ウルトラかぐや姫   作:ガンタンク風丸

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感想・誤字報告ありがとうございます。
エピローグ的な話なのでわりとすぐ書けました。




嵐が晴れる時

 

 ネオジャンボキングは打ち破られた。

 

 ウルトラマン達は去り、今日も無事に地球人の生活は続いていく。

 

「今回は民間人の被害がなくてよかったですよ、ほんとに。避難誘導に被災者への補填、復興の手配、諸々の予算確保……今更ながらトリヤマ補佐官の偉大さが身に沁みますね」

 

 トリヤマ・ジュウキチ。リュウやテッペイが現役だったころに補佐官をしていた男の名前だ。

 トリヤマ補佐官は上記のような一般人の対応から、GUYSが活動するうえで欠かせない資金回りの管理、友好な宇宙人の接待まで、裏方のすべてを取り仕切っていた。

 

 しかし現在、補佐官の席は空いたままになっており、業務はリュウとテッペイが手分けして行っている状況である。

 単純に後任の者が見つかっていないのだ。

 

 院長をしていたテッペイの事務処理能力がなければ、リュウは早々に書類の山に押しつぶされていただろう。

 

 ちなみにトリヤマ補佐官は御年84歳。老人ホームでのほほんとお茶を飲んでいる。

 また当時秘書をしていたマル補佐官秘書は、バキシム襲来の件でリストラされたメンバーの1人だった。

 

「事務用アンドロイドでも導入したらどうだね?」

「流石にハッキングの危険性が拭えないので……」

 

 人も憑依やら催眠やらなり代わりやら、情報が抜かれる可能性は普通にあるが、信頼できる後任は見つかっていない。

 

「うちの管理AIを中に入れてはいかがかな? 彼女は宇宙人もプレイしているツクヨミを長年守ってきた実績があるし*1、ぴったりだろう? 今なら安くしようじゃないか。そうすれば少なくとも後任を探す余裕くらいはできると思うがね」

 

 目戸の言葉に、リュウとテッペイは目を見合わせた。

 

 

◇

 

 

「え~また超獣来てるの~?」

 

〇てっかどん:ニュースになってる

〇メッフィー:やばそうな赤い雨の中でリポートしてるよ。人間ってすごいね。

〇ミクミクラス:フェニックスネストがまーた襲われている

〇ぺぺぺぺp:そういえばいろPは?

 

「いろPは今日はお出かけしてるんだー。美味しいお土産買ってきてくれるかな~。あ! ねね、モチロン、いろP今どこら辺? あとどんくらいで帰ってくる?」

『ん~……げ』

 

 すっかりアシスタント役に落ち着いたモチロンは、さらっと彩葉のスマホのGPS情報を調べた。

 そして今まさに超獣が暴れているフェニックスネストの中にいることを知り、思わず声が漏れる。

 

〇karakana:げ?

〇機動戦士ビルガモ:しれっと位置情報聞いてんのやば

〇室町パスタ:まっさかぁ

〇はやぷさ:いろP、お前まさか

 

「も、モチロンさーん? い、彩葉は一体どこにいるのかナー……?」

『あー……とりあえず今日の配信はこれで終わっとけ』

「う、うん……じゃあみんあ、今日はこれでバイバイ!」

 

 かぐやも不穏なものを感じ取ったのか、震え声でモチロンに問いかけたが、答えをぼかされてしまう。

 だが意味もなく配信をやめるよう言うわけがないので、素直に従った。

 

「で、彩葉は!?」

『おう。あいつフェニックスネストにいやがるぞ』

「ガッデム!」

『あいつも運ねーよなぁ』

 

 かぐやはすぐに外出する準備を始めた。

 

「い、彩葉は家から出ちゃダメって言ってたけど、流石にしょうがなくない? 緊急事態でしょ? 彩葉が死んじゃったらかぐやも解剖されちゃうかもしれないし、不可抗力不可抗力、絶対許してくれるって……!」

 

 玄関扉を開ける寸前で、彩葉と交わした「勝手に出歩かない」という約束を破るかかぐやは葛藤する。

 しかし彩葉に危険が迫っている状況でじっとしているなんて無理だ。

 

