ウルトラかぐや姫   作:ガンタンク風丸

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お待たせしました。

感想評価いつもありがとうございます。とても励みになります。
今回キリのいい所まで書いていたらまた長くなりました。
テオがやった土曜日に本当は出したかったんですけどね。

あと1つお詫びが。
日ノ出サユリさんですが、見返したらゴリゴリの標準語キャラでした。前話など直してあります。申し訳ありませんでした。



無敵の家族

 

 バリケーンによる暴風雨が吹き荒れるフェニックスネストにて、ネオジャンボキングとウルトラマンプラックこと朝日が睨み合っていた。

 

 ネオジャンボキングは、バキシム・バラバ・ドラゴリー・アリブンタ・マザリュース・マザロン人・ギロン人の計7体が合わさった、究極の合体超獣だ*1

 

 同じ合体超獣のジャンボキングの素材が5体であることを考えると、単純な素材差は1.4倍。もちろんそれだけで全てが決まるわけではないが、ウルトラマンを大きく超える体格はもちろん、阿修羅のように生えた6本の腕のうち4本はドラゴリーとアリブンタのもので構成されており、これらは強力な砲門でもあった。

 

 開戦の狼煙は、そんな4本の腕から放たれた熱戦とミサイルによって上げられた。

 

 

『デャ!?』

 

 

 回避できたのは奇跡だった。

 嫌な予感に身を任せて不格好に地面を転がれば、銀色の肌スレスレを熱線が通過していく。直撃していないのに焼けるような熱さを感じた。

 

 ウルトラ族は元来高熱に強い種族なのだが、余波だけでその耐性を貫く温度に、朝日とプラックの肝が冷える。

 

 恐らく1発でも貰えばタダではすまない。

 加えてミサイルも問題だ。熱線でこれなら威力は論ずるまでもなく、小さい弾頭に若干の誘導性と、こちらの方が遥かに厄介に思えた。

 

 ――勘弁してくれへん!?

 

 そしてそんなものが連射されるのだから溜まったものではなかった。

 死に物狂いで回避しながら、バラバの剣を刺しっぱなしにしなければ良かったと朝日は少し後悔した。

 

 ――どないする!?

 ――……近づくしかないだろう。奴の気が変わって基地が狙われれば終わりだ。

 ――やっぱそうやよなぁ! 分かっとるけど、ちょっとムズいで、これ!

 

 既にエネルギー残量は心許ない域まできている。

 超獣3連戦に加えて光線を1発撃っているのだから当然と言えば当然だ。むしろこれだけ動ける与力があるのは驚くべきことである。

 

 朝日は牽制用の光弾でミサイルを誘爆させて即席の盾にし、なんとか無傷でネオジャンボキングのもとにたどり着いた。

 

 

『ジョア!』

 

 

 そしてここまでの勢いを乗せた渾身のパンチを放ったが――ネオジャンボキングは壁を殴ったかのようにビクともしなかった。

 呆気にとられる朝日。バラバの頑強さに更なる重量が加わり、動く要塞となったネオジャンボキングに下手な攻撃は通用しない。

 

『GYAGYAGYA!』

 

 ネオジャンボキングが嗤った。「もっとやってみろ」と言わんばかりに手*2をクイクイと動かして挑発してくる。

 

 

 ――こいつ、いっちょ前に挑発なんかしおってからに。プラック、なんかええ技あらへん?

 ――……エネルギーを纏わせた貫手はどうだ。

 ――貫通技でぶち抜くわけやな。

 

 朝日は1度距離をとってから手にエネルギーを充填させ、光る貫手をネオジャンボキングの胴体に突き刺した。

 

 

『ジョア……?』

 

 

 が、無傷*3

 その後もきりもみキックや光線を撃ったが、ネオジャンボキングには一切通用しない。

 

 ウルトラマンは3分間という制限時間がある都合上、持久戦に全く向いていない。

 故になるべく消耗しないように、効率的に動いて短期決戦をする必要がある。

 

 だがこれはそもそもダメージが入っておらず、有効打がない。

 

 倒せない。

 

 やがてカラータイマーが赤く点滅しだし、万策尽きた朝日とプラックに向け、バキシムの頭部から火炎放射が放たれる。

 

 肩で息をする朝日に、避ける余裕はない。

 

 あわや直撃すると思われたその時、嵐天を切り裂いて光の柱が降り立った。

 

 光の柱は火炎放射から朝日を守り、やがて中からもう1人のウルトラマンが現れる。

 

 

 ――私以外にも地球にウルトラマンが……!?

