、朝日を吹き飛ばした。
――大丈夫か、朝日!
初めてのクリーンヒットだった。
プラックがある程度ダメージをカットしているとはいえ、日本人として生活する中では感じることがなかった痛みに悶えそうになる。
「頑張れウルトラマン!」
「1発いいのを食らったからってなんだ! 立て、ウルトラマン!」
「ウルトラマン立って!」
その時、テレパシーを介してフェニックスネストにいる仲間達の声が聞こえた。
「気張りや、ウルトラマン!」
中には妹の彩葉の声援もあり、かっこ悪い所は見せられないなと、朝日は己を奮い立たせる。
――朝日!
――大、丈夫やッ……!
近づくか、離れるか。
合体前のプラックのチョップはまるで効いていなかったが、光線はまだ分からない。朝日は牽制に光弾を放ってみた。
『ジョ!?』
驚くことに、バラバはそれを避けようともしなかった。
ボディで受け止めて、あまつさえ鼻で笑う始末である。
ヤプールはプラックの能力を研究し尽くしており、バラバは牽制用の光弾程度では効かないことを初めから分かっていたのだ。
やはり光線は弱らせて必殺のタイミングで撃つべきだ。
だがそれまでになるべく消耗しないよう立ち回る必要があるため、やはり近接戦しかないだろう。
贅沢に王子様戦法をしてみたかったものだ。
『デュワッ!』
覚悟を決めて駆け出した朝日に、怪光線やミサイルが降り注ぐ。それらを剣で弾いてくぐり抜け、すれ違いざまに一閃。
――浅いぞ!
――分かっとる!
返しの刃で、付けた切り傷に剣を突き刺した。
『GAAA!?』
悶え苦しむバラバ。だが鎌と棘鉄球の腕で剣が抜けるはずもない。
このまま追い詰めようと、朝日はバラバの首に腕を回して投げ飛ばそうとした。
『GYAAAAAON!!!』
だがバラバが突如咆哮を上げる。
怨念が爆発的に溢れ出し、大気が爆発した。
――なんだ!?
――これは、なんて強いマイナスエネルギーなんだ……!
それだけでなく、辺り一帯から怨念が帯となってバラバに吸い込まれていく。
まるでブラックホールのようだ。
――! 隊長と皆が!
強い怨念に煽られた戦闘機のシステムが次々に不調を来たし、遠くに不時着して行く。
朝日は手を伸ばそうとして、眼前をドラゴリーの亡霊が飛んでいくのを見て動きを止めた。
見ればアリブンタのみならず、ギロン人にマザロン人、過去に倒したバキシムの姿もあった。
しかも引力の対象は紅葉が依代となっているマザリュースも例外ではなく、キャッチリングからすり抜けて魔封波に当たった神様の如く吸い込まれそうになっているではないか。
朝日は慌ててその足を掴んだ。
『デ、デュオオ!?』
――ちょ、母さん!? なんだよこれ!?
――まさか、合体するつもりか!?
――なぁ、が、合体!?
朝日は吸引力に抗いながら、紅葉の足首、腿、腰を掴んで少しずつ手繰り寄せ、しっかりと抱きとめる。
マザリュースの怨念が徐々に引き剥がされているのが分かったが、気を抜けば丸ごと持っていかれそうだ。
なんとか耐えていると、ふと急に勢いが止む。
紅葉は相変わらず50mサイズのままだったが、マザリュースが抜けて気を失っていた。
――朝日。安堵しているところ悪いが、気合いを入れろ。本番はこれからのようだ。
――……分かっとる。第2形態ってやつやな。
少し離れた場所で、怨念が球状に渦巻いていた。
それはやがて羽化するようにひび割れ、大きな影がゆらりと伸びる。
――でかなったな、おい。
プラックとなった朝日が見上げる必要があるほど、それは巨大だった。
バキシムの頭部。
マザリュースの棘だらけの身体。
腕は6本あり、バラバ*2、ドラゴリー*3、アリブンタ*4のものが生えている。
身体はケンタウロスタイプに変わり、とにかく棘だらけで太く長い尻尾*5が2本伸びていた。
『BAGYAAA!!!』
体高80m、体重7万t。
その名もネオジャンボキング*6
新たな合体超獣の完成であった。
◇
『ご覧下さい! あのウルトラマンエースと激闘を繰り広げた超獣達が現代に蘇り、フェニックスネストを襲っています!』
時は少し遡る。フェニックスネスト近郊では、カッパを着たKCBの女性アナウンサーが放射能の赤い雨をものともせずにたくましくニュース中継を飛ばしていた。