 怒られてもいいから、なるべく近くにいたい。

 

 道に飛び出してタクシーを強引に拾い、フェニックスネストへ向けて走らせる。しかし2km圏内は非常線が張られていた。

 強い風が吹く中、警察官が壁になって必死に群衆を押しとどめている。あの中に潜る勇気はかぐやにはなかった。

 

「お客さんどうします? これ以上先には行けませんよ」

「うー。これじゃ彩葉のところに行けないじゃん!」

『あたりめーだろ。あぶねぇしこれ以上近づかないほうがいいんじゃねぇか?』

「でもこのままじゃ彩葉が死んじゃうかもしんないんだよ!? モチロンはそれでいいの!?」

 

 目に涙を浮かべるかぐやに、モチロンはため息を吐いた。

 

『しょーがねぇなァ。いっちょオレが様子を見に行ってやんよ』

「ほんと!?」

『おう。だからてめーはここでおとなしく待っとけよ。分かったな?」

「分かった! 彩葉をお願い、モチロン!」

「おう、このモチロン様にどーんと任せときな!」

 

 そうしてモチロンは彩葉の窮地を救い、マザロン人と戦ったわけである。

 

 ネオジャンボキングが倒された後、かぐやはモチロンに案内されて、都内にある軍病院にやってきた。

 そこでようやく彩葉と再会する。

 モチロンからかぐやが来ることを知らされていた彩葉は、心配してきてくれたかぐやを怒るに怒れず、ため息を吐いて出迎えた。

 

「う゛ぉぉぉぉん! 彩葉ぁ〜! 無事でよがっだあ゛〜」

「ちょ、病院なんだからもう少し静かにしてって。周りの人見てるから!」

 

 待合席に座る彩葉を見たかぐやは、感極まって顔から汁という汁を出して抱きついた。

 汚いと言って引き剝がすか、彩葉は凄く迷った。

 

「ふぅん、この娘が彩葉の言うてたお友達?」

「あ、お母さん」

「お母さん!?」

「どうも、彩葉の母の紅葉言います。いつも彩葉がお世話になってはるね」

「大体お世話してる側だけどね」

「お、おお……確かに彩葉のお母さんって感じがする……! 顔とかすごい似てるかも!」

「そういうのいいから、ほら挨拶して」

「そうだった! 彩葉の大・親・友の、かぐやだよ! よろしく彩葉のお母さん!」

 

 年上に対して敬語を使わないかぐやに、彩葉は顔を手で覆った。紅葉はおかしそうにくすくすと笑っているが、それが本当に面白いと思っているのか、なんだこの失礼な娘はとイラついているのかは、残念ながら判断できない。

 

「えらい元気な娘やねえ」

「でしょー! あっそうだツクヨミって知ってる? かぐやねぇライバーしてるんだー! 見て見てこれ私なの! ほらこれ! どうすごくない? 可愛くない!?」

「ツクヨミね、よぉく知ってはりますよ。それにかぐやちゃんも。前に帝をえらい振り回しとったやろ。あれには笑わしてもろうたわ。中身はこんな別嬪さんだったんやねぇ」

 

 紅葉は朝日がGUYSに入ったと知って東京に来た。つまり、朝日がそう公言したあのコラボ配信を見ていたことになる。

 そしてライバーのかぐやと一緒に仲良くしていることも今知られてしまった。

 

 嫌な予感に、彩葉の顔からさっと血の気が引く。

 紅葉はかぐやのスマホのスクショに映る紺色の少女を指さして言った。

 

「で、これ彩葉やろ?」

「……ハイ、ソウデス」

「兄妹仲良くしてるようでお母さん嬉しいわ」

 

 お母さんは仲間外れやったけどな、という副音声が彩葉には聞こえた気がした。

 

「それでねそれでね、これ彩葉が作った曲なんだよ! 歌ってるのは私!」

「ちょっと!」

「え、なに彩葉?」

「へえ、彩葉の曲、ね」

「な、なに。なんか文句でも?」

 