 

 

 そのウルトラマンの顔はプラックとそっくりだったが、身体の模様とカラーパターンが明確に異なっていた。白金色のラインと藍色の差し色は、過去のウルトラマンにはない特徴だ。

 初代ウルトラマン、ジャック、ゾフィーのような、顔だけそっくりさんなのかなと朝日は思った。 

 

 警戒するネオジャンボキングを前に、謎のウルトラマンは泰然と見えを切る。

 

 

『遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ! ウルトラカグヤ、ここに参上!』

 

 

 そして神秘的な雰囲気をぶち壊す女性の大声が、テレパシーを介して周囲に響き渡った。

 

 ――……。

 ――……。

 

 心做しか、ネオジャンボキングも目を瞬かせている気がした*4

 

『前口上とか恥ずかしいからやめてって言ったよね?』

『ごめんねイロハ。久しぶりだったから感情がつい高ぶっちゃって』

『少しは歳を考えて物言おっかーおばあちゃん。いい加減落ち着きをもって?』

『はいはーい』

『はいは1回。……ほら、そんなことよりも早くエネルギーを補給してあげる』

『はーい』

『延ばさない』

 

 今度はきちんとテレパシーの出力は抑えられ、朝日とプラックにしか聞こえないようになっていたが、 カグヤ、イロハという名前にドキリとなる。

 

 ――プラック!

 ――君の妹は基地の中にいるぞ。大分混乱しているみたいだが。

 ――なんやと……?

 

 偶然の一致だろうか。

 そんなことありえるのだろうか?

 

 そもそも男性のウルトラ族の身体から女性2人のテレパシーが聞こえてくるというのもなんだかちぐはぐだ。

 

 変だし、おかしいし、騒がしいし、訝しい。だが今この状況において、非常に心強い援軍であることは確かだった。

 

 カグヤは手をかざし、朝日に向けて暖かな光を注いだ。

 カラータイマーの色が赤から青へ変わり、虚脱感が消える。

 

『救援感謝する、カグヤ。私はウルトラマンプラック。ところで君たちは警備隊のウルトラマンなのか?』

『えっと、俺は朝日。とにかく助けてくれてありがとな。助かったわ』

『『……』』

 

 プラックに続いて朝日が声をかけた瞬間、カグヤはぎょっとした顔で朝日を2度見した。

 

『『!!???!!??』』

 

 そして彫像のように動かなくなる。

 カグヤのインナースペースは大混乱だった。

 

 ――え? は? プラックって何? というかお兄ちゃん!? なんで一体化してるの!?

 ――お、落ち着こうイロハ? ほら素数、素数を数えよう。あと深呼吸!

 ――というかお母さんがでっかくなってるし! 私じゃないの!? なんで!? どうして!? 未来は!? あば、あばばば。

 ――い、イロハが壊れたー!?

 

 2人はプラックが1人で戦っていると思い込んでいた。

 まさか朝日と一体化しているとは、欠片も考えていなかった。

 

『おーい?』

『えぇっと、あ……よ、よろしくプラック、朝日! あと、私たちはウルトラ警備隊じゃないよ』

『そうなのか?』

『強いて言うなら……うん、別の世界からあなた達を助けに来た、さすらいの風来坊って所かな』

『よく分からないが、頼もしいな』

『いやいやめっちゃ胡散臭いやろ』

『えーひどーい』

『ッ、お喋りは終わりのようだぞ』

 

 付き合っていられないと、ネオジャンボキングが再び熱線とミサイルを発射した。

 朝日とカグヤは空に飛び立ち、宙を舞って避ける。

 

 朝日は初見でノーダメ攻略したし、カグヤは何度もシュミレートしてきた。回避は余裕だ。

 

 無傷で突破・攻略し、弾幕が薄くなった瞬間、テレパシーで息を合わせた矢のような蹴りが、ネオジャンボキング突き刺さる。

 