『あっ! また新たに超獣が現れました! 青いキノコのような形をしています! ……え? あれは超獣じゃない?』
『失礼しました! あれはどうやらマケット怪獣のようです。人類の味方でした! ってきゃ――』
しかしバリケーンの力で赤い雨がただの暴風雨に変わると、あまりの風速にカメラ映像が横に吹っ飛んだ。
激しい雑音と共にやがて中継は途切れ、コメンテーターが気まずそうに解説を始める。
女性――タカマガハラの社長は溜息を吐いてテレビの電源を消した。
「……古き友は言いました。『ゆく河の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず』」
絶えず流れる川の水は常に新しいものに入れ替わっており、決して同じ水が流れることはない。
時の流れも同じように、いくら彼女が記憶をなぞろうとしても、決して同じ結果になることはない。
例えば、初代ウルトラマン以降、ウルトラマンが来なかった世界がある*7。
例えば、ウルトラセブンだけが地球に来た世界がある*8。
例えば、平成になって初めて怪獣が出現した世界がある*9。
イフの数だけマルチバースが存在し、世界は泡のように広がっているのだ。
彼女の記憶では、バラバ、ドラゴリー、アリブンタ達が襲撃を仕掛けるのは卒業ライブ後のはずだった。
それが何故か2週間も時期が早まっている。
そしてなによりも、酒寄朝日はGUYSに入隊などしていなかった。
「はあ、それにかぐやは一緒いないみたいだし……本当になんで?」
かぐやは彩葉の緊急事態にまるで気づかないまま、先程までずっと配信をしていた*10。今はモチロンから連絡を受けて急遽終了したが、どうして一緒に出かけていないのか、これが分からない。
まさか彩葉が引越しの件をサプライズしようとしているとは思いもよらず、女性は首を傾げた。
だが目戸栄一からの連絡で彩葉どころか紅葉までフェニックスネストにいることが判明している。
つまりフェニックスネストには今、酒寄家が全員集合しているのだ。
恐るべき合体超獣が現れるだろうあの場所に。
『じーっとしててもどうにもならないんじゃない?』
悩む女性に対し、画面越しに話しかけてきたのはツクヨミの管理AIヤチヨであった。
「だけどこれ以上歴史が変わったら収拾が……」
『でもウルトラマン1人であいつに勝てるわけないよ』
『……』
ネオジャンボキングが勝てば、それこそ未来は目も当てられない状況になるだろう。
押し黙る女性に、ヤチヨは言う。
『私たちの時はメビウスが助けてくれた。なら、次はこっちの番だよ』
「……だけど」
それでも女性は踏ん切りがつかない様子だった。
怖いのだ。知らない未来が。
ヤチヨはふっと笑って、画面から光の粒子となって飛び出してくる。
「よっこいしょ! いやー、やっぱり生身の肉体は格別ですなぁ」
そう言ってご機嫌そうに回るヤチヨは、まるでかぐやをそのまま大人にしたような見た目をしていた。
赤い瞳が星のようにきらめき、女性を射抜く。
「ほら、助けに行こ?」
「……しょうがないなぁ」
女性はしばらく悩んでから、その手を取った。
「「ウルトラタッチ!」」
一応補足
〇ネオジャンボキング
オリジナル怪獣ですが、見た目はだいたいグランドタイライントと同じです。
グランドタイラントはウルトラマンメビウスの没映画に登場予定でした。
タイラントをベースにバキシム・ゴモラ・ツインテール・エレキング・アストロモンスなどを融合させた合体怪獣で、ここからもろ事情あり大決戦超ウルトラ8兄弟に内容が変わったそうです。
ちなみにジャンボキングはエースのラスボスの名前で、同じ合体超獣です。
素材はマザリュースとマザロン人が共通していますが、姿は別物となっております。
サメクジラですら再登場しているのにいつまで経っても復活しない可哀想な奴です。
〇タカマガハラの女社長
2人でウルトラマンになることで、彩葉は因果に相乗りしました。
そして彼女たちが言っていたように、朝日とプラックはこのままだと普通に負けるので、何とかルート修正してもらいます。
2週間後ならメビウスが来てたんですけどね。
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