 キョトンとするかぐやを置いてけぼりに、紅葉の視線が彩葉に向く。

 

「別に、好きにしたらええ」

「えっ」

「かぐやちゃんの1番にはなれてるようやしな」

「お母さん……」

「そうなんだよ! 彩葉はかぐやの1番なの! ずっと一緒にいるって約束もしたんだ〜」

「ふ〜ん? そうなん彩葉?」

 

 妙にニヤニヤしながら紅葉が言うものだから、彩葉は急に恥ずかしくなった。

 照れ隠しに、妙なことを言うんじゃないとかぐやの口を物理的にふさぐ。

 

「仲良いことはええことや。これじゃ確かに京都に帰って来れへんね」

「モゴ!? モモゴモモゴゴ!?」

「……いいの?」

「ええもなにも、ここの先生にしばらく通院しろって言われてな、偉そうなこと言えへんくなってしもうたさかい。だからしばらくは許したる」

「!」

「でも電話にはきちんと出ること。ええな?」

「……はい」

「ぷはっ! ちょっと2人ともなんで無視するの!」

「私は帰らないから、ちょっとは落ち着けこのお馬鹿」

 

 どす、今度はかぐやの脳天にチョップが入り、割といい音がする。

 それを紅葉は微笑んで見ていた。

 

「それでかぐやちゃんの苗字はなんて言いはるの?」

「「え゛っ」」

 

 紅葉はなんとなく聞いた話題だったが、彩葉とかぐやは答えに窮した。

 

 記憶喪失で苗字は分からない、なんて言えるわけがない。

 

 だらだらと汗を流す2人を不思議そうに見る紅葉。

 

 

「――南じゃないのかい?」

 

 

 だがそこでふと、近くに座っていた老人が言った。

 彩葉とかぐやが驚いた顔をしたのを見て、老人が眉根を寄せる。

 

「うん、違ったか? てっきりそうだと思ったんだが」

「えっと、なんで」

「だって彼女は月――」

「ジ!」

 

 咄嗟に立ち上がって言葉を被せる彩葉。

 

「え? 彼女は月」

「築地です」

「しかし」

「築地です」

「……築地にいた俺の知り合いに気配が似ていたんだ……」

 

 とんでもない眼力で言い張る彩葉の勢いに負けた老人は、諦めて築地と言い直した。

 彩葉はその言葉に頷いてから、紅葉に向き直る。

 

「というわけで、かぐやは築地から来たの。で、苗字は南だから! ね、母さん!」

「そ、そうどすか……」

「かぐやとお爺さんはちょっとこっちに来て!」

「わっ!?」

「おおっ……!?」

「……ごゆっくりー」

 

 彩葉はかぐやと老人を引きずるように物陰へ連れていった。

 紅葉はひらひらと手を振ってそれを見送った。

 

「で? 貴方は一体何者ですか? なんでかぐやが月から来たって知ってるんですか? 宇宙人ですか? かぐやの保護者とか? お迎えの人?」

「し、質問が多いな今時の若者は」

「お迎え!? かぐや帰らないから! べーっだ!」

 

 片や詰問気味に、片や威嚇する2人のただならぬ様子に目を白黒させながらも、老人は鷹揚に言う。

 

「まず俺は宇宙人だが、お迎えとやらではない。月星人とは縁があってね。こう、分かるんだ、気配というか」

「そ、そうだったんだ。良かったーお迎えじゃなくてー」

「かぐや、明日からアルミホイル被りな」

「えぇ!?」

「アルミホイル……?」

「気にしないでください。それでなんで地球へ?」

「あの恐るべき超獣を倒した勇気ある人たちの姿を、一目見ておこうと思ってね」

 

 老人は紅葉と、そして彩葉を眩しそうに見た。

 優しい瞳が、不思議と銀色の瞳と重なって見えた。

 

「貴方はもしかして……」

「それよりかぐや君だったかな? 君は月に帰りたくないのかい?」

「うん。月はすんげーつまんないような記憶しかないから」

「記憶しかない……?」

「あっ、その……実はかぐやは記憶喪失で」

 