 着弾の瞬間、衝撃波で轟音が鳴り響く。

 

『嘘やろ!?』

『知ってたけど信じたくなかったかな!』

 

 だがそれは、6本の腕でがっしりと受け止められていた。

 少し後ずさりしているが、そんなものなんの慰めにもならない。

 

 すぐに振りほどき、今度は大地を蹴って組み付く。ネオジャンボキングは余裕な態度で朝日とカグヤをあしらった。

 負けじとパンチやチョップ、キックを叩き込むも――まるで攻撃が効かない。

 

 

『硬すぎるやろこいつ!』

『ホントにね!』

 

 

 カグヤの世界では、ネオジャンボキングはウルトラマンメビウスがフェニックスブレイブとなって倒した恐るべき強敵だった。

 

 というよりも、ならないとその防御を貫けなかったのだ。

 

 ――カグヤ、今どんな状況?

 ――イロハ起きたの!? 良かった〜。ちなみに今は激ヤバ〜って感じだよ! あいつ硬すぎ!

 ――なるほどね。じゃあやっぱりあの技を決めるしかないわけだ。

 

 8000年の成果を見せる時が、ようやくやってきた。

 

 

 

 

「……まぁびっくりしたがよ。ウルトラマンが2人いるんだ。あっちはあっちでなんとかなりそうだな」

「ええ。それにしてまさかああも大きなテレパシーをするとは」

「自己主張が激しいウルトラマ……ウルトラウーマンだね。はじめてだよ、名乗り口上をするウルトラ族は」

 

 数千年後に現れます*5

 

「ウルトラ、カグヤ……?」

「大丈夫?」

「あ、はい。ただちょっと、友達の名前と一緒でびっくりしてしまって」

 

 テレパシーの声質は、どこか聞き覚えのあるものだった。

 ウルトラカグヤというド直球なネーミングセンスも、かぐやを想起させるものだった。

 あやしいが、かぐやは月星人であってウルトラマンではない。別人である。そうであってくれ。

 彩葉は今すぐ電話したくなったが、流石に今はそんな場合ではない。

 

「さて、そんじゃあ朝日と嬢ちゃんの母ちゃんを助けに行くとするか!」

「スピリット・セパレーターのカートリッジが残っていて助かりましたよ。流石に24年も前だと残っているか心配でしたし」

 

 テッペイがトライガーショットを抜く。

 リュウも心做しかワクワクした様子で立ち上がった。

 

「あたし達も行くわ。ね、彩葉ちゃん」

「え、いいんですか?」

「日ノ出さん!? ですが……いえ、心強い、のかな?」

 

 還暦を過ぎているサユリだが、サーペント星人由来の身体能力はテッペイも知るところだ。むしろ頼もしいまである。

 

「あの、本当に大丈夫なんですか?」

「……そうだね。もしかしたら君の力も必要になるかもしれないし、こちらからお願いしたいくらいだよ」

「私の、力?」

 

 ウルトラマンでもGUYSでもない一般人に、そんな力があるのかと彩葉は小首を傾げた。

 

「小手先の科学より、時には目に見えないもののほうがずっと良く効くことが、この世界にはままあるからね」

「安心して、私が守るわ!」

「は、はい!」

「サユリさん、すみませんがよろしくお願いします」

「面白そうだ。私も行くとしよう」

 

 最後に目戸が立候補し、メンバーが決まった。

 

「決まりだな。早く行こうぜ」

「あ、リュウさんは総監なんだからここにいなくちゃダメですよ」

「は?」

「ふむ、確かに責任者が持ち場を離れてはいかんだろうね」

「え?」

 

 出鼻をくじかれて愕然とするリュウ。

 やがて管制室には、固まるリュウとオペレーターだけが残されたのだった。

 

 そして暴風雨に負けずに、一行は地面に横たわる紅葉の元にたどり着く。

 

「お母さん! 大丈夫!? 返事して!」

「安心して、意識はないけど息はしてるみたいだ」

 

 ただ問題は、ウルトラマン側に光線を発射する余裕があるかどうかだったが、それも問題ないようだ。

 

『来たか! 少し任せてもいいか!?』

『OK!』

『すまん! 撃ってください、テッペイさん!』

「よし、スピリット・セパレーター発射!」

 

 トライガーショットから青白いビームが放たれ、着弾した紅葉の巨体が淡く光り出す。

 そして朝日が光線を当てると、今度はまるで化学反応が起きたように眩く光りだした*7

 

「頼む、上手くいってくれ!」

 

 テッペイが祈るように言った。

 だがそれら一連の行動は、ネオジャンボキングの注意を強く引いてしまった。

 

『危ない! ――うっ!?』

 

 熱線が紅葉に向かって放たれた。カグヤが身を呈して守るも、強すぎる威力に1発で倒れ込んでしまう。

 

 ネオジャンボキングはそのままカグヤを無視して、更に熱線とミサイルを放った。

 

 今度は朝日が射線に立ち、バリアを貼る。

 

「ウルトラマン!」

 

 悲鳴のような声だった。

 バリアにはどんどんヒビが入っていき、やがて砕け散る。朝日はすぐに次のバリアを貼ったが、即興では強度が足りないのか、壊されるペースがどんどん早くなっていく。

 

 このままでは不味い。

 彩葉はサユリの静止を振り切って紅葉のすぐ側まで駆け寄った。

 その動きは早く、テッペイが流石朝日君の妹さんだなと、場違いな感想を抱くほどだった。

 

「お母さん、起きて!」

 

 彩葉にできることがあるとするなら、今この瞬間に、一刻も早く紅葉を起こすこと、ただそれだけだと思った。

 だが紅葉は光ったまま起きないし、小さくならない。

 朝日のバリアがまた1枚割れた。

 

「起きてって言うてるやないか! お父さんみたいに死んでまうんやで!」

 

 雨風に負けないように語気を強めて叫ぶも、立て板に水。瞼は開かない。

 

 

「こんの、分からず屋ーッ!!!」

 

 

 そうして焦れったくなった彩葉は、そばに落ちていた瓦礫を紅葉へ投げつけた。

 女子高校生離れした強肩は、暴風雨をものともせずに瓦礫を綺麗な軌跡で飛ばし、数十mは先の紅葉の額に見事命中する。

 

 それは奇しくも、58年前にマザロン人に操られて鬼の面をかぶり、マザリュースを呼び出そうとした母を止めた少年と同じ行動であった。

 

 傷はつかない。ただ衝撃だけが通る。

 

 まるで当時の再現のように、紅葉のまつ毛が震えた。

 

 

「……なんや、えらい小さくなったなぁ彩葉……」

「お母さん! 良かった起きたんやね! 早う小さくなって!」

「小さくって、何言うとるん。無理言わんと」

「危ないんやから――きゃ!?」

「彩葉!?」

 

 どおん、逸れたミサイルが紅葉と彩葉の間に落ちた。

 あわや大怪我を負うところだった彩葉だが、紅葉の大きな手のひらが間一髪間に合う。

 

「あ、ありがとうお母さん」

「お母さんなんやから当たり前や。……にしてもホンマにウチが大きくなっとるんか……」

 

 発射元たるネオジャンボキングと、懸命にバリアを貼るウルトラマンを横目に見て、ようやく紅葉は自身が置かれた状況を悟った。

 

「あの怪人のせいか……あかん、ちょっと自分が嫌になるわ。乗っ取られるとか恥ずかしすぎて死にたなる」

「あ、相手はあの超獣なんやから仕方あらへんやろ」

「そんなん関係ない。ウチの意思が弱かった、それだけや」

 

 そう言って渋面のままゆっくり身を起こす紅葉は、自身の不甲斐なさに憤っているようだった。

 相変わらずな様子に彩葉は苦笑するしかない。

 

「彩葉ちゃん大丈夫!?」

「よかった! 意識が戻ったんですね!」

「強度も超獣並と。興味深いね」

 

 サユリが彩葉のもとに駆け寄り、ケガなどがないか入念にチェックする。 

 

「ちょ、くすぐったいですよ!?」

「爆発舐めちゃダメよ! 骨折してるのに気づかない時もあるし、衝撃波だって十分危険なんだから! 肺が破裂しているかも……!」

「サユリさん、あまり脅かさないであげてください。とはいえ言ってることはもっともなので、あとで病院に診てもらいましょうね」

「地球人の身体は脆い。気をつけるように」

「は、はい」

 