 気づけば彩葉は、名前も知らない老人にかぐやがモチロンに乗ってきたこと、ウルトラマンとベムラーの戦闘に巻き込まれてモチロンは致命傷を負い、かぐやも記憶喪失になってしまったことを話していた。

 

「でも彩葉が助けてくれたから何も問題なかったよ。ぶい」

「だがいなくなった君のことを心配している人が、月にもきっといるんじゃないのかい?」

 

 その言葉に、彩葉とかぐやは何も答えられなかった。

 

 記憶を失う前のかぐやにも生活が、人間関係があったはずだ。

 父と母がいるなら、紅葉がそうだったように、とても心配しているに違いない。

 

 かぐやとの関係が崩れるのが怖くて、今まで意識しないようにしていたことだった。

 

 そしてそれはかぐやも同じだった。

 映画やゲームの中には、記憶を取り戻して別人になってしまうキャラがいる。自分がそうならないとは断言できない。

 もしも彩葉に嫌われてしまったら?

 もしも本当の自分が彩葉を嫌うような人物だったら?

 

 そんなギャンブルに挑戦したくない。

 今の楽しい生活をずっと続けていたい。

 記憶なんていらない。今のままでいい。

 そう思っていた。

 

 

「だがいつか必ず向き合うべき時がやって来る」

 

 

 その通りだった。

 彩葉とかぐやは、互いの存在を確かめるように手を握った。

 その様子を見て、老人は微笑む。

 

「だから互いに信じ合うんだ。もし何かあっても、信じ合う心があれば、どんなことだって乗り越えられるだろう。紡いだ絆は、決して君たちを裏切らない」

 

 と、その時待合席に呼び出し案内が響いた。

 

「すまない、呼び出されてしまったよ。月の方には……そうだな、俺から上手く伝えておくから安心してくれ」

 

 老人が立ち上がる。

 その背中に、彩葉は咄嗟に声をかけた。

 

「どうかしたかい?」

「あっ……あの……お名前を聞いてもいいですか?」

「ん? そうだな……俺は北斗星司。しがない元シェフだよ」

 

 

*1:
イカれたハッキングをするニートダダ




一応補足


〇かぐや
彩葉が倒れるイベントが本作では消失していることから、かぐやは紅葉の激やばエピソードをまだ聞いていません。
なので紅葉のことは彩葉の母だということしか知らず、好感度が高い状態からコミュがスタートしました。


〇ヤチヨ
えっ、GUYSで事務? コラボライブの練習をしなきゃいけないんですけど。
アンドロイドはM78ワールドだともう普通に実用化されています。


〇朝日が一体化しない / するによるルート変化

一体化しない場合、ネオジャンボキングの素材が小出しになります。小出しの場合は光の国側がヤプールを察知できません。
光の国「なんか観測員から連絡ないなぁ。あ、メビウスじゃん。ちょっと里帰りついでに様子を見てきてよ」
メビウス「おかのした」

一体化したほんへの場合、ネオジャンボキングのクソデカマイナスエネルギーが光の国まで届きました。
光の国「なんか観測員から連絡ないなと思ったらでっかいマイナスエネルギーの波動が!? まさかヤプールか!?」
エース「俺が行く」


〇北斗星司
ウルトラマンエースの人間態の名前です。
またの名をギロチン王子。
技名の悉くにギロチンがつく殺意の塊。超獣絶対殺すマン。
超獣の反応があったらプライベートでも駆けつけて殺して回っています。
メビウスの登場フラグが折れた代わりにこちらが登場することになりました。
24年前は、神戸のホテルでオーナーシェフをしていました。

また一人称を「俺」と「私」のどちらにするのかは最後まで悩みました。
ウルトラ族としてはこの時代だとまだ若いので「俺」にしました。


〇宇宙竜ナース
健気にウルトラサインを撃ち落としていましたがさらっとエースに斬殺されナレ死しました。


〇ヤプール
( ˇωˇ ) zzZZZZ


現在の作中時間8月20日
コラボライブまで、残り10日
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