 3人の言葉を、彩葉は甘んじて受け入れた。

 

「小さくなれそうですか? えっと」

「酒寄紅葉や。なんか……気合いで行けそうや」

「おお!」

「――でも、折角だから記念にアイツど突いてくるわ」

「「へ?」」

 

 テッペイと彩葉の声がハモった。

 

「お母さん正気なん!?」

「正気も正気や。さっきのミサイルも全然痛なかったしな。というか1発くらいど突かなこっちの気が収まらへんし」

 

 50mの巨躯が立ち上がる。4人は慌てて紅葉の周りから退避した。

 

 

「邪魔するでウルトラマン!」

『はっ!? えっ!?』

 

 

 紅葉が華麗なスプリントフォームで朝日の横を走り抜ける。

 

 ――母さん何やっとるん!?

 ――さ、流石は朝日の母君だな……。

 ――フォローになっとらん!

 

『まじか、まじかー……』

『だ、大丈夫?』

『うん、まあ、うん……お腹痛い……』

 

 インナースペースでは、イロハは静かにお腹をさすっていた。

 

 紅葉は弾幕を手刀で弾いてあっという間に距離を詰め、ジャンプキックを決める。

 ウルトラマン2人のキックよりも、心做しか威力が上に見えた。

 

「人間舐めんなや!」

『私達も続くぞ!』

『ええい! もうどうにでもなれー!』

 

 カグヤはこの時気づいた。

 酒寄家が一丸となって、ネオジャンボキングに立ち向かっていることを。

 家族全員が、経緯はどうあれ超人となっていることを。

 

 まるで現実味がなく、文字にするとコラかと疑ってしまう内容だが、不思議と負ける気は起きなかった。

 

 腕の数はこれでイーブン。3人は阿吽の呼吸でネオジャンボキングを追い詰める。

 

「硬すぎへんか!」

 

 そう言いながらも、この中で1番ダメージを与えているのは紅葉であった。

 不思議と初対面な気がしないウルトラマン2人が言う。

 

『全員で投げるで!』

『おかのした!』

「任しとき!」

 

 そして3人もいれば、ネオジャンボキングを投げることすら可能となる。

 

 

「『『そりゃああ!!!』』」

 

 

 もがくネオジャンボキングを地面に叩きつける。

 鈍い轟音と共に、ネオジャンボキングが悲鳴をあげた。

 

 だがまだ死なない。

 

 致命傷を負うまで超獣は止まらない。

 

 よくもやってくれたなと、その身体から怨念が爆発するように湧き上がった。

 

 触れれば一体どんな悪影響があるかも分からず、3人は慌てて距離を取る。

 

 立ち上がったネオジャンボキングは6つの腕を突き出し、プラズマ球を生み出した。

 

 プラズマ球はぐんぐんと大きくなり、禍々しく輝いていく。

 

 それはバキシムが通常腕2本を構えて放つバキシクラッシャーの強化発展版。ネオジャンボキングの必殺技、ネオバキシクラッシャーだった。

 

 それはここら一帯を丸ごと破壊できる絶大な威力が込められた破滅の光。

 

 だがカグヤは、これを待っていた。

 

 

『私にいい考えがある!』

 

 

 そう言ってカグヤが前に立つ。

 

『大丈夫なんか!?』

『私達は8000年間この時をシュミレートし続けてきたんだから、任せて!』

 

 そう。カグヤとイロハはメビウスの存在に甘えず、もしも自分たちならネオジャンボキング相手にどうするか、ずっと考えていた。

 

 そして逆立ちしても自分たちの攻撃は通用しないと悟った。

 

『駄目やん!?』

『モーマンタイ!』

 

 身体を目一杯捻ったカグヤは、ネオバキシクラッシャーが放たれた瞬間に全てを解放。高速回転しだす。

 

 かつて初代ウルトラマンは、ブルトンの四次元攻撃を高速回転で打ち破った。

 

 普通なら手も足も出ないはずだが、回転は何故かブルトンに届いた。

 

 つまるところ回転とは、空間にも干渉できる最強の技なのだ。

 

 回れば何とかなるのである。

 

 イロハとカグヤはそれからインスパイアを受け、修練の末――空間を自在に歪めることに成功した。

 

 

 見えない力場はUの字を描き、ネオバキシクラッシャーがその上をヌルりと通っていく。

 

 

 カウンター技。それがイロハとカグヤが編み出した、8000年の集大成であった。

 

 

 鏡写しに跳ね返されたネオバキシクラッシャーに、ネオジャンボキングは驚くしかない。

 

 

『必殺、ヤタノカガミってね!』

 

 

 直撃、爆発、轟音。

 最強の盾は、最強の矛で打ち砕くものだ。

 

 その威力は凄まじく、ネオジャンボキングの腕は半分吹き飛び、外皮は抉れ、露出した肉が爛れていた。

 

『今だよ、プラック!』

『ああ! 最高やなあんたら!』

 

 プラックが腕を十字に構える。

 紅葉が肩に手を置いた。

 

「なんかウチの力も渡せそうや。全部持ってき」

 

 浄化のために撃った光線と、スピリット・セパレーターが混ざりあった光のエネルギーが朝日に流れ込んでいく。

 紅葉はそこでようやく人間サイズに戻り、微笑んで健闘を祈った。

 

『ここまでお膳立てされちゃ、やるしかないやろ』

『ありったけをぶつけてやれ、朝日』

『ああ!』

 

 持ちうる全てのエネルギーを込めた、極大の閃光。

 光の槍はネオジャンボキングに突き刺さり、内側を走り回って一切を破壊し尽くす。

 

 

『GYAAAAA!!!???』

 

 

 光の奔流に、数多の怨念の残像が悲鳴をあげ、次の瞬間ネオジャンボキング諸共爆散した。

 

 歓声が上がり、嵐が晴れていく。

 

 ウルトラマンの、人間達の勝利だった。

 

 

 

 

*1
流石にヤプール本人が操縦してるUキラーザウルスの方が強いが

*2
ドラゴリーの手

*3
少し煙が上がっている

*4
頭部パーツのバキシムに瞼はない

*5
ウルトラマンオーブ

*7
ゲーミング紅葉




一応補足


〇ウルトラカグヤ
タイトル回収です。
当初の予定では、マザリュースに憑依された彩華を、かぐや+ウルトラマンが助けるといった内容でした。
スピリット・セパレーターは使われず、愛の拳でマザリュースから彩華を物理的にハートキャッチし、かぐいろ+ウルトラマンの状態になります。
プラックと朝日にはできないのかと言われると、愛がないとは言いませんが、情熱が足りなさそうでした。

ウルトラマンの人格は、ほぼほぼ力だけ譲る形で統合・消滅しています。
百合の間に男が挟まったらあかんからね。

また見た目は男性ウルトラ族ですが、ジャスティスという前例があるので問題はありません。M78スペースですがママエアロ。
顔はプラックと同じですが、模様と色が違うので別人と判断されます。

筆者は初代マン、ジャック、ゾフィーを顔だけでは区別はできません。


〇ネオジャンボキング
本当はもっと後、大体2週間後に出てくるはずでした。
素材の超獣達はその間に小出しに登場して、総決算のボス的立ち位置の予定だったのですが、一気にお出しすることに。

そして本文にある通り、メビウスフェニックスブレイブで倒すはずでした。
ヒカリ枠を一般観測員ウルトラマンで埋めることで、素材数は足りますからね。

初戦でこんな奴と戦わされた朝日がかわいそうな気もしますが、君がプロット通りに動かないせいだよ。

また、元ネタは前話の後書きにもある通りグランドタイラントですが、こいつのコンセプトアートを見た時に超獣と勘違いして、没映画もヤプールが黒幕だし実質超獣でしょと、登場に繋がりました。


〇放射能の赤い雨
本編で扱えなかった設定をここに供養します。
エースの時代から強化された赤い雨ですが、参考にされたのはエンペラ星人の宇宙船ダークネスフィアに渦巻く暗雲でした。
この暗雲はウルトラ族の光線を弱める効果があり、解析して光線系統全ての無効化にヤプール驚異の科学力で成功しました。
その分コストがバカ高いです。



ようやくフェニックスネスト編が終われそうです。